ギーツ&龍騎IF   作:巽★敬

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今回は特別編として、 龍騎vsタイクーン編の中のとある人物に焦点を置いた話となります。
「いや、最終回近いならさっさと話進めろよ」と思う方はすみません。
一応かなり以前から構想は練っており物語のタイミング的にも今がベストだと判断したので。
何よりも久々に筆のノリが良かったのが大きいです。


EXTRA 「乱入者」

 

少し時を遡り、世紀末ゲーム末期の世界。

 

女神に覚醒寸前のツムリを賭け、

タイクーン対ギーツによる死合いが間もなく始まろうとしていた。

 

街外れに位置する屋敷。

ここはデザイアグランプリ運営が管理するアジトの一つだ。

上位階級のオーディエンスも招ける様、外装内装問わず無駄に豪勢にしてある。

屋敷内の一室にて一人のスーツ姿の男が自らのピアスを弄りながら、拘束されたツムリを威圧的に眺めていた。

 

彼はジット。

この世紀末ゲームの管理を任されたゲームマスターであると同時に、

ツムリを女神に覚醒させる任も請け負っている。この世界で死亡した桜井沙羅を餌として景和にギーツ討伐を嗾けた人物である。

 

「ギーツのバットエンドはもう直ぐだ。戦いが始まったら、ヤツの最後を見物しに行くぞ」

 

不敵な笑みを浮かべるジット。

このまま桜井景和が浮世英寿を始末すれば、ツムリは生きる希望を失い意思が消滅。完全な女神として覚醒する。その為には英寿の最後を直接見せつけ更なる絶望に突き落とす方が手っ取り早いのである。

逆に景和が死んでも極上のバッドエンドを望むオーディエンスから高評価を取得し、ツムリも自らが戦いの切欠になった責任を感じ絶望は免れない。

どっちに転んでも自分達運営には好都合な流れだ。

 

「.......いや.....」

 

ツムリは消えそうな声で震えた。

今の彼女はすっかり憔悴しきっている。女神になる代償は意思の喪失。

女神化の進行により彼女は意志の大半を失い、恐怖と悲しみの感情が全面に出ている。

自分が自分でなくなってしまう恐怖、誰かを不幸にしてしまう不安、英寿を失う恐怖、その英寿を心優しかった景和が手に掛けてしまうかもしれない悲しみ。幾つもの負の感情が押し寄せ一粒の涙を溢した。

 

ジットは落ちる涙を空かさずキャッチすると、涙は忽ちガラスの結晶に変化。

覚醒前とは言え創生の女神から作られた結晶。何かの役に立つかもと思いポケットに収める。

 

「お前に拒否権など無い」

 

無慈悲な言葉を突きつけた時。

彼のスパイダーフォンにケケラから着信が入り対応する。

 

『ジット、予定外の事態だ。ちょいとコイツを見てくれ』

 

スパイダーフォンに小さく映像が映る。

そこにはギーツではなく、本来の予定にない見知らぬ赤いライダーとタイクーンブジンソードが争う姿がリアルタイムで移されていた。

 

『奴は仮面ライダー龍騎。かつてデザグラとは違う、己の願いを掛けたライダーバトルを止めようとした正義のライダー。変身してるのは城戸真司。桜井景和とは以前行われたデザイアロワイアルで面識があった人物だ』

 

ケケラの説明にジットも記憶を巡らせる。

確かにコラスと言うゲームマスターが開催したデザロワに存在が確認されている。

運営はデザグラの参加者を選別する為に過去の歴史のあらゆる人間のデータを記録してある。

勿論、城戸真司の情報も運営のデータベースに記録済みだ。

 

鏡の世界の力を使うライダー、だったか。

少し前にベロバは似た様なライダーと一戦交えたと聞いた。

現在彼女はその戦いの傷が余程効いたらしく、戦闘だけは不能状態である。

 

これから世紀末ゲームのトリを飾る試合が有ると言うのにタイクーンは何をしてるんだ?と、

ジットは眉間の皺を更に深めた。

 

「......」

『それでだ、他のVIPはあの戦いを" 余興として楽しみたい "って言ってるんだが、どうするよ?』

「他のVIPか。お前も観戦したいんじゃないか?」

『へへ、勿論。悲しみを背負い心優しいと偽るライダー対、人の為に戦い助言をくれた正義のライダーによる汗と涙の泥沼バトル! こんな対戦カードはそうそう拝めねぇ』

 

図星を付かれ陽気に薄情するケケラ。

推しのライダーが関わってる事も相まって、如何にもこの男が好みそうな状況だがジットは顔を顰め質問し返す。

 

「つまり、勝敗が決するまで俺は手出しはするな、と?」

 

