ギーツ&龍騎IF   作:巽★敬

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お待たせ致しました。
ガヴが明日で最終回と来て、この作品もいよいよあと僅かとなります。


最終章7 「今の願い」

 

再び街中で勃発する邪神対ライダー軍団による大乱闘。

絶えまなく繰り出されるライダー達の総攻撃に対し、邪神自らも光線や堕天使を駆使して応戦する。

 

【 人の未来を守る? 実に不可解な願いである 】

 

攻撃をやり過ごしながらも、邪神は先ほどの龍騎サバイブの会話の続きを始めた。

 

【 如何なる時代でも人は争いを生み出す。己の幸せの為なら他人の犠牲も厭わない。それが人間の根源的本能。願いを持つ限り人は争い続ける。まして滅びの未来を待つしかない存在に、守る価値など皆無 】

 

相も変わらず偉そうに人間を否定し続ける女神の模造品。

発言内容が酷似してるのはリデザイン主であるスエルの影響だろう。

手にしてる水晶玉らしき部品から、再度龍騎目サバイブ掛け光線を放つ。人間一人など軽く消滅出来るサイズの光線だ。

 

「願いがある限り争いが起きる?

そんなの.......

 

当たり前だぁぁぁぁ!」

 

だが龍騎サバイブは臆する事無く、迫り来る光線をドラグブレードで叩き斬る。二つに割れた光線が龍騎サバイブを通り過ぎ背後で爆発する。

 

「だって世界は、一人だけの物じゃないから!」

 

全長600メートルは超える巨大な異形を前に、龍騎サバイブは臆する事無く声を張り上げた。

 

「価値がどうとか関係無い!守りたいから守るんだ!

お前の言う通り、確かに願いの数だけ争いは起きる。でも同時に願いが有るから人は生きて行けるんだ!例え自分勝手な願いでも、その願いが別の誰かを支える事だってある。

ただの他人ごとに見えても、実は何処かで何かが繋がってる。

人間世界ってのは、そう言うモノなんだよ!」

 

それはミラーワールドの戦いでライダー達の願いに触れた経験、

そして長年ジャーナリストとして様々な人間や事件と携わった故に形成された、城戸真司なりの考えだった。

 

願いが有るからこそ人は生きて行ける。

一番身近な例えとして衣服を例に挙げてみる。

普段人間達が来ている衣服も、実家から遠い生産工場が無ければ作られる事は無い。

そしてその衣服も誰かが「作りたい」と言う願いから始まった筈だ。

これは遠距離に住む者の願いが誰かの生活の糧かとなってる事に他ならない。

 

人気絶頂のアイドルが何か不祥事を起こし引退したらどうなる?

全く別の場所に住む遠くのファンは深く悲しむ事だろう。

 

SNSもそうだ。誰かの軽はずみな配信が社会に大きな影響を与える事だってある。

 

そうやって世界は回っている。

ただの他人同士の話でも何処かで何かの繋がりが存在するのだ。

誰かの願いが別の誰かに左右される。

 

願いが無くてもただ日々を過ごす事は出来るだろうが、目的が無いままだと「生きてる」と言う実感が得られない。

 

そして世界には様々な争いが存在する。

国柄や盛大による価値観の違い。

宗教の違いにより生まれる軋轢。

経済格差によりやむを得ない紛争。

これらの当事者も皆、何かしら様々な願いがあって行われる物だ。

 

中には仮面ライダー王蛇こと浅倉威の様に凶悪な人物も存在する。

彼の様に欲望のままに争いを生み出す存在は確かに容認出来ない。

だがそんな浅倉の存在が、一人の少女の心を救った事例もある。

嘗てフェリーの乗客やスタッフが軒並みミラーモンスターに襲われ行方不明になった事件があった。

その時浅倉は唯一生き残った少女に付き添った事が有る。

結局それは彼女を狙うモンスターをおびき寄せる為に利用してただけ。

契約モンスターに餌を与える為、生き残りたいと言う自分だけの願いによる行動だった。

しかし、家族を失い心に大きな傷を受けた少女にとってはその時の浅倉は希望の象徴だったのである。

そう言う事例を見て来たからこそ、

自分勝手な願いも別の誰かを支える事が有ると言う考えに結び付くのだ。

 

