(さて君の想像通り銀河宇宙には数多の知的生命体、非人類種族が満ち溢れている。
無数の恒星~太陽と言った方が良いかな?~及び、周囲の軌道上を巡る数多の惑星が在る。
知的生命体も銀河文明に参加しているだけで数百万を数え、非人類種族もまた無数に存在する。
竜王を名乗るヤンダル・ゾックは私から見ると、蜥蜴《サラマンダー》に近い印象を受けるな。
実際、困ったものだよ。
地球発祥の人類系種族は何かと言うと、竜《ドラゴン》と名付けたがる傾向がある。
恐竜とか翼竜《プテラノドン》とか、果ては竜の落し子《タツノオトシゴ》とかね!
それなら体長数10センチのメガネザル、ナマケモノ達も《人類》の一員ではないか?
日本という国では八岐大蛇《ヤマタノオロチ》が、最も有名であるらしいがね。
心を6区画に分ける事が出来る私でさえ、頭や首を8つも持つ八頭竜など想像した事も無いよ!!)
アルド・ナリスは異星人の竜型知的生命体、第2段階の調整者《レンズマン》を凝視。
ヤンダル・ゾックを遙かに超越する賢者の囁き、女性的な声音の精神感応波を完璧に理解。
異世界の魔道師が用いる意思疎通手段に倣った暗示能力、催眠術師の戯言《ジョーク》に絶句。
笑いの衝動を懸命に噛み殺し、心話の要領で思念波を送り出す。
(御気持ちは良く分かりますよ、親愛なるヴォーゼル。
中原ではありませんが死の砂漠ノスフェラスに棲む幻の巨人族ラゴン、セム族が該当しますね。
私が実見する機会を得たのはは妻に同行する事を選んだ娘、セム族1人だけですけどね)
ヴェランシア星の超越者、竜《ドラゴン》が《笑った》。
(君は分かってくれるから、良いさ。
理知的な種族の成員と想像力を駆使した対話が出来るのは、何とも楽しいね!
私の友人キムボール・キニスンなら、『宇宙神クロノに感謝!』と言う所かな)
竜族の賢者が楽しそうに閃かせた思考が、心の琴線に触れる。
(宇宙神クロノ、ですか。
銀河系調整官クリストファー・キニスンは、調整者ではないのですか?)
(クリストファーは、キムボール・キニスンの息子だよ。
第3段階レンズマンではあるが、君の想像する様な調整者ではないな。
アリシア人長老達の精神融合体、導師《メンター》が最も近い存在だと思うが。
彼等は銀河《ボスコニア》戦争の終結と共に、此の時空から立ち去ってしまったよ)
(連絡は、取れませんか?)
(残念だが我々には、多次元宇宙《パラレル・ワールド》の概念は存在しなかったからね。
第3段階レンズマン達でさえ、アリシア人が何処に移動したかは究明出来ずにいる。
次元間を移動する手段は、ボスコーン文明も所有していなかったと思うよ。
所有していれば我々、銀河文明との戦いに投入した筈だからね)
異種族の夢想家が紡ぐ思考に一瞬、残念と形容するに相応しい気配が漂う。
どうやら、想像以上に数多くの異世界が存在しているらしい。
豹頭王グインの心象《イメージ》、ヴァレリウスが視た心話映像を精神的視野へ展開する。
(グインと彼の出身地について、何か情報はお持ちですか?)
(残念ながら銀河系、ランドマーク星雲に豹頭人身の種族は確認されていない様だ。
強いて挙げれば『尻尾を揚げろ、戦友よ!』が合言葉の猫型種族、ヴェギア人かな?
アリシア星系の第3惑星ランドック、とは驚いたよ!
銀河文明の先代擁護者、導師《メンター》に聞かせてやりたいね!!
アリシア星系第3惑星は銀河パトロール隊の象徴、《レンズ》供給地として知られている。
訓練の為に幾度か訪問したが、時も次元も解明された天上の都とは言い難い。
我々の宇宙を去ったアリシア人と、ランドックの関係は何とも言えないな)
(ヤンダル・ゾックについては、どうでしょうか?
私はヴァレリウスからの心話映像を初めて見た時、『ウロボロス』の名が浮かんだ。
大洪水時代以前の伝説に登場する竜と蛇の合いの子、の名前だったと思いますが。
第1印象は進化した蜥蜴、という処かな)
ヴァレリウスやリンダが視た心象《イメージ》、レムスが変貌した姿のヤンダル・ゾック。
クリスタルに出現した竜の騎士がナリスの想像力に描かれ、精神的視野に拡大投影される。
(大蛇に近い形態の種族は我々ヴェランシア人、アイヒ族の他にも多いがね。
進化した蜥蜴なら『火星の大統領カーター』に出演した悪い宇宙人同盟代表、トプシダーかな)
ナリスの脳裏に破壊光線銃を構え宇宙服を着用、二足歩行する蜥蜴人《トプシダー》の映像が映る。
(永遠の美女デジャー・ソリスの描写は、笑ったね!
ヤンダル・ゾックの正体は案外トプシダーのプリンセス、黒トカゲ姫かもしれないよ。
ペリー・ローダン・シリーズ、は知らないかな?
