ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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わんぷり映画、楽しみです。


偽物、海上戦

「――――なるほどねぇ」

 

少女を庇いつつ、こちらへ鋭く視線を向ける目を見て。

一人、ごちる。

 

「これも、因果かねぇ」

 

――――見覚えのある眼差しに、かすかな懐かしさを覚えながら。

缶ビールを、新たに空にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうそう、その調子!」

 

お昼も兼ねた休憩も終えて。

午後は、改めてベリィベリーさんの水泳特訓。

 

「いい感じですよ、ベリィベリーさん」

 

腰くらいまで浸かる水深の場所。

私がベリィベリーさんの手を引く形で、バタ足を見ていた。

 

「はい、一旦そこまで!」

「っはー・・・・!」

 

合図を聞いて、同じく腰まで浸かる体勢になったベリィベリーさん。

 

「出来ていたか?」

「ばっちりです!」

 

顔の雫を拭いながらの問いかけに、親指を立てれば。

目に見えてほっとした表情をした。

うんうん、上手くいってると安心するよね・・・・。

 

「バタ足は推進力の要ですからね、出来るに越したことはありません」

「ああ、やってみて身に染みたよ。ありがとう」

 

あとは手かきと息継ぎだなぁ、と考えながら。

早速ましろさんにレクチャーを受けているベリィベリーさんを眺めていると。

 

「そらー!」

「はーい?」

 

砂浜からの声に、振り向くと。

砂風呂の要領で、ムッキムキにされているツバサくんが見えて。

 

「んぶっふ!?」

「あははは!!見て見てー!力作っしょー!?」

「もー!戻してくださーい!」

 

多分今すぐにで起き上がりたいんだろうけど、エルちゃんに止められてるんだろうな・・・・。

実際、『もういいですよね!?』『めっ!!』のやり取りをしている。

そんな彼の名誉の為に、私が出来ることと言えば。

声を上げずに笑うことだけだった。

 

「そらもやろー!」

「んふふふっ・・・・はぁい!今行きまーす!!」

 

こんなもん見せられて、テンション上げずにいられようか?

いや、いられまいて!!

エルちゃんに招かれるがまま、ツバサくんを更にマッシブにすべく浜を目指し始めた。

 

「――――おやおや、どこの男前かと思ったら」

 

その時だった。

 

「さっきの坊ちゃんじゃないの」

 

ぬ、と。

無遠慮にあげはさんの隣に立って、これまた無遠慮にツバサくんを覗き込む男が。

あいつ、さっきの酔っぱらい・・・・?

 

「ッあの、何でしょうか?」

「僕達に何の用ですか?」

 

あげはさんは、すぐにエルちゃんを確保して数歩後退。

ツバサくんも、偽りのムキムキボディを脱ぎ捨てる様に立つと。

砂を払うことすらせず、二人を守る様に片手を伸ばした。

――――着流しに無精ひげ、一つ結びにしただけのバサついた長髪。

長い前髪の、全体的に気だるげな佇まいの男は。

片手にはやっぱりチューハイの缶を、もう片手にはなぜか黒い杖を握っている。

 

「・・・・ッ!」

 

・・・・何にせよ、今すぐ引き離すべき不審者に、変わりない。

 

「ツバサ!プリンセス!」

「あげはちゃん!?」

 

私が猛然と海水をかき分け始めたからか、ましろさん達も異常に気が付いて。

同じくバシャバシャとあげはさん達の下へ急ぐ。

 

「いんやぁ、何。浜辺の酒とツマミを十分楽しんだからねぇ?」

 

対する男は、牽制に私達が加わってもなお。

どこまでも自然体。

何気なく、手を掲げて。

 

「そろそろお仕事でも、と」

 

アンダーグエナジーを、宿した。

――――こいつ!?