ゲームの進捗を乱す者を排除するのはゲームマスターの仕事だ。たが今回は一部のvipがそれを拒んでいると言う。ケケラはその代表として懇願しているのだ。

だがあの二人の戦いが長丁場にでもなればギーツとの戦いに響いてしまう。

公平なバトルを望むオーディエンスの反感を買いかねない。

 

因みにこれらの会話は背後のツムリには聞こえない様、配慮した声量と音量で会話している。

下手にギーツとの戦いが遠のくとなれば女神のなり掛けが妙な希望を抱きかねない。

意思がほぼ消滅したと言っても念の為である。

 

「ギーツのバットエンドが待ちきれないオーディエンスも居るんだぞ?」

『そのギーツがまだ見えないんだよなぁ....』

 

ケケラはばつの悪そうな声を送る。

彼の言う通り、まだ時間があるとは言え決戦の場に英寿の姿はない。

そろそろ到着しても良い頃だと言うのに。

あの英寿がツムリを見捨てて戦いを放棄するとは考え難い。

 

『まあ、向こうの目的は大凡察せるぜ? もしギーツの代わりに奴が来たとなると....』

「結託している、という訳か」

 

龍騎の思惑を結論付けるジット。

情況からしてその可能性は十分に有る。記録された城戸真司の経歴や性格からして大方、桜井景和を説得にでも来たのだろう。

英寿達にこれ以上仲間が増えるのは面倒でしかない。

だが運営としてオーディエンスの需要も無下にも出来ない。

龍騎とタイクーンの戦いは思った以上に白熱しており、ここで横やりを入れたら妙な顰蹙を買う可能性もある。ならばゲームマスターに傍観を求めた者に後始末を任せよう。

責任の経緯を明確にすれば、ギーツとのバトルを期待したオーディエンスも少しは気が晴れる筈だ。

 

「良いだろう。あの2人の戦いも正式にゲームに組み込もう。だが決着が着き次第、お前達が龍騎を始末しろ。公平な戦いを乱した粛清としてな」

『はいよ。そんぐらいはしてやるよ』

「取り巻きも来ると面倒だ。ジャマトを貸してやる。ついでにダパーンも連れてけ」

『ギーツが邪魔しに来た場合は?』

 

「その時は、俺が手を下す」

 

『よーし、決まりだな!』

 

ゲームマスターの許可が下り、ケケラの上機嫌な声と共に通話は切れる。

これでオーエディエンスの間では龍騎とタイクーンの勝敗を賭け事に使い、ケケラはタイクーンにバックルを支援するだろう。

ジットは若干不機嫌である。本当はさっさと女神を覚醒させたいが致し方ない。

ダパーンはべロバが出れない代わりだ。彼なら容赦無く人に手を下せるし、

応援するオーディエンスへのサービスにもなる。

 

「余計な真似を....」

 

予定を乱した龍騎にポツリと不満を零した時だった。

突然側で「カチャリ」と何かが外れる様な音が聞こえ視線を移す。

するとどう言う事だろう。

 

つい先程まで拘束具が何時の間にか外れており、ツムリがその場で座り込んでいた。

 

今この部屋にはジットと彼女の2人しか居ない。

ツムリを繋げていた鎖は創生の呪縛と同等の力を使用している。此方の意志が無ければ簡単に解除など出来ない筈。

 

「お前、どうやって拘束を。何をした?」

「わ.......私は......??」

 

ツムリも困惑した様な表情を浮かべる。

どうやら彼女の意思ではないらしい。では何故?

ジットがツムリに近付こうとした。

 

「ツムちゃん逃げろぉっ!」

「!!」

 

すると、僅かに開いたドアから晴家ウィンが突然飛び出しジットに掴みかかった。驚くツムリに対しウィンは取っ組み合いになりながら叫んだ。彼は運営が英寿達に注意を向けてる隙にツムリを救出せんと密かに侵入していたのだ。

 

「行けツムちゃん、俺に構わず英寿達の所へ!」

「ウィンさん...でも....」

「急げ!世界にはお前が必要なんだよ!」

 

ウィンに諭され、ツムリは急いで部屋を出る。

暫しの間、ウィンは生身でジットと格闘戦を仕掛ける。本当は変身すれば楽なのだがどうも屋敷には

反抗を防ぐ為にデザイアドライバーを起動すれば直ぐに反応する罠が仕掛けられてる事を知った。

生身でアジトに乗り込むなど自殺行為でしかないが今はそんな事は言ってられない。

 

「虫が迷い込んでたか。まさかさっきのはお前の仕業.....な訳ないか」

「っへ、何言ってんのかサッパリだぁ!」

 

