「仮面ライダーギーツ×リバイス MOVIEバトルロワイヤル」の設定を引き継いでおり、純粋に龍騎の20年後のつもりで書きます
龍騎本編のネタバレ、及び設定の辻褄合わせの為に独自解釈、オリジナル設定を取り入れてます
ご了承下さい
尚、アウトサイダーズやRIDERTIME龍騎とは繋がりは有りません
元々はpixivで最近連載を終えた物を短編エピソードとして纏めてます
鞍馬祢音に極上のバットエンドを与える為、父・鞍馬光聖が入院する病院を襲撃するプレミアムべロバ。
しかし、新たな力を手にした祢音が仮面ライダーナーゴファンタジーフォーム-以降ナーゴFと表記-に変身しプレミアムべロバを返り討ちにした。
爆発と共に変身が解除され虫の息のべロバ。本来ならここで戦いは終わる筈だった。
しかし、
「ちょっと若いからって....」
《BEROBA SET》
自らの敗北が受け入れきれないべロバは再びレーザーレイズライザーを構え、インプットトリガーを引いた。
「調子に乗ってんじゃないよ!」
《BEROBA LOADING》
引き金を引くと同時に、周囲に大量のキューブ状のエネルギーが現れべロバの体に纏わりつく。
やがてキューブの大群は巨大な装甲を形作り完成する。
《READY...FIGHT》
「そんな...あれって」
ナーゴFは声を震わせながらその巨体を見上げた。
仮面ライダーべロバ。
べロバが持つもう一つの姿。
仮面ライダーと名はついているがその外見は体長11メートル、総重量17000kgを超える巨体な二足歩行型ロボットである。
外見、病気、寿命、あらゆる物を驚異的な技術で自由にデザイン出来る様になった未来人にとって、最早仮面ライダーを人型に作る必要が無いのだ。
ナーゴFは、祢音はこのべロバの恐ろしさを知っている。
たった一撃の攻撃でジャマーガーデン周辺を廃墟にする程の力を持つ姿だ。
こんな物が病院の側で暴れ回ったら....
変身を終えた途端、べロバは巨大化したレーザーレイズライザーの銃身を病院に向けた。
病院内は突如出現した襲撃者によりパニック状態。施設スタッフ達が慌ただしく患者を非難させていた。
元々は祢音を絶望させる為に光聖を始末しに来たのだ。
ここで適当に銃撃すれば光聖に当たらずとも誰か一人でも葬れる。
新しい力を手にしてもナーゴF一人で逃げ纏う者全てを庇う等不可能に等しい。
「その目に焼き付けなさい。大好きな家族や巻き込まれた人間が消し炭になる光景を」
「やめて!」
引き金を引こうとした、その時である。
「キュイイイィ!」
何処からともなく巨大な蝙蝠が飛来し、レーザーレイズライザーに体当たりを喰わらす。
蝙蝠は尚も追撃し、べロバは自らの巨大な手で振り払おうとする。
「く、何よコイツ!」
病院の屋上から一台の銀色のマシーンが飛び出し、べロバの顔面に突進した。
よろめくべロバの背後に着地する銀色のマシーン、ライドシューター。
停車したと同時にスクリーンが座席ごとせり上がり中から一人のライダーが下りて来た。
腰にはデザイアドライバーやIDコアは無く、代わりに銀色のベルトにカードケースが装着された
デザグラ参加者とは異なる、騎士の様な見た目のライダー。
「貴方は....」
突然の乱入で困惑するも、ナーゴFはそのライダーに見覚えが有った。
仮面ライダーナイト
去年の冬頃、コラスと名乗るゲームマスターが開いたデザイアロワイアルに参加していたライダーだ。
「.......」
ナイトは軽くナーゴFを一瞥した後べロバに向き直りダークバイザーを構えた。
苛立ち顔面を抑えながら見下ろすべロバだが、乱入者の姿が解ると意外な言葉を口にする。
「あら?誰かと思えば、コラスのデザロワに出てた奴じゃない」
「コラス?...ああ、あの妙な仮面の男か。何故お前が知ってる?」
「観てたのよ。アタシだけじゃない。他にも大勢のオーディエンスがあのゲームを視聴してたわ。アイツも物好きよね。こんな旬の過ぎたオワコンライダーを招待するなんて」
自分を知ってるような言いぶりのべロバに違和感を持つナイト。
デザイアグランプリ、略してデザグラは次元を超えてやって来た未来人達が運営、視聴するリアルエンターテイメントショーである。デザグラの参加者は基本オーディエンスによって選ばれるが例外も存在する。運営のスポンサーが私利私欲の為に身内を推薦するパターン。何らかの理由で運営が直接招待するパターン。
それはデザイアロアイアルも同じでありナイトは後者だった。最もあれは何年たっても世話が焼けるヤツが囚われ止む無く参加した訳だが。
自分たちの真剣な戦いを娯楽として楽んでる者達が居た。
知らない間に誰かの見世物にされてた事に内心ご立腹だったが、今のナイトにとってそんな情報は重要ではない。
「んで何か用? アタシの邪魔してアンタにメリットあると思えないけど?」
ゲーム優勝者の願いを叶えるシステム・創生の女神になりかけてるツムリは今ゲームマスターであるジットの元にある。
何の見返りも無い戦いで運営やオーディエンスに剣を向ける理由がべロバには理解出来ない。
「どうでも良い。俺はただ戦いに来ただけだ」
ナイトはそれだけ言って、ダークバイザーにアドベントカードを装填する。
《SWORD VENT》
空から飛来したウィングランサーを片手にべロバへ向かって駆け出した。
「気取っちゃって。お呼びじゃないのよ!」
ナイトに向かって巨大化したレーザーレイズライザーの光弾を浴びせるべロバ。
自分の身長を軽く超える程の巨大な光弾の雨。そして着弾後の爆発が襲い掛かるがナイトは身軽な動きで回避し距離を詰めていく。
途中の一発が足元に着弾。大きな爆発が起きるが、爆炎の中からナイトが飛び出し一気に距離を詰める。
べロバは空中に居るナイトを叩き落そうと腕を掃う。
「ダークウィング!」
掛け声と共にナイトの背中にダークウィングが接続され、羽ばたいた翼により空中でべロバの腕を回避する。その後直ぐに急降下。べロバの顔面をウィングランサーで傷つけた。