君にも、一読を薦める。
或る世界では数多の愛読家が首を長くして待ち焦がれる、大変興味深い報告書《レポート》だ)
(ヤンダル・ゾックはキタイ全土から数万人に及ぶ女達を集め、帰って来た者は1人もいない。
私の友が見せられた映像では大勢の女達が浄めと称し、家畜の様に屠られていました)
ヴァレリウスがヤンダル・ゾックから、強制的に見せられたイメージ。
建設途上とされる竜都、シーアンの映像を精神的視野に投影する。
(残念だが、思い当たる事はあるな。
犠牲者を拷問してデルゴン貴族が生命力を抽出、吸収する場面を連想するよ)
ヴォーゼルの心に、人類には理解を絶する程に深く凶暴な《憤怒》が沸き起こった。
長命なヴェランシア人数百世代に渡る遺伝記憶に蓄積された、貪り食われる際の深甚な《恐怖》。
表裏一体の激烈な感情が、ナリスの繊細な心を圧倒する。
(失礼。
竜が人身御供を要求する寓話は数多く存在するが、実際は違う。
断言するが、竜は人を食べたりしないよ。
権力を持つ者が己の力を誇示する為、犠牲を強要しているに過ぎない)
第2段階の思念波が優美な感触で聖王家の後継者、初級魔道師の免状を持つ夢想家に接触。
強烈な感情を浴び硬直した《心》を柔軟に解し、疑問の余地を持たぬ思考が謝意を表明する。
(神話伝説に度々登場する人身御供、権力者が民衆を縛る為に捏造した虚構ですね。
恐怖で権力を維持する為の行為を、神や竜への犠牲と責任転嫁する。
ヴァレリウスが対面した大導師アグリッパは、齢3千年と伝えられている。
何を食しているかは、知りませんがね)
(或る精神文明の発祥地ブータンは子供達に、竜は善い心を栄養分として成長すると教えている。
美しい思考や幸福な思考を味わい精神的な食事、栄養分の補給としているのだと。
精神エネルギー生命体の先住者、翼の民が子孫かもしれぬアルメディア星系のパピロン達。
第二銀河帝国の王女セイヤ・アスタシア、惑星タジールの猫神族を慕う非人類種族の様にね。
アンドロメダ星雲のエネルギー転換能力者モドゥル人も、幻影結晶体を用い精神を浄化する。
我々ヴェランシア人も幻覚に耽っていると誤解されているが、同じ事なのだよ)
圧縮された思考情報、数多の伝説がナリスの心へ転送された。
(グル・ヌー付近に結界の入口を有する大導師、アグリッパも同じかもしれませんね。
宇宙全体を観想する事が、精神的な栄養補給になっているのかな)
(君との会話は最高の栄養だよ、数百年は寿命が延びるね!
三千年生きた《大導師》アグリッパと様々な事象について、心行くまで語り合いたいものだよ。
九百歳か千歳かはっきりしないイェライシャ、一千歳で入寂したロカンドラスも大歓迎だ。
コングラス城の長命族ドルリアン・ガーディシュ、八百数十歳のグラチウスでも良いがね!
君が数日で元の世界に帰ってしまうとは実に惜しい、もう暫く此の世界に留まる気は無いかね?
銀河文明に属する数百万の惑星を案内し、数々の異種と対面させてあげるよ)
(素晴らしい!
イェライシャに弟子入りしないかと誘われた時の、ヴァレリウスの気持ちが良くわかるな!
残念だな、元の世界にグインが存在しなければイエスと言う所ですよ。
此方には高度な科学技術が発達している様ですが、カイザー転送機は存在しないのですか?)
(ナドレックは時渡りの次元テレポートを観測して、次元転送機を製造しようと研究している。
報告者キース・ローマーの報告書では多次元宇宙の帝国、MC転移機《シャトル》が存在する。
矢野徹の報告も、アンドロメダ星雲の人身売買組織が類似の機械を使用する形跡が覗える。
ロジャー・ゼラズニイの報告では、精神作用による平行宇宙移動能力者も存在する様だ。
十五の次元界に限定された次元間透視、次元間移動能力を備える種族も存在したそうだ。
残念な事にマイクル・ムアコックの報告に拠れば、絶滅したらしいけれどね)
(『パラレルワールドと言う概念は存在しなかった』と仰られていましたが、凄いですね!
羨ましい位に広範な知見を有する貴方は一体、何処から異世界の情報を得たのですか?)
(次元間遠隔感応能力者エドワード・E・スミスが、時空を超えて《コンタクト》して来たのさ。
他にも私を主人公とする報告書《レポート》が作成されたが、大いに楽しませて貰ったよ!
私の最大の願望は何を隠そう、太陽系第3惑星テラの世界SF大会へ出席し思考を交換する事さ!
出席者の地球人《テラナー》達と語り合えれば、数万年分の寿命が得られると思うのだがね!!)
(世界SF大会《サイエンス・フィクション・イベント》ですか、面白そうですね!
私も一度で良いから見てみたいものです、なんとか参加させて貰えないかな?)
(大歓迎だね、仮装舞踏会《コスプレ・パーティー》に参加してみたら面白いと思うよ!
君の弟が演出した前代未聞の大当たり、絶賛の嵐を取った豹頭王一座に倣い挑戦して見よう。
『悪竜と美姫』で出場登録《エントリー》を申し込み、主役を張ろうじゃないか!)