最終回の前にもう一章新しい話を挟む事にいたしました。
重ね宣言通りにならない事をお詫び申し上げます。
景和はケケラに勝利し、それに伴い置物にされたライダー達は全て戻った。
囚われた一般人も改心した五十鈴大智の協力も有って無事助け出された。
死の直前、ケケラは景和に感謝の言葉を贈られ感涙しながら消えて行ったと言う。
自分を苦しめる存在ではあった物の、大勢を守れる力与えた人物でもある。
推しに感謝されると言うこの上ない喜びを味わいながら死する。皮肉だがある意味で一番理想が叶ったオーディエンスだったのかもしれない。
浮世英寿も自らの意思で創生の呪縛を解除。ゲームマスターであるジットを見事打倒し、バットエンドゲームは終了した。
しかしこれによりいよいよ後に引けない人物が居た。
スエルだ。
デザイアグランプリ運営の最高責任者であり、英寿の母・ミツメを創生の女神に変えた張本人。オーディエンス達から立て続けに低評価を喰らいデザグラの運営は危機的状況に陥ってしまう。打開策としてスエルはより刺激的な催物を開催する。
『さあ。共にこの世界を破滅へと導く、最後のゲームを始めよう』
それが「終幕のデザイアグランプリ」である。
オーディエンスの命を受け何としても世界をバットエンドにさせる為に強行したゲーム。
全国で無作為にドライバーを譲渡された参加者達が一定時間になると強制的に他ライダーとの戦いを強いられる。反抗する者はゲームマスターにより即殺害される最悪な殺し合いだ。
『全国津々浦々の仮面ライダーの皆さん。これより、終幕のデザイアグランプリを開催します.........変身!』
白昼突如頭上に現れる巨大モニター。そこに映された黒ツムリの合図と共に、参加者たちは一斉に「ジエンドライダー」と呼ばれる量産型ライダーに変身させられ、生きる為に争い始めた。
平和な街中で突如始まる命の奪い合いに人々は阿鼻叫喚。
無関係な市民は戦いに巻き込まれぬよう必死で逃げ纏う始末である。
英寿、景和、祢音もこの状況を目の当たりにし必死で戦いの沈静化を図るが自分達もジエンドライダー達に攻撃され四苦八苦する事態だ。
街の川にかかった大型道路橋。
ここでも10人程のジエンドライダー達が熾烈な争いを繰り広げていた。
道路の真ん中で突如バトルが勃発した為、周囲は渋滞、横転した自動車、歩道には逃げ回る人々で混乱を極めている。
そして、ここでも戦いを止めようと必死で足掻く人物が一人。
「止めろ皆!どうしてこんな!?」
嘗てミラーワールドでの戦いを知る真司にとっては悪夢としか思えない光景だった。
直ぐに龍騎に変身しジエンドライダー達から武器を奪い押さえつけたりするが.....
「見つけた!仮面ライダーだ!」
「倒すのは俺だー-!」
別方向からやって来たジエンドライダー達が龍騎を見るやいなや攻撃を仕掛けて来る。
「やめろ! 俺は戦う気なんか無い!」
「ごめんなさい、ごめんなさい....でもライダーを倒さないと私が殺されるの!」
「何だって!?」
ジエンドライダー達にとっては目に見える全ての仮面ライダーがターゲット。当然龍騎も討伐対象である。
敗北したり戦闘を放棄したりオーディエンスの低評価を受ければ、ゲームマスター達に即刻処刑される。それが参加者に強要されたルールだ。
事情を知った龍騎は無暗に戦う事が出来ず、只管総攻撃を受ける羽目に。
どれも昨日まで戦いとは無縁の素人であり全員小型バックルと言うとるに足らない武装ばかりだが、それでも満足に戦えなければ格好の的だ。
頭上ではモニター内の黒ツムリが真司の気持ちを逆なでするかの如く淡々とゲームの概要を説明している。
『これは、お互いの幸せを奪い合うデスゲーム。生き残れるのはたった一人』
「ふざけるな......ふざけるなあ!」
そんな時偶然通りかかったバッファが参戦し龍騎に加勢する。
「大丈夫か!?」
「み、道長君か?」
「しっかりしろ!アンタまで死ぬぞ!」
龍騎を鼓舞するも相手がただの一般市民である以上、バッファも迂闊に攻撃出来ない。