一瞬ツムリの拘束を解いたのがウィンだと言う考察をジットは直ぐに打ち消した。

通常の人間が創生の呪縛を解除出来る訳がない。

問いの意味など知らず再度殴りかかるウィンだが直ぐに回避される。

生身の格闘センスはジットに軍配が有り、ウィンは体を床に叩きつけられ最後は警棒で頭を殴り飛ばされた。湿疹しつつも気を失う直前に見せた「ざまあ見ろ」とで言いた気な笑みがジットの機嫌を逆なでする。

 

「逃がすものかよ」

 

侵入者を甚振りたい衝動を抑えつつ、ジットは直ぐにツムリの追跡に向かった。

折角覚醒しかけてる女神をみすみす手放す気はない。

部屋を出てしゃれた長い廊下を突き進む。

 

その時だった。

 

ジットの側にあった窓ガラスが突如一人でに割れてしまう。

割れたガラス片はそのまま派手に飛び散りジットに降りかかる。

 

「!」

 

咄嗟に顔を腕で覆い後ずさるジット。

しかし後ずさった直ぐの窓ガラスまで派手に粉砕。

遂には廊下中の窓ガラスが一斉に割れ、破片が床一面に散布された。

 

何事だ?と、顔から腕を離す。

そして眉間の皺を更に深め前方を睨みつけた。

 

数メートル先に奇妙な男が立っていたのだ。

 

夏が近いと言うのにロングコートに身を包み頭には深くフードを羽織っている。

その男から放たれる異質な感覚は普通の古代人とは全く異なる物だった。

何よりもフードの中が明朝にも関わらず異常な程薄暗く、

顔が全く識別出来ない点が不気味さに拍車を立てている。

つい先程まで廊下を歩いてた時はあんな人物は陰も形も無かった。

情況から察するに窓の粉砕は彼の仕業だろう。

 

「.......何者だ?....貴様は」

 

怪訝な表情で質問するジットだが、男からの返答はない。

 

「答える気は無い、か.....」

 

警棒を構え歩み寄るが、男はジットに向け手を翳す。

すると頭上から何やらカタカタと不快な音が響いた。

途端、天井に飾れたシャンデリアの鎖がひとりでに千切れジット目掛け落下する。

 

「!」

 

素早く後退し回避するジット。シャンデリアは轟音と共に床に激突。

 

「貴様ぁ......」

 

ジットは異様な力を持つ謎の人物に再び視線を移す。

何時の間にか、男の手には有る物が握られている事に気づいた。

そして自分の記憶の中からそれが何か思い当てる。

 

カードデッキ。

 

龍騎と同じく、デザロワにも参加していた鏡の力を使う仮面ライダーが使用するアイテム。

データによると、あのゲームには4種類のカードデッキが使用されたと記されている。

しかし目の前の男が手にしてるカードデッキはその何れにも該当しない、鳥類を思わせる紋章が描かれたデッキだった。

 

やがて前方に翳されたそのカードデッキは金色のオーラを纏い、男の手を離れ空中に浮遊。

一定時間宙を漂うと腰に現れた黄金のVバックルに吸いよせられる様に装填される。

 

〘変身........〙

 

直後、初めて声を発した男の体に黄金の虚像が何重にも重なり、

金色の鎧を纏う戦士の姿へと変貌させる。

 

 

仮面ライダーオーディンへと。

 

 

ジットは警戒心を一段と強め身構えた。

奴は何者なのか。少なくとも浮世英寿達の仲間とは到底思えない。

一切触れずに大量のガラスを粉砕、念力か何かでシャンデリアを落とす。

こんな異様な力を持つ仲間が居るなら普通の人間である晴家ウィンを共に向かわせる必要が無いからだ。

そもそも現時点では人間なのかすらも怪しい。

流れからして、先ほどツムリの拘束を解いたのもヤツの可能性が高い。

オーディンの存在は過去の古代人の戦いの記録に記されてはいた物の、コラスのデザロワであのカードデッキが作成された記録は無し。

運営とも関連が無い過去のライダーとなり突如現れる謎の人物。

 

一つだけハッキリしているのは、彼は明らかに自分を狙ってると言う事だ。

 

「......何が目的か知らんが、ゲームマスターに直接危害を加えるとは......覚悟しろよ」

《 ZILLION DRIVER ! 》

 

ジットは未来の技術で造られた金色のベルト・ジリオンドライバーを腰に出現させる。

デザグラ運営の中でも特に限られた者にしか持つ事が出来ない最高位の代物を

一介のゲームマスターであるジットが何故所有してるのか、それは後程記載する。

ドライバーを装備し終えると、天面の指紋認証装置「スティグマメトリクサー」に親指で触れた。

 

《 REGAD ACCESS 》

 

認証が完了し、待機音と共に彼の周囲に複数のオーディエンスアイが密集しポーズを決める。

 

「変…身…!」

《 GENERATE 》

 

