ガオウ一派も良いキャラしててすこです(笑)
――――昨夜不思議な夢を見て、今朝目覚めてみれば。
ねこさんがいなくなってしまった。
心当りと言えば、あの子と出会った洋館しかない。
他に手掛かりも無いので、鉛の空の下を一人ひた走る。
あんまり慌てるあまり、みんなを置いてきてしまったけれど。
そんなことが些事に思えるくらいに焦っていた。
「ねこさん・・・・!!」
あの子はぬいぐるみだけど、生き物じゃないけれど。
寂しいと、楽しいと感じる心が確かにあるんだ。
独りになんて、出来ない!!
「は、は、は・・・・!」
洋館についた。
人の気配がない、寂しい佇まい。
「・・・・ッ!」
前回とは裏腹に、進んで中に飛び込もうとすると。
「――――待っていたぞ、キュアスカイ」
「ッミノトン・・・・!!」
あーもう!やっぱり来るよなあ!!
「今貴方に構っている暇はないんです!!」
「貴様になくとも我にはある!!」
屋根の上に立つミノトンは、拳を振り上げて。
「来たれ!!アンダーグエナジー!!」
洋館を、ランボーグにしてしまった。
ッこいつ・・・・!
「ねこさん、今行きます!!」
ミラージュペンを掲げて変身。
洋館ランボーグと向き合う。
「ねこさんを返してもらいますよ、ミノトン!!」
「ふん!ねこなんぞすぐに構えなくなる!!」
『何だと?』と聞く前に、ランボーグの扉が開いて。
たちまち暴風が吹き、吸い込みにかかる。
「ゎ、っ・・・・!!」
・・・・やばい。
踏ん張れない・・・・!!
「――――スカイ!!」
「みんな・・・・ッぅわ!」
そこへ、仲間達の声が聞こえた。
振り向いたせいで隙が出来て、体が浮かび上がる。
しまった!!
「吸い込まれてる!?」
「ッスカイ!!」
「待て!!」
建物内に引き込まれる中。
飛び込もうとしたプリズムを、エクリプスが引き止めてくれるのを見ながら。
今度こそ館内に吸い込まれてしまった。
(ねこさん・・・・!!)
暴風吹き荒れる暗やみの中、何とか体勢を立て直す。
・・・・文字通り、腹の中に誘われてしまったのは仕方がない。
今はとにかく、ランボーグをなんとかしないと・・・・!!
◆ ◆ ◆
「――――ァいったぁッ!?」
直前にもう一度暴風に煽られ、強かに尻を打ち付けたスカイ。
うずくまり、やや情けない姿勢で打ち付けた場所をさすりながら、立ち上がる。
「ここは、ランボーグの中・・・・?」
胃酸溢れる胃袋の中ではないことに安堵しながら、周囲を見渡していると。
「――――ッ!」
かすかな風切り音を聞きつけて、飛びのく。
つい今しがたまで立っていた場所に叩きつけられた、拳。
「ミノトン・・・・!」
「今度こそ、邪魔は入らんぞ」
持ち上げる拳から、砂埃をパラパラ落としながら。
ミノトンが睨みを利かせる。
「さあ、いざ尋常に勝負だ。キュアスカイ!!」
「ックソ・・・・!」
構えられた拳を前に、やむなく剣を抜き放った。
「――――ニャ」
振動を感じて、ぬいぐるみは意識を取り戻す。
ふわふわの体で寝返って起き上がると、暗闇の中にいることに気が付いた。
「ニャア・・・・」
――――ソラの下を離れて。
元の洋館に戻ったことまでは、確かに覚えている。
その後、怒ったソラの声と、嫌な気配を感じ取って。
意識が遠のいて・・・・。
「ニャッ・・・・!?」
また振動が来た。
・・・・この、思い出に溢れた洋館で。
誰かが暴れている。
「にゃ・・・・」
ふるふる震えながら、声を絞る。
「ニャめて、ニャ・・・・!」
変わり果てた洋館の中で、ボールの様に蹲るぬいぐるみ。
「ニャめてニャ・・・・!」
空間が揺れる度、振動が轟く度。
『あの子の笑顔』を踏みつけにされているようで。
「ニャめてニャァ・・・・!」
生きていない体に、身を刺すような痛みが走った。
「ぅう・・・・ぅぅぅ・・・・!!」
――――『やめて』と口にしながら、何も出来ない己を。
