それにしても明日はいよいよガッチャード&ギーツ公開ですね
個人的にはPVにあった英寿の涙の意味が気になります
「いや~思った以上に見応えある戦いだったぜ。余興としちゃ上出来だ」
「ケケラ....じゃあさっきのバックルは...」
「ああ、俺が送ったモンだ。中々意気な計らいだろ?」
場の空気を乱すように突如現れる愉快そうな男、ケケラに警戒しながら真司は景和に「誰だ?」と訪ねる。
「.......俺を....仮面ライダーに選んだサポーターです....」
「アイツが....」
それを聞いてより一層警戒を強めた。
先ほどの戦いで景和を応援、支援していた人物だとすれば、英寿の始末を命じた一味と言う事になる。
そして気が付くと上空には機械染みた巨大な目・オーディエンスアイが多数浮遊していた。
大量の巨大な目が此方を凝視しると言う異様な光景の中、ケケラは相変わらず不敵な笑みを崩さずここまで来た経緯を打ち明ける。
「こんな重要な戦いに遅刻かと思って探してみりゃ、想定外の対戦カードで俺もオーディエンス達も興味が湧いてよ。だから手を貸して戦いを盛り上げてやったのさ。歴戦の戦士様とバトルとくりゃ観なきゃ損って訳だ」
「歴戦の戦士? 俺の事を言ってんのか?」
「他に誰が居んだよ。お前の事はコラスのデザロワでも観てたぜ、仮面ライダー龍騎。 後の情報はべロバから聞いた事だが、まさか創生の力で強くなったタイクーンにも引けを取らねえ実力とは恐れ入ったぜ。とんだレジェンド様のご降臨だ」
真司に視線を移し尚も笑顔を向けるケケラ。しかしどうしても感激や称賛と言う感情が伝わって来ない。
「思ったよりやるじゃないか」と何処か見下した様な冷笑が見えてる。が、ここへ来て軽く顔を顰めたケケラ。
「だが困るんだよなぁ~。俺の推しに妙な事を吹き込まないでくれよ?」
「どう言う事だ?」
「コイツはな、悲しき涙を仮面で隠しながらも気高く戦う戦士なんだよ。折角俺の求めてた本物の仮面ライダーを貫き通してたってのに、人前で涙さらしたら意味無えだろ? まあ良い。オーディエンスも盛り上がってる事だし、見応えの有る余興を提供してくれた事に免じて今日は勘弁してやる」
サポーターとこうして会話するのは初めてだが、何だコイツは?と真司は眉を潜めた。
推しって景和をアイドルか何かと勘違いしているのだろうか?
そもそも自分達の戦いをさもゲームとしか見てない物言いが癪に触る。
「余興だと...俺はアンタ等を楽しませる為に来たんじゃないぞ」
「おいおい、人様のテリトリーに飛び入りしといてそりゃ無えだろ。お堅いレジェンド様だなぁ?」
尚もヘラヘラした態度を崩さないケケラに真司は内心怒りが沸き上がるのを感じた。
「......アンタ達は、自分が何させようとしたのか解ってるのか? 危うく景和が一生拭いきれない罪を負う所だったんだぞ?」
「ああ? チャンスを与えてんだよ。デザグラで誰もが己が目指す理想の世界を手に出来る様に、ギーツを倒す事でタイクーンは望みを叶えられる。世紀末ゲームはそう言うルールだ。それに言っただろ、コイツは悲しみを仮面で隠す戦士だってな。己の罪を背負ってでも生きていける強さを持ち合わせる、正に本物の仮面ライダーだ」
「何が強さだよ。アンタ、サポーターとしてずっと景和の事見て来たんだよな? こんなに彼を苦しめて何になるんだよ?」
尚も真司に追及されケケラは面倒臭そうに溜息を吐く。
「強者ってのはどんな困難も乗り越えてこそだろ? 大体なあ、ギーツを始末しても、完全な女神に覚醒したツムリに願えば奴が存在した歴史なんざあっさり抹消出来る。罪なんて辛気臭え事で悩む必要は無え。罪その物が無くなっちまうんだからよ」
「......っ!!」
真司の全身を悪寒が襲う。最早人間の発想ではない。こうも冷酷な台詞を平然と吐けるケケラがどうしようも無く恐ろしく感じた。
デザイアライダーのサポーターは遥か未来からやって来た人物と言うのは聞いていた。
時代によって人の価値観は大きく変化する物だが未来にはこんな奴等が溢れているのか?