「顔を狙うな!」
べロバはナイトを撃ち落とさんとレーザーレイズライザーを乱射するも機敏な動きで回避するナイト。苛立ったべロバは自分の身の回りの重力を操作し大量の瓦礫をナイト目掛けて投げ飛ばした。
銃弾と違ってスピードが遅く、さっきより回避するのは容易だ。
だがべロバが飛ばしたのは瓦礫だけではなかった。
ふいにナイトの元に迫りくる数台の自動車。自分の側に停車していた車もべロバは投げ飛ばしていたのだ。回避しようとしたナイトだが、べロバは空中の自動車めがけレイズライザーを乱射。
光球は自動車に直撃しナイトを巻き込む程の大爆発を引き起こす。
「ふん、鬱陶しいハエにはお似合いの花火ね」
勝利を確信したべロバ。だがどこを見回してもナイトの骸が見当たらない。
一瞬敵を見失い辺りを見回すべロバ。背後から何かの走行音が木霊する。
振り向くと何時の間にかライドシューターに乗り込んだナイトが猛スピードで病院の外へ駆けすのが見えた。
「待ちなさい!」
べロバは身の回りの重力を操作し、その巨体を中に浮かべライドシューターを追跡。
突然の乱入者で呆気にとられ、残されたナーゴFは冷静のナイトの意図を分析する。
「あの人...もしかして病院から遠ざけてる?」
つい少し前まで一般人だったナーゴF・鞍馬祢音も、それなりの修羅場を潜り抜けた身。
理由がどうあれナイトが病院を守ろうとしてるのは戦い方である程度察しがつく。
ナイトの考えを理解したナーゴFは急いで後を追った。
出来る限り人気の少ない大通りを走行するナイトのライドシューター。
直ぐ側には大型のショッピングモールが聳え立つ。本来なら大勢の買い物客で毎日賑わう場所だが、ギャングライダーズの傍若無人な略奪行為により、今は店中のウィンドウが割られ潰れた看板が転がってると言う無残な有様だ。当然無人状態である。
浮遊しながらずっと追跡して来た仮面ライダーべロバはレイズライザーの光弾を走行中のライドシューターに浴びせた。
「ぐあ!」
光弾がヒットし転倒したライドシューターから道路のど真ん中に放りだされるナイト。少し転がるも直ぐに受け身を取る。すかさず真上からべロバの巨大な足裏が踏み潰さんと迫りくる。
間一髪回避するナイト。巨体の着地した衝撃が凄まじく大きな地響きが起きる。ナイトはその場でジャンプしてべロバの右肩に飛び乗るもべロバは巨体に似合わず素早い身の熟しで振り払った。
再び着地するナイト目掛けてべロバの拳が降り注ぐ。これも回避するも拳が直撃したコンクリートが抉れ、夥しい量の土煙でナイトの姿が一瞬隠れる。その隙にダークバイザーに素早くカードを装填した。
《TRICK VENT》
土煙から複数対に増えたナイト達が飛び出し集団でべロバに攻撃する。
トリックベントによる分身技、シャドーイリュージョンである。
「だから鬱陶しいって言ってんのよ!」
べロバはその場で勢いよく地面を踏みつけた。
巨大な足をぶつけられた地面は凄まじい衝撃と共に大きく抉れ、反動でナイト達を空中へ跳ね飛ばす。
空中で自由を失った分身達をべロバはその拳で全て葬った。
だが本物の姿が見えない。辺りを見回している内に再びカード装填の音声が鼓膜をつつく。
《NASTY VENT》
「ぐ、がああ!」
空から飛来したダークウィングが口から強力な超音波「ソニックブレイカー」を放ち激しい頭痛に襲われたべロバは頭を押さえ動きを止めた。
その隙をついてナイトは再びウィングランサーを片手にジャンプして急接近、連続でランサーを突き刺した。
連続技を叩きこまれたべロバはついにバランスを崩しその場で膝を付いてしまう。
大分弱り切ってきたと見て、ナイトはトドメの切り札を召喚機にセットする。
「終わりだ」
《FINAL VENT》
勢いよく駆け出し、空中から飛来したダークウィングを背中に接続する。必殺技である「飛翔斬」の準備は整いこれが決まれば勝利は確実だ。
「..........ふふっ...」
だがべロバはほくそ笑んだ。彼女も頭の悪い人物ではない。
交戦の最中、彼女は何故ナイトが突然乱入して来たのかをずっと考えていた。こうして弱ってるのも相手の考えをあぶり出す為のただの演技である。デザイアグランプリでもないのに自分たちを邪魔する理由。あらゆる物を意図も簡単にデザイン出来る自分には決して理解出来ない、古代人の思考・価値観。それは他人の命を大事にすると言う考えだ。
そして奴はわざわざ病院から離れる様に戦う場所を変えたとなると答えは一つ。
あの病院に守りたい誰かが居るのだ。
特にナイトは"過去の事"を考えれば間違いない。
とすれば弱点は決まった様な物。
大分離れてはいるが今いる位置でも十分に命中出来る。
そして助走をつけたナイトが空高くジャンプした隙を付き、べロバは病院に向けてレーザーレイズライザーのトリガーを引いた。
「!!」
放たれた巨大な光弾。
ナイトは咄嗟に必殺技を取りやめダークウィングの翼で飛行。自ら光弾にぶつかった。
「ぐあああああ!」
轟音と爆発。直撃を喰らったナイトはダークウィングと共に地面に落下。
変身が解け、元の秋山蓮の姿に戻ってしまう。
この光景を目にしたべロバは嫌味ったらしい拍手を送りながら笑い飛ばした。
「あっはっはっは!やっぱり身を挺して病院を庇った! あそこに居るのね、アナタの大切な人が。あんなに沢山有る技を最初から使わなかったのも、他の人間を巻き込みたくなかったからでしょ?」
「く.....」
「可哀そうにねえ。折角命かけて救おうとした想い人が、またこうして危機に瀕してるんだから。ねえ仮面ライダーナイト、秋山蓮?」
「何だと...」
べロバの口ぶりに違和感を覚え睨みつける蓮。
それは先ほどのデザイアロアイヤル参加者と言うだけの情報ではなく、自分の過去まで知ってる様な物言いだったからだ。
べロバは尚も話を続け瀬々笑う。
「アンタがどんな戦いをして来たのか、ちょっとぐらい知ってるわよ?