それでも何とかして戦いを止めようと奮闘する。
その行動を快く思ない目があるとも知らずに。
◆
デザイア神殿。
そこではスエルが変身したライダー、仮面ライダーリガドΩがモニターを通じて龍騎とバッファを監視していた。
彼は今、世界のバットエンドを望む多数のオーディエンスと一体化している。全身に設置された目から龍騎とバッファに対する罵声が一斉に沸き上がる。
『おい、また余計なのが混じってるぞ!』
『人の楽しみを邪魔するな!』
『さっささと消えてよ!』
『運営早く対処しろ!』
人の心など何処へ放り投げたのか。
彼らにとってこの世界の人間の命など二の次。自分好みのショーを見る事が最優先事項である。
直ぐ側では現デザグラプロデューサーである女性、サマスが指示を仰ぐ。
「スエル様、如何なさいましょう?」
「邪魔なノイズは排除するだけだ」
「では、あの者を向かわせるのですね?」
不敵な笑みを浮かべるサマスに合図ちするリガドΩ。
「ああ。終幕のデザイアグランプリに相応しい、スペシャルゲストだ........」
◆
戦いに敗れ、変身が解除された一般市民に一人のゲームマスターが手を掛けようとしていた。それを妨害しつつ尚も奮闘する龍騎とバッファ。
しかし次の瞬間、この場の空気を更に重苦しくする事態へ発展する。
「ぐああああああああっ」
「!?」
「!」
突如彼らの前に一人のジエンドライダーが吹き飛んで来た。
何事かと思い龍騎とバッファ、そして他のジエンドライダー達も一斉に飛んできた方角を凝視する。
周囲から湧き上がる黒煙の中から一人の人物が何かを呟きながら此方へ歩いてきている。
「.................オイオイ.................久々の戦いだってのに......」
それは一人の仮面ライダーであった。
従来のデザグラと同じく、デザイアドライバーで変身したライダー。
バックルはバッファと同じくゾンビバックルを使用しており、ゾンビフォーム特有の屈強な上半身が目立つ。
右手に拡張武装であるチェーンソー・ゾンビブレイカーを肩に乗せ、左手のバーサークローは倒したと思われるジエンドライダーの首根を掴みずるずると引きずっていた。
煙が晴れ、距離が近づくにつれそのライダーの頭部も視認し易くなっていくが.....
「...........弱い........弱すぎる」
「な!?......アイツは............」
そのライダーの顔を見て旋律するバッファ。
「どいつもこいつも..........弱すぎて........」
「.......嘘だろ................」
龍騎も息を飲んだ。この最悪な事態で一番会いたくない人物だったからだ。
「イライラするんだよおおおおおおおおぉぉぉぉっ!」
獣の遠吠えの如くそのライダー、仮面ライダー王蛇は叫んだ。
嘗てミラーワールドで戦っていた13人ライダーの内の一人、浅倉威が変身したライダー。
首から下はデザグラ仕様だが頭部のデザインは王蛇そのままである。
違いと言えば口部分が黒く、ゾンビフォームの影響か目に値するパープルアイが黒からオレンジ色に変色している事ぐらいだろうか。ドライバーには王蛇の顔が描かれたIDコアが装着されていた。
周囲のジエンドライダー達が圧倒するぐらいの咆哮を終えた王蛇(?)は、左手で引きずっていたジエンドライダーの遺体を勢いよく龍騎達に向けて蹴り飛ばした。
投げつけられた遺体は地面にバウンドしながら龍騎達の前に転がり込んだ。
本物の遺体を間の辺りにしたジエンドライダー達は一斉に悲鳴を上げるなり腰を抜かすなり阿鼻叫喚。
そんな中敵の正体を知ってる事で比較的冷静な龍騎が問う。
「浅倉! 何でお前が!?」
「あぁ?」
呼び止められ顔を向ける王蛇?。そして龍騎とバッファを見るや否や歓喜した。
「はは......城戸.....それにお前は......あの時の坊やか? ふ、ふははははははは!」