行き過ぎた技術進歩の先は破滅だとは良く耳にする。
姿、寿命、欲しい物、どんな物でも簡単にデザイン出来る環境と言うのはこんなにも人を薄情にしてしまう物なのか?
考えただけでも寒気が止まらない。
ケケラにとって「推し」とはアイドルではなく自分の思う通りに動くゲームキャラと言う感覚に近い。初めて景和と対面した時は彼を気にかけ激励して信頼を掴んで行ったが、それは全て己の歪んだ願望を実現する建前に過ぎなかった。
悲しみの涙を仮面で隠す戦士。この勝手な概念を景和で再現させる為に彼は裏であらゆる非道に手を染め、景和を陥れて言った。
全ては自分が楽しむ為に。
悲しみながらも勇ましく戦う景和を見る為に。
それがケケラと言う男である。
そこまでの人物像を掴んでなくとも、真司は目の前の下衆に対し怒りを燃やし拳を震わせる。
「.....ふざけるな...人の命を何だと思ってるんだ!」
「っは、人ね~。2000年も転生して神の力まで得た奴がはたして人間と言えんのかね?」
「関係あるか!英寿君は良い奴だ!彼は景和を心配して戦う事を拒んでた。創生の力だって、お前達みたいに願いを餌にして人を戦わせたりなんかしないぞ!」
「あ~あ、もう付き合ってらんねぇな。 さ、そろそろ行くぞ桜井景和。ギーツを倒しにな。レジェンド様相手にここまで奮闘出来たんだ。お前なら出来る、心配すんな」
これ以上話ても無駄だと嫌気が刺したケケラは真司を無視し、再び胡散臭い笑みを浮かべ聞こえの良い応援の言葉で景和を呼び止める。
しかし、暫し無言のまま俯いていた景和だったが…
「....................断る」
「...........あ?」
途端にケケラの笑顔が引きつる。
「...............聞き間違いか?.....もう一度言ってくんねえか?」
「断るって言ったんだ......」
そして今まで下げていた頭をゆっくり上げ立ち上がる。その表情は何処か憑き物が取れた様な印象を受ける。
「気が変わった.....英寿達と一度話してみる。 姉ちゃんを救える方法が他にも有るかもしれないし.....」
これを聞いたケケラは盛大に手を叩き忽ち大声で冷笑する。
「くっはっはっは! 他の方法だぁ? おいおいおい、レジェンドに勝てないショックでおかしくなったか? 女神の力以外にどんな策が有る?」
「英寿はどんな時も二手三手先を読んで行動してた。何の考えも無しに安心する事を言う奴じゃない.....」
それを聞いてケケラの表情から少しずつ笑顔が消えていく。
「......お前、ミツメに罪を償わせないとかでギーツをボロクソ罵ってなかったか? 浅はかな希望で敵に縋るなんざ、ちと虫が良すぎんじゃねえの?」
「その事については謝るつもりだよ。姉ちゃんの為なんて言って、俺は自分の事しか考えてなかった。英寿にだって大事な家族が居たのに。真司さんの言葉でようやく思い出したんだ。家族が大事なんて、誰だって同じだって」
「景和...」
真司は安堵の笑みを浮かべる反面、ケケラはどんどん表情を歪ませ景和を睨みだす。
自分の思う通りにならない状況がつまらなくて仕方がないのだ。
「仮にその他の方法とやらで家族が戻ったとして、この世界で犠牲になった連中はどうする? このまま見殺しにする気か?」
「そんなつもり無い! けどそもそも信用出来ないんだよ、あのジットとか言うゲームマスターは。世界をバットエンドになんてされたら、英寿を倒した所で不幸になるだけだろ!」
景和は声を上げて反論する。
新たに運営から送り込まれたゲームマスター・ジットは自らを「世界をバットエンドに導く為に送り込まれたゲームマスターだ」と自称したのだ。
彼は自分達の時代のバットエンドを望む歪んだVIP達の要望で行動している。
景和達からすれば溜まった物ではない。
ケケラや運営、その他オーディエンスなど景和を支援する者は多いが彼の家族を気遣う者は誰一人居ない。彼等にとって重要なのは自分好みのショーが見れる事であり、景和の家族が生き返るかどうか等瑣末事でしかないのだ。
運営が景和にギーツ討伐を指名したのはブジンソードと言う強力な力を持ちながらも道を誤り、後に引けない彼が利用し易かったからだ。
