一応執筆後は音声読み上げで確認したりと出来る限りミスを減らすつもりです。
「ぐあああああああぁぁぁぁぁ!」
ドラグブレードで斬られた途端、タイクーンBSは大量に火花を散らしながら吹き飛び地面を転がった。
ストレンジベントにより変化した新たなカード「コンファインベント」は対象のライダーが所持するカードの効果を打ち消す力が有る。
本来これは龍騎の様なアドベントカードを所持するライダーに対し使用する物だ。
龍騎Sも存在自体は熟知してたがカードデッキを持たないデザイアライダーに使う場面は初めてであり、まさかレイズバックルに効力が適用されるとは予想してなかった。
もしかしたら創生の力によって生み出された事が関係してるのかもしれない。
しかし今は考察よりも目の前の状況だ。
視線の先にはダメージを折ったタイクーンBSがうつ伏せのまま倒れている。
ドラグブレードに炎を纏わせて斬るだけと言うその場で思いついた技だったが、一部エントリーフォームと言う素体状態で喰らった為か意外と効いたらしい。
「この辺にしよう....景和君....」
龍騎Sは変身を解除する為にVバックルからデッキを引き抜こうとした。だが.....
「.....あき....らめる...か....」
「!」
タイクーンBSは分離されたブジンソードバックルを再度デザイアドライバーに装着し直す。
「絶対に....叶えるんだ....迷ってなんて....られない....」
再び黒いボディを身に纏い、武刃を杖変わりによろめきながらも立ち上がる。
「.....俺が家族を.....姉ちゃんを......救うんだ.....」
「そこまでするのか?」
そんな悲痛な状態のタイクーンBSに対し龍騎Sは静かに尋ねる。
「君がやろうとしてる事は、英寿くん達を犠牲にするだけじゃない。創生の女神は誰かの幸せを犠牲にして願いを叶え続ける。家族を救う代わりに別の家族が犠牲になるって事だ。それでもやるつもりなのか? 世界平和はどうした? 誰かの幸せが自分の幸せじゃなかったのか!?」
「.....知った様な.....口を聞くなあああああぁぁぁ! 意味が無いんだよ!姉ちゃんの居ない世界平和なんて!」
他人行儀でさも上から目線な口ぶりが癪に障りタイクーンBSは声を荒げ思わず本音を口走ってしまう。
龍騎Sはわざと心に付け入る様な質問をしたのだ。彼の本音、心の叫びを聞く為に。
世界平和を望む程のお人好しである性格は英寿達からも聞いている。そんな彼が他人すら犠牲にしようとする程豹変したと言う事は、世界平和と言う信念にも何か裏があったのではと疑問は少なからずあった。
そしてやっと知る事が出来た。彼の願う世界平和の本質を。
「.........君にとっての世界平和は.....姉さんが幸せでこそだったんだな....」
この返答でタイクーンBS・景和の中である人物の言葉が思い返される。
それはギャングライダーズのヘッドになってから合流したとあるライダーの言葉。
突然降りかかった不幸を皮切りに、全ての幸福を憎み世界破滅を望む歪んだ少年からの指摘だ。
――― 善人ぶんなよ。アンタは失った家族を取り戻す為なら、他人を犠牲にしても良いと思ってんだろ? ―――
姉が居てこその世界平和。家族の為なら他人を蹴落とそうとしている。正に今の自分だ。
「..........ああ........ああそうだよ............全部ねえちゃんの為さ.....姉ちゃんは何時も、明るく笑って俺を応援し助けて励ましてくれた.....」
今まで心の中で閉じ込めていた言葉が次々と溢れだす。
「....でもその裏では、ずっと一人で泣いていた.....俺に心配させない為に、死んだ両親の悲しみを隠してたんだ..........そんな姉ちゃんが何で死ななきゃならない! 生き返らせたいと願って何が悪いぃ!」
「景和.....」
仮面で素顔を隠してても、声の調子で慟哭がハッキリと伝わってくる。
殆ど面会した事も無い人間に打ち明けてしまうのは、それだけ精神的にも限界が来ている証拠だ。
「所詮自分の為さ! 自分さえ幸せであれば他人を蹴落としても良い! 俺はそんな人間なんだよ!」
ついには自分さえも責め立てる。景和も理解してるのだ。自らの行為が誤っている事に。
「なぁ真司さん....平和を望んでるって事は...アンタだって誰かの為に戦ってたんだよなぁ?.....だったら、大切な人と再会したいって言う俺の気持ちぐらい解るだろ?」