まるで旧友と数年ぶりに再会したかの様に喜ぶ王蛇?に対し、バッファも一層身構える。
彼とは半年以上前、コラスが開催したデザイアロワイヤルで一戦交えた事がある。当時は迂闊に命を奪えない己の甘さ故に敗北したが、それ抜きにしても強敵だったのは覚えている。デザロワが終了して以降、王蛇の行方は一切不明だったがまさかこの様な形で再開するとは思っていなかった。
「良いぜぇ.....纏めてかかって来な?」
「答えろよ!何でお前がここに!?」
「......まさか、スエルにエントリーさせられたのか?」
「だったらどうした?」
道長の推測に気だるそうに返答する王蛇。
どうやら今回のゲームの為にスエル達運営が直接浅倉にドライバーとIDコアを譲渡したらしい。
デザイアドライバーで変身する王蛇。さながら"デザイアライダー王蛇"とでも呼称するか。
「さあ来い。其処いらの雑魚よりずっと楽しめそうだ」
戦いたくて仕方が無いD王蛇は周りのジエンドライダー達を蔑みながらゾンビブレイカーを龍騎とバッファに向けた。
「ふざけるな!こんな戦い何の意味が!?」
「釣れない事言うな。こーんな盛大な祭りなんだ............一緒に遊んでいけよおおぉぉぉ!」
龍騎の制止も聞かずD王蛇はゾンビブレイカーを振りかざし龍騎に飛び掛かって来た。
急いでドラグセイバーを装備し応戦する龍騎。D王蛇の剣裁きは兎に角豪快な大振りで
振り回す度に道路や自動車が斬り裂かれてもお構い無しだ。
遂には停車していた一部の車を一撃で切断し、爆破してしまう。
「この野郎!」
車から立ち込める黒煙から飛び出す形でバッファはD王蛇にゾンビブレイーカーの刃をお見舞いし、胸部を斬りつける事に成功。
初めて一撃を受けたD王蛇。しかしその反応は憤怒どころか寧ろ歓迎していた。
「ははっ、良いぞ。ようやく戦いらしくなって来たな……」
直ぐに体制を立て直し、バッファに反撃する。
「大勢のライダーが居ると聞いて、蓋を開けりゃ!どいつもコイツも雑魚ばかりだ!命を張る覚悟もない!お前等で俺を満たしてくれよぉ!!」
自らのゾンビブレイカーを豪快に振り回し牽制するD王蛇。ここに来るまで彼は数人のジエンドライダーを相手にしたがどの人物も一撃で致命傷を負ったり命乞いをしたり、トドメをさす前に「オーディエンスから低評価を受けた」等の理由でゲームマスターの手で爆破されたりと不完全燃焼な事だらけだった。
血生臭い戦いを好むD王蛇にとって、張り合いのある者との相手は何よりの喜びである。
そんな暴虐をバッファや龍騎が許す筈も無い。
「上等だ!お前みたいなのが相手なら、遠慮は要らないな!」
「浅倉ぁ ………クソぉ!」
迷わず攻め込むバッファ。
龍騎も彼に続く。100%気乗りはしていない。人間同士の争いはもう十分だ。それでもやるしかない。浅倉の様な人物を野放しに出来ないから。
しかし2対1と言う普通に考えれば不利な状況の中、D王蛇は全く怯む様子を魅せず正に遊ぶ様に龍騎とバッファの刃をやり過ごすのだった。
ベテラン達の熾烈な戦いを前に、一般人であるジエンドライダー達はただただ呆然としていた。
しかしゲームの進行状況は街に散らばったゲームマスター達に監視されているのだ。
『何をしている?戦意喪失、及び低評価を受ければお前達は退場だぞ?』
「っ!! う、うわあああ!」
「だから皆止めろって! クソ、アイツ!」
何処からか現れたゲームマスターに脅迫され、周囲のジエンドライダー達は死の恐怖に怯え戦闘を再開。
ゲームマスターはその間に雲隠れ。追跡したかった龍騎だが他のジエンドライダーに阻まれてしまう。
「余所見をするなぁ!!」
他に気を取られ背中がガラ空きな龍騎に対し、D王蛇は地面に落ちていた棘付きの鉄球・レイズチェーンアレイをサッカーボールの如く蹴り飛ばした。先ほど自分が葬ったジエンドライダーが所持していたものだ。
「ぐああ!」
背中からレイズチェーンアレイを諸に受け転倒する龍騎。
「お前もな!」
《TACTICAL BREAK》
