(惑星ユゴスで自己完結し光の生命へ転生、消滅したと思っていたが実に有難い。
雄介と八岐が揃えば大抵の事態には対処可能だが何故、白人種の容貌を?
2千年の間に西洋へ転生しとっても不自然ではないが、第一帝国に合わせたかな。
雄介の場合と同様、握手や抱擁にて肉体接触テレパシーを用いるか。
蛇君と接吻など御免蒙るが、監視を誤魔化し状況を何処まで理解しとるか確認せんとな。
感激の表情を装いニコポン宜しく何度も肩を叩いたりしとれば、何とかなるだろうさ)
学者風の痩せた男は銀色の精巧な眼鏡を外し、薄紫色の美しい双眸が煌いた。
先方は旧知の友人と勘違いしているらしいが、何と返答したものだろうか?
何度も肩を叩き握手を求める相手に戸惑いながらも、虫も殺さぬ笑顔で掌を握る。
(我輩の思考を読んで返事を送り込んでくれ、此の部屋は盗聴されているからな。
君が何処まで状況を把握しとるか知らんが、今が5千年後の未来だと知っているか?
カンティングラス星系を覆い尽くした魔の胞子、いやいや、茶色の植物状繁殖体は?
タナトス生命体と敵《エネミー》の関係、安西竜二を操った《杖》は見たかね?
ラン=テゴスの眷属とは思わんが、カンティングラス星に住む種族は蛙に似ている。
彼等の集団超能力、催眠暗示波《ヒュプノ・ウェーブ》は銀河系全域を射程範囲に収めた。
宇宙大の幻影や時間次元の力場を操る化物、アンドロメダ星雲の怪物惑星に昇格しかねん。
けしからん事に命中率百%の瞬間物質移送装置、トランスフォーム砲を投入しおった。
カイザー転送機に寄生、機能を強化して操作しとるのだな。
最新の報告では半径数光年に及ぶ範囲の次元砲、コンヴァーター砲も使ったらしい。
4次元時空連続体を破壊する空間破砕爆弾(スペーススマッシャー)、ディスラプター登場も時間の問題だな。
基礎データが不足している為、流石の我輩にも正体は断定は出来んがね。
大規模な次元断層を生起し、銀河帝国を虚無の海に四散させる可能性も急浮上しとる。
第一銀河帝国の象徴、戦闘王子《バトル・プリンス》と称されるセイ・グランヴァルド王子。
我輩に匹敵する知性の持ち主、銀河の知恵袋ライディン・ファイアーブラス第1宇宙伯。
雄介と意気投合した《闘神》銀河将軍ミラ・グランディール。
科学を信奉する宇宙帝国の3人神は我輩を放り出し、連日エネミー対策に大童だ。
まるで陽電子生体機械人《ポスビ》、第二帝国の侵攻に狼狽える星間帝国アルコン人の如くだね。
非人類種族の第二帝国は猫神タジール族の王女、セイヤ・アスタシアが混乱を抑えている様だ。
安西竜二は第二帝国の領域《テリトリー》を訪れ、アスタシア星系で猫神族の王女に対面したらしい。
雄介も精神文明ならぬ超能力種族の連合軍、機械の王国に対抗する第二帝国へ合流しとる筈だ。
カイザー転送機が最後に転送した伊吹涼の同類、シン研修生の記憶を解析して状況が判明したのだがね。
さっさと伊吹風太の持つ杖を破壊し、洗脳から解放して帰って来れば良いのに数ヶ月も連絡が無い。
全く気の利かん奴だが君は雄介や風太と会ったのか、他に何か情報があれば教えて欲しいね)
みずちの若長と見えた相手は何故か、当惑した表情で此方を見ている。
(君と吾輩の仲にも関わらず黙っとるとは怪しからん、肉体接触の思念波も盗聴されると思っとるのか?)
喜色を満面に表し握手を求めた相手は何故か、不審な表情を浮かべ口を閉ざした。
期待していた反応が得られなかった事は明白だが、何を失敗ったのか全く不明。
何を期待していたかは知らないが、カンティングラスと云う名は聞き覚えがある。
茶色い直物に覆い尽くされた世界で聞いたが、数ヶ月も経つとは時間軸が異なるのか?
先住者中でも最強の力を持つ八岐、みづち一族の若長に自分の思考を読み取れぬ筈は無いが。
旧知の北斗多一郎と思っていたが別人かも知れぬ、西洋中世風の扮装は何を意味するのか?
「おや、君は蛇君ではないのか?」
えい、ままよ。
握手を外し、破れかぶれで名乗りをあげる。
「現在は神聖パロ国王と称しているが、私はカレニア公領を統治するアルシス王家の当主。
前代のクリスタル大公を務めし我が名はアルド・ナリス、以後お見知り置きを願います」
(闇と炎の王子、アルド・ナリス!
未公認の世界最長小説、某サーガの登場人物ではないか!?
言われてみれば描写の通り容姿端麗、世界生成の秘密を極める志を抱く野心家だったな)
「何と、絶世の美男と後世に語り継がれた有名なクリスタル公かね!?