仮に英寿達の言う何等かの方法で沙良たちが蘇ったとしても、景和が作ってしまったこの狂った世界を何とかしない限り彼に希望は無い。
英寿が死に、創生の力さえ手中に収めれば、景和達の時代がどうなろうと知った事ではない。
ケケラにとってもそんな絶望的状況で仮面ライダーとして気高く戦う理想の景和を見る事が生き甲斐である。
だからこそ、こうして推しが自分に楯突く事がストレスでしかない。
「......何度言ったら解るんだ? 幸せと不幸の総量は決まっている。誰かを蹴落とさなきゃ幸せは掴みとれない。全てが丸く収まるなんていう都合の良い話はないんだよ。家族と世界を救うには、ギーツを始末し女神を完成させる。 お前にはそれしか道は無えんだよ!!」
「俺は――――」
「アンタの言葉は一理ある」
「真司さん!?」
景和が何か言い返そうとした時、真司がケケラに賛同する様な事を言い出した事に驚く。
「俺もこの20年間、ジャーナリストとして色んな人間や事件と関わって来た。
スポーツや芸能でも勝利した人間と敗北した人間じゃ全く環境が違う。
時には海外に飛んだりもして、富裕層の裏で貧困に苦しむ人間だって見た事もある。そう言う格差や些細な考えの違いで大きな争いに発展する事だってある。
だから俺は、少しでも世界が平和になる為に色んな方法を探し、記事にして伝えたりしてる。
でも現実は単純じゃない。 幾ら過去に龍騎として戦ったとしても、世界には俺だけじゃどうしようも出来ない理不尽が山ほど溢れてる。そう言うの見るとつくづく自分の無力を実感するよ」
「ほほ~、流石はレジェンド様だ。世の中の仕組みを理解してらっしゃる」
真司の言葉に多少気を良くするケケラ。
「でも響かない」
「............あぁ?」
だがその良い気分は直ぐに打ち消される。目を見開きガンを飛ばすも、真司は全く臆する事無く睨み返す。
「自分で言ってて気づかないか? 無いんだよ説得力が全く。何でもすぐ簡単に手に入る癖に幸せの総量がどうとか、ましてゲーム感覚でしか人を見れない奴が!家族の為に必死で戦ってる人間を弄ぶお前が、本物の仮面ライダーとか語っても何にも心に響かないんだよ!」
「真司さん......」
景和が真司の言葉に心を打たれた刹那....
突如目の前から響く銃声。急いで体を逸らす真司と景和。
気が付くと、いつの間にかケケラがレーザーレイズライザーを構え発砲していたのだ。
「ちょっと年季入ってるからってなぁ........古代人如きが、この俺に説教とはいい度胸だな?」
尚も真司たちに銃口を向け鬼の様な形相を向けるケケラ。
「へへ、案外直ぐ化けの皮が剝がれたな。いや最初から化かす気なんて無かったか?」
しかし真司は臆する事無く余裕な笑みを浮かべ煽りだす。20代の頃にもモンスターや悪人が不利な状況になった際はマウントを取る様な発言は何度かしていた。流石にこの年では大人げ無いと自覚してるが、それだけケケラに対し鬱憤が溜まってたのである。
これによりケケラはますます憤慨し、今度は景和にも怒りの矛先を向ける。
「うるせえ減らず口叩いてんじゃねえよ! 大体、桜井景和てめぇ! バンピーのお前をここまで教育してやったのは誰だと思ってんだぁ!散々手助けしてやった俺より、たかが数回会った程度の野郎に媚び諂う気かぁ!?」
「真司さんは全身全霊で、真剣に俺と向き合って説得してくれたんだ。道楽の為に勝手な理想像ばかり押し付けるお前とは違う! 俺はもうお前の思い通りにはならない!!」
「そう言う事だ。残念だったな? 景和の純粋な願いを弄んだお前達を、俺は許さない!」
完膚なきまでに全否定されたケケラはいよいよ我慢が限界に近付く。
神をも超越した自分等未来人に取るに足らない古代人が反旗を翻す事は何よりも耐え難い屈辱。
推しを応援等と自負するも本質は蔑視である。でなければ過去の人間を古代人と称しゲームの駒になどしない。
自分が恩着せがましい事に気づきもせず、勝手に裏切られたと感じ逆情する。
「古代人如きが.....」
額に怒筋を浮かせ歯ぎしりしながらケケラはレーザーレイズライザーにブラックレイズライザーカードをセット。
《KEKERA SET》
