ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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『七試練』って銘打ってるのに、あんまり試練させてないな?と思ったので・・・・。

例によって、オリジナル要素無双です。
原作にはない用語や展開が盛りだくさんなので、聞き流しスタイルでお楽しみください。


偽物、第三の試練

――――突然だけど。

何か一つの物語が終わっても、言うまでもなく至極当たり前に人生は続いていく。

人は働き、食事を得て、趣味を楽しむ。

生きている限り、それを停止することは出来ないのだ。

つまり、どういうことかと言えば。

 

「――――メイテイィッ!?あいつが!?」

 

あれ以来音沙汰なかったカバトンが、この頃私と同じバイト先にやってきたのである。

いやぁ、私もびっくりしたよね・・・・。

『うわ』って声出たもん・・・・。

なんでも、行き倒れていたところを社長が拾ったらしい。

今はソラシド市内のボロアパートで慎ましく生活しつつ、鋳物づくりのいろはを学んでいる最中だ。

・・・・以前、会社を襲撃した犯人でもあるので。

蟠りとかあるはずだったんだけども。

行き倒れの様があんまりにも哀れだったのか、『ソラちゃんにキッチリ絞められたんだろ?』のお言葉でひとまずそれ以上の追及はしないことにしたらしい。

・・・・奴が来た当初は。

私がお世話になり始めた頃の、鉄郎くんの気持ちが。

よぉーく分かったものだ。

 

「やっぱり油断ならないヤツなんです?」

「いーや、逆なのねん!」

 

まあ、とにかく。

そういう繋がりがあるので。

仕事終わりにカバトンを呼び出して、彼の行きつけだというおでん屋台で『メイテイ』について話を聞いていた。

 

「いっつも酒臭くって、寝ても覚めても酔っ払ってるようなヤツなのねん」

 

私の奢りということで、遠慮なくもりもり食べるカバトン。

 

「確かに、SUGEEE昔からアンダーグ帝国にいるらしいって話は聞いた事あるけれども。戦えるなんて言われても、とても信じられないのねん・・・・!!」

「そうなんですか・・・・」

「・・・・んん?」

 

ふと、彼は食べる手を止めて首を傾げた。

 

「お前達、暑苦しい野郎(ミノトン)を退けたのねん?」

「いえ、特に決定打を与えた覚えはありませんが・・・・」

「じゃあ、『武人の矜持』とやらに、こだわり過ぎたのかもしれないのねん。あいつは任務よりもそっちを優先させるところがありやがるから・・・・」

「なるほど・・・・」

 

遅かれ早かれ、消されたかもしれない、か・・・・。

 

「何にせよ、気を付けるに越したことはないのねん。俺もだけど、他の誰もヤツの実力を知らないのねん」

「自分の能力を、隠しきるだけのポテンシャルはある、ということですか・・・・」

 

自分の分のがんもどきをつつきながら、頭を抱えた。

ううん・・・・カバトンが悪いわけじゃないけれど、情報らしい情報はなかったか・・・・。

 

「・・・・今日は酒代だけでいいのねん」

「おや、いいのですか?」

「大した情報やれなかったからな、流石にそれで丸々奢らせる度胸はないのねん」

 

――――あの決闘で敗北して、少しは変わったのか。

そんなことを言ってくれるカバトン。

 

「・・・・しょーじき、助かります」

 

カバトンの手元で、次々摘まれては消えていくおでんの具を見ながら。

こっくり頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題(おでんは大根とがんもが好き)

 

 

 

 

 

 

 

「――――あ、おかえりなさい!ソラさん!」

「ましろさん?」

 

虹ヶ丘家に帰ったのは、夜もとっぷり暮れた頃。

少なくとも、エルちゃんやツバサくんは絶対に寝ている時間だった。

 

「まだ起きていたんですか?」

「ごめんなさい。遅くなるって聞いてはいたんですけど、やっぱり心配で」

「そんな・・・・」

 

ましろさんも14歳。

多少の夜更かしはやってしまうお年頃だろうけども。

それはそうと、やっぱり遅い時間まで起こしてしまうのは忍びない。

 

「こちらこそすみません、要らぬ気苦労をかけさせてしまって」

「ふふ、いいんです。わたしだって、やりたくてやっているので」

 

ひとまず、いつまでも玄関にいるわけにもいかないので。

室内に上がる。

と、

 

「お、ソラちゃんおかえり。ちょうどよかった」

「あげはちゃん」

「ちょうどいい、とは?」

 

