ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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今日のわんぷり30話、大変良かった・・・・。
ガオウ一派も良いキャラしててすこです(笑)


偽物、手を引く

――――昨夜不思議な夢を見て、今朝目覚めてみれば。

ねこさんがいなくなってしまった。

心当りと言えば、あの子と出会った洋館しかない。

他に手掛かりも無いので、鉛の空の下を一人ひた走る。

あんまり慌てるあまり、みんなを置いてきてしまったけれど。

そんなことが些事に思えるくらいに焦っていた。

 

「ねこさん・・・・!!」

 

あの子はぬいぐるみだけど、生き物じゃないけれど。

寂しいと、楽しいと感じる心が確かにあるんだ。

独りになんて、出来ない!!

 

「は、は、は・・・・!」

 

洋館についた。

人の気配がない、寂しい佇まい。

 

「・・・・ッ!」

 

前回とは裏腹に、進んで中に飛び込もうとすると。

 

「――――待っていたぞ、キュアスカイ」

「ッミノトン・・・・!!」

 

あーもう!やっぱり来るよなあ!!

 

「今貴方に構っている暇はないんです!!」

「貴様になくとも我にはある!!」

 

屋根の上に立つミノトンは、拳を振り上げて。

 

「来たれ!!アンダーグエナジー!!」

 

洋館を、ランボーグにしてしまった。

ッこいつ・・・・!

 

「ねこさん、今行きます!!」

 

ミラージュペンを掲げて変身。

洋館ランボーグと向き合う。

 

「ねこさんを返してもらいますよ、ミノトン!!」

「ふん!ねこなんぞすぐに構えなくなる!!」

 

『何だと?』と聞く前に、ランボーグの扉が開いて。

たちまち暴風が吹き、吸い込みにかかる。

 

「ゎ、っ・・・・!!」

 

・・・・やばい。

踏ん張れない・・・・!!

 

「――――スカイ!!」

「みんな・・・・ッぅわ!」

 

そこへ、仲間達の声が聞こえた。

振り向いたせいで隙が出来て、体が浮かび上がる。

しまった!!

 

「吸い込まれてる!?」

「ッスカイ!!」

「待て!!」

 

建物内に引き込まれる中。

飛び込もうとしたプリズムを、エクリプスが引き止めてくれるのを見ながら。

今度こそ館内に吸い込まれてしまった。

 

(ねこさん・・・・!!)

 

暴風吹き荒れる暗やみの中、何とか体勢を立て直す。

・・・・文字通り、腹の中に誘われてしまったのは仕方がない。

今はとにかく、ランボーグをなんとかしないと・・・・!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ァいったぁッ!?」

 

直前にもう一度暴風に煽られ、強かに尻を打ち付けたスカイ。

うずくまり、やや情けない姿勢で打ち付けた場所をさすりながら、立ち上がる。

 

「ここは、ランボーグの中・・・・?」

 

胃酸溢れる胃袋の中ではないことに安堵しながら、周囲を見渡していると。

 

「――――ッ!」

 

かすかな風切り音を聞きつけて、飛びのく。

つい今しがたまで立っていた場所に叩きつけられた、拳。

 

「ミノトン・・・・!」

「今度こそ、邪魔は入らんぞ」

 

持ち上げる拳から、砂埃をパラパラ落としながら。

ミノトンが睨みを利かせる。

 

「さあ、いざ尋常に勝負だ。キュアスカイ!!」

「ックソ・・・・!」

 

構えられた拳を前に、やむなく剣を抜き放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題(レディー!ファイッ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ニャ」

 

振動を感じて、ぬいぐるみは意識を取り戻す。

ふわふわの体で寝返って起き上がると、暗闇の中にいることに気が付いた。

 

「ニャア・・・・」

 

――――ソラの下を離れて。

元の洋館に戻ったことまでは、確かに覚えている。

その後、怒ったソラの声と、嫌な気配を感じ取って。

意識が遠のいて・・・・。

 

「ニャッ・・・・!?」

 

また振動が来た。

・・・・この、思い出に溢れた洋館で。

誰かが暴れている。

 

「にゃ・・・・」

 

ふるふる震えながら、声を絞る。

 

「ニャめて、ニャ・・・・!」

 

変わり果てた洋館の中で、ボールの様に蹲るぬいぐるみ。

 