この時代から丁度20年前。ある男が仕掛けた13人のライダーによるバトルロワイアル。最後に勝ち残った物はどんな願いも叶える事が出来る。一度ライダーになれば最後まで辞められない。正真正銘人間同士の命の奪い合い。すっごくゾクゾクしちゃうルールじゃない? ミッチ―にも是非参加してほしかったわ~。 古代人の中でデザロワと似たようなゲームを開いてる奴が居たと知った時はそれなりに驚いたけど....ま、推しを見つけた後じゃどうでも良いわ」
一瞬だけ目を輝かせるも直ぐに冷めた口調に戻るべロバ。
オーディエンスは数多くいる古代人の経歴を勝手に洗いだしその中で気に入った人物をライダーに選別する。
自分好みのゲームの駒を探す際にべロバはこの時代の20年以上前に一人の男によって開かれたライダーバトルの存在を知った。ゲームマスターが気に入らない結果となれば何度でも歴史をリセットされ、その戦いは今では存在しない世界に書き変わった様だが、神の領域にまで踏み込んだ自分たち未来人にとって失われた歴史を調べるなど造作もない事。
そもそもデザグラで幾度と無く世界を作り変えて来たのだから。
人間の不幸を喜ぶ彼女にとって20年前の13人のライダーバトルはさぞ魅力的に見えただろう。
最もそれを知る前に吾妻道長・仮面ライダーバッファと言う推しを見つけた事で集中力が其方に向き、ナイト達の戦いは軽く歴史を一瞥したに過ぎないのだが。
「アンタは命の危機に瀕した彼女を救う為、そのデスゲームに参加した。でも何やかんやあって戦いは終わり、今も女は元気にしている」
「....それがどうした。お前にはどうでも良い事だろ?」
尚も睨み続ける蓮に対し、べロバはイタズラ好きな子供の様な笑みから一変。低く苛立ちの籠った声にで睨み付ける。
「くっっだらない。どいつもコイツも愛だの幸せだの、求めてないのよそう言うの」
一歩一歩、べロバは轟音の様な足音を響かせながら蓮の元へ歩み寄っていく。
この男もあの小娘と同じ。愛する人の為に。
つくづく反吐が出る。変身して無ければ唾棄でもしてやりたい気分だ。
他人の不幸こそ蜜の味であり最高のエンターテイメントだと言うのに。
しかしこう言う希望を求める人間が苦しみ絶望に歪む姿もまた極上の快楽でもある。
なら今すぐそうしてやろう。一度目の戦いを終えても、結局何も守れなかった自分の無力さを叩きこんでやるのだ。いっその事コイツの骸でも彼女に見せてやるか。その彼女の絶望顔をたっぷり拝んだ後、病院ごと消し炭にするのも面白い。
「いいわ。折角手に入れたハッピーエンドを....最高のバットエンドに変えてあげる」
遂に蓮の直ぐ目の前までたどり着き、べロバは拳を振り上げた。
「醜く無様に……くたばれ!」
全身の痛みで身動きが取れない蓮の頭上から、巨大な拳が迫り来る。
蓮が最早これまでかと覚悟した、その時。
「させない!」
「!?」
「ぐ、コイツ!」
蓮の前にナーゴファンタジーフォームが飛び出し、自らの幻想を具現化する「ファンタジーエフェクト」の能力により作り出した光の剣とガラスの盾の集合体を展開。べロバの攻撃を受け止めたのだ。
ゴリ押しで強引に盾を打ち破ろうと力を籠めるべロバの拳とナーゴFの盾が激しく火花を散らす。
埒が明かないと見たべロバは舌打ちをしながらもう片方の手に持つレーザーレイズライザーで銃撃。
ナーゴFはそれを見逃さず瞬時に数本光の剣を追加。浮遊した光の剣は光弾に向かって突撃。光弾と接触した途端、際大きな爆発が起きた。
「きゃあ!」
反動でべロバは大きくよろめき近くの建物に転倒。
壁を破り瓦礫に埋もれてしまう。
ナーゴFも衝撃に耐えきれず地面に倒れこむ。変身が強制解除され鞍馬祢音の姿に戻ってしまう。
蓮は倒れた祢音に歩み寄る。
正直助けて貰えるなど思ってなかった。自分が彼女と会ったのはデザイアロワイアルに参加した際の一度きり、しかもあの時は敵同士。碌に会話も無く自らの目的の為に戦った仲である。
にも拘わらずこの女は自分を助けたと言うのか?