争いと言うのは様々な人の願いによって生まれる。

当たり前である。人一人考えが違うのだから。

故に人間が争う事は理屈では無い。

これ等を全て解決するのは不可能だろう。

 

しかしだからこそ憧れるのだ。

争いの無い世界と言う物を。

自分だけの力では実現出来ないのは百も承知。

だからって目指さなくて良い理由にはならない。

 

 

側で戦っていたナイトサバイブも堕天使達の攻撃を蹴散らし、龍騎サバイブの元へ飛来し邪神を叱責した。

 

「幾ら揺さぶっても無駄だ。お前如きじゃこの馬鹿は止められん」

 

何度コイツが悩んだと思ってるんだ、とナイトサバイブは心の中で言葉を付け加えた。

彼の「馬鹿」と言う小言も軽く受け流す。

今さら否定するまでもない。

ミラーワールドの戦いが終わっても、こうして別の戦いに首を突っ込む馬鹿。

 

それが自分、城戸真司と言う人間なのだから。

 

「願う限り争いは起きる。そんな矛盾に俺はこれからも向き合っていきたい。 地道にでも色んな人の考えに触れて、解り合って行きたい」

 

一挙に変えようとするから余計な争いが生まれる。

地道だが少しずつ人々の考えを変えていくのが、一番最適な手段に思えた。

それが次の世代への負担軽減にも繋がると信じて。

 

「そうして少しづつ積み重ねて、自分なりに争いの無い世界を叶えたい。

それが、今の俺の願いだぁ!」

 

気持ちが昂り、改めて叫んだその時。

 

二人の前に突如小さな光が発生し、龍騎サバイブの手に降り立った。

光が止むとそこには引き継き合う2つの磁石が描かれた一枚のカードがあった。

 

「え、これって…」

 

ユナイトベント。

ミラーモンスター同士を融合させパワーアップさせるカードである。

かつては仮面ライダー王蛇が自ら使役する契約モンスター3体を融合する際に使用していた。

 

何故いきなりこのカードが?

と龍騎サバイブとナイトサバイブは一瞬戸惑うが……

 

「願いの強さだけ、力は強まる……。

使ってみるか!」

 

きっと英寿による創成の力の恩恵だろう。

そう思い、ドラグバイザーツヴァイにカードを装填する。

 

《 UNITE VENT 》

 

すると側に飛来したドラグランザーとダークレイダーに変化が表れた。

まずダークレイダーの首が胴体の中へ引っ込み両足が折りたたまれる。

その後、翼と胴体だけとなったダークレイダーがドラグランザーの背中に接近。

やがてドラグランザーの背中が開き中から接続部の様な部品が露出すると、ダークレイダーはそれと合体。

ダークレイダーの青い翼を生やしたドラグランザーが誕生したのだ。

 

ここは" 焰迅龍(えんじんりゅう)ドラグレイザー "とでも名付けるか。

 

それだけではない。

ドラグレイザーは誕生するや否や黄金のオーラを纏い始め、見る見る内に巨大化。

東京タワーかと思う程のその身を拡大させたのである。

 

「グギャオォォォォォォォォ!」

「え、ええ....?」

「.................」

 

ドラグランザーとダークレイダーの泣き声が混ざったような咆哮を聞きながら、

龍騎サバイブとナイトサバイブは一瞬呆気に取られた。

自分達の記憶からすると、ユナイトベントのカードは一人のライダーが契約したモンスター同士でしか融合出来ないと思っていたので別のライダー同士のモンスターが融合する経験は無い。ましてここまで巨大化するなど。

これも創成の力が成せる事なのだろうか。

 