 

「貴方まさか、アンダーグ帝国の!?」

「ヒヒヒッ・・・・ラッシャイ!アンダーグエナジー!!」

 

そして男は、警戒を跳ね上げたツバサくんへの返事代わりに。

とっくに見慣れた、黒いエネルギーを召喚。

 

「ランボォーグ!!」

 

レンタル品の浮き輪を、ランボーグに変えてしまったのだった。

・・・・いや、そんなことより。

 

「ソラ、あいつ・・・・!!」

「ええ、分かっています」

 

同じことに気付いたらしいベリィベリーさんと、肩を怒らせて男を睨む。

 

「気配が、全くなかった・・・・!!」

 

――――今までの刺客達は。

大なり小なり、その存在感を感じ取ることが出来ていた。

だけど、目の前のこいつは。

ついさっき現れた時も、海の家でましろさん達に絡んだ時も。

近付いてきたことを・・・・否。

()()()()()()()()()

その気配を、ちらとも感じ取れなかった・・・・!!

 

「なるほど、要注意ってことか・・・・!!」

 

あげはさんを筆頭に、みんなが身構えた。

 

 

――――ひろがるチェンジ!

 

――――レディー!ゴー!

 

――――ひろがるスカイ!プリキュア!

 

 

とにもかくにも、まずは変身。

ランボーグと対峙する。

と、かすかに『プシッ』と空気が抜ける音が聞こえた。

 

「――――ンッ、ギュッ、ギュッ・・・・プハァーッ!!」

 

あ、あいつ。

呑んでやがる・・・・!!

 

「ランボーグちゃーん!がんばえー!!」

 

小高い所に陣取った奴は、チューハイ缶を掲げてエールを送った。

その様、劇場でミラクルライトを振り回す幼児の如く。

・・・・自分で言っといてなんだけど、なんかヤだな。

 

「ランボーグ!!」

 

そんな激励でも効果があったのか。

ガッツポーズで気合を入れたランボーグが、飛び掛かって来た。

みんなで散開して拳を避ける。

 

「ラァンボッ!!」

「お、っと・・・・!」

 

波打ち際に着地した直後に、追撃。

咄嗟に飛びのいたけど、眼下には青い水面が広がっている。

 

「コオオッ・・・・!」

 

波紋の呼吸を練り上げ、海面に立つ。

一方のランボーグも、浮き輪を基にしているからか、容易く浮いていた。

それにしても、腹立つ姿勢してるな。

何リラックスしてんだよ、オラ。

・・・・気を取り直して。

なんにせよ、戦場が海の上になってしまった。

これは、ちょっとまずいかもしれないな。

 

「スカイ!!」

「今行く!!」

 

プリズムは光弾を、バタフライはバリアを。

エクリプスは魔力の手を。

それぞれ工夫して足場を確保していた。

飛べるウィングは言わずもがなだ。

 

(まずは足場の確保だな)

「ッ天霜!!」

 

刀身に指を這わせて、気を練り上げる。

――――この技の真髄は、熟練者であればあるほど見切れなくなる太刀筋だけれど。

 

「煙月無痕ッ!!」

 

研ぎ澄まされて、冷気を放つようになる気功も目玉なんだよね!

技を海面に叩きつけると、狙い通り一面が凍り付いた。

よし、これでだいぶマシになったはず。

 

「スカイナイス!愛してるー!!」

「いえーい!!」

 

バタフライの投げキッスを受けながら、改めてランボーグを睨んだ。

・・・・おっさんまでやんやの声をかけてくるのは、ちょっと鬱陶しい。

 

「ランボーグッ!!」

 

対するランボーグは、優位性を取り戻そうと足場の破壊に乗り出した。

しっちゃかめっちゃかに両手両足を振り回して、バキバキ氷を割っていく。

早速足場を潰しに来たか・・・・!