「お前....何故俺を?」
「私にも居るから....」
「?」
「私にも居るんです。大切な人達が...守りたい家族が!」
額に血を滲ませ息を切らしながらも真っすぐ蓮を見る祢音。
祢音はここへ辿り着くまでの間にべロバの話が聞こえていた。
あれだけの巨体が話す声だ。強力な聴覚装置を持つナーゴの耳、ナーゴイヤーならば長距離でも聞こえて当然である。
任意にドロップアウトも出来ない人間同士の命の奪い合い。べロバの話が事実ならこの男、秋山蓮はどれだけ過酷な戦いをして来たのか想像も出来ない。
だが彼が戦った理由、そして身を挺して病院を守る人間が悪人とは思えない。志は恐らく自分と同じ。
ゲームとしてではなく、自分自身の意思で人を守りたいと思う強い意志を祢音は蓮から確かに感じ取っていた。
蓮も祢音の詳しい家庭事情は知らない。最初に出会った頃の彼女は人間と戦う事に慣れてない節が有ったが、今の彼女の目はその頃の軟弱さを全く感じない。
守りたい者を絶対に守る。その感情が直に伝わる強い目だ。
「だから、一緒に戦いませんか?」
「....ああ。そうだな」
蓮が小さく笑みを浮かべるのを見て祢音の表情も和らいだ。正直幾ら新しい力を手にしたと言えどあのべロバと一人で戦うのは心細かった。一度は敵同士だったとは言え歴戦の戦士が味方になってくれるほど心強い物は存在しない。
二人が共に戦う決意をする、が。
「危ない!」
何かに気が付いた蓮は咄嗟に祢音を庇いその場を離れると、先ほどまで二人が居た場所で爆発が起きる。
気が付くと瓦礫に埋もれていた仮面ライダーべロバが起き上がりレーザーレイズライザーを構えていた。
「何処までもムカつく女ね、ナーゴ!」
散々コケにされたが故にすっかり憤慨したべロバは荒れた口調で再度レーザーレイズライザーを発砲。蓮と祢音は急いで建物の陰に隠れやり過ごす。
「お前もその男も愛だの家族だの、古代人如きが下らない理由で楯突くんじゃないよ!」
しかし隠れていても被害が広がる一方だと考え、祢音は陰から出て堂々と正面に立ちべロバを睨んだ。
「下らなくなんかない!言ったでしょ、アンタの為にこの世界が存在してるんじゃないって!」
「黙れ!何度もデザグラで作り替えられた世界に住んでる癖に。お前達は所詮アタシら未来人のゲームの駒なのよ!」
「何が未来人だ」
今度は蓮も前に出てべロバに物申す。
「さっきから聞いてればゲームゲームと。お前みたいに幼稚で命の重さすら理解出来ない奴が蹂躙する未来なんか、世界が滅んだも同意だ」
「.........ナイト、お前だってそうだったでしょう? 嘗ての戦いのゲームマスター、神崎士郎は最初からライダーの願いを叶える気なんか無かった。全ては自分の妹を救う為の嘘だったのよ」
「え....」
行き成り聞かされる衝撃の真実に戸惑う祢音。自分がやってきたデザイアグランプリの運営は少なからずオーディエンスを盛り上げると言う名目も有るエンターテイメントショーであるが私利私欲でデザグラを利用する連中も居た。
だが蓮が行った戦いの主催者はそれとは全く違う、辛い事情が有る様に感じた。
ゲームではなく、自分の願いを掛けた人間同士の壮絶な命の奪い合い。一体どれほど過酷な戦いをして来たのか祢音には想像もつかない。
「最後は歴史がリセットされ、戦いが無かった事にされた。結局すべてが茶番化、お前達はゲームマスターの手の内に踊らされただけだった。これの何処が駒じゃないってのよ!?」
そんな凄まじい過去を持つ蓮を嘲笑う様に捲し立てたべロバだったが、蓮は「ふんっ」と鼻で笑い飛ばす。
「にわか知識だけでよくもそう偉そうになれるな?」
「........はあぁ?」
「お前は何も解っていない。確かに神崎は俺達を利用していた。だが奴が戦いの無い歴史に変えたのは一人の馬鹿の想い、そして優衣の必死な気持ちがようやく届いたからだ」
今蓮の脳裏に全ての真実を知り必死で兄を止めようとした神崎優衣、
そして何処まで真っすぐで底なしのお人好し。一々首を突っ込むせいで時には自分の行動にも疑問を持ち悩みながらも最後は答えを見出した馬鹿な男の顔。
彼の存在が自分を含めどれだけ沢山の人間に影響を齎した事か。
奴がライダーバトルに参戦しなければ、神崎は今でも戦いを続けてたかもしれない。
幾度となく衝突し合う事もあったが彼の顔を思い浮かべる蓮の顔は和らいでいた。
それこそ腐れ縁、長年の友人を思い浮かべる顔である。
「そして、あの戦いでしか解らない事や出会いも山ほどあった。
辛い事も確かに有ったが、俺はライダーになった事を後悔していない。あの戦いがあったから今の俺が居る。当事者でもない外野に何と言われようと、その気持ちは決して変わらない」
「そんな思い出、記憶も歴史も変えてしまえば簡単に消えるのよ!」
いい加減口を聞くのも面倒になって来たべロバはレーザーレイズライザーを構え再び臨戦態勢をとった。
「何処までも人の人生を弄ぶ気か。ならお前を叩き潰す...徹底的にな!」
蓮が意を決した、その時である。
彼の持つカードデッキが突如眩い光を放つ。余りの眩しさに目を覆うが光は直ぐに収まった。