掛け声と共にシリウスカードをジリオンリーダーに読み込ませると、たちまち周囲のオーディエンスアイが光となりジットと一体化する。

 

《 ENFORCEMENT OF VIOLENCE........REGAD 》

 

輝きが治まると、そこにはジットが変身した仮面ライダーリガドが姿を現した。

外見はスエルが変身するリガドΩとほぼ同一だが、仮面中央に位置するモノアイ・ロプスプレコグヴィジョンが閉じた状態である。

 

「................」

〘................〙

 

暫しの沈黙が流れ、睨み合った後先に動いたのはリガド。

勢いよく疾走しオーディンに殴りかかる。

が、拳が到達する前にオーディンは金色の羽を散らしながら一瞬にして消え去った。

 

「!」

 

直ぐに付近を見渡すリガド。そして背後の存在を感知し振り向いた直後、

オーディンは手を翳し何処からともなく金色の羽が大量に降り注ぎリガドを襲う。

羽の束と同時に謎の風圧が混じっており、リガドの体を大きく吹き飛ばしてしまう。

風圧は凄まじくリガドの体は高級屋敷二階の壁を突き破った。

瓦礫と共に受け身をとって地面に片手を付きながら庭に着地。

 

直ぐに立ち上がろうと顔を上げると、既に目の前にはオーディンが此方を見降ろしていた。

片手を振るい殴りかかるオーディン。リガドは片腕でガードしつつ再度拳を振り上げ反撃。

しかしまたもオーディンは消え空を殴る。

 

「何処へ行った.....」

 

周囲を見渡すリガド。

暫くして背後の気配に気づき足払いを繰り出す。オーディンは確かに居たが、三度消え去る。

 

体制を立て直した途端、直ぐ真横にオーディンの姿を確認。

だが視界に入った時点でオーディンは片手を翳しおり、彼の背後から再び金色の羽が複数枚飛んで来る。羽は一枚一枚がリガドのボディに接触と同時に次々と爆発。

両腕で防御し耐えながらも後ずさるリガド。

尚もオーディンは羽を飛ばし続ける。

 

「小賢しい!」

 

苛立たしく叫びながら、リガドは足元の地面に拳を叩き付けた。

既に屋敷の庭から外に出ているので地面は一般道路である。

よって地面を叩き割った反動で飛散したコンクリートが空中で羽を防ぐ。

全ての羽を防いだ後、リガドは一際大きなコンクリートの破片をオーディンめがけ豪快に蹴り飛ばした。

 

当然の如く姿を消して回避するオーディンだが、それを見越してリガドはジリオンドライバーのスティグマメトリクサーと言う部位を押し込む。

 

《 ACCELERATE 》

 

自分だけの時間を極限まで加速させる力、ACCELERATE

音声が響いた後、前方数メートル先にオーディンが姿を現した。

刹那、リガドは物の1秒に満たない超スピードでオーディンに接近。顔面を殴りつける。

 

〘っぐ!〙

 

ようやく一撃が入ったかと思いきやオーディンは直ぐに姿を消した。

暫し沈黙が入り周囲を警戒するリガドの頭上に音が響く。

 

《 SWORD VENT 》

 

音声が聞こえた途端、頭上からオーディンが太陽を背に降下して来た。

その両手には金色の双剣ゴルトセイバーをが握られ、着地と同時にリガドの胸を斬りつける。

 

「ちぃっ、舐めるなぁっ!」

《 READY 》

《 NINJA INFINITY 》

 

火花を散らしつつもリガドは手にニンジャバックルを出現させ、

ジリオンドライバーのグレートアセンブルに装着。

現れたニンジャデュアラーを両手に繰り出されるゴルトセイバーを防いだ。

両者は幾度と無く互いの双剣を激しくぶつけ合う。

機械みたく必要最低限な動きと瞬間移動を多用するオーディン。

豪快かつパワフルなファイティングスタイルと超高速移動で対応するリガド。

2人の戦いは人間の目では捉える事は不可能なレベルであり、正に異次元の戦いと呼ぶに相応しい。

 

暫くしてオーディンは地上から160メートルを超える超高層ビルの屋上・ヘリポートへと降り立つ。

戦いの流れでツムリを監禁していたアジトから隣街まで離れた距離まで来ている。

何時しか右手にはアドベントカードを読み込む鳳凰召錫ゴルトバイザーが握られていた。

 

ここで何か違和感を感じたかの様にオーディンは自らの左手を眺めた。

 

その左手からはほんの微量ながら粒子が湧き出ている。

 

〘くっ.....〙

 

先程まで精密機械の様な立ち振る舞いだったオーディンが、何か感情が籠った様に左手を握りしめる。

彼から洩れる声の意味は苦痛か、それとも焦りか。

真面に語らない限り第三者が読み取る事は難しい。

 

