ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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偽物、ランウェイへ

――――そんなこんなで迎えた翌日。

駅前の広場を貸し切って行われるイベントは、想定よりも大きなものだった。

会場の大歓声は途切れることを知らず。

特にまりあさん、かぐやさんのお二人が出た時の盛り上がりが半端ない。

 

(エルちゃん、本当に大丈夫かな・・・・)

 

舞台袖。

かぐやさんデザインのお洋服に袖を通し、はしゃいでいるエルちゃんを見て。

今更ながら不安に駆られてしまう。

当然ながら、人が多い場所だ。

あんな不特定多数に視線を向けられて、泣いてしまわないだろうか・・・・。

 

「ソラちゃんも見てよ!エルちゃんめっちゃラブだよ!」

「そら!にあう?にあう?」

 

いかんいかん。

不安がってるのを悟らせてはならん・・・・。

 

「はい!とってもおしゃれで、おとなのお姉さんみたいです!」

「えへへー!」

 

私とあげはさんにしこたま褒められて、上機嫌になってるエルちゃんに癒されていると。

 

「もーすぐ出番よ!」

 

加古さんが声をかけてくれた。

いよいよか・・・・!

 

「エルちゃん、あのお姉ちゃん達のところまで、歩いていくんだよ」

「大丈夫、怖いことはありませんからね」

「うん!」

 

ステージの上には、まりあさんとかぐやさん。

知らない顔ではないから、私が心配性すぎるだけだろうけども・・・・。

やっべ、こっちも緊張してきた。

 

「今よ!」

 

そして、ついにその時がやってきてしまった。

 

「レッツゴー!」

「ごー!」

 

あげはさんに背中を押されて、エルちゃんがてちてち歩いていく。

 

「きゃー!かわいいー!」

「かぐやデザイン?」

「モデルの子、ものすごく似合ってるー!!」

 

お客さんの反応は上々。

誰もかれもが笑顔でエルちゃんを受け入れてくれている。

――――だけど、

 

「――――ぅ」

 

歓声が大きくなればなるほど。

エルちゃんの歩みが遅くなっていく。

ああ、まずい。

会場の反応が、そのままプレッシャーになっちゃってる・・・・!

 

「エルちゃん、こっちこっち!」

「いっち、に!いっち、に!」

 

気が付いてくれたらしいまりあさんとかぐやさんも、なんとかエルちゃんの意識をプレッシャーから守ろうとしてくれるんだけども。

 

「ぅ・・・・うう・・・・!」

 

エルちゃんは、見るからに泣き出しそうになっていて。

 

「ッエルちゃん!!」

「ちょっ!?あげはさん!?」

 

回収するか否か。

悩んでいる間に、あげはさんが飛び出してしまった。

思わず私も追いかけて、舞台に上がってしまう。

 

「まり姉ちゃん、かぐ姉ちゃん。まかせて!」

 

ワンテンポ早く駆けつけたあげはさんは、エルちゃんの隣にしゃがみ込むと。

空を指さした。

 

「エルちゃん、見て。あの雲、うさぎさんみたい!」

「あーい!うしゃしゃん!」

 

泣きそうな顔から、一転。

ぱっと明るくなったエルちゃんの笑顔を見て、我に返る。

・・・・そうじゃん。

まずは、エルちゃんを笑顔にすることからだ。

 

「エルちゃん、あちらは、羊さんでしょうか?」

「うん!ひつじしゃん!」

 

あげはさんの反対隣に座って、同じように指さすと。

エルちゃんはまた笑ってくれた。

 

「しょら、あげは!あれ、くましゃん!」

「ほんとうだ!」

「おそらの動物園ですねぇ」

「あい!」

 

自意識過剰でなければ。

あげはさんだけでなくて、私も傍にいることで安心しているのだろう。

自分から空の動物を探し出すほどに、エルちゃんは持ち直したのだった。

よかった・・・・。

と、なっていたら、

 

「ぁ、あげはちゃーん・・・・!」

「ソラ、ソラ・・・・!」

 

ましろさんとベリィベリーさんの声で、我に返る。

ばちん、とはじける感覚と共に周囲を見渡せば。

四方八方から突き刺さる、『誰だあいつら』の視線。

――――う。

・・・・う。

う!!!

 

(うわああああああああああッッッ!!!!)

 

やっちまったああああああああ!?!?!?

 

「まあまあ、ソラちゃん!」

「あ、あげはさん!?」

 

一瞬で最高潮にまで狼狽えた私とは対照的に、快活に笑いながら腕を組んで立ち上がったあげはさん。

 

「こーいう時は、思いっきり楽しんだもん勝ちだよ!」

「楽しんだもんって・・・・!」

「――――とっても可愛い飛び入りゲストね!」

「私達で可愛くしちゃおう!」

 

あばあばしている間に、まりあさんかぐやさんまで乗ってしまい。

ミュージックも流れ出してしまった。

 

「――――~~~ッ!!」

 

あー!!もー!!