気が付くつくと、カード収納分から何やら光が零れている。
蓮はその光る何かを取り出す。光の正体は何時の間にか挿入されていた一枚のアドベントカードだった。
「これは....」
蓮は勝利を確信した。荒ぶる風を背景に黄金に輝く片翼が描かれたカード。巨大な敵を倒すのにうってつけのカードだ。
「行くぞ」
「はい!」
蓮の前に正方形の光の鏡が現れ、蓮はそれに向けてカードデッキを翳し腰回りにVバックルが装着される。
祢音もデザイアドライバーを腰に装着、ファンタジーレイズバックルをセットし蓮と共にポーズをとる。
『変身!』
掛け声を合わせ、祢音はファンタジーバックルに付けられた八角星の入力装置装置トゥインクルケインを回す。
蓮はVバックルにカードデッキを装填する。
《 FANTASY 》
二人の体に金色の光が集まり、祢音は再び仮面ライダーナーゴ・ファンタジーフォームへ、
光の鏡からダークウィングが飛び出し、蓮は仮面ライダーナイトへと変身を遂げた。
更に変身し終えたナイトは直ぐに先ほどの黄金の翼が描かれたカードを引き抜く。すると周りに凄まじい強風が吹き荒れ、剣型の召喚機ダークバイザーが剣と盾が一体になった召喚機ダークバイザーツバイに変化。
シールド部分のスロットにカードをセット。
《 SURVIVE 》
そしてダークバイザーツバイからダークブレードを勢いよく引き抜いた瞬間、鏡が割れるかの様にナイトの姿が一瞬で変化した。
ナイトの進化形態、ナイトサバイブ - 疾風 - へと。
「何ですって....」
ナイトの想定外の変化によりたじろぐべロバ。
ナーゴファンタジーとナイトサバイブ。二人のライダーがべロバを見上げそれぞれ構える。
静寂の最中、ナーゴFのデザイアドライバーの音声が、第3ラウンドのゴングを鳴らした。
《READY....FIGHT!》
真っ先に動いたのはナーゴファンタジーとナイトサバイブの二人だ。
ナーゴFはナイトSの前に駆け出しファンタジーエフェクトによる剣を幾つも作りべロバに向けて飛ばした。
べロバはレーザーレイズライザーで大量の剣を撃ち落とす。だが飛び道具が有るのはナーゴだけではない。
《SHOOT VENT》
カードを装填したナイトS。彼が持つダークバイザーツバイがクロスボウ型の武器「ダークアロー」に変形。太陽光のエネルギーによる光の矢を乱射する。
多方向からくる飛び道具の雨。べロバはレイズライザーを構え前方に光のバリヤーを発生させた。
レーザーレイズライザーは理想の自分を自由にコーディネイト出来る高次元なシステムが備わっている。
「メタレーザー」と呼ばれる使用者のデザイン力を付与したレーザーを発振し、これを応用すればバリヤーの様な使い方も出来るのだ。
飛び道具による攻撃は防げた。だが・・・・
「ええい!」
「ぐあぁ!」
ナーゴFがバリヤーを透き通って一気に距離を詰め、巨大な鉤爪でべロバの腹部を引っ搔いた。
ナーゴファンタジーフォームの真骨頂、物質透過能力である。
べロバが幾ら巨大で強力なパワーを有しても、ナーゴFが任意に能力を発すれば物理的な攻撃を当てる事はほぼ不可能である。
美しいハーブの音色と共に可憐に光の剣を出現させ、何度も追撃を仕掛けるナーゴF。しかしまだ動ける程の体力は十分にあったべロバは直ぐ距離をとった。等身大のプレミアムべロバよりも頑丈さは巨大なライダーべロバの方が上の様だ。
何とかやり過ごそうと空を飛び始めるべロバだが、
《ADVENT》
『キュィィィィ!』
ナイトの契約モンスターであるダークウィングの進化形態、ダークレイダーが空から飛来する。そしてナイトSは高くジャンプしダークレイダーの上に乗り、その場でダークバイザーツバイにカードを読み込ませる。
《TRICK VENT》
再び分身技であるシャドーイリュージョンを発動。しかし病院内で使った物と違い、今度はダークレイダーも一緒に分身しており、ナイトSが乗ったダークレイダーの大群が四方八方からべロバに体当たり、そしてダークブレードによる連撃を繰り出す。
猛攻を喰らい落下していくべロバだが、地上ではナーゴFが待機していた。
地面に着地する瞬間を見計らって、ナーゴFは助走をつけて走りだし、足裏に光のエフェクトを纏ってべロバに豪快な飛び蹴りを喰わらせた。
「ぐあああ!」
吹き飛んだべロバは轟音と共に地面に着地するも膝を着いてしまった。着実にダメージが通ってる証拠だ。
「派手な手品だな?」
「ナイトさんこそ」
一旦合流し軽口を飛ばし合うナイトSとナーゴF。べロバはゆっくりと立ち上がりながら二人を睨みつける。
「とんだ滑稽ね....自分の幸せの為に他人を蹴落とそうとした奴らが、今更ヒーローぶって....」
「関係無いよ!どんな過去が有っても、人は変わろうと思えば変われるんだから!」
「うるさい!大体ナイト、アタシは知ってるのよ。お前がデザロアで何を願ったか、デザイアカードに"全てを破壊出来る力"と書いた事をね!」
「え!?」
ナーゴFは仮面の奥で目を丸くしてナイトSを凝視した。べロバの言った事は本当である。
