ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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この頃のわんぷり。
『後方彼氏面』ならぬ、『後方親戚面』が止まりそうにありませんね・・・・。
おめでとう、悟いろ・・・・(バウムクーヘンを焼きながら)


偽物、害獣駆除

――――領主の館で作戦会議を終えたソラ達。

エルは、ロックを始めとした館の面々が引き受けてくれることとなったので。

気兼ねなく現地へ向かう。

始めは遊覧鳥に乗って、途中からは気流の関係で徒歩で移動する。

いつ戦闘になってもおかしくないので、変身した面々は。

ツムジがスカイジュエルを使って生み出したバリアの中に入って強風を凌いでいる。

 

「だんだん強くなって来たね」

「この時期は特に強いわ、何が飛んでくるかも分からない・・・・気を付けて」

 

びょうびょうと咆え始めた風の音を聞いて、難しい顔をしたバタフライに。

ツムジが静かに忠告した直後。

 

「ひゃあっ!?」

 

バァンッ!と大きな音を立ててバリアが揺れる。

何事かと一同が目をやると、どこからか飛ばされたらしい、大ぶりの木の枝が。

斬り揉み回転しながら遠ざかっていくのが見えた。

直撃を受けていれば、確実に大怪我していたであろうサイズに。

ゾ、と身を強張らせるバタフライ。

そんな彼女の背を、ウィングが落ち着かせるためにさすり始めた。

 

「そろそろ着くわよ、気を締めて」

 

風の咆える声が、大きくなって来た中。

ツムジが鋭く警告した。

――――その時だった。

 

「・・・・?」

 

風を切る音が聞こえた。

いや、それくらいならここまでに散々聞いてきたのだから。

特段珍しいものではないが。

違和感を覚えたスカイは、思わず足を止めてしまう。

 

「スカイ?」

「どうしたんですか?」

 

突然歩みを止めた彼女に、他の面々もつられて立ち止まる。

 

「っぁ、えっと・・・・」

 

不思議そうに周囲を見渡していたスカイは、全員の視線に気が付くと。

ややばつの悪そうに頬をかいて。

 

「何か、こう・・・・違和感を覚えまし・・・・ッ!」

 

抱いた感覚を、報告するや否や。

瞬時に剣に手をかけ、気配を研ぎ澄ませた。

 

「――――お手柄よ、ソラ」

 

もう一人、事態を呑み込めていたツムジは。

不敵に褒め言葉を口にしながら、愛用のレイピアを抜き放つ。

続いて気がついたエクリプスも、静かに拳を握りしめる。

他の面々も、未だ状況を把握できていないながら。

勘のいいメンバーが、揃いも揃って警戒態勢に入ったのを見て。

漫然としながらも、身構える。

 

「ッ今の」

 

最初に気が付いたのは、ウィングだった。

先ほどからやけに咆えている風の中。

明らかに他とは違う音がする。

ひょうひょうと、明らかに自在に飛び交う音は。

急激に近づいてきて。

 

「ぁ・・・・!」

 

一行に、文字通り暗い影を落とす。

――――まず目を引くのは、大きな顎。

次に、体の両側に広がる大きな皮膜。

顔全体には、大きな三日月の傷跡が刻まれている。

ズドン、と降り立った姿勢は、人間が伏せをした様に見えた。

 

「こ、これが・・・・!」

「ええ・・・・!」

 

戦慄するプリズムの声を背に、ツムジは険しい顔をする。

 

「ミカヅキ・・・・!」

「――――グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

ティ、ティガ〇ックス!!

いや、よくよく見ると、スリムだったり角がなかったりで。

結構違うんだけども。

初見は絶対連想するって!!

と、とにかく!

開幕にドデカい咆哮をかましたティ〇レッ〇ス、もとい、トビマンダー、もとい『ミカヅキ』は。

まずは小手調べとばかりに叩きつけを放ってきた。

続いて飛び跳ねて、ボディプレス。

衝撃波に煽られながらも、体勢を立て直して。

『月牙天衝』で、エクリプスに向かっていたミカヅキをけん制した。

 

「ッまさかこんなに早く接敵するなんて!!」

 

――――本当は、周囲を岸壁に囲まれた祭壇で戦う予定だった。

こういう開けた場所よりも気流が読みやすいのに加えて。

ツムジ先輩のレイピアやバタフライのミックスパレットで、操作しやすいというのもあったからだ。

だから私達は、やつが根城にしていた祭壇を。

一路目指していたわけだけども・・・・。

 

「ああ、もう!」

 

ツムジ先輩は、レイピアで強風を制御してくれているけど、それで手いっぱいだ。

プリキュアだけでなんとかしないと・・・・!