 

「ミックスパレット!ブルー!ホワイト!」

 

だけど、こっちだって好きにされてばかりじゃない。

バタフライがミックスパレットで冷気を発生させて、壊れた個所を修復。

私はその足場を駆け抜けて、肉薄する。

 

「破魔・竜王刃ッ!!」

「ランッ!?」

 

足を攻撃して体勢を崩す。

そこから飛び上がる様に斬撃を叩き込む。

 

「ゥオオッ!!」

「はああっ!!」

 

反撃をかわして身を翻した横で、入れ替わる様にエクリプスとウィングが突撃。

ランボーグに拳をぶちあてた。

 

「おーう!やるやるー!ランボーグも負けんなー!」

「ランボーッグ!!」

 

男は高台に寝そべったままだけど、また別の酒の缶を開けていた。

どんだけ飲む気だよ!?

 

「・・・・あっ、これってチャンスかも」

 

攻防の中で、バタフライが声を上げる。

――――確かに。

あれだけ呑兵衛な様を目の当たりにしてしまえば、隙だらけだと断じるのも無理ないだろう。

だけど、あいつの場合は・・・・!

 

「ちょっとちょっかいかけて来る!」

「ッ待って!バタフライ!」

 

止める間もなく、バタフライが飛び出してしまう。

戦闘の合間を縫って、おっさんの下へ。

 

「――――ひろがるッ!!」

「おっ?やるのー?」

 

陣取った頭上から、

 

「バタフライプレスッッ!!」

 

技を、放とうとして。

 

「――――え」

 

その次に、見えたのは。

おっさんの黒い杖。

――――否。

真っ黒な直刀が。

バタフライプレスの、三分の一までを切り裂いていて。

 

「バタフライッッ!!!!」

「――――ッ」

 

私の絶叫と同時に飛び出したのは、ウィング。

右肩に一閃受けながらも、夜闇の様な刃に切り裂かれそうになっていたバタフライを救出した。

 

「――――遅ればせながら、名乗りをば」

 

ミックスパレットで応急処置をされているウィングを横目に、おっさんを見上げると。

静かに直刀を収めているところで。

 

「おじさんは、『メイテイ』。『人斬り上戸のメイテイ』」

 

長い前髪の下、爛々と目をぎらつかせながら。

 

「――――よろしくねン♡」

 

ぱちん、と。

鯉口が鳴った。

 

「――――ランボーグッ!!」

「ッ、しまった!」

 

男の、メイテイの気配が変わったことに動揺している隙を突かれた。

再び足場を崩し始めたランボーグ。

だけど、今までとは違うような・・・・?

と、疑問を持った直後に答えが分かった。

 

「ラァンッ!!」

 

出来上がった氷のプレートを、ランボーグは引っ掴んで。

 

「ボオオオオーッグ!!!」

 

畳返しにしてしまった。

 

「うわああああああ――――ッ!?」

「きゃああああああ――――ッ!!」

 

足場を丸々ひっくり返されて、揃って海に落とされてしまった。

 

「――――ッ」

 

ぶくぶくと潮水の中に放り込まれてしまう。

呼吸もままならない中に長時間いてやる義理もない。

なんとか海面へ行かないといけない・・・・!

他のみんなは、何とか上を目指して泳げている。

前後不覚になっている様子もない。

だけど、エクリプスが見当たらない・・・・!?

 

(いた・・・・!)

 

周囲を見渡すと、私よりも下の方に沈んでしまっているのが見えた。

・・・・泳げていないわけではない。

でも、海流が私のいるところとは違うんだろう。

今日やっとバタ足を覚えたばかりの彼女には、酷だ。

 

「ランボーグ!!」

 

当然、それを見逃してくれるランボーグじゃない。

奴は有ろうことか、自らの空気穴の蓋を開けて。

ジェット推進してきた。

そのままエクリプスを仕留めるつもりか!!

 

「――――ッ!」

 

私も身を翻して潜る。

なんとかランボーグを追い越して、エクリプスの下へ。

そこから更に、下の方に潜る。

・・・・よし、技一発分はいける!

 

――――天魔・飛翔閃ッッ!!

 

上昇気流ならぬ、海流を発生させて。

エクリプスを押し上げる。

そのまま私も続こうとしたんだけど。

 

「ランボーグッ!!」

 

――――どうやら。

高望みだったようだ。




メイテイさんの詳細は、次回になります・・・・。
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