やがて背後にリガドが到着する。

超高層ビルなど驚異的な跳躍力を駆使すれば難なく飛び越えられる。

 

「鬼ごっこは終わりだ」

〘...........〙

 

相変わらず不自然なくらい無言を貫くオーディンは背を向けたままゴルトバイザーにカードを挿入した。

 

《 ADVENT 》 

「!!」

 

直後、直ぐ側に太陽でも出たかとすら思える程の光が周囲を覆った。

その眩しさは創生の女神が発する光と同等にも思える。

マスクのお陰で視界を奪う心配は無いのでリガドは光の正体を直視した。

 

視線の先には黄金の翼を広げた不死鳥。

オーディンの契約モンスター、ゴルトフェニックス。

 

姿が確認出来るや否や、鳳凰はその神々しい翼を一度羽ばたいた。

途端に竜巻かと思えるほどの風圧に襲われ、リガドの体は屋上外まで吹き飛ばされた。

 

直ぐに体制を立て直すべく、リガドは手元にブーストバックルを召喚させそれを発動させる。

 

《 READY 》

《 BOOST INFINITY! 》

 

直後、ビルの部屋からバイクモードのブーストライカ―が飛び出しリガドは座席の上に直立する形で飛び乗った。

エンジン部であるボンバーエグゾーストから炎を吐き出しながら、空中を走るブーストライカ―。

リガドは座席の上で跳躍するとヘリポートまで戻り、再度オーディンに超スピードの格闘戦を仕掛けた。

尚も瞬間移動で対応するオーディン。

 

途中ゴルトフェニックスが割って入ろうとしたが、そこへギーツモードに変形したブーストライカーが

金色のオーラを纏って割って入って来た。

 

普段英寿が使っていた物のコピーである。

 

使用するデザイアライダーによりフォルムが変化するブーストライカ―。

未知の敵相手にはとりあえずデザグラで勝ち星の多いギーツを模倣しぶつけるのが最適と言う結論に至った。ジリオンドライバーの機能によりあのブーストライカーには無尽蔵のエネルギーを送り込み強化している。金色のオーラがその証であり、簡単に落される代物ではない。

 

もう一度持ち前の格闘戦で応戦するリガド。

だが次第に劣勢を強いられ、遂には地面に膝を付いてしまう。

 

「ぐぅ!」

 

胸を抑え痛みに耐えるそぶりをしてると、オーディンがデッキから一枚カードを引き抜いたのが見えた。

 

鳳凰の紋章が描かれたカード。

ファイナルベントのカードである。

直感で何か大技が来る事を予期したリガドは空かさず新たなバックルを出現させる。

呼び出したのはビートバックルだ。

 

「させるかぁ!」

《 READY 》

《 BEET INFINITY! 》

 

バックルをドライバーに装備すると同時に手元に拡張武装であるビートアックスが出現。

 

《 METAL THUNDER! 》

 

素早くエレメンタドラムを2回叩き周囲に雷撃を落とした。

広範囲を対象とした雷撃はビル全体を感電させる程の威力であり、屋上全体で火花が飛び散った。

しかしこれも瞬間移動で回避したオーディンは空中で姿を現し、浮遊したままリガドの背後を見下ろす。既にゴルトバイザーにのスロットにはカードがセットされている。

 

(っふ....)

 

と、ここでジットは仮面の奥で不敵な笑みを浮かべる。

この時、オーディンは気づいていなかった。

何時の間にかリガドの片膝の装甲が消えている事に。

 

カードを読み込ませようとカバーを閉じる直前、

頭上から一機の球型ドローンが急速接近しオーディンの頭部に強制装着された。

 

〘が、ああああああああああ!.....〙

 

途端に頭部に電撃が走り、激しい頭痛に襲われるオーディン。

これは" ソブリンレイ "と言うリガドの両膝に装備された戦闘支援ドローンである。

分離する事で浮遊しながら高威力レーザーを発射できる以外に、相手ライダーの頭部に装着する事で意識を奪い支配下に置く、いわば洗脳機能が備わっているのだ。

 

オーディンの頭部の規格がデザイアライダーと異なる為、

ソブリンレイ は合体した直後にエネルギー体となり消滅するがハッキング効果は持続してる。

 

リガドも馬鹿の一つ覚えみたいに近接戦闘を続けてた訳ではない。

真面に格闘戦を挑んでも瞬間移動で回避される事は学習済み。

先ほどビルから転落した際、いざと言う時の為に密かにソブリンレイを1機飛ばしチャンスを伺っていたのだ。劣勢だったのも演技である。

 

しかし普通の人間ならば物の数秒で意思を失いコントロール出来るのだが、オーディンはどういう訳かソブリンレイの支配に抗えている。かと言ってリモートコントロールに歯向かう行為は返って脳に甚大なダメージを与えかねない。