「ニャめてニャ・・・・!」

 

空間が揺れる度、振動が轟く度。

『あの子の笑顔』を踏みつけにされているようで。

 

「ニャめてニャァ・・・・!」

 

生きていない体に、身を刺すような痛みが走った。

 

「ぅう・・・・ぅぅぅ・・・・!!」

 

――――『やめて』と口にしながら、何も出来ない己を。

ぽろぽろと大粒の涙を零して、呪い始めた時だった。

 

「――――ねこさぁーん!!!」

 

――――その声が、聞こえたのは。

 

「ねこさんッ!!ここにいますか!?大丈夫ですか!?返事をしてください!!!」

「ソラ・・・・!」

 

一条の光の様に、ソラの声がする。

 

「ッ貴様!!またしても我との勝負を蔑ろにするつもりか!?」

「っく・・・・!」

 

ズ、ズンと、振動。

誰かと戦っているらしい。

 

「ッ貴方こそ、ここを何だと思っている!!?」

「何!?」

 

大きな、何か金物がぶつかる音がして。

ソラの声が続く。

 

「ここはねこさんの大事な場所!!嬉しいことも悲しいこともたくさん詰まった、思い出の場所です!!」

 

戦う音はなおも続く。

 

「何人たりとも、土足で踏み荒らしていいい場所じゃないッッ!!!!!」

「ぬううう・・・・!!」

 

一際大きな音がした。

誰かが怯んだ声がする。

 

「――――覇真ッ!!龍王陣ッ!!」

 

――――闇が、断ち切られた。

 

「いた!ねこさん!!」

「ソラ・・・・」

 

光の中から、少し違った格好のソラが出て来た。

やはり戦っていたのだろう。

所々に擦り傷が出来ている。

 

「こちらに!手を!!」

 

出会った時とは裏腹に。

躊躇いなく差し出された、手。

 

「ここから、一緒に出ましょう!!」

「・・・・ニャア!」

 

『力になる』と約束してくれた、力強い手を。

握り返した。

 

「待てェッ!!」

「待つものかッ!!」

 

ソラの背後から、牛の様な大男が飛び掛かってくる。

彼の拳を、ソラの剣がはじき返して。

先ほどから何度も聞いていた音が、また鳴った。

 

「とにかく外に出ないと!」

 

踵を返して、ソラが走り出す。

 

「ねこさん、しっかり掴まっていて!!」

 

抱きしめてくれた、力強い腕は。

とても、温かかった。

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

「――――はあっ!!」

 

でっしゃーい!!最後の壁をぶち破って脱出じゃー!!

良い感じに爆発もして、気分はプリキュア恒例のアレよ!!

 

「あっ!スカイ!」

「よかった!無事だった!」

 

見下ろせば仲間達もいる。

よかった、そっちも無事だったんだ。

 

「エルちゃん、ねこさんをお願いします」

「えゆ!」

 

エルちゃんにねこさんを託して、仲間達と並ぶ。

 

「ッおのれ・・・・!」

 

私が飛び出してきた穴から、ミノトンも追いかけて来る。

・・・・遠慮の理由はないな。

 

「拙速を尊びます!!プリズム!!」

「はい!」

 

プリズムと手を取り合って、スカイミラージュを構えた。

 

「させるか!!」

「こちらの台詞だ!!」

 

ミノトンが飛び掛かろうとしたけれど、エクリプスが応戦してくれる。

 

「ここは僕達が!」

「二人とも、今のうちに!!」

 

バタフライやウィングも一緒になって対応してくれる中、改めてランボーグと向き合う。

 

「ランボーッグ!!!」

 

対する相手も、簡単にやられるつもりはないらしい。

両腕を振り上げて叩きつけて来た。

飛ばされてきた瓦礫を前に、やむなく手を放して散開。

攻撃を避ける。

 

「ランボーグ!!」

「「「ランボーッグ!!」」」

 

さらに腹の扉を開けると、時計台やタンスといった小型のランボーグも吐き出してきた。

 

「ぅわわわわ!?多すぎないかな!?」

 

隣のプリズムは、慌てつつもしっかり対応しているけれど。

やっぱり圧されてしまっている。

・・・・敵ながら、流石ミノトン製のランボーグというべきか。

一筋縄ではいかないな。

 

「ひろがるッ!!」

 

もちろん、ただでやられてやるつもりはないけれども。

 

「スカイソードッ!!ゲイルッ!!」

 

スカイソードに風の呼吸を組み合わせて、一閃。

小型を片付けてしまう。

 

「今です!」

「はい!」

 

今度こそ、プリズムと手を取り合って。

前を見る。

 

「スカイブルー!」

「プリズムホワイト!」

「「プリキュア!!」」

「「アップドラフト・シャイニング!!」」

 

遠慮も容赦もない必殺技を。

洋館ランボーグに、全力で叩き込んだ。

・・・・そういえば結構久々じゃないか?