ぽろぽろと大粒の涙を零して、呪い始めた時だった。
「――――ねこさぁーん!!!」
――――その声が、聞こえたのは。
「ねこさんッ!!ここにいますか!?大丈夫ですか!?返事をしてください!!!」
「ソラ・・・・!」
一条の光の様に、ソラの声がする。
「ッ貴様!!またしても我との勝負を蔑ろにするつもりか!?」
「っく・・・・!」
ズ、ズンと、振動。
誰かと戦っているらしい。
「ッ貴方こそ、ここを何だと思っている!!?」
「何!?」
大きな、何か金物がぶつかる音がして。
ソラの声が続く。
「ここはねこさんの大事な場所!!嬉しいことも悲しいこともたくさん詰まった、思い出の場所です!!」
戦う音はなおも続く。
「何人たりとも、土足で踏み荒らしていいい場所じゃないッッ!!!!!」
「ぬううう・・・・!!」
一際大きな音がした。
誰かが怯んだ声がする。
「――――覇真ッ!!龍王陣ッ!!」
――――闇が、断ち切られた。
「いた!ねこさん!!」
「ソラ・・・・」
光の中から、少し違った格好のソラが出て来た。
やはり戦っていたのだろう。
所々に擦り傷が出来ている。
「こちらに!手を!!」
出会った時とは裏腹に。
躊躇いなく差し出された、手。
「ここから、一緒に出ましょう!!」
「・・・・ニャア!」
『力になる』と約束してくれた、力強い手を。
握り返した。
「待てェッ!!」
「待つものかッ!!」
ソラの背後から、牛の様な大男が飛び掛かってくる。
彼の拳を、ソラの剣がはじき返して。
先ほどから何度も聞いていた音が、また鳴った。
「とにかく外に出ないと!」
踵を返して、ソラが走り出す。
「ねこさん、しっかり掴まっていて!!」
抱きしめてくれた、力強い腕は。
とても、温かかった。
◆ ◆ ◆
「――――はあっ!!」
でっしゃーい!!最後の壁をぶち破って脱出じゃー!!
良い感じに爆発もして、気分はプリキュア恒例のアレよ!!
「あっ!スカイ!」
「よかった!無事だった!」
見下ろせば仲間達もいる。
よかった、そっちも無事だったんだ。
「エルちゃん、ねこさんをお願いします」
「えゆ!」
エルちゃんにねこさんを託して、仲間達と並ぶ。
「ッおのれ・・・・!」
私が飛び出してきた穴から、ミノトンも追いかけて来る。
・・・・遠慮の理由はないな。
「拙速を尊びます!!プリズム!!」
「はい!」
プリズムと手を取り合って、スカイミラージュを構えた。
「させるか!!」
「こちらの台詞だ!!」
ミノトンが飛び掛かろうとしたけれど、エクリプスが応戦してくれる。
「ここは僕達が!」
「二人とも、今のうちに!!」
バタフライやウィングも一緒になって対応してくれる中、改めてランボーグと向き合う。
「ランボーッグ!!!」
対する相手も、簡単にやられるつもりはないらしい。
両腕を振り上げて叩きつけて来た。
飛ばされてきた瓦礫を前に、やむなく手を放して散開。
攻撃を避ける。
「ランボーグ!!」
「「「ランボーッグ!!」」」
さらに腹の扉を開けると、時計台やタンスといった小型のランボーグも吐き出してきた。
「ぅわわわわ!?多すぎないかな!?」
隣のプリズムは、慌てつつもしっかり対応しているけれど。
やっぱり圧されてしまっている。
・・・・敵ながら、流石ミノトン製のランボーグというべきか。
一筋縄ではいかないな。
「ひろがるッ!!」
もちろん、ただでやられてやるつもりはないけれども。
「スカイソードッ!!ゲイルッ!!」
スカイソードに風の呼吸を組み合わせて、一閃。
小型を片付けてしまう。
「今です!」
「はい!」
今度こそ、プリズムと手を取り合って。
前を見る。
「スカイブルー!」
「プリズムホワイト!」
「「プリキュア!!」」
「「アップドラフト・シャイニング!!」」
遠慮も容赦もない必殺技を。
洋館ランボーグに、全力で叩き込んだ。
・・・・そういえば結構久々じゃないか?