よってオーディンは激痛を伴う結果になったが、どの道動きが止まったのは好都合。

あの状態ではお得意の瞬間移動も使えないらしい。

 

このチャンスを逃す筈もなく、リガドは疾走中にジリオンドライバーにシリウスカードを2回スラッシュする。

 

《 DESTROY! 》

 

右拳に金色のエネルギーが集中し、そのまま助走を付けオーディンの胸部を豪快に殴り飛ばした。

 

「うおりゃあぁっ!」

〘ぐあああああああっ!!〙

 

その威力は凄まじく、屋上から殴り飛ばされたオーディンの体は立ち並ぶ高層ビルを次々とぶち抜いて行き、最後は近くの造船上に停泊していた無人タンカーの壁面に激突。

 

タンカーは水しぶきを上げながら大きく振動する。

側面からバウンドしたオーディンは停泊場の地面に転落。

常人なら即死級のダメージを受けたにも拘わらず、オーディンには辛うじて生存しており、尚もソブリンレイの効果に苦しんでいた。

 

〘.....う....ぐぅぅ.....〙

 

ゴルトバイザーを松葉杖代わりに何とか膝だけで立ち上がる間に、ビル群を飛び越えたリガドが降り立つ。

 

「まだ息が有るだけでなく、此方のコントロールにも抗うとは。

やはりただの人間ではないな? いや、そもそも人間か? 中々の奮闘だったが......」

 

その手には先ほどキックを受けた拍子に落したオーディンのファイナルベントカードが握られていたが....

 

「俺は貴様と遊んでる暇など無い」

 

リガドは無慈悲にカードを破り捨ててしまう。

 

これ程イレギュラーな存在にも拘わらずジットはオーディンに左程興味を示さなかった。

逃走したツムリを捕獲する方が先決だからである。

アジトから大分距離が離れてしまったが、リガドの力なら物の一瞬で帰還出来る。

とは言え目の前のコイツはそのリガドに匹敵する戦闘スペックを秘めている。

目的は知らないが、それがゲームマスターを直接危害を与えるとなれば面倒この上ない。

即始末するのが得策と言えよう。

 

「今ここで死ねぇ!」

 

トドメを刺そうと駆け出すリガド。

だがここでも横やりは入る。

 

足元を大きな水たまり。

そこからゴルトフェニックスが飛び出し、奇襲を仕掛けて来たのだ。

 

「!」

 

鏡の中を自在に移動でき反射物なら何処からでも出現出来るミラーモンスター。

オーディンがタンカーに衝突し波打った影響で、地面は辺り一面水たまりだ。

ゴルトフェニックスからすれば出入口が増えた状態と言える。

因みに先ほど嗾けたブーストライカーは既に大破させられている。

 

間一髪で奇襲を回避するリガド。

そこで彼が目にしたのは、ゴルトフェニックスが手前を通り過ぎた瞬間を見計らい、

一枚のカードを使用しているオーディンの姿だった。

 

 

《 TIME VENT 》

 

 

ゴルトバイザーの音声が響いた直後、

世界からあらゆる音が消失した。そして周りに見える景色の全てが有り得ない動き方を始める。

 

この場に居るオーディンとリガド以外を除いて。

 

「これは、時間操作の力。 時の流れが" 加速している "?」

 

思わず呟くリガド。

空を飛び交うカモメの鳴き声、波打つ海、揺れるタンカー、雲の流れ。

自分達以外の全ての光景が、まるで動画を早送りするかの如く加速しているのだ。

 

この時代の常人では考えられない事態だが、未来人の彼はこの状況を冷静に分析する。

 

自分は” とある有る理由 "で時間操作の影響は受けずに済んでいる。

では何故オーディンは時間を戻すではなく、早めているのか?

瀕死の重傷ならば自分の時間も含め世界の時間を巻き戻せば戦いをリセット出来るのに。

それをやらないと言う事は....時間改変には慣れてる身なので、答えは瞬時に出た。

 

( 奴め、ゲームが終わるまで俺を留める気か!)

 

これまでのオーディンの行動を思い返し直感で解答を得たリガド。

 

始めはツムリを逃がした直後に現れ、

一定時間アジトから離れるまで自分と戦闘を繰り広げ、

運良ければ切り札(ファイナルベント)で自分を始末するつもりだったが、

失敗した今、最後の手段として時間操作を使用する。

 

つまりオーディンは最初からジットをツムリから引き離し、世紀末ゲームが終わるまで留めるつもりなのだ。ギーツや龍騎達の戦いにリガドが介入出来ないように。

 

理由は解らないがコイツはギーツ側の為に動いている。そんな気がしてならない。

 

時間を早めると言う事は、先の見えない未来まで早送りすると言う事。

奴は世紀末ゲームがどうなるか未来を知ってるのか?知らないのか?