アップドラフト・シャイニング・・・・。

 

「スミキッター・・・・」

 

何はともあれ、ランボーグは浄化出来た。

洋館も、ねこさんの大切な場所も、元に戻って・・・・。

本当に良かった。

 

「ぐぬぬ、今日はここで退くとしよう・・・・ミノトントン」

 

ミノトンも撤退したので、これでランボーグは大丈夫だろう。

 

「――――ソラちゃん!」

「大丈夫ですか!?」

「みなさん」

 

他のみんなも変身を解いて、駆け寄ってきてくれた。

エルちゃんとねこさんも無事だ。

よかった・・・・。

 

「ぬいぐるみ、無事でよかったね」

「ええ、怪我も無くてよかった」

 

ねこさんを抱き上げて、頭を撫でてやると。

罪悪感と一緒に、照れくさそうな気配を感じて。

思わず笑みがこぼれた。

 

「とはいえ、持ち主探しは続けないと」

「約束したんだもんね?」

「はい!」

「洋館の前の住人は誰なのか突き止めることは出来ましたから、あとはどうやって会いに行くか、ですね」

「ええ、何か良い方法があればいいのですが」

 

みんなと歩きながら、ねこさんとご家族を会わせる方法を考えていた時だった。

 

「――――」

「ッ、ねこさん?」

 

通りがかったタクシーに、ねこさんが反応したのが分かって。

思わず足を止める。

 

「――――そんなに落ち込まないで、りほ。絶対にあるから」

 

仲間達も、不思議に思って立ち止まる中。

ねこさんの視線は、たった今降車した親子に釘付けになっている。

・・・・この子、確か。

ねこさんの記憶で見た・・・・!

 

「――――マロン?」

 

小さく、呟く声が聞こえた。

 

「このねこさんのことですか?」

「りほ!よかったね、マロンだよ!」

 

言葉を失ってしまった、『りほちゃん』と言うらしい女の子の代わりに。

付き添っていたお母さんが訳を説明してくれる。

ねこさんとりほちゃんは、小さい頃からずっと一緒に居たこと。

だけど、引っ越しの時に置いて行ってしまったこと。

本当は早くに迎えに行きたかったけれど、中々時間が取れなかったこと。

・・・・よかった。

ねこさんのことを、忘れていたわけじゃなかったんだ。

 

「――――」

「ほら、りほ」

 

・・・・ねこさんは酷く緊張した気配になっているし。

りほちゃんも、置いて行ってしまった罪悪感でいっぱいなのか。

俯いたままだ。

何かを言うべきで、でも、何て言おうかと思っていた時だった。

 

「・・・・ッ」

 

風が、一陣。

勇気をくれる様に、吹いた。

 

「・・・・マロンさん、大丈夫」

 

だからだろうか。

悩みとは裏腹に、するりと言葉が出て来た。

 

「大丈夫ですよ」

 

もう一度、囁いてから。

りほちゃんの前に、跪く。

 

「・・・・?」

 

やっと顔を上げた、彼女へ。

ねこさんの。

――――マロンさんの手を、取って。

 

「ずっと、待ってたニャン」

 

この子が、ずっと、ずぅっと抱いていた思いを。

口にした。

 

「ぁ・・・・」

 

すると、みるみるりほちゃんの目に、涙が滲んで。

 

「ッマロン!あいたかった!!」

 

飛び込んできたりほちゃんを、咄嗟に支える。

 

「おいていってごめんね!これからはずっとずーっといっしょだよ!!マロン!!」

 

――――マロンさんと、りほちゃんの。

おんなじ声を聞きながら。

二人が泣き止むまで、しばしそのままの姿勢でいるのだった。

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