それでも突き進むしか道が無く、こうして震える手で武刃を龍騎Sに向ける。
あまりに惨憺としたその姿を前に、龍騎Sは一度間を置いて口を開く。
「............解るよ.....痛い程に....」
「だったら何で邪魔を!」
「昔俺も! 同じ事をしようとした事が有る!」
「!」
声を張り上げる龍騎S。初めて感情を露わにする姿に、タイクーンBSは思わず剣を下げる。
そして龍騎Sは語りだした。かつて自分が味わって来た戦いの日々を。
「今から20年前、一つの戦いがあった。
人知れず人間を襲う怪物を倒す為、俺はこのカードデッキでライダーになった。
だが実際、コイツはそんなヒーローみたいな使い方をする為の物じゃなかった」
言葉を並べながら龍騎Sは自分のデッキに手を添えた。
「これは人が己の願いを叶える為に、生き残りをかけてライダー同士戦いあう為の物だったんだ」
「生き残り……そんな昔にもデザロワが?」
運営は四次元ゲートを使ってあらゆる時代に介入しデザグラを開いている。20年前にも似たようなデザロワが開かれても変ではない。しかし…
「デザグラもデザロワも関係無い。俺が介入したのは正真正銘、人間同士の殺し合いだよ」
「!?」
衝撃的な内容に戦慄する景和に対し、龍騎Sは詳細を語りだした。
20年前、多発する不可解な失踪事件が発生。それは鏡の世界・ミラーワールドに潜む怪物、ミラーモンスターによるものだった。
ひょんな事で偶然カードデッキを拾った真司は事態を知り龍騎となり人々をモンスターから守る為に戦いに身を投じる事となる。
だがこの戦いでの仮面ライダーは己の願いを叶える為にミラーモンスターの力を借り、13人の内の最後の一人になるまで戦う存在である事が後に判明する。
人間同士で殺し合う。常人なら途中で降りたくなるルールだがそう簡単な話ではなかった。
「一度ライダーになった者は最後まで戦い続けるしかない。痛くて苦しくて、それでもゲームみたいに途中で止める事も出来ない。戦いを放棄した奴は契約したモンスターに容赦なく食い殺される。そんな決まりだったよ」
「そんな.....そんな事って....」
龍騎Sはあえて表現をボカさず説明した。自分が見てきた物がゲームではないとハッキリ示したかったからだ。
あまりも理不尽かつ非道すぎる内容にタイクーンBSは絶句した。
願いを叶える為に命を懸けて戦う所はデザグラとも共通点も有る。
しかし突然選ばれるとは言えライダー同士の攻撃は厳禁、本人の希望であれば辞退、負傷が激しいとドクターストップで脱落させるのとでは天と地がひっくり返る程過酷な話だ。
それでも見過ごす事など出来ず、真司は何とかしてライダー同士の戦いを止めるべく奮闘するのだが.....
「沢山のライダーに会う中で、俺は命を懸けてでも叶えたい願いを持つ人も居る事を知った。
ある人は瀕死の彼女を救う為、有る人は不治の病から助かる為とかな。
それ以降、俺は我武者羅にライダー同士の戦いを止める事が本当に正しいのか何度も悩む様になったよ。そんな時....」
一人の男がライダーバトルのタイムリミットを宣告した。
神崎士郎。
自らの手でライダーシステムを開発、ミラーワールドを開き、あらゆる人間にカードデッキを配布し戦いを促したバトルの主催者と言える男。
その男が突如として残り数日以内に最後の一人を決めないと願い事は叶わないとライダー達を急かしだしたのだ。
それは一人の女性が深くかかわっていた。
「神崎優衣。神崎士郎の妹だ」
「妹?」
「彼女は俺達と協力して何故兄貴があんなライダーバトルを始めたのか探っていた。そして解ったんだ。全ては自分の為に始まった事だってな....」
「どういう事だ...?」
「.........」
龍騎Sは無言で俯いた。これから語る事は思い出すだけで辛いと言いたそうに....。
「.......妹は.....優衣ちゃんはある理由で仮初の命で生きていた。その寿命が尽きる前に、神崎はライダーバトルを始めたんだ。最後の一人となった、一番強い命を彼女に与える為に......」
「!!!?」
「それを知って俺は決意した。優衣ちゃんの為に最後の一人になるって。誰も傷つかず人を救うなんて甘いんだって、そう自分に言い聞かせて。でも.....結局出来なかった....
最初から俺には無理だったんだ、人の命を奪うなんて....