すると今度は龍騎サバイブとナイトサバイブ、二人のカードデッキの中から光が漏れ始める。

どうやら中のカード一枚が光を発している様だ。

引き抜いてみると、龍の顔に蝙蝠の翼が合わさった様な絵が描かれたファイナルベントカードがあった。

ナイトサバイブにも同様のカードを引き抜いている。

 

「蓮!」

「どうやら....二人で使え。と言う事らしいな」

 

使い方を察した二人は同時にそのカードを召喚機に装填。

 

 ()A()L()L() ()F()I()N()A()L() ()V()E()N()T() () ()

 

するとどうだろうか。

今度は龍騎サバイブとナイトサバイブの全身が光輝き、光の衝撃波が辺り一面に広がった。

二人のライダーはドラグレイザー同様黄金のオーラを身に纏いやがて音も無く体が宙に浮き始めた。

 

そして変化が表れたのは彼等だけではない。

先程放たれた黄金の衝撃波はこの場で戦う全ての者達まで広がり、光を浴びた者達に次々と変化を齎した。

 

「ん? なんだ?」

 

近くで戦うなか光を浴び、自身の体から光のオーラが湧き出る事に戸惑うマーレラジャマト。

次の瞬間、光は増大し一瞬にして彼の姿を変化させる。

気が付くとマーレラジャマトはデザグラで活躍していた時の姿、

仮面ライダーナッジスパロウ・モンスターフォームへと変貌していた。

 

「これは!?」

 

ドライバーを所持してないのに仮面ライダーに変身すると言う前代未聞の経験に戸惑いを隠せない大智・ナッジスパロウ。

しかし事態はこれだけで終わらない。ナッジスパロウは尚も金色のオーラを放っており、その体はやがて音も無く宙へと浮きはじめる。

彼だけではない。側で驚いていたパンクジャックやハクビにも同様の現象が起き始めたのだ。

 

「え、え?なんだ? おいおいおい!?」

「うわー、何か解んないけどすっごーい!」

 

金色のオーラを纏いながら浮遊するパンクジャックやハクビ。

ロポやシーカー、ケイロウやダパーンにも同様の現象が発生する。

 

「何だか....力が漲ってくる!」

「ふっ。面白い」

「え?ワタシもかい?」

「だっる....もうどうにでもなっちまえ...」

 

この現象は他のジエンドライダー達にも次々と起こり、やがてこの場で戦っている全てのライダー達が神秘的な黄金のオーラを纏いながら空高く舞い上がった。

大勢のライダーが街の上空を埋め尽くす中、

同じ様に空を飛んでいたギャーゴの元に屋敷で戦っていた筈の仮面ライダー、ランサーとガルンが合流する。

 

「光聖サマ!」

「伊瑠美サマはもう大丈夫デス。我々もお供シマス!」

「お前達....」

 

駆けつけてくれたSP二人に、ギャーゴは仮面の奥で感謝の笑みを浮かべた。

 

やがて、ライダー達は一定数の高さまで到達するとその場で制止。

丁度邪神の胴体辺りまでの高さだ。

 

龍騎サバイブとナイトサバイブの二人を最前列に並ぶライダー達の背後には、300メートル近くまで巨大化したドラグレイザーが翼を広げ待機していた。

彼らが見つめる先には邪神の姿が。

 

「決めるぞ、皆ぁ!」

 

龍騎サバイブが号令と同時に前方に右足を付き出すと、ナイトサバイブも同じように右足を付き出す。

側でそれを見ていたパンクジャックも「あ~、そう言う事か!」と何かを察し同じように右足を付き出すポーズを取る。

彼らに続き他のライダー達やジエンドライダー達も見よう見真似で次々と前方に右足を付き出し、やがて全てのライダー達が同じポーズを象った。

 

大勢のライダー達が空中で片足を付き出したまま制止する。

 

一見非常にシュールな光景だが、足を向けれた相手にとってはこれから起きる末路を想像すると恐怖でしかない。

 

【 あ.....あぁ..... 】

 

龍騎は邪神が僅かながら後退りをしている事に気づく。

まさかこの土壇場で恐怖の感情を学習したと言うのか?