そんな事は今重要ではない。

 

ジットは仮面の奥で苦虫を噛み潰す様な表情となる。

時間操作はゲームの結末を大きく左右しかねない。

勝敗が納得行かずリセットして再度同じゲームを始めれば、全く違う展開に変化してしまう。

不正を疑うオーディエンスからの顰蹙を防ぐため、時間操作はデザグラ運営最高責任者のみが許される特別な能力だ。

だからこそゲームマスターの自分が常に進捗を監視しなくてはならないのだが、

なまじ時間改変に端正があるせいで自分は時間加速の世界から脱せない。

これでは自分の目が行き届かぬ内に世紀末ゲームが終了してしまう。

ゲームマスターとしてそれは非常に好ましくない状況である。

 

「貴様ぁ!今すぐそれを止めろぉ!」

 

この状況を解除するにはオーディンを始末するしかない。

時間を操りながらもオーディンは虫の息で瀕死状態。今なら確実に仕留め切れる。疾走するリガド。

しかしオーディンの数メートル先まで来た途端、

手前まで空間がまるで窓ガラスに衝突したかのように空間が割れ、リガドは軽く吹き飛ばされてしまう。

 

「ヤツの時間操作に、これ以上介入出来ない!?」

 

恐らく自分達未来人とオーディンが使う時間操作は違う技術が使われており、それが何らかの不作用を起こし時空の歪みの壁が作成されてると思われる。これでは近づくのも困難だ。

 

おまけにリガドの前にゴルトフェニックスが主人を守るかの如く立ち塞がる。

オーディンと同じように瞬間移動で翻弄、更に右翼からは暴風、左翼からは火炎を発生、金色の羽を飛ばすなど様々な攻撃を駆使しリガドを寄せ付けない。

不死鳥の相手をしている間にも世界の時間はみるみる内に進んで行く。

 

一応、時間加速を封じる手段は有る。

今オーディンに触れるにはヤツ以上に強い時間操作をぶつける必要がある。

だがそれを扱える人物は今は居ない.......

 

と、ここでリガドの頭の中に何者かの声が響いた。

 

【 ジット、私に代われ 】

「!!」

 

すると一瞬だけリガドは気を失い、頭を下げ立ち尽くしその場で動きを止める。

しかし直ぐにシリウスカードを取り出しジリオンドライバーに読み込ませた。

 

《 REGAD Ω ACCESS 》

《 GENERATE 》

《 CREATION AND MASTER OF ALL.......REGAD Ω!》

 

顔を上げ、マスク中央が展開。特徴である大型モノアイ・ロプスプレコグヴィジョンが開眼する。

意識がジットからスエルに移り代わり、リガドはΩモードへと移行するのだった。

そして直ぐにジリオンドライバーのグレートアセンブルを2回押し込んだ。

 

《 REVERSE 》

 

途端に海や雲の流れ、倍速で飛んでいたカモメの動きに変化が現れる。

REVERSEは自分が望むあらゆる対象の時間を逆行させる能力。

しかしスエル、リガドΩの思惑とは裏腹に頭上の雲や鳥の動きは逆再生されず、

ぶるぶると僅かに振動しながらその場で停止している。

 

「 互いの時間操作が相殺した影響で、時が制止したか 」

 

現状況をリガドΩは瞬時に分析し回答を得る。

時間を加速させるタイムベントと時を巻き戻すREVERSE。これらを同時に発動した事で世界中の時間が制止してしまったのだ。

とは言えオーディンやゴルトフェニックスまで停止し自分は無害な様子を見るに、

力の差はリガドΩに軍配があった様だ。

 

あらゆる物が制止し無音の世界を歩く。

やがて背後のオーディンを護衛するかの様に立ち塞がるゴルトフェニックスの手前で立ち止まり睨みつける。

 

自分以外の全てが制止してると言う圧倒的有利な状況。

だがこれはリガドΩにとって非常に不愉快な光景だった。

オーディンは古代人に作られたライダー。

そして今この状況は古代人が自分の時間操作に抗って出来た結果である。

時の支配は神に匹敵する神技。

何者より上位的存在な自分にこそ相応しいと自負するスエルにとって、

絶滅した時代遅れの化石が時間を操る現実は不快極まりないのだ。

 

「 古代人の分際で......時を統べるなど! 」

 

酷く憤りながらドライバーにシリウスカードを1回スラッシュする。

 

《 EXPUNGE!》

 