デザグラやデザロアはゲームを開始前に参加者がデザイアカードと呼ばれるボードに己の願いを書き記す。秋山蓮はデザイアロアイヤル参加時にデザイアカードに「全てを破壊する力」と書いたのである。
彼の過去からしてとても似つかわしくない願いと感じたナーゴF。
だがナイトSは声色を一切変えず「ああアレか」と鼻で笑った。
「アレは適当だ」
『適当!?』
思わず声がシンクロするべロバとナーゴF。
「はなっから訳の分からんゲームなんぞ興味は無かった。まさか本気で願ってると思ったのか?」
「......」
「なら間抜けも良い所だ。お前達がどれだけ進んでるのか知らんが、所詮世代で人を見下す奴の御頭なんぞたかが知れる」
「貴っ様あー----!」
ナイトSの一言でべロバの怒りは頂点に達する。
散々見下してきた古代人にここまでコケにされたのだ。今ここで二人を八つ裂きにしたかった。
2人に向けて再びレーザーレイズライザーを乱射する。光弾は地面に直撃し爆発。ナイトSはバックステップで回避し、ナーゴFは物質透過能力で一切ダメージが無い。だがふいに自分の体が一瞬で軽くなる感覚を覚える。
「え!? わあああ!?」
気が付くとナーゴFは凄まじい速度で空高く上昇していく。べロバがナーゴFの居た地上の重力を変更したのだ。
「物質は透化出来ても重力の影響は受けるでしょ? そのまま宇宙にでも飛んで行くが良いわ!」
「! ダークレイダー!」
『キュイィィィ!』
すかさずナイトがダークレイダーを呼び出すが、ナーゴFの救出しようなどお見通しなべロバはすぐさまレーザーレイズライザーの銃口をダークレイダーに向け発砲した。
空中に投げ出されたナーゴFの位置とダークレイダーの進行方向を予測すれば容易に命中出来る。
そう思った。だがどういう訳かナイトレイダーは直接ナーゴFの位置まで接近する事は無くその場で待機。そしてナイトSは再び召喚機にカードを入れ込む。
《BLUST VENT》
ダークレイダーの両翼に装備されたタイヤ「ホイールブラスター」が高速回転、巨大な竜巻を発生させ、ナーゴFとべロバを巻き込んだのだ。
暴風の中耐えるべロバ。
「馬鹿にするな、こんな竜巻如きでアタシが...」
「やああー---!」
「っ!?」
だが思いもよらない光景が飛び込む。竜巻の中からナーゴFがファンタジーエフェクトで作り上げた大型の鉤爪を前方に構え、きりもみ回転しながら突っ込んで来たのだ。懐まで到達した鉤爪はべロバの装甲をゴリゴリと削っていき耐え切れなくなった巨体はやがて宙に放り出され轟音と共に地面に激突した。
「があああ!」
「やった、合体技成功♪」
「決めるぞ」
自分でも驚く程息の合った連携に思わずはしゃぐナーゴFを他所に、ナイトSは切り札を発動する。
《FINAL VENT》
再び上空からダークレイダーが飛来。
するとダークレイダーが一瞬でバイクへと変形し、それに飛び乗るナイトS。
地上を疾走するダークレイダーを操作しながらナイトSがナーゴFに呼びかける。
「乗れ!」
「え!?」
「早くしろ」
「ちょ、ちょっと待って......えい!」
急な無茶ぶりに戸惑うナーゴFは疾走するダークレイダーの後ろ部分に無理やり飛び乗った。後部座席など無い車体なのでさながらサーフィンの様に立ったままの乗車だ。
普通ならバランスを崩すところだが、彼女は足元に魔法陣の様な光「サークルエフェクト」を展開する事で転倒せず姿勢を保っている。
「...許さない....絶対.....ぐっ!?」
すっかり弱りきり、よろめきながら起き上がるべロバ。そこへダークレイダーから青色の光線が発射され、べロバに命中。金縛りの様に動けなくなる。
長距離から凄まじい速度で接近してくるダークレイダーを操作するナイトSとナーゴF。決め技の準備は整った。
ナーゴFはダークレイダーの背後には巨大なサークルエフェクトを展開、更にはファンタジーエフェクトで作り出した無数の光の剣が浮遊する。
やがてダークレイダー全体が大きく広がったマントに覆われ弾丸の様に超加速、「疾風断」を発動。
その先端には透過能力で透き通ったナーゴFがライダーキックの体制で前に出ている。
そのまま前方に光の剣が一点に集結、まるでドリルの様に高速回転しながらべロバへと突っ込んだ。
《FANTASY STRIKE!》
「やあぁぁぁぁ、はあああああっ!!」
二人の合体技はべロバの屈強な横腹を貫く。
攻撃が届く直前でべロバは金縛りを強引に解き、寸での所で回避し致命傷を免れた。
攻撃が終わり背後に停車するダークレイダーとナーゴF。
振り返るナーゴF。彼女の目には全身から火花を散らし苦しそうに傷口を抑えてる仮面ライダーべロバが見えた。左横腹が抉れキュービックメタマテリアルの残骸がまるで流血の如くダラダラと流れ落ちている。
直撃でなかったがそれでも勝敗を決するには十分過ぎるダメージである。
最後にナイトSは視線を一切合わせないまま声をかける。
「最後に、一つ訂正しろ。さっき俺たちの戦いがハッピーエンドだと抜かしたな?」
「.....あ....がぁ.....」
話を振られるべロバだが真面に返答する力は無い。全身から飛び散る電気や火花の勢いが加速していく。