その隙にバッファがタクティカルブレイクを発動し、ゾンビブレイカーから斬撃を放つ。
「うお!?」
斬撃がヒットし背中から転倒するD王蛇。
更に追い討ちをかけんとゾンビブレイカー片手に駆け足でバッファが迫る。
しかしD王蛇は「っふん」と鼻で笑いながらゾンビバックルのウェイキングキーをひねり仰向けのまま左手を地面に翳す。
《ZOMBIE STRIKE》
すると少し離れた場所でバーサークローを模した巨大な手が地面から出現、付近で戦っていたジエンドライダーを掴み地面に引きずり込む。
次の瞬間その手は再び出現する。
ジエンドライダーを掴んだままバッファの前に。
「何!?」
「うわっ!!」
突然盾にされ混乱し手を上げるジエンドライダー。バッファも思わず制止するが、その隙をD王蛇は逃さない。直ぐにジャンプするかと思えば盾にしたジエンドライダーを踏み台にし飛び掛かる。
着地と同時にゾンビブレイカーでバッファの胸部を大きく斬り裂いた。
「ぐあああああ!!」
チェーンソーの刃を諸に受け吹き飛び、転倒するバッファ。
D王蛇は追撃しようとゾンビブレイカーのレバーを動かす。チェンソーの刃にエネルギーが集まる。
「どうした?」
《POISON CHARGE》
「もっと楽しませろおっ!」
《TACTICAL BREAK》
そのまま勢いよくゾンビブレイカーを振り上げ、大きな斬激を飛ばした。
「!! ぐ、ぐう!」
バッファは透かさず自分のゾンビブレイカーで受け止め一瞬堪えた後に斬激を弾き返す。
しかし、返した先には負傷したジエンドライダーが一人踞っていた。
「しまった!」と反応するもバッファからはもう対処は間に合わない。
恐怖で顔を覆うジエンドライダー。
「ひぃぃっ!」
「マズイ!!」
それに気付く龍騎。考えるより先に体が動いた。彼は周囲のジエンドライダー達を強引に押し退け、負傷したジエンドライダーの前に飛び出す。
当然、斬激は龍騎を直撃。
派手な爆発と共に彼を橋の外まで吹き飛ばす。
「ぐわあああああっ」
「龍騎いぃぃぃっ!」
バッファの叫びも空しく龍騎は川の中心まで転落していった。
「はぁ~、相変わらずだな。城戸...........」
顔見知りがあっさり退場した事で失望のため息を吐くD王蛇。昔からああだ、城戸真司と言う奴は。もっと非情に徹すれば互角以上の相手になれたと言うのに、つくづく残念でならない。
「まあいい、次はお前だ」
「くぅ!」
気持ちを切り替え再びバッファを標的とするD王蛇。しかし攻撃をしかける直前、
何処から戸もなくブザーの様な音が響き渡る。同時に周囲のジエンドライダー達の変身が解除される。
『本日のゲームはこれにて終了です。 明日の日の出と共に、ゲームは再開されます。皆様、お疲れ様でした』
宙に浮かぶ映像内の黒ツムリが作り笑顔を浮かべながら会釈するとモニターはゲームマスターもろとも消失。
先程までジエンドライダーだった一般人達は皆酷く疲弊しその場で座り込んだ。
どうやら1試合ごとに制限時間が盛り込まれている様だ。
「終わりだと? 待てよ、もう少し遊ばせろ」
まだ戦い足りないD王蛇は尚もバッファを攻撃しようとゾンビブレイカーを振りかざす。
しかし、彼の攻撃は突如鳴り響く着信音により止められる。
舌打ちしながら、ベルトに装備されたスマートフォン型の端末・スパイダーフォンを取り出す。デザグラ参加者なら誰もが所持する携帯端末だ。
通話アプリをタップし、早速怒声を浴びせた。
「何だ!?」
『困ります、浅倉威。ルールは守って頂かないと。今すぐ戻りなさい』
相手はサマスだった。此方の声量に一切動じない声で短い警告を終え直ぐに通話を切られる。
D王蛇は溜息を吐きながらバックルを外し変身を解除。
スーツが消え現れたのは乱れた金の長髪に無精髭、蛇柄のレザースーツと言う如何にも攻撃的で危険そうな雰囲気を醸し出す男だった。
「.......あばよ、坊や」
彼はそれだけ言い残し、光と共にその場から消えた。
残されたバッファはただただ悔しさのあまり地面を殴りつけるのだった。