コロナにかかったのでガッチャードの映画はもう少し後に観るとします。
「そうですか…...城戸真司様は、まだ見つからないと……」
『ああ……職場にも行ったが連絡が付かないらしい…』
『こっちも、街中大騒ぎで探すのも一苦労だよ……』
デザグラ運営が残していったサロン内部にて待機しているツムリ。
1度目の終幕のデザイアグランプリ終了後、道長、景和、英寿、祢音の4人は手分けして城戸真司を捜索した。 ジエンドライダーを庇って川に転落して以降行方知らずだ。スマホも繋がらず、警察にも協力を依頼したが他に行方不明者の捜索依頼が殺到して全く手が回らないらしい。
ツムリは仮面ライダーパンクジャックこと晴屋ウィンと共にサロンで身を潜めている。
ゲームを大々的に煽っていたのが瓜二つの黒ツムリだった以上、下手に外出すれば要らぬ誤解を招きかねない。
現在4人はそれぞれ別の場所からスパイダーフォンを通じて現状を報告し合う。
情報共有の中、感情が高ぶった景和が側の壁を殴りつける。
真司が行方不明と言うのもショックだが、景和に至っては年端も言っていない学生カップルが強引に戦わされ爆破されると言う惨劇を目の辺りにしている。
真司から鏡の中で人間同士が戦い合うバトルロワイアルの話は聞かされてたが今回はそれを大規模にした様な物だ。しかも参加者の意思を無視しショーとして楽しんでる時点で余計タチが悪い。
『クソ......スエルの奴.....絶対に許さない!』
無論それは景和だけの気持ちではない。 祢音も声を震わす。
『酷いよ......人間同士を無理やり戦わせて......逃げる事も出来ないなんて......』
終幕のデザイアグランプリがもたらした影響は計り知れない。
街では至る所で爆破テロが起きた様な騒ぎだ。そこら中で火災が起き、駅でも戦いが起きたのか一部の鉄道はストップし交通網は麻痺している。
強制エントリーされた参加者達。戦いに巻き込まれた人々。ゲームが行われた時間は10分にも満たなかったがそれでも大勢の犠牲者が出た。病院は負傷者が多過ぎて何処もパンク状態である。
報道によると全国各地でライダーバトルが同時多発的に勃発したらしく、被害者数は今後も増えていく見込みだ。
『何とかして、このふざけたゲームを止めないと!』
『........参加者からすれば、俺達も敵だ.....』
『そうだけど、やるしかないでしょ!』
憤怒を隠し切れない景和と比べかなりトーンを落としている道長。
「参加者と言えば、この方も......」
ツムリはタブレットを操作しながら、手前のモニターにとある新聞記事の画像を表示させる。
画像は皆のスパイダーフォンにもリアルタイムで共有されている。
「浅倉威......仮面ライダー王蛇。嘗てはイライラしたと言う理由だけで何名もの人を手にかけた、凶悪犯だった様です」
画像には20年ほど前に浅倉が仕出かした事件の数々が記されていた。
殺人、暴行、窃盗、脱獄、器物破損と上げれば切りがない数の事案が並ぶ。運営の独自の調査書によれば少年期には肉親すらも実家を放火して殺害したらしい。
ミラーワールドの戦いが終わった後、黒幕である神崎士郎は己の存在をも犠牲に世界を作り変えた。浅倉の経歴も全てリセットされ、これ等の記事は既に存在しない物である。
しかしデザグラ運営は参加者を選別する為、過去のあらゆる時代のデータを記録している。
削除された歴史すら記録出来る芸当も、今まで何度も世界を作り変えてきたデザグラ運営の十八番なのだろう。
「........命のやり取りを心から楽しむ狂人。スエルの野郎、とんでもねえ奴スカウトして来やがった.....」
ツムリの後ろでウィンが苦虫を食い潰したような顔で呟く。
ミラーワールドでの戦いにおいても、浅倉が始末したライダーの人数は上位クラスだと言う。
今回のゲームでも彼によって葬られた参加者は少なくない。
『............やっぱり.....他にも居るんだね....こう言う人.....』
浅倉の人物像を知り祢音は深く影を落とす。
鞍馬家の本当の娘である鞍馬あかりの命を奪った人物も、命を軽視する凶悪な男だった。
あの男のせいで両親がどれだけ苦しんだ事か。被害者遺族の気持ちなど微塵も考えない。
そんな人物とは二度と関わりたくないと思っていたが、現実は非情である。