どうにでも!!!!なれ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――そんなこんなで。

ひょんなことから、ファッションショーに出ることになったしまったあげはとソラ。

ましろ達を含めた観客の前で、二人があっという間に着飾られていく。

あげははシャツの、ソラは上着の裾をそれぞれ結び。

更に、かぐやのパレオをあげはが、まりあの首飾りをソラが腰に付ける。

最後に、早乙女姉妹も愛用しているプリティホリックのアイテムで、化粧を施せば。

片や、波打ち際で戯れていそうな可憐さを。

片や、宵闇でエネルギッシュに踊っていそうな活発さを。

それぞれ纏ったのだった。

 

「あげは、しょら!かわいい!!」

「ええい、ままよ・・・・!」

「一緒にアゲてこー!」

 

そうして、五人はランウェイに繰り出した。

現役モデルである早乙女姉妹や、経験者であるあげはは当然様になっているが。

日々の鍛錬で体幹を鍛えているソラもまた、歩く姿勢は悪くない。

その更に後ろから、エルもよちよち続いていく。

観客の反応は上々。

若い女性はもちろんのこと、エルと近い年代の子どもの母親もまた。

かぐやデザインの子ども服に、親子そろってキラキラとした目を向けていた。

 

(こうなったからには、最善を尽くそう)

「っふ!」

 

それはそれとして、自分が一番劣っていることをわきまえていたソラは。

数歩足早に進むと、その場で体操選手さながらの宙返りを披露した。

勢いのままにランウェイ端までやってくると、恭しく一礼。

途端に、爆発したような歓声が上がる。

 

「キャーッ!」

「あの人、フィジカルやばぁ!」

「あのちっちゃいモデルの保護者さんかな?」

「ママもあれできる?」

「ううーん、ちょっと、無理かなぁ・・・・」

 

万雷の喝采の中、ちゃっかりましろ達へブイサインを向けるソラ。

 

「あっはは!ソラちゃんやるぅ!」

「足は引っ張れませんからね」

 

追いついてきたあげはと手を取り合い、軽くステップを踏みながら。

舞台の主役を早乙女姉妹に返却した。

そのままエルの傍に来てみれば、あげはや早乙女姉妹を真似しておすまししているのが見えて。

安堵が笑みとなって零れるソラ。

 

「かわいいー!」

「飛び入りの人もかっこよすぎ!」

 

そうして五人は、時間の許す限り。

ファッションショーを盛り上げていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(エルちゃん、よかった)

 

(あげはちゃんもソラさんも、すごいなぁ)

 

(早乙女姉妹と並んで、こんなに盛り上げて)

 

 

 

 

 

(――――でも)

 

 

 

 

 

(なんだか、もやもやするなぁ)

 

 

 

 

 

 

その陰で。

胸に燻ぶった、もやもやを。

ましろは笑顔にひた隠していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ふん、ふん!」

 

――――会場にほど近いビルの屋上では。

ミノトンが独り、鍛錬に勤しんでいた。

 

「ううむ、融けてしまいそうな熱さだ・・・・!」

 

灼熱の太陽に照り付けられる中、片手での腕立て伏せをこなした彼は。

傍においていた、2リットル入りのスポーツドリンクを、あっという間に飲み干してしまう。

 

「うむ、水分補給、ヨシ!体中に染みわたる・・・・!!」

 

全ては『理想の勝負』の為。

ストイックに鍛え続けるミノトンにとって、好きな瞬間の一つでもあった。

と、

 

――――キャアアアアーーッ!!

「む・・・・?」

 

女性たちの黄色い声援に、怪訝な顔になる。

質実剛健な彼にとって、甲高い声はあまり好ましくない。

何事か起こっているのかと、フェンスに近づいてみれば。

 

「あ、あれは・・・・!?」

 

見えてきたのは。

チャラチャラ着飾った格好で、歓声を浴びている女性たち。

その中に見知った顔もあって、ミノトンは愕然となる。

キュアバタフライと、プリンセス・エルなら、まだ我慢できた。

しかし、

 

「おのれ、見損なったぞ・・・・キュアスカイ・・・・!!」

 

抱き上げたエルと、笑いあっているソラを見下ろして。

ぎしり、と、フェンスを握りつぶした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

「――――大変申し訳ありませんでした」

「本ッ当にごめん、突然出ちゃって・・・・」

 

ショーも無事終えた、バックヤード。

私とあげはさんがまず行ったのは、乱入したことへの謝罪だった。

 

「ううん」

「お陰で助かったよ!」

 

まりあさんとかぐやさんの寛大なお言葉に、顔を上げる。

 

「エルちゃん、あげはとソラちゃんが来た途端、ものすごく安心してた」

「緊張しちゃった子どもが泣いちゃうなんて、何度もあったけれど・・・・やっぱり、笑ってくれる方がいいよ」

 

『今日はありがとうね』と、かぐやさんに頭を撫でられて。

エルちゃんが嬉しそうにはにかんだ。

その時だ。

 

『キャアーッ!!!』

「この声、カッコーさん!?」

「ステージで何が・・・・!?」

 

締めの挨拶が行われているはずのステージから、加古さんの布を裂くような悲鳴。

思わず覗き込むと、ランウェイに立っているミノトンが見えて。

 

「ッこんなとこにまで・・・・!」

「行きましょう!」

「うん!」

 

幸か不幸か、エルちゃんを連れている私達へ、まりあさん達が逃げる様に促してくれた。

 

「下らぬ遊びは終わりだ!来たれ!アンダーグエナジー!!」

 

みんなと合流する傍らで、ランボーグが召喚されて。

観客達が逃げていく。

 

「ソラさん!あげはちゃん!」

「みんな!ヒーローの出番だよ!」

 

確かな怒りを覚えながら、変身アイテムを構えた。

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