途端に全身各部のタイタンアイから最高出力のビームが発射された。

必殺技発動と同時にREVERSEは解除されたが、

先程まで制止してた上にほぼ0距離からの砲撃となれば、不死鳥と言えど回避は困難だった様子。

ビームはゴルトフェニックスの翼や首に胴体など全身のあらゆる部位に直撃。

皮膚を溶かし穴を空け、貫通したビームは背後で膝を付いていたオーディンの体さえも容赦なく貫いた。

 

やがてゴルトフェニックスは盛大に爆散。

リガドΩは燃え盛る不死鳥の死体を背に、徒歩でオーディンの間近まで接近し見下ろした。

 

「 烏滸がましい...... 」

 

それだけ言い終えると、リガドΩはロプスプレコグヴィジョンが閉眼しリガドへと戻る。

 

『...............』

「っ!」

 

スエルの意識が消失し、ジットの意識が戻ったリガドはほんの僅かに当惑する。

気付けばゴルトフェニックスは背後で大炎上。

目の前では胸に風穴が開き、両腕も焼き切られたオーディンを見れば当前の反応である。

側には無残に粉砕した召喚機ゴルトバイザーの残骸も落ちている。

よってタイムベントの効果は消え、世界は通常通りの時間経過を取り戻したのだった。

 

やがて全身から粒子が立ち込め、オーディンの骸は音も無くその場で消滅。

残されたジットが状況を理解するのは早かった。

 

「スエルめ、一時的に俺の体の主導権を奪ったか....」

 

何食わぬ顔で事態を受け入れるジット。

彼が何故こうも平然としてられるのか。

 

それは彼がスエルによってデザインされた存在だからである。

時間操作に適応し、ジリオンドライバーを所持しているのもそれが理由だ。

スエルは一度、浮世英寿に倒され消滅したが意思と体は徐々に再生されつつある。

五体満足に復活するまでの間、デザグラを運営できるよう忠実な右腕を作った。

それがジットである。

故に彼は意思は有る物の己の死など一切恐れない。

生かすも殺すも全てスエルの思うがままであり、その出世と運命に疑問すら抱かない。

 

先も言った通り、未来の世界で時間操作は高い地位の人物しか使えない力。

運営でそれを使えるのはスエルが変身したリガドΩのみ。

世界中の人間は自分を除いて時間が停止・加速した感覚など微塵も無いだろう。

 

とは言え、スエルはまだ完全に復活出来てない状態である。

よって僅かな時間だけジットの体に乗り移りREVERSEを使用するのが限界だった。

あの一時復活によりかなり力を浪費した筈だ。こうして再び力尽き、完全復活を待つ事となる。

 

すると、遠くで何らかの轟音が響き渡る。

視線を移すとそれはギーツとタイクーンが居るはずの街中に、

雲にも届く程の巨大な光の柱が聳え立っていた。

 

「あれは、創生の力?」

 

一応判別は出来た物の、その柱はどうも自分が知る創生の力とは違うと思えた。

例えるなら、白い尾。ギーツⅨのそれに酷似している。

同時に鐘の音が世界に木霊する。世界が作り変わる合図だ。

 

「してやられた、と言う訳か.........」

 

光の柱を見て感づいた。

本来望んでいた物とは全く的外れな顛末を迎えた事を。

自分はまんまとオーディンに一杯喰わされたのだ。

時間加速により、ジットは世紀末ゲームを監視する暇を失ってしまった。

 

ギーツの仲間でもないのなら何の為に?

結局あの男は何だったのか、始末した以上知る由はない。

 

ジットは軽く溜息をついた。

これではバットエンドを望むオーディエンスから批難は免れない。

 

「まあいい。スエルの復活も近い。何をしようと無駄な足掻きだ....」

 

先程手に入れたツムリの涙の結晶を眺めながら不敵な笑みを浮かべる。

後に彼はこの結晶を使い黒ツムリをデザインし、ケケラと共にバットエンドゲームを開催するのである。

 

しかし現実は彼の目論見とはかけ離れ、

後にジットは創生の力を完全に吸収した英寿との一騎打ちに敗北。ケケラもバットエンドゲーム時に景和との対決で散る事となる。

 

こうして世界は光輝き、その姿を変えた。

ギャングライダーズの居ない、元通りな世界へと。

 

 

やがて復活したスエルは日本全土を巻き込む終幕のデザイアグランプリを開催し、物語は最終局面へ向かうのだった。

 

 




※「タイムベントって時間逆行しか出来ないのでは?」と思った方へ。
ライダー図鑑によるとタイムベントは「各種召喚機に読み込ませる事で時間を思いのままに操れる」と記述されていた為、
「ならば時間の先送りも可能では?」と拡大解釈し時間の倍速化機能を付与しました。
異論は認めますが、あくまでもこの作品だけの設定だと位置付けて頂ければと。
ブーストライカーは少し無理矢理だったかも。
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