そうこうしてる内にタイムリミットは到来したけど、優衣ちゃんは最後まで他人の命を貰う事を拒んだ......あんな戦いを始めた兄貴にすら、全然楽しそうじゃないからって気遣って、最後は自分から死を受け入れたよ......それが彼女の選択だったんだ........」
「................」
「兄貴はようやく諦めて、戦いは終わったけど......結局、あの戦いでは誰も笑ってなかった。他人を蹴落して平気な奴は大抵破滅したよ.....」
悲哀 悲痛 悲劇
そんな一言だけで言い表せない結末に息を飲み言葉が出ないタイクーンBSに対し、
龍騎Sは自らの拳を握りしめ、最後には声を張り上げて向き直る。
「......俺も....助けたかった人も....倒そうとした奴も....妹の為に戦いを始めた奴さえも....誰かを犠牲にしようとして本当に幸せな奴なんて一人も居なかった! 今の君の様にな!!」
「っ!」
「景和! 英寿君達を手に掛けた時点で、幾らデザグラで世界を変えようが記憶が消えようが、思い出した時死ぬほど後悔するのは君なんだぞ! それこそ君の姉さんだって、きっと自分を責める筈だ!自分のせいで景和を苦しめたってな!」
「.............」
「.......誰かを助けたいと願う君だからこそ、そんな十字架背負ってほしくないんだよ、俺は」
俯くタイクーンBSに歩み寄ろうとする龍騎S。
「.....じゃあ..........どうすれば良いんだよ?...」
しかしタイクーンBSの返答に足を止める。
「俺の願いのせいでまた家族が死んで.......世界もこんなになって.......女神以外に、何に縋れって言うんだ......」
景和とて家族しか眼中に無い訳ではない。自分の読みが甘かった故に混乱する世界に変え、無法者が蔓延り多数の犠牲者を出してしまった。その責任感も大きな負担となっていたのだ。
タイクーンBSの心境を察するも、それでも龍騎Sは懸命に説得を続ける。
「..........その為にも、もう一度英寿君達と話をしてくれ。今彼等は沙羅さん達を助け出せるかもしれない方法を見つけ出し、必死で抗ってる。
沙羅さんを手に掛けた道長君でさえ、自分の罪と向き合って戦っている。それは君の心を助ける為でもあるんだよ」
「あの人が.....みんなが、俺の為に....?」
「だから頼む。君を助けようとしてる人達の事を無視しないでやってくれ。君だって本当はこんな事一番したくない筈だろ!?」
自分の過去を踏まえての必死の説得。
20年前でも、城戸真司はこうして少しでも犠牲を増やさない為にどうすれば戦いを止められるか、自分に何が出来るかを模索し悩んできた。
神崎優衣が犠牲にならずに戦いを終わらせたい。戦いは終わったが、結局その思いだけは果たせなかった。だからせめてあの頃の戦友と似た状態になった景和を救いたかった。
英寿達の言う沙羅を救う方法は確かに今は希望的観測かもしれない。それでも何も試さず犠牲を良しとする手段はどうしても納得が行かなかった。
だからこうしてタイクーンBS・桜井景和に会いに来たのだ。
「.....俺には.........」
だがこれだけ言ってもまだ景和はギーツ討伐を完全に諦めきれずにいた。
彼は実際に見て来たのだ。デザ神となったライダーが願いを実現させる光景を。
英寿が提示した姉を救えるかもしれない等と言う漠然とした話より、世界を作り変える女神の力の方が遥かに現実味がある。
もしここでギーツとの戦いを拒んだらジットが自分を見限って願いが叶うチャンスを失う。
初代創生の女神が英寿の母・ミツメだと知った時、景和はミツメに対し激しい敵意を向けだした。
景和の両親はデザグラに巻き込まれジャマトによって命を絶たれた。
創生の女神は他人の幸せを奪う事で誰かの願いを叶える。
つまり彼の家族は女神の力によって奪われた事になる。自分以外にも大勢の不幸が蔓延る原因たる存在。それが景和から見たミツメであった。
それを親だからと庇う英寿に納得が行かない。それに彼だって不敗のデザ神を貫いて来た以上、願いの対価で誰かを不幸にし続けた事になる。だから不信感が拭えなかった。
そうだ、英寿だって今まで何度も自分で願いを叶えて来たじゃないか.....