幾度無く攻撃しても立ち上がり攻めて続ける人間達の不屈ぶりに恐れを覚えたと言うのだろうか?

 

先ほど奴は滅びの未来を見せ付けてきた。

市民に生き残りを掛けたデスゲームをけしかけといて、士気を下げる行為に何となく違和感を覚えたが、

まさか己に対する戦意の喪失が狙いだったのか?

あれだけ此方を侮蔑しといて、無意識の内に芽生えた恐怖心故の姑息な手段、上から目線の命乞いだったのか?

だとしたら何とも情けない話である。

 

残念ながらもう遅い。この偽りの女神を倒さない限り日本列島消滅は免れないのだから。

 

やがてドラグレイザーの口の中に炎を宿り、両翼のホイールブラスターが回転を始める。

ついにはドラグレイザーから放たれた巨大な炎と風を背に受け、全てのライダー達がミサイルの如く一斉に加速する。

 

 

「「「「「「「でりゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」」」」」

 

 

尋常じゃない数で襲い掛かるライダーキック。

何とか身を守ろうと、あらゆる手段で応戦する邪神。だが全て無駄な足掻きであった。

 

溢れ出るビームは弾き飛ばされ、大量に送り出した堕天使は全て撃墜される。

先程龍騎サバイブとナイトサバイブの技を防いだシールドは物量に耐えきれずガラス細工の様に粉砕。

 

ライダー達の蹴りは遂に邪神の胴体に到達し貫通。

次第に背後のライダー達は直線だけでなく各方面に拡散。

邪神の胴体だけでなく、あらゆる部位に降り注ぎその身を貫いた。

 

数千人規模のオールライダーキックを受けた邪神は遂に限界に達し、

 

断末魔と共に大爆発を起こすのだった。

 

 

【 ぎゃあああああああああああ――――――――――――――― 】

 

 

          ◆

 

 

邪神の身体は急速に崩壊。

同時に浮遊していた日本列島も無事海に着水。

 

街は勝利と母国が救われた事を実感したジエンドライダー達の歓声に包まれた。

人数が人数なだけにその声量は凄まじく、一つのパレードや推しのチームが勝利したスポーツ観戦以上の盛り上がりだ。

喜びのあまり飛び跳ねたり抱き合う者達も居る中、

これまでの緊張が一気に解れたパンクジャックやナッジスパロウやハクビなど、一部のライダーは力なくその場に腰を下ろす。

 

と、ここで皆の勝利を祝うかの如く世界中を鐘の音が包んだ。

途端に全ての仮面ライダー達の装甲が光と共に消滅し、元の人間の姿へと戻される。

何が起きたのか戸惑っていると、やがて空が明るい光に包まれ、

崩壊した建物や道路がみるみる内に元通り復元されていく。

 

「.....世界が、造り変わって行く.....」

 

目の前の光景を前にふと呟く五十鈴大智。

ジエンドライダーだった市民達は戸惑うが、デザグラ経験者にとっては見慣れた光景である。

ゲームの勝敗が決まったと同時に起こる、創世の力によって世界が作り変わる現象だ。

 

ミツメが居ない今、真面に創世の力を操れるのはあの人物しかいない。

こうして世界改変が出来ると言う事は、彼も無事スエルを倒したのだと確証が持てた。

晴家ウィンは深く安堵するのだった。

 

「アイツだ.....英寿がやってくれたんだ........」

 

 

            ◆

 

一方、デザイア神殿では4次元ゲートが強制的に閉じられていた。

未来人が元の時代に帰還する為の通路だ。

 

世界の改変が始まったと同時に、バッドエンドを要望して来たオーディエンスは次々と消滅。

正真正銘の神となった浮世英寿が「誰もが幸せになれる世界」を望んだ為だ。

よって、これまで他人の不幸を望み悪行を重ねて来たデザグラ運営スタッフも消滅の運命を辿る事に。

 