 

「はっ!!」

「ふっ!!」

 

エクリプスとバタフライが、それぞれバリアと魔力の手で風よけを作ってくれる。

私含めた各々、それで強風から身を守りながら。

ミカヅキから目を離さないようにする。

奴は吹き交う風の中を、皮膜を使って自在に滑空しつつ。

品定めするような視線を向けて来る。

 

「グオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

 

やがて、狙いを定めたミカヅキは。

まず、ツムジ先輩に狙いを定めた。

 

「ッやっぱりそう来るか!支援止まるわ!気を付けて!!」

 

そう言って、先輩が支援を止めた途端。

邪魔者が無くなった暴風が、本来の勢いで襲ってきた。

あばばばばばっばばばば・・・・!

すげぇ風!!

バタフライとエクリプスか、本格的に『風よけ』の役目にシフトした。

 

「ッはぁ!!」

 

強風で、自分の長い髪に何度も襲われながら。

プリズムは果敢に光弾を発射。

狙いは当然、ツムジ先輩と戦うミカヅキだ。

奴はツムジ先輩が操る風すらも利用しながら飛び回ると、ぐるりと一回転して尻尾を叩きつける。

 

「っく・・・・!」

 

間一髪で回避したものの、吹っ飛ばされるツムジ先輩。

首根っこを掴む形になったけれど、何とか確保。

バタフライのシールドの一つに逃げ込む。

 

「ガァオ!!」

 

逃がすかとばかりに追いかけて来たミカヅキが。

口をかっ開いて火炎放射を浴びせて来た。

アッツゥ!!

近年の日本の夏の方がまだ涼し・・・・いや、あっちはあっちで熱いわ!!

 

「隙だらけだよ!バタフライキッス!」

「グァウッ!?」

 

こっちにかまけている隙をついて、相手の側面に回り込んだバタフライが投げキッス。

横合いをド突かれたミカヅキは、巨体をぐらりと傾けた。

 

「ッガアアアアアア!!」

 

すぐに踏ん張って立て直すと、体をダイナミックに振り回して尻尾を叩きつけて来た。

バリアの破片が、桜吹雪の様に散る中を駆け抜けて。

プリズムが足場にばら撒いてくれた光弾を踏んで、跳躍。

 

「全集中・水の呼吸」

 

頭上を取って。

 

「捌ノ型 滝壺!!」

「ガァウ!?」

 

脳天に斬撃を叩き込んでやった。

一瞬だけ怯んだミカヅキは、こちらをギロリと睨みつけると。

ブレイクダンスの様に体を反転。

豪快な薙ぎ払いを放ってきた。

 

「ぅわ・・・・!?」

 

なんとか体をひねって回避の上、着地。

追いかけて来る火炎放射から、様々なバリアを壁にして距離を取る。

 

「ねえ!ちょっといいいかしら!?」

 

エクリプスが、魔力の手で新たに作ってくれた壁を伝って距離を取る中。

同じ場所に飛び込んだツムジ先輩が口を開いて。

 

「私、あれにどうやって勝ったんだっけ!?」

「・・・・エエェーッ!?」

 

今ここでいいますぅ!?

 

「せ、先輩!?あいつと戦ったんですよね!?一度は退けたんですよね!?」

「そのはずなんだけどもねー!参ったわ、私あれどうしてどうやったんだっけ????」

「せんぱーいッ!?」

 

『どうしよう』と言いながらも、敵の攻撃にしっかり対処しているツムジ先輩だけど。

表情から苦さが消えない。

・・・・いや。

相手はそれほどの手練れと言うことか。

思えばあいつ、ツムジ先輩の風すらも利用していた。

なるほど、領主一族三世代に渡って悩みの種になっていただけのことはある。

一筋縄ではいかないか・・・・。

 

「グオオオオオッ!!」

 

そうこう悩んでいる間に、ミカヅキが火炎放射。

大火力が薙ぎ払いにかかってくる。

 

「っ・・・・!」

「あ"っづ!」

 

熱気に炙られながらもなんとか退避。

仲間達と合流した。

 

「どうする?」

「まずは皮膜を潰しましょう、あいつの機動力の要です」

「それには賛成だが、当てられるか?」

 

バタフライとエクリプスと会話しながら、ミカヅキを覗き見る。

相手も一度休むことを選んだのか。

私達が隠れているバリアを睨みながら、ゆったりと左右に歩き回って様子をうかがっていた。

 

「うかつに近づけば巨体を存分に生かした攻撃、かといって距離を取れば、火炎放射・・・・」

「自然の風も、ツムジさんの風も利用してくる技巧派・・・・」

 

こっちで一番機動力があるのはウィングだけど・・・・。

 

「いけそうですか?」

「難しいです」

 

聞いてみると、即答が返ってくる。

 

「飛べなくもないんですけど、こんなに荒れて、読みにくい気流の中で。素早い相手に近づくのは、正直ハイリスクとしか・・・・」

「それに比べて、相手はむしろ知り尽くしてる。下手にドッグファイトを仕掛けるのは愚策か・・・・」

 