――――幸せの総量は決まっている。全てが丸く収まるなんて都合の良い話は無えんだよ。自分の家族を救いたきゃ、誰かの幸せを奪うしかない。
ここへ来てあの蛙の言葉が頭から離れない。
「俺には解らない!....何が正しいのか......何処まで英寿達を信じれば良いのか....」
「だったらまず俺を信じてくれ!」
「!」
龍騎Sはカードデッキを引き抜き変身を解除。
元の城戸真司の姿に戻る。最早勝ち負けで解決したい訳じゃないと言う意思表示だ。
「もし彼等の方法が上手く行かなかったら、遠慮無く俺を始末していい。それまではせめて俺だけでも信じてくれ......それじゃ駄目か?」
「...................」
少しの間を置いてタイクーンBSはデザイアドライバーを外し、桜井景和の姿に戻る。
自分の命すらかけた説得に遂に折れたのだ。
「.............何で、俺にここまで?....碌に会った事も無いのに....」
景和は疑問だった。幾ら正義感が強く、自分と境遇が似てるとは言え一度しか面識のない人間にこれほど体を張るだろうか?
そして思い返す。デザイアロワイアルが終わった日、出会いがしらに放たれた真司の言葉を。
―――――そうか。俺もずっと願ってる。戦いの無い平和な世界を
思えばあの時真司はかなり唐突に声をかけて来た。そして一度も会話してもないのに彼は「俺も願ってる」と、まるで景和の志を知り共感した様な口ぶりだった。
てっきりベテランのデザグラ参加者かと思いきや、デザグラが人間同士の争いじゃない事を尋ねた辺りそれは違った。
彼はどうやって自分の情報を手にしたのだろう?
何処かでデザグラを視聴したのか?
そんな疑問が頭を渦巻く中、苦笑いを向ける真司。
「はは、馬鹿だよな...いい歳したおじさんがこんな首つっこんで.....けどさ、君と俺が会ったのはアレが最初じゃないんだよ」
「え?!」
「多分覚えてないだろうけどさ....」
意外な発言で目を丸くする景和に、真司は語り始めた。
◆
時を遡り、ある日の出来事
ジャーナリストである真司は取材の都合でとある森林でキャンプを行っていた。
そこへ突如見えない壁が目の前を遮ったかと思うと、周りに骸骨の様な白い頭にボロ切れ状態の衣服を身に纏うゾンビの様な怪物・ゾンビジャマトの大群が現れ襲って来たのだ。
「くそ、一体何なんだよコイツ等!? モンスターじゃない!」
「ジャ~...ジャ~...」
襲い掛かるゾンビジャマト達を殴りつけ、蹴り飛ばしてやり過ごす真司。
龍騎だった頃の経験と、ジャーナリストと言う仕事を長年続けてきた上で万が一の為に護身術を身に着けたのが功を制した。
しかし戦いが終わりカードデッキも持ち合わせてない今はただの一般人。怪物から逃げ切るのが精一杯だ。
ゾンビジャマトの群れから離れ、一旦茂みに隠れた時だった。
真司の目に飛び込んで来たのは、複数の行楽客がゾンビジャマト達に追われている光景だった。
「うわああ化物だ!」
「助けてぇ!」
直ぐに助けようと茂みから飛び出す真司。
もうライダーでもない自分が一人であの化物を何とか出来る保証は無いがそれでも目の前で危険にさらされてる人間を無視など出来ない。
だが距離が遠く、このままでは真司が辿り着く前に行楽客はゾンビの餌食になってしまう。
「くそ、間に合え!」と足を速めるもゾンビは容赦なく行楽客に迫りくる。
その時
「やめろおお!」
「!」
突如全てのゾンビたちの背中に大量の光の矢が浴びせられた。怯んで倒れるゾンビ達。
呆気に取られた真司は矢が放たれた方角に目を向ける。
そして旋律した。
「仮面...ライダー?」
そこには一人の戦士が立っていた。
狸のようなデザインのマスクに全身黒を基調としたシンプルなライダースーツ、手には先ほど使用したであろうクロスボウの様な武器を構えている。
ベルトにはカードデッキではなく分厚いメダルの様な部品が装着されていた。自分がミラーワールドで見て来た物とは大分違うが、その人物は仮面ライダーとしか思えない姿だった。
唐突な乱入者の介入にゾンビ達は皆ライダーに注意が向き、一斉に襲い掛かった。
「うあああああ!」
そのライダー、仮面ライダータイクーン・アームドアローはクロスボウ型の武器・レイズアローを無我夢中で乱射しながら、行楽客の側まで割って入った。