ヨヨさんの部屋から出て来たあげはさんへ、ましろさんと揃って首を傾げると。

 

「スカイランドから通信が来てるよ、七試練についてだって」

「ッ、分かりました。今行きます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ダーファン領。

スカイランド国内に点在する物流拠点の一つ。

特に隣国クシザスと国境を面していることも有って、指折りの重要拠点として数えられる要衝だ。

ツムジ先輩のご実家でもある、領主一族『ダーファン家』から。

『助けてほしいことがある』と、SOSが届いたので。

七試練の第三の試練として。

私達プリキュアが派遣されることになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひゃーっ!!すごい風!!」

「目を開けてられないよぉーっ!!」

 

カバトンとの話し合いから三日後、遊覧鳥の上。

長い髪を強風にダバダバさせながら、あげはさんとましろさんが声を上げた。

でも顔はしっかり笑っているので、多分ジェットコースター気分なんだと思う。

 

「きゃー!かぜー!!」

「ねー!すごいねー!!」

 

そんなんでもしっかりエルちゃんは守っている辺り、流石だなと思いながら。

隣のツムジ先輩を見やった。

 

「――――ふふ、この風こそが、ダーファンの長所であり、短所でもあるのよ」

 

・・・・同じくらいの風に吹かれているはずなのに、こっちはとっても優雅に見える。

もしやこれが、地元民補正・・・・?

 

「とはいえ、こんな風の中で話を聞けって言うのは、流石に酷ね」

 

苦笑いするツムジ先輩の視線の先には、強風にあおられている仲間達。

もちろん私も例外じゃない。

確かにこんな中で説明されても聞き取れないかも・・・・。

 

「ああ、見えて来た・・・・そろそろ着くから、もうちょっとの辛抱よ!」

 

そう、先輩が指さす先に目をやると。

街の小高い丘に、大きな館が建っているのが見えた。

 

「――――うちが物流拠点なのは、もうみんな聞いていると思うのだけれど」

 

敷地内にある遊覧鳥の発着場に降りて、館の中に向かう道すがら。

ツムジ先輩は説明してくれる。

 

「ここは地形的に、複数の風の流れが集まる場所でもあるの・・・・街からほど近いところに山があるんだけど、見えた?」

「はい、『ウイテルケワシー』。あの大山脈に風がぶつかって発生する大きな上昇気流のお陰で、スカイランドの至る所にアクセスしやすいんですよね」

「その通りよ」

 

さすが航空力学を勉強しているだけあって、満点の解説をしたツバサくんへ。

褒め言葉を贈りながら、ツムジ先輩。

――――ウイテルケワシーによって発生した上昇気流は。

かなり高いところまで登っていくので。

上手く風に乗れれば、ほとんど体力を消耗せず目的地にたどり着くことも出来るのだ。

 

「ちなみに私の地元でもある」

「そうなんだ」

 

ベリィベリーさんに一言補足されて、感心するあげはさんも微笑まし気に見ながら。

先輩は説明を続ける。

 

「だけど、風が集まる分発生する問題もあってね」

「『いじわるハリケーン』、ですよね」

「ええ」

 

『いじわるハリケーン』。

風の集まる場所で、時折発生する自然現象。

人間界でも通じる様に言うなら『ゲリラハリケーン』だろうか。

発生時間自体は長くても一時間くらいなんだけれども、とにかく威力が半端ない。

前兆も分かりにくいので、もしも発生したら無事に通り過ぎることをお祈りしながら耐え凌ぐしかないのだ。

そしてダーファン領は、このいじわるハリケーンがとても発生しやすい立地にあった。

 

「特にこの季節は、一日に何度も発生するなんてザラなの」

 

扉を開けてくれた使用人さんに。

ツムジ先輩は手を上げて、私達は頭を下げて軽く無言のお礼を伝えて。

館の中へ。

 

「だから対策として、私のご先祖様が始めたのが。『ダーファン祭り』」

 

かつて、大空の支配者であった怪鳥『ダーファン』。

そいつを屈服させ、契約を結んだツムジ先輩のご先祖様は。

その力を振るって、ここら一帯の風の流れを調整。

いじわるハリケーンを抑制することに成功したのである。

この功績を称えられて、『ダーファン家』が始まったのだ。

で、初期のダーファン祭りは、神事としての意味合いが強かったけれど。

 

