真世界の影   作:fw187

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蜃気楼の旅人(仮)

 1万年に渡り物理的苦痛に満ちた無限回廊を漂い、完璧に魂の転生不能な虚無の海に潜る。

 幻海の懸命な翻意を頑なに拒み、滅びの道を選ぶ元格闘家の姿が霞んだ。

 視野を黒い渦が覆い凝縮の後、妖し気な雰囲気と異国風の装束を纏う男と化す。

「暗黒武術会準優勝者、戸愚呂殿に申し上げる。

 私は前コングラス城主、ドルリアン・ガーディシュ伯爵と名乗る者です。

 単刀直入に言うが異世界の侵略者、妖魔と闘って貰えませんか?

 霊界上層部も拷問等の準備が省けて助かる、と喜んでいました。

 先に時を遡り、呪縛を解く事が信頼を得る最短の道と考えます」

 年齢不詳の男は流暢に喋り倒し、返事を待たずに時を超えた。

 

「助けてくれ、戸愚呂!」

 絶叫が響き、記憶の蓋を開く。

 自責と慙愧の念、死んでも消えぬ罪悪感。

 妖怪に転生後も衰えなかった悪夢、呪縛の根源。

 忌わしい過去、凄惨な虐殺の現場が瞳に映る。

 言葉にならぬ感情が身体を貫き、唇が動く。

「やめろ、潰煉!」

 怨敵に強靭な拳を叩き込み、顔面を粉砕。

 醜悪な怪物は悲鳴を挙げる余裕も無く、無数の塵と化す。

 叩き伏せられ、両膝を付き、肩から血を流す若い男。

 友が虐殺される様を見ずに済み、安堵する格闘家が声を張る。

 

「あんた、強いな!

 仲間を救ってくれて、礼を言う。

 俺も鍛えている、心算だったんだがな。

 一体どんな修業を積めば、そんなに強くなれるんだ?

 良ければ、鍛え方を教えて貰えないか。

 もっと強い妖怪に襲われた時、自力で皆を守りたい」

 戸愚呂の裡に憤怒、底知れぬ激情が渦巻いた。

 若い男は鬼気迫る表情に怯え、無意識に後退る。

 

「甘ったれんじゃねぇ!

 餓鬼の御守りなんざ、真っ平だ。

 人に頼る奴、てめぇの頭で考えようとしない卑怯者に見込みは無い。

 仲間を護ろうって気があんなら、死ぬ気で自分を鍛えろ。

 本当に強くなる気のある奴ってのは、人の力なんか借りねぇよ。

 暗黒武術会招待者(ゲスト)ってのは、生贄なんだ。

 とんでもなく理不尽な殺し合い、圧倒的不利な条件で勝ち抜く覚悟が要る。

 自分自身で壁を破り、限界を超えてみな。

 できねぇなら、諦めな」

 無情な言葉に顔が歪み、唇を噛む若い男。

 格闘家は過去の自分に背を向け、歩き出した。

 

 声が震えぬ様、慎重に呼吸を整える。

「報酬は受け取った、あんたが雇い主だ。

 どんな魔物でも構わん、闘ってやるさ」

「有難い、礼を申します。

 暗黒武術会出場者2名を雇い、次元界の壁を超えると致しましょう」

 再び視野が歪み、時を超える。

 六遊怪No.2是流(ゼル)、魔性使い先鋒を務めた画魔。

 霊界に着いた実力者の前で、妖気が渦巻いた。

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