アップドラフト・シャイニング・・・・。
「スミキッター・・・・」
何はともあれ、ランボーグは浄化出来た。
洋館も、ねこさんの大切な場所も、元に戻って・・・・。
本当に良かった。
「ぐぬぬ、今日はここで退くとしよう・・・・ミノトントン」
ミノトンも撤退したので、これでランボーグは大丈夫だろう。
「――――ソラちゃん!」
「大丈夫ですか!?」
「みなさん」
他のみんなも変身を解いて、駆け寄ってきてくれた。
エルちゃんとねこさんも無事だ。
よかった・・・・。
「ぬいぐるみ、無事でよかったね」
「ええ、怪我も無くてよかった」
ねこさんを抱き上げて、頭を撫でてやると。
罪悪感と一緒に、照れくさそうな気配を感じて。
思わず笑みがこぼれた。
「とはいえ、持ち主探しは続けないと」
「約束したんだもんね?」
「はい!」
「洋館の前の住人は誰なのか突き止めることは出来ましたから、あとはどうやって会いに行くか、ですね」
「ええ、何か良い方法があればいいのですが」
みんなと歩きながら、ねこさんとご家族を会わせる方法を考えていた時だった。
「――――」
「ッ、ねこさん?」
通りがかったタクシーに、ねこさんが反応したのが分かって。
思わず足を止める。
「――――そんなに落ち込まないで、りほ。絶対にあるから」
仲間達も、不思議に思って立ち止まる中。
ねこさんの視線は、たった今降車した親子に釘付けになっている。
・・・・この子、確か。
ねこさんの記憶で見た・・・・!
「――――マロン?」
小さく、呟く声が聞こえた。
「このねこさんのことですか?」
「りほ!よかったね、マロンだよ!」
言葉を失ってしまった、『りほちゃん』と言うらしい女の子の代わりに。
付き添っていたお母さんが訳を説明してくれる。
ねこさんとりほちゃんは、小さい頃からずっと一緒に居たこと。
だけど、引っ越しの時に置いて行ってしまったこと。
本当は早くに迎えに行きたかったけれど、中々時間が取れなかったこと。
・・・・よかった。
ねこさんのことを、忘れていたわけじゃなかったんだ。
「――――」
「ほら、りほ」
・・・・ねこさんは酷く緊張した気配になっているし。
りほちゃんも、置いて行ってしまった罪悪感でいっぱいなのか。
俯いたままだ。
何かを言うべきで、でも、何て言おうかと思っていた時だった。
「・・・・ッ」
風が、一陣。
勇気をくれる様に、吹いた。
「・・・・マロンさん、大丈夫」
だからだろうか。
悩みとは裏腹に、するりと言葉が出て来た。
「大丈夫ですよ」
もう一度、囁いてから。
りほちゃんの前に、跪く。
「・・・・?」
やっと顔を上げた、彼女へ。
ねこさんの。
――――マロンさんの手を、取って。
「ずっと、待ってたニャン」
この子が、ずっと、ずぅっと抱いていた思いを。
口にした。
「ぁ・・・・」
すると、みるみるりほちゃんの目に、涙が滲んで。
「ッマロン!あいたかった!!」
飛び込んできたりほちゃんを、咄嗟に支える。
「おいていってごめんね!これからはずっとずーっといっしょだよ!!マロン!!」
――――マロンさんと、りほちゃんの。
おんなじ声を聞きながら。
二人が泣き止むまで、しばしそのままの姿勢でいるのだった。