まだ戦い慣れしてないのか挙動の一つ一つに恐怖が見え隠れしており、ジャマトに対しては震える手で雑にレイズアローを命中させ怯ませるだけで完全に倒しきれてない。
しかし彼の行動は何れも行楽客の安全を最優先していた。ジャマト達が転倒してる隙に、タイクーンは行楽客を誘導する。
「大丈夫ですか!? あっちなら怪物は居ません。さあ早く行って下さい!」
「ありがとうございます!」
再度立ち上がるゾンビジャマト達に矢を浴びせるタイクーン。その時、別の位置で立っていた真司が視界に映る。
「貴方も早く!」
「お、おう...」
それだけ叫ぶとタイクーンは他に逃げ遅れた人が居ないか探しに駆け出した。
会話も顔合わせもほんの一瞬。
それでもこの出来事は真司にとって強烈なインパクトを残したのは言うまでもない。真司は去っていくタイクーンの背中を何度も確認しながら行楽客と共に退避するのだった。
◆
「それが、君を最初に見た瞬間だ」
「あそこに...アンタが?.....」
景和は言葉が出なかった。
真司が言っているのは景和がまだデザグラを始めて間もない頃に参加した「ゾンビサバイバルゲーム」での出来事である。
あの時は兎に角無我夢中で、救助した人間の顔など覚える余裕など無かったがまさか真司が居合わせていたとは予想外過ぎた。
「あの日以降、俺は君たち仮面ライダーに興味が湧いて調べようとした。でも運営の情報統制が厳しくて何にも解んなくてさ。おまけに途中から記憶が消えて、怪物も君の事も忘れちまってた」
原因はその後行われた最終決戦である缶蹴りゲームが終わったからだ。
デザグラは毎度デザ神が決まる度に世界がリセットされ、ライダーでもない目撃者はデザグラに関する記憶が全て抹消される。
「でもある日、色々あってあの黒いライダーに囚われて、デザイアロワイアルで再度君を見かけ思い出したんだ」
黒いライダーの中に囚われても、意識だけはハッキリしていた真司はデザロワの中でデザグラについての情報も多く収集する事が出来た。参加者リストの中にはタイクーンの名前と顔写真も記載されており真司はそこでタイクーンが桜井景和だと言う事を知ったのだ。
理不尽な強制参加だったが、皮肉にもあのデザロワは運営ついて知る切欠にもなった。
「だから会いに行ったんだ。タイクーンがどんなヤツか知りたくて....
ミラーワールドで戦ってた頃、自分の欲の為に他人の犠牲も厭わない人間を俺は何人も見て来た。
だからタイクーンの正体が君みたいな奴だって知った時、心底安心したんだよ.....
景和。君は自分の願いを優先してる事を負い目感じてるだろうけど、その気持ちを俺は責めるつもりは無いよ。誰だって同じだからだ。身近な人を守りたいなんて。
でもそれだけじゃないだろ?
あの時俺が見た君の戦いはどう見ても誰かを守る為に全力だった。
誰かの幸せが自分の幸せっていう君の気持ちは嘘は無い筈だ。
だから言葉を改めるよ。 デザロワ後に再開した時、本当はこう言うべきだった...
あの日君が居なかったらあの客達も、俺も危なかったかもしれない。
助けてくれて、ありがとな」
「っ!!」
思いもしなかった、感謝の言葉。
感激、悔悟、様々な感情が同時に押し寄せ、景和はその場で崩れ落ちた。
戦意は完全に消失し声を震わせて涙する。
自分は何をしていたのだろうか?
尊敬する人物は自分と似た境遇を持ち、自分が救助した人物だった。
その救助した人物に刃を振るっていた。
そんな自分にも師は自分の経験も踏まえ気遣いの言葉を送ってくれたのだ。
「.....真司さん..俺......俺...」
尚も涙が止まらない景和の肩に、真司は何も言わず手を添える。
止める事が出来た。
道を外す前に、一人のライダーの戦いを。
20年前では自分の声に耳を傾け明確に戦いを止める者は居なかった。
それは人それぞれの想いがあってこそであり、責める事は出来ない。
でもこうして自分の声を聞いてくれるライダーが現れた事に真司自身も大きく心が揺さぶられた。
勿論これで万事解決とは微塵も思っていない。沙羅は本当に戻ってくるのか、世界をどうするのか。課題は多い。ある意味ここからが本番だ。
そう意気込んだ時だった。
何処からか聞こえる拍手の音が、重苦しい空気に横槍を入れる。
振り替えると柄の悪そうにスーツを着こなす男が一人、不適な笑みを浮かべながら拍手を送っていた。
「何処で道草喰ってんのかと思いきや.....コイツはとんだサプライズだな?」
景和のサポーター、ケケラであった。