「世界が変わった後はライダーの記憶も無くし、特に揉め事も無く生活してた模様ですが....」
『......また思い出した訳か........』
今まで黙ってた英寿がようやく言葉を発する。
スエルは以前、創世の女神の限界が近い事を理由にデザグラが行われている全ての時代から運営を撤退させる「グランドエンド」を引き起こした。デザグラに関わった全ての人間の記憶や情報を抹消する物だが、撃破されず大量に生き残ったジャマト達も放置する非常に無責任極まりない行為である。
後に、ミツメの意思を受け継いだ英寿は全てのライダーの記憶を復活させた。
強制ではないが、残存したジャマトに対抗する為の仲間を集める為に。
その中にはデザロワに参加した真司も例外ではない。
そして、浅倉威も。
『俺が全てのライダーの記憶を戻したからか.....』
「スエル達が目付けてた以上、遅かれ早かれだろうがな」
英寿が珍しく自分を責めた事を言うと、透かさずウィンのフォローが入る。
何度消去されようと、運営にライダーとして選ばれてしまえば記憶は復活する。結果論になるが、グランドエンドが成功したとしてもスエル達が再びこの時代に干渉しない保証はない。
現にジットが悲劇を好むオーディエンスを引き連れて来訪しているのだから。
「城戸真司様の事も気になりますが......明日の明朝にもゲームは再開されます。私達だけではとても対応しきれません」
ツムリは不安気に眉を歪める。真司の安否も心配だが、彼だけに集中している時間は無い。運営を止めない限り犠牲者は増える一方だ。
とは言え、敵は全国にドライバーを配布しているし英寿達だけで対応するのは不可能。
何か策を講じなければ…
「オーディエンスがバットエンドを望む限り、運営はそれに答え続ける....」
ウィンが呟くと、祢音が閃く。
『あたし、お父様に相談してみる。元スポンサー権限でオーディエンス達を何とか出来るかもしれないし』
鞍馬財閥はデザグラの元スポンサーであり多数のオーディエンスも名は知れ渡っている。影響力を利用して何か出来るかもしれないと祢音は踏んだのだ。
祢音の提案を皮切りに、皆自分の出来る事を決め始めた。
英寿も気持ちを切り替えてこれからの方針を定める。幾ら世界を作り変えてもスエルが存在する限り酷たらしいゲームは繰り返されるのだ。
『よし、俺は運営のアジトに攻め込んで、今度こそスエルを倒す』
「しかし英寿、どうやってデザイア神殿へ?」
疑問を投げ掛けるツムリ。運営の拠点であるデザイア神殿はこの世界とは別次元に存在し、特殊なゲートを通らなければたどり着けない。無論、スエルはゲートを関係者以外アクセス出来ぬ様制限している。
『俺に考えが有る。ツムリ、後で家に来てくれ』
「? 解りました」
ツムリが首を傾げる中、景和も続く。
『俺はもう少し真司さんを探してみる。明日のゲームも避難誘導とか、出来る限りの事するしかないよ。道長さんは?』
『..................』
『道長さん?』
『! ああ、悪い。俺もこのまま龍騎を探す』
一瞬の沈黙に違和感を覚える景和。
祢音は彼の性格を考えると何を考えてたかはおのずと理解出来た。
『もしかして.....自分だけで王蛇を倒したいなんて思ってた?』
『.........あんな奴放ってたら、犠牲者が増えるだけだろ』
道長は自分が側に居ながら龍騎が敗北した事に責任を感じていたのだ。
彼の言う事はごもっともだし、浅倉が許せないのは皆も同じだ。だからこそ一人相手に拘るのも得策とは言えない。景和が加勢を名乗り出る。
『真司さんの事は道長さんのせいじゃないよ。もしまた王蛇に出くわしたら直ぐに連絡して。直ぐに向かうから!』
『ああ。解ってる.......お前等も気を付けろよ』
それだけ言って、道長は通話を止めた。
(悪いな.....タイクーン........)
口では約束した物の、道長は自分だけで王蛇に対抗する方針を曲げていない。
2度の敗北だけでなく、自分の不甲斐無さが龍騎を行方不明に追いやった。
このまま黙って引き下がれる程、吾妻道長と言う男は器用ではなかった。
それに景和達も下手に変身すれば他参加者の攻撃対象になる。彼等には出来るだけ市民の避難誘導等に専念してほしい。
(王蛇......次こそは.......必ず俺の手でぶっ潰してやる.....!)