今、秋山蓮の脳裏には一つの場面が浮かんでいた。
嘗ての戦いが最終局面を迎えた頃、全ての真相を知った一人の女性。
最後まで他人の命を貰う事を拒み大粒の涙を流しながら、兄と自分達の目の前で消滅ていった。
ずっと行動を共にして来た仲間。
歴史が変わっても彼女とその兄は二度と自分達の前に戻る事は無かった。
「解った様な口を聞くな....二度とな...」
「ぐあああああああ!」
遂に限界を迎え、盛大に爆発するべロバのボディ。
変身を強制解除されたべロバは頭から流血する程満身創痍となり、捨て台詞を吐きながら退散する。
「...覚えてなさい....」
「..........」
巨大な爆炎を背後に静かに俯くナイトS。
彼の物悲しそうな背中から何か辛い出来事を察したナーゴFは、何も言わずその場で佇むのだった。
戦いを終えた蓮と祢音は徒歩で病院へと向かっていた。中庭に着いた頃、祢音は改めて蓮にお礼を言った。
「今日はホントにありがとうございました。お陰で父と母も守れました」
「礼は良い。勝手にやった事だ。にしても、まさかあの鞍馬財閥の令嬢が仮面ライダーだったとはな。色々大変そうだが?」
「まあ、確かに今はちょっと複雑な事になってますけど....それでも家族一丸となって乗り越えていきます!」
「そうか...」
家族一丸、と言う言葉に微かに反応する蓮。自分も"アイツ"もあまり碌な家族の思い出が無かった故にこうして面と向かって家族を好きと言える祢音が少し眩しく見えた。
すると祢音が訪ねてくる。
「あの、一つ聞いても良いですか?」
「何だ?」
「デザロアでの願い、本当に適当だったんですか? いやその...べロバの話からして、貴方みたいな人が冗談でもそんな物騒な願いを書くのかな?って...」
「ゲームに興味が無かったのは事実だ。それにあの時は周りの参加者は危険なヤツばかりでな。下手に甘い事を書くと真っ先に狙われる危険性が有った」
祢音は思わず「ああ、そう言う事か」と呟いた。
確かにあのデザイアロアイアルでは明らかに危なそうな雰囲気を醸し出すライダーが何人か参加していた。あれ等とチームを組めと言われたら自分は参加を拒否するかもしれない。
これまでの話の流れからして祢音は蓮がデザロアに参加した当時の本当の理由に辿り着く。
「でもそれって、あの人を助ける為だったんですよね?...」
デザロアの終盤で、蓮が変身したナイトはあの黒いライダーに必殺技を食らわせた。その際、黒いライダーの中から一人の赤いライダーが現れたのだ。 その際の二人の会話からしてナイトがあの赤いライダーを助けた様に自分は思えた。
問われた蓮は深い溜息を付く。
「全く、何処までも世話の焼ける馬鹿でな。ヤツのせいで俺は何時も骨折り損だ。その内また借金を上乗せしてやるか」
色々と愚痴を垂れてはいるが、蓮の顔は穏やかだ。まるで凸凹な戦友を語るかの様に。
その表情を見ただけで、祢音は安堵の表情を浮かべる。危険を冒してまで誰かを助けようとしたのだ。改めて彼は悪い人間では無いと感じる。
「良い友達なんですね」
「さあな」
ぶっきらぼうに吐き捨てる蓮を見て祢音は思った。
きっと自分では想像も出来ない程、過酷な戦いを生き抜いただろう人間が今はこの様な表情が出来る。
先ほどの戦いで彼自身が述べた様に、秋山蓮にとって過去の戦いは決して無駄ではなかったのだろう。
祢音の中で改めて一つの決意が形付いていく。この世界を守りたい、と。
「秋山さん。べロバ達の事、私たちに任せてくれませんか? これ以上この世界をあんな奴らの好きにはさせませんから!」
悲しく、苦難を乗り越え今を掴んだ秋山蓮達の戦いを決して無駄にしない為に。
面と向かって訴えかけるその真剣な表情は祢音の意思の硬さがひしひしと伝わり、蓮にとってもとても頼もしく見えた。
「....世界はもっと幸せになる、か」
「え?」
「前に俺と戦った時そう言ったな。お前にも大事な人が居るなら、無茶はするなよ」
「....はい!」
蓮は期待の笑みを向けて祢音と別れた。祢音が小走りで向かった先には点滴スタンドを持った鞍馬光聖と妻の伊瑠美が笑顔で待ち構えていた。
「お父様、お母様!」
あれが祢音の守りたい者なのだろうと、無事を分かち合う家族を見送る蓮。
そして鞍馬家が病院内へ戻っていった所で彼は声を発した。
「...そろそろ出てきたらどうだ?」
「気づいてたか。流石は歴戦の戦士だ」
すると物陰から顔の整った一人の青年が現れる。蓮はこの青年を知っている。
デザイアロワイヤルで一戦交えた仮面ライダー、ギーツこと浮世英寿だ。
英寿はずっとナーゴとナイトの戦いを裏で見守っていたのだ。
「悪いな。俺の力が完璧なら、もっと早くアンタをパワーアップ出来たのに」
すまなそうな表情の英寿。先ほどサバイブのカードが突然現れたのは彼の創生の力による物だったのだ。
英寿は鞍馬光聖のIDコアを創生の力で祢音用に作り替える為に来たのだが、そこへ偶々見かけたのが蓮だった。
デザロアが終了して以降、蓮はカードデッキを所持していなかった。あの時彼が持っていたデッキはコラス率いる運営がデザロア用に開発した特別仕様だったのである。