「生意気に盾つてんじゃねえぇ!!」
《LASER ON》
《PREMIUM KEKERA LOADING》
《READY FIGHT!》
インプットリガーを引き、銃弾の代わりに禍々しい光が飛び交いケケラを包み、黄緑色に装飾された蛙の様な異形、プレミアムケケラへと姿を変えた。
ケケラの変貌により身構える2人。
しかしここで更なる異変が起きる。Pケケラの後ろから何やら大人数の足跡が聞こえて来たのだ。
「ジャ~、ジャ~」
Pケケラの背後からわらわらと溢れだす複数の異形、ポーンジャマトが群れを成して現れる。その数は数10体どころではない。どう見ても200体以上は居そうな大群だ。中にはルークジャマトやジャマトライダーと言った上位個体も何体か確認出来る。
「ジャマト!? こんなに沢山何処から?」
あまりの数に驚愕する景和。
ジャマトとは運営がデザグラ用に用意している敵キャラであり、退場したデザグラ参加者のIDコアに蓄積された記憶を肥料、栄養源として育成された生物である。
全ての参加者を復活させたこの世界では肥料は存在しない事になるため、景和はジャマトは居ない物と認識していた。
仮に生き残りが存在したとしてもこれ程の大群を用意出来るのは異常である。
しかしその異常事態を引き起こせる方法に、心当たりは有る。と言うかそれしか考えられない。
「ツムリに叶えさせたのか?」
「ご名答!お前が万一ギーツに負けた時の為にとジットがな。本当はもっと骨のある奴を揃えたかったが肝心の女神様がどうしても拒んでなぁ」
苛立ちを隠さないままからくりを打ち明けるPケケラ。
ジャマトの大群は此方を威嚇する様に唸るが、真司は至って冷静である。
初めから危険は承知で乗り込んだのだ。これぐらいの歓迎は覚悟の上だ。
ましてこうも援軍の到着が早いとケケラの作戦も予想が付く。
「こんな奴等引き連れて、最初から俺を逃す気なんて無かったんだな」
「当たり前だ。これ以上ギーツに仲間が増えると面倒だからな。世紀末ゲームを台無しにした報いだ。龍騎、お前にはここで消えてもらうぜ!」
再びレーザーレイズライザーを真司に向けるPケケラ。
要は逃がすと見せかけ油断してる間に裏で適当に始末する気だったのだ。何とも狡いやり方で最早怒りを通りこして呆れの感情の方が大きい。
しかしこれでハッキリした事がある。
ケケラ達は遠慮が要らない敵だと言う事が。
一方、景和の方は目の前のジャマト達を見て顔を顰めた。
ツムリの人格からしてジット達の願いをあっさり引き受けるとは思えない。ほぼ強制なのは間違いないだろう。
創生の神になる事の代償は本人の意思の消滅。不完全とは言え運営の願いを叶えたと言う事はそれだけ女神化が進んでると言う事になる。
運営は所詮ツムリを願いを叶える道具としか見てない。
そして自分も新たな力を、この世界もツムリに叶えて手に入れた。
自分も卑劣な運営と変わらないのだと、改めて実感しているのだ。
「景和」
そんな景和に再び真司が話しかける。
「ツムリって子ともしっかり話せよ。コイツ等を倒した後でな?」
「............はい!」
彼に背中を押され、景和は気を引き締める。
そうだ、今は気落ちしている時ではない。自分もツムリに対し償わなくては。これ以上彼女を苦しませない様にするには、運営から開放するしかない。まずはこの場のケケラ達を倒す。
「よし、じゃあ行くぞ!」
真司の掛け声を皮切りに景和は再びブジンソードバックルをデザイアドライバーにセット。
《SET AVENGE》
真司もカードデッキを掲げ、目の前に正方形の光の鏡を出現させる。それに向けてカードデッキを映す事で腰回りにVバックルが装着される。
「変身!!」
《BLACK GENERAL, BUJIN SWORD!》
声を合わせ、バッケントリガーを引いた事で景和は再びタイクーンブジンソードへと変化。
光の鏡からドラグレッダーが飛び出し、真司も仮面ライダー龍騎へと変身を遂げた。
更には即座にドラグバイザーツバイにカードを入れ....
《 -SURVIVE- 》
龍騎サバイブへと姿を変えたのだった。
《READY.....FIGHT!》
「しゃあっ!!」
この話もようやく折り返し地点です