◆
場所は変わって、何処かの体育館の様な場所でD王蛇がジャマト達と戦っていた。
ここは運営がデザグラ参加者の為に用意しているトレーニングエリアである。
あらゆるルールのゲームを想定して自分好みの環境を作りだし、仮想ジャマトを相手に訓練出来る空間だ。
その光景を別の場所でスエル、サマス、そしてツムリを模倣して作られた偽の女神・黒ツムリがモニターを通じて視聴していた。
「まるで獣ね…」
終幕のデザグラ1回戦目が終了し食事を終えて以降、浅倉はずっとここで暴れ続けている。戦いたくて仕方が無い。ただそれだけの理由で。その飽くなき闘争本能は本当に人間なのか疑わしく、画面越しで見るサマスも顔を顰める程である。
20年前の戦いが終わって以降、浅倉は警察の世話になる事も無く暮らしていた。コラス主催のデザロワ参加時は一時的に記憶を取り戻すも、終了してからは再び記憶もデッキも無くし生活していた。
グランドエンド後に英寿が記憶を戻した事で嘗ての凶暴性を取り戻した浅倉は些細な理由で傷害事件を引き起こし逮捕される。拘置所に厄介になっていた所を現れた黒ツムリからドライバーを譲渡されたのだった。
モニター越しからスエルがD王蛇に声をかける。
『浅倉威、デザグラの技術で造られたライダーシステムは気に入ったかな?』
「ああ。まあ悪くはない」
デザイアドライバーを使ってまだ日は浅いが、トレーニングエリアのお陰で直ぐに慣れた。
確かに手数は豊富だし一々カードを入れる手間も無く、カードデッキより使い勝手は良いと言える。だからこそ早く実戦がしたくて仕方が無い。大量の敵が出たとしても所詮血の通っていない作り物。自分も相手も死ぬかもしれないスリルは現実でしか味わえないのだ。
「他に相手は居ないのか? こんなゲーム如きじゃ、俺は満足しない!」
『用意出来るのはこれが限度だ。その欲求は明日の戦いで存分に晴らすと良い』
「.............ッチ.....解ったよ......」
若干不満そうながらも、D王蛇は再び戦闘を開始。手始めに仮想ジャマトの首を跳ね飛ばす。
ドライバーを貰って以降、浅倉は運営に素直に従っている。自分にもメリットが多いからだ。
彼は今、絶賛脱獄中である。このデザイア神殿に留まってる限り警察の手は絶対届かないし、シャワーは貸し切り、ゲームで稼いだデザイアマネーがあれば好きなだけ食事もとれる。
未来人達は高圧的な奴ばかりで鼻に付くが、昔の逃亡生活よりは遥かに快適だ。
何より久々に戦いの場を提供してくれた事は感謝している。
ゲームマスターが余計なマネをせず、敵が雑魚ばかりでなければ完璧なのだが。
『オーディエンスに君を紹介して正解だった。君の経歴を知った時、飛び切りのバットエンドが見れそうだと皆目を輝かせていたよ。その飽くなき闘争心は他者を惹き付ける。彼らの期待に沿える様、全力を尽くす事だ』
「知るか、外野なんざ。俺は戦えればそれで良い.............もっと骨のある奴とな?」
そう言いながら、D王蛇はモニター内のスエルにゾンビブレイカーを向けた。
お前が相手になっても良いんだぞ?とでも言うように。
『ふっ、人間風情が……』
スエルが軽く嘲笑した後、モニターは消滅する。
D王蛇は再び仮想ジャマトを狩り始めるのだった。
◆
時が過ぎるのは早く、直ぐに明朝を迎えた。
運営は予告通り、日の出と共に終幕のデザイアグランプリ2回戦目をスタートさせる。
「変身!」
デザイア神殿内にて黒ツムリが決める変身ポーズを合図に、全国の参加者が強制的に戦闘スーツを身に纏う。
再び戦場と化した街中を、リガドΩと一体化したオーディエンスがモニター越しで悠々と見物する。
その後ろから腰にデザイアドライバーを巻いた浅倉が前に出る。
盛大な殺戮ショーを盛り上げる為、浮き立つ様に声援を送るサマスとリガドΩ。
「さあ、また貴方の出番ですよ?」
「人間同士の醜い争いを、存分に楽しむが良い。浅倉威よ!」
『そうだヤレヤレー!』
『期待してるぞ~』
『思いっきり暴れろ~!』
『極上のバットエンドを魅せよ!』
「.....................」
背後からオーディエンスがけたたましく声援を送るが、浅倉には雑音にしか聞こえず全て無視する。
やがて彼の体は光に包まれてデザイア神殿から消え去り、バトルの舞台である街中へと転送された。
転送が終わり、振り返ると20人以上のジエンドライダー達が熾烈な争いを繰り広げていたが.....
「.........楽しむ.....ねえ?」
早速落胆する。
相変わらず戦いの「た」の字も知らなそうな烏合の衆が騒いでいる。こんな奴等を幾ら狩った所で心が満たされる筈が無い。しかしメリットが無い訳でもなく、雑魚でも倒せばデザイアマネーとしてポイントに加算されるのだ。
「まあいい。軽い運動でもするか.......」
丁度ギーツとか言う連中も動いた頃だろう。奴らと会敵するまでのポイント稼ぎに勤しむとするか。
少し気だるそうにドライバーにゾンビバックルを装着しポーズを取る。
《SET》
「変身!」
《ZOMBIE》
背景のロゴと全身を覆いつくす毒液のエフェクトと共に、
デザイアライダー王蛇・ゾンビフォームへと姿を変える浅倉。
軽く首を回した後、仮面の奥で不敵な笑みを浮かべながら
ゾンビブレイカーを片手に戦乱の中へと飛び込んだ。
《READY.....FIGHT!》