スエル亡き今、退路も断たれたサマスは完全に錯乱状態に陥る。

すっかりパニックになりながらゲート封鎖の原因を黒ツムリに問うも、

彼女も状況を把握してる訳では無い。

まして本物と違い感情も育んでない黒ツムリはただ無言で人形の様な無表情を向けるだけだった。

そんなサマスに対し、ギロリが現実を突きつける。

 

「言った筈だ。お前達の思い通りにはならないと。これがオーディエンスの総意。我々運営は消え去り、この時代の未来はこの時代の者達に託される」

「いや、いやあ!私は消えたくなんかないぃぃ!!」

 

他人のバットエンドを望み自分のバットエンドは許容できないと言う哀れなサマスを他所に、

ギロリは心の中でこの世界に別れを告げる。

 

( さらばだギーツ。そして人間達よ。未来は君等の物だ )

 

自分も世界を救うゲームと称しながら人々の命を危機に晒した身。

許しを請う気は無い。

これはケジメでありせめてもの贖罪。

自らの運命を受け入れ、

ギロリはサマス達と共に光の粒子となって消え去った。

 

            ◆

 

 

鐘の音色が世界を轟かす中、

街外れに位置する墓地に仮面ライダーオーディンは一人佇んでいた。

 

暫し空を見上げているとオーディンの装甲は消滅し、中から一枚の画用紙を手にした男が姿を表す。

世紀末ゲームでジットと一戦交えたあのコートの男だ。

 

 

全ての終わりを実感すると、男は自分のこれまでを振り返ってみる。

 

最初は解らない事だらけだった。

何故自分は再び現世に現れたのか?

何時から居たのか。気付いた時にはカードデッキを手にギャングライダーズが蔓延る世界を眺めていた。

神の悪戯とでも言うのか?

創成の神と言う作られた存在ではない、曖昧な何かの気まぐれなのか?

幾ら考えても明確な答えは出てこない。

 

とは言え命無き後も現世に居座る状況は慣れている。

 

不明点は多いが、自分は一つだけ明確な目的を持ち合わせていた。

それは、あんな無粋な未来人達が世界を翻弄するのは到底感化出来ないと言う事。

世界を荒らすならず者達に一石を投じたかった。

ここは自分がどれだけの犠牲を払ってでも蘇生したかった者が生きた世界だ。

ギャングライダーズなどが暴れれば、側にあるこの墓地も荒らされかねない。

 

男は持っていた画用紙を掲げ眺める。

子供がクレヨンで描かれた家族の絵。

 

短い生涯だったが、この絵は自分達が確かに生きていた証。

たった一枚の中に沢山の思い出が詰まっているのだ。

 

鏡の世界ではこの様な絵が大量に飾られている場所がある。

それを守りたかった。側にある墓も。僅かでも生きて来た自分達の世界を。

 

既にリンクは切れてるとは言え、現実世界が崩壊すれば鏡の世界への影響も計り知れない。

だがこの世界だと自分等兄妹は若くして他界した事になっている。

既に故人である身に出来る事は限られていた。

 

そもそも何故現世に舞い戻ったのか自分でも解らないのに

再び得た体は非常に脆く曖昧で不完全な物だった。

よって、英寿や真司など現代人と満足に干渉する事もままならない。

 

それでも出来る限りの事はしたかった。

ジットにあそこまで対峙出来たのは、それだけ運営に対する自分の思念が強かったのだろう。

 

抵抗空しく一度リガドに大敗した後、

自分には顔見知りにカードを1枚贈るぐらいしか力は残されてない。

せめてもの足掻きのつもりだったが、まさかあれだけの力を発揮するとは予想してなかった。

 

創成の力とは、人がどれだけ強く願うかで効力が変化するらしい。

もしかしたら創成の力と自分が与えたカードの力、

「世界を守りたい」「生きていきたい」と言う城戸真司達の願いの強さが、それぞれ共鳴の様な現象を引き起こし、先の様な絶大なパワーを発現したのかもしれない。

 