いやいや大変失礼した、私は20世紀の日本に生を誕け加賀四郎と名乗る一介の天才だよ。
数多の異次元空間を巡り5千年後の未来、銀河帝国の首都惑星ラクラジルへと漂着した所さ。
旧知に良く似た魂をしておるので間違えてしまったが、御無礼の段は平に御勘弁を願いたい」
奇妙な言い回しだが滑らかな口調、冷静沈着な物腰にも高い知性が窺える。
「これはまた丁寧な御挨拶を頂戴しました、貴方は私の事を既に御存知であられる様ですね?
失礼ながら何時お会いしたか思い出せませぬが、過分な御褒めの言葉を賜り誠に恐縮です」
「君は我輩の事を知らなくて当然だね、何も失礼な事は無いと保障するよ。
我々の経てきた異次元や時空間は、君の世界と交差しておらぬのだからね」
今度は期待に応えられたと見え、相手の緊張が緩んだ。
相手は自分の事を何処まで知っているのか、慎重に探りを入れてみる。
「貴方は私より遙かに多くの事を御存知の様ですが、私は貴方の世界について全くの無知です。
想像を遥かに超えた科学を有する世界と御見受けしました、心底より脱帽致します。
盟友ヴァレリウスが大導師アグリッパと対面した際も、此の様な心持となったのでしょうか。
私とは到底比較にならぬ優れた知性を御持ちの賢者様に是非、教えを乞いたいものです」
猫が喉の下を撫でられ、ゴロゴロと鳴き声を上げている様が想起される満足気な反応が返って来た。
(良く出来とるな、雄介と話すより遥かに面白いではないか!
存分に楽しめそうだ、誰か知らぬが心底より感謝するぞ!!)
「当然だよ、ワトソン君。
いや失敬、中原を護り怒涛の流血大河を遮る者アルド・ナリス君。
君の知性であれば理解可能であろう、我輩の明智を披露するが何から聞きたいかね?」
ほほう、お手並み拝見と行こうか。
世界生成の秘密では漠然に過ぎるがヤンダル・ゾック、いや中原最大の謎はどうだろう?
「そうですね、豹頭王グインについて何か御存知ですか?」
さて、どんな答えが返ってくるか?
(馬鹿正直に答えるのは芸が無いな、一寸がっかりさせてやるか)
「我輩に知らん事は無い、とは言わんが勿論パロの真珠2粒を救った聖王国の恩人は知っとるさ。
古代機械を経由し何処からかルードの森に出現の後、数々の冒険を経てケイロニア王となった。
東方の大国キタイを虐げる竜王に唯一対抗し得る可能性を秘めた中原の守護神、豹頭の超戦士。
星々のエネルギーを秘めたランドックの廃帝、宇宙最強の戦闘用改造生命体だね」
興味深い答が返ってきたが全て、アグリッパが語った内容から類推可能な事柄ではないか。
軽い失望を覚え興醒めした表情を隠さず、やや露骨に口調へ顕して反応を窺う。
「彼が何処から来たか、御存知ですかね?」
予想に反し相手は煙水晶の様な瞳を煌かせ、身を乗り出して此方を覗き込んで来た。
(これは面白い、実に退屈せんな!
では、楽しませて貰うとするか)
「ランドックとは君が現在立っとる銀河系第1帝国首都、惑星ラクラジルの未来の姿かもしれん。
ファイファ・システム、グレイト・マザー、機械の王国、特A級の表現も共通している。
時も次元も解明された天上の都とは言えぬが、クローナ・クローネ創造も夢ではない。
ファイアーブラス教団、望星教団の関連は特定し難いがね。
雄介の記憶に残る調整者風に言えば【シンタックス・エラー】、データ不足だよ」
思いがけぬ不意打ちを喰らい、表情の急変を抑えきれない。
「貴方は調整者、グイン派遣の黒幕を御存知でおられるのか!?」
動揺の隠せぬ訪問者を眺め、思わず頬が緩む。
時空放浪者、加賀四郎の声が弾んだ。
「既知宇宙で最も進化を遂げた調整者、エネルギー生命体、超次元意識かね?
肉体面では最終段階まで進化を遂げた超越者から分離し、種族の垣根を越えて形成された集団。
種族の限界を突き破り神の領域に踏み込まんとする君は、我輩と同じ種族に属する者だ。
北の豹グインと南の鷹スカール、快男子カメロンが同じ英雄という名の種族に属する様にね。
豹頭の超戦士は世界生成の秘密を握る超越者、或いは最低でも超越者に直結する最大の手掛かり。
永遠の戦士と同様に英雄の種族を巡る数々の類似性、暗喩は様々な仮説を可能としてくれる。
西を鎮める男、安西雄介と異世界の銀河帝国を統べる調整者一族の西方公子マルスローン。
過去の記憶を持たぬ禍津神一族の長、剣の民を統べる黒太陽の化身と豹頭の超戦士。
無尽蔵のエネルギーを秘める筈のブラックホール生命体、宇宙最強の戦闘用改造生命体。
吾輩の英知を必要とする雄介も《北の王》ランドックのグイン、スカールと同じ種族だね。
アグリッパ大導師の言に拠れば、君も重要な鍵と推察される。
星船の鍵を握る南の鷹スカール、北の豹グイン、古代機械の指名した魔道大公アルド・ナリス。
キタイの竜も到底、太刀打ち出来ぬ程に強大な