「――――曾祖父様(ひいおじいさま)の代からは、みんなで騒ぐ、まさしく『お祭り』的な行事に変わっていってね」

 

今となっては、立派な観光イベントとなっているということだった。

 

「それでも、神事自体はずっと続けていたのよ。だけど・・・・」

 

その、領民を守る為でもある大事な儀式を行う祭壇に。

異常が確認された。

 

「トビマンダーが、寄りにもよって祭壇近辺に居座る様になってしまって」

「それはまた、厄介な相手ですね・・・・」

「もしかして、ギガノマンチュラみたいな危険な生き物なんですか?」

「ですねぇ」

 

ましろさんの質問を、私はこっくり肯定した。

――――『トビマンダー』。

ムササビとコモドドラゴンを足して2で割って、更に巨大化させたようなビジュアルの。

ギガノマンチュラに並ぶ、スカイランドの危険生物である。

ついでに火も吹く。

『僕の考えたサイキョーの生物』のハッピーセットかよ・・・・。

 

「もちろん、領主たる父上を始め、警備隊が対処に当たったのだけれど・・・・」

「――――祭壇に居座った個体は、並の個体ではありませんでした」

 

聞こえた第三者の声に、はっと目をやれば。

ましろさんと同い年くらいの男の子が、中央の階段を下りてきているところで。

 

「想定を超える巨体に、警備隊共々父も蹴散らされてしまい・・・・此度、皆様にお願いした次第です」

「ロック」

「お帰りなさいませ、姉上」

 

姉上ってことは、この方が先輩の弟さんか。

 

「そして、ようこそプリキュアの皆様。僕はロック・ダーファン、ツムジの弟です」

「これはご丁寧に、スカイランド王家直属、青の護衛隊、ソラ・ハレワタールです」

「同じく、ベリィベリーです」

 

私とベリィベリーさんが頭を下げると、他の面々も頭を下げたのが分かる。

 

「この度は、我らの救援要請に駆け付けて頂き、感謝いたします」

「そんな、礼には及びません」

 

一通りの社交辞令を交わし合ってから、改めてツムジ先輩がロックさんに問いかけた。

 

「それで、祭壇に現れたのはやっぱり?」

「ええ、確認が取れました・・・・『ミカヅキ』で間違いないです」

「みかづき?」

 

また強そうな名前が出て来たな・・・・。

 

「曾祖父様の頃から現れ始めた、ネームドの個体よ。名前の通り、顔に三日月型の傷がついているの。図体が大きい上に、頭も回る・・・・厄介な相手だったわ」

「そもそもダーファン祭りが観光イベントになったのも、こいつによる被害を復興するために始めたものなんです」

 

なるほど。

地元住民には慰労を、観光客には非日常を。

それぞれ提供して、経済を回すことにしたのか。

そして、それが現在にまで続いている辺り、上手くいっていたんだな。

 

「しかし、再び現れるとは」

「『再び』?」

「なんだ、知らなかったのか?」

 

思わず首を傾げると、ベリィベリーさんがやや得意げに顔を覗き込んできて。

 

「ツムジ先輩もスカウトで護衛隊に入ったんだ。今まさに話題に上がった、『ミカヅキ』の討伐でな」

「アッ!?そうなんですか!?」

「へぇー!ツムジさんもすごいんですね!」

「もって何よ、もって」

 

歓声を上げたあげはさんへ、ツムジ先輩は苦笑いを浮かべる。

 

「でも、やっつけたはずの生き物が、また出て来たってことは・・・・」

「・・・・当時、飛ぶための皮膜もボロボロの状態で、結構高いところから落としたから」

 

ちゃんと息絶えたか確認してなかったというか、出来なかったということか・・・・。

まあ、そんな状態で生きてるとは、夢にも思わないよなぁ。

 

「幸い、実際の被害は微々たるものです。父上含め重傷者もいますが、医師の診断では、皆後遺症もなく復帰できるであろうと」

「だけど、祭りの警備を考えると、これ以上の消耗は避けたいところよ。改めて、力を貸してちょうだい」

「「よろしくお願いします」」

 

そう締めくくって頭を下げたご姉弟を前に。

私達は互いを見合って、頷き合って。

 

「もちんです」

「非才の身なれど、全力にて」

 

代表して、私とベリィベリーさんで敬礼を返したのだった。




おまけ
ミノトン「――――まだ消されとらんワァッ!!!」
ジム利用客A「ワッ!?ミノさん!?」
ジム利用客B「どうしたんだろうな?」
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