『.........願いが有るから生きて行ける、か......つくづく台風の目の様な奴だ......』

 

男はようやく真面な言葉を発する。

その口調は20年前と変わらない行動力と影響力に呆れ果てると同時に、何処か安心と感謝が含まれてる様に聞こえる。

誘っても無いのに幾度と無くゲームをかき乱すイレギュラー。

本当にはた迷惑な男だ。

今頃、城戸真司も秋山蓮もユナイトベントのカードが創成の力の産物だと考え、

送り主が自分であるなど夢にも思ってないだろう。

 

『.........だが..........これで良い.....』

 

今となっては、そんな事は重要ではない。

こうして彼等は勝利したのだから。

世界を眩い光が包み込もうとしている。

それとは別に男の体から光の粒子が湧き上がる。

 

 

男は側に建てられた墓標に視線を移す。

 

 

『お前が生きた世界は救われたぞ........優衣......』

 

 

 

それだけ言い残すと男の姿は完全に消え去った。

 

 

最後まで曇り一つない、とても穏やかな笑みを浮かべながら。

 

 

            ◆

 

 

視界のあらゆるものが白で包まれている。

空も街も見えない、何もかもが白。そんな空間に真司と蓮は立っていた。

 

情況を把握する間も無いまま、遠くから聞き慣れた咆哮が2人の鼓膜を突いた。

見上げると紅き龍と巨大な蝙蝠と共に宙を浮遊している。

 

「........ドラグレッダー?」

「ダークウィング.....」

 

2匹のモンスターは暫し静かに二人を見下ろした後、

再度咆哮を上げて身を翻し、天高くへ飛び去った。

 

その光景は二匹の蝶が戯れながら空へ舞う姿に酷似している。

 

モンスター達の姿はみるみる内に遠く、小さくなり、

 

やがて白き空の中へと消えていった。

 

「......................」

「......................」

 

モンスターが消え暫し静寂が包んだ後、真司がモンスター達の行動の意味を口にする。

 

「別れの挨拶......だよな?」

「.................さあな.....」

 

真司の質問にそっけなく返答する蓮も幾分察した様な表情をしている。

 

ライダーは契約したミラーモンスターの気持ちをある程度把握出来る。

2匹の最後の咆哮は戦いを終えた自分達への労いを送った様に二人は感じた。

何とも妙な気分である。

契約と言うデメリットを抱えながらも、ずっと共に戦って来た異形の存在。

 

あの2匹が20年前自分達と共に戦ったドラグレッダーとダークウィングと同一個体なのか結局の所不明だ。

嘗てのミラーモンスターは空腹を満たす為に他のモンスターか人間を餌にする必要があり、それを拒否すると自分達が捕食されると言う負の部分が存在した。

だがデザグラで出会ったあの2匹は人やモンスターを襲う必要も無く自分等に付いて行ってくれた。

そもそも現実世界に平然と活動出来てる時点で全くの同一存在とは言えないかもしれない。

英寿の力による恩恵、もしくは運営が作り出したコピーだった可能性もある。

何にせよアイツ等が人を襲わないのであればそれに越した事は無い。

 

モンスターには嫌な思い出も多々有る。

それでも彼等が居なかったら自分達は戦えなかったのも事実。

彼らが居なければ人を守れる力も無かった。

バットエンドゲームが止められた際、桜井景和は敵でありながら自分をライダーにしてくれたケケラに礼を言ったと聞いてる。

その話を思い出すと、真司は自分もドラグレッダー達に感謝を送りたくなった。

 

「ありがとな.........平和に暮らせよ.......」

 

願えばまた彼等の力を借りる必要のない、平和な世界を願って。

 

 

〘 やったな。龍騎、ナイト 〙

 

 

唐突に声がした方角に視線を移す。

そこにはタキシード姿の青年が一人立っていた。

 

「英寿君?」

 

青年、浮世英寿は静かに微笑むと

 

彼らに一つの言葉を送った。

 

        




また1ヶ月後更新とかになりそうですが、次回はエピローグです。
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