元々デザイアライダーのドライバーは世界を作り替える度に運営のナビゲーターが参加者に配りに行く方式だ。
それはデザロアも同じであり、参加するゲームが無ければデッキが配られる筈も無く、記憶はそのままで蓮は今日まで普通に暮らし続けていたのだ。
英寿から謝罪の言葉を聞き、蓮は小さく笑って返した。
「ホントにそれだけか? お前ほどの実力なら直ぐに加勢する事も出来ただろ」
「そう言うなよ。アンタが望んだんだぜ。自分の手で守りたいってな」
病院が襲撃された際、騒ぎの中で偶然再開した蓮と英寿。
再び力を欲してると感じた英寿はその場でカードデッキを作り出し蓮に手渡した。
「どうやら誰かの望む力が強い程、俺の創生の力が高まるらしい。ナーゴも言ってたが、べロバ達の事は俺たちに任せてくれ。アンタ達が戦い抜いたこの世界を、絶対に幸せにしてみせる」
「任せて良いんだな?」
「ああ。 幸せと不幸の総量も関係ない。人が願う分だけ幸せになれる。それが俺の目指す理想の世界だ」
願った分だけ幸せになれる。口だけならかなりの奇麗事だ。だが英寿の表情は凄まじく真面目だ。それだけでなく、この男からは何やら自分達とは次元が違う特別な風格を感じるのだ。
創生の力が何なのかは簡単な説明しか聞かされてないが、目の前で行き成りカードデッキを生成出来る男である。その内、神様にでもなってしまいそうな、妙な説得力を感じてしまう。
「っふ、お前もあのお嬢様も面白い奴等だな。是非見せてみろ。お前たちの目指す幸せな世界って奴を」
「ああ。任せとけ」
そう言いながら英寿は右手で狐の頭を形取りながら去って行った。
長く生きてれば色んな事が有るなと、まるで老人みたいな感覚を蓮は直に味わっている。
最初は鏡の中の世界にモンスター、そして人間同士の命がけの戦い。それから20年後、今度は未来人が開くデスゲームだの神の力と来たものだ。
ふと、空を見上げた。あんな騒動が起きても空は変わり無く快晴である。
(また世界が騒がしくなったな…優衣…)
思い浮かべるのはかつて行動を共にした、もう戻る事のない女性、神崎優衣。
彼女の想いが届いて、13人のライダーバトルは終結した。
しかし自分たちの戦いは終わっても、世界に目を向ければ別の戦いを求める連中は幾らでも現れる。
今だってべロバ等未来人の様な奴らもいれば、ギャングライダーやらで世界が混沌としてる。
しかしギーツやナーゴの様に頼もしい連中が居るだけでも未来はまだまだ捨てた物じゃない。
もしかすれば、あの何にでも首を突っ込まないと気が済まないお人好し馬鹿の様なライダーが他にも居るかもしれない。
そうであれば、この世に居ない優衣も安心できるだろう。
そんな事を考えながら蓮は病院の方へ足を進めた。
院内へ入ると、看護師の女性が心配そうな表情で佇んでいた。
「恵里!」
女性の名前を呼ぶ蓮。
「蓮!」
蓮の無事を確認し安堵の表情を浮かべ駆け寄る女性。
互いを抱きしめた時、二人の指に填った指輪が優しく輝いた。
- fin -
ベロバが大分小物化してる。ナーゴファンタジーやナイトサバイブが相手だから致し方無し?
所々「コイツそんな事出来るか?」みたいな描写が多いですが、令和ライダーの固有能力はかなり豊富で幾らでも応用が利きそうなので
ここからは本作の独自設定および独自解釈のまとめです
・この世界の龍騎組はTV版龍騎本編とほぼ同じ結末を迎えている。
13人のライダーバトル終了後世界が書き変わり、ミラーワールドは閉じ、神崎兄妹が既に故人となり戦いのない世界となる(あくまで龍騎ライダー同士の戦いが終わる)が、真司と蓮等一部の人間は後々記憶を思い出しそれから20年以上の長い付き合いとなる。
・MOVIEWバトルロワイヤルで蓮、浅倉、鏡真司が所持していたデッキはコラス等運営側がデザロワ様に作成した特別使用であり、変身演出が龍騎本編と違うのはこの為。特別産デッキの影響で契約モンスターも現実世界を自由に活動出来るようになった。
(じゃあ龍騎は? と言われると....考えてません...)
※劇中蓮が「何時までも眠ってれば良いのに」とぼやいてたので、
MOVIEWバトルロワイヤル浅倉はコラスにデッキを渡されたので記憶を思い出し再び戦闘狂へ戻る。
その後は知りません。
・本来ミラーワールド内でしか使用できないライドシューターも特別仕様であり現実世界でも使用可能。
・デザイアロワイヤルはべロバ達オーディエンスも裏で視聴していた。
・鞍馬光聖が入院している病院で小川恵里が看護師をしている。ここはRIDERTIME龍騎が元ネタ。
・仮面ライダーアウトサイダーズ、RIDERTIME龍騎と直接的な繋がりは無い。
などです
因みに蓮が言う「ライダーになった事を後悔してない」と言う台詞は井上正大さんのとある動画でゲスト出演した蓮役の松田悟志さんの言葉が元ネタ
松田さんは事務所から「ライダーに出演した経歴は今後隠すか?」と聞かれた際、自分は何一つ恥ずかしい事はしてないと言う事できっぱりと「隠さない」と答えたそうです