待ちかねたミカヅキが唸り始める中。

全員で頭を抱えていると、

 

「・・・・風が読めたら、飛べるんだよね」

 

プリズムが、ぽつりと口を開いた。

 

「え?ええ、ですが・・・・」

「出来るかもしれない」

 

『それが出来たら苦労しない』的なことを言いかけたウィングを遮って、前のめりになるプリズム。

・・・・これは。

 

「何か、策が?」

「はい!」

 

問いかけると、自信満々の笑顔が花開いた。

 

「でも、どうするの?こんなに縦横無尽に乱れている風を読むだなんて、一体どうやって――――」

「グオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!」

 

首を傾げるツムジ先輩だったけれど、しびれを切らしたミカヅキの咆哮に顔を引き締める。

 

「ッええい、こっちの常識にとらわれないあなた達なら、やってくれるわよね!!任せた!!」

「あいつは私達で押さえます!」

 

レイピアを大きく引いて構えたツムジ先輩に並んで、私も飛び出していく。

作戦の内容は聞けず仕舞いだったけれど、プリズム(ましろさん)のセンスならきっと。

この状況を打開してくれるはず!

 

「塵旋風・削ぎ!」

「はあああッ!」

 

先輩の風に、私の斬撃を混ぜて放つ。

 

「くらえ!!」

 

当然の様に避けられてしまうけど。

それを読んでいたエクリプスが、銃のように指を向けて雷撃を放った。

弾幕に紛れて接近して、

 

「絶氷刃!!」

「ガアァッ!?」

 

一撃叩き込んでやった。

 

「やああああああッ!!」

 

と、ここでプリズムの声。

どうやら策を発動させたらしい。

何をしたのかなと振り向く間もなく、蛍の様な、星の様な無数のきらめきが。

風に乗って、舞い上がって。

いくつもの軌跡を描いていく。

・・・・まるで。

向こうの世界のテレビで見た、ランタンのお祭りみたいだ。

 

「空港で、翔子ちゃんと話したことを思い出したの!」

「すごい、これなら・・・・!」

 

得意げなプリズムのお陰で、風の流れを読めるようになったウィングは。

先ほどとは打って変わって敏捷な動きを見せる。

ダメージがない光に困惑していたミカヅキも、『光の道』をたどったウィングが飛び出していくのを見て。

油断ならないと悟ったらしい。

丸くしていた目を吊り上げて、ウィングを注視する。

ああ、そうだろうな。

油断ならないやつが出てきたら、そっちを気にするよな。

だけど!!

 

「こっちを忘れてもらっちゃ困るわ!!ミカヅキ!!」

「ッ・・・・!?」

 

ウィングに注目したいであろう横合いから、ツムジ先輩が風の砲撃を放つ。

バランスを崩したところに、私やエクリプスがちょっかいをかけて行く。

 

「ッここだぁ!!」

 

攻防のさなか、トップスピードに乗ったウィングがさらに加速。

ミカヅキが気付いた時には、もう何手も遅れていた。

 

「ダアァーッ!!」

「ギャアアアアアッ!?」

 

ミカヅキの左の皮膜が、文字通りぶち破られる。

飛行能力を大幅に削られたミカヅキは、しばしきりもみしながら落下。

だけど、さすがは通称が付けられるほどの個体。

上手く体勢を整えて着地すると、攻勢をかけようとした私達に、満遍なく火炎放射してきた。

 

「あ"ー!やっぱりただじゃやられないよね!!」

「けど、機動力は大きく削いだ!いけるぞ!」

 

バリアで防ぎながら愚痴をこぼすバタフライと、それを鼓舞するエクリプス。

プリズムは光のシャワーを出し続けて、大気の軌道をウィングに報せ続けている。

そのウィングは、更にツムジ先輩の援護を受けながら。

ヒット&アウェイを繰り返す。

 

「グオアアアアアアッ!!」

「うわぁッ!?」

「ッ、なんて咆哮だ・・・・!」

 

と、ミカヅキが一際大きく咆える。

衝撃波を伴うそれに、仲間達が怯んだ隙をついて。

猛然と走り出したのは、プリズムの下。

 

「ゎ・・・・!?」

 

今の状況の要が、彼女であると見抜いたらしいミカヅキは。

火炎放射をあえて口に頬張った状態で、噛み付こうとしていたので。

 

「させるか!!火雷神!!」

 

一目散に駆けて、その燃える牙を受け止める。

 

「スカイ!」

 

――――アッヅ!!

熱気に炙られた目から、ボロボロと涙が零れ始める。

肌もじりじり悲鳴を上げて痛み始めた。

だいぶやばい。

やばい、けど・・・・!

 

「つかまえたァ・・・・!」

――――稲魂!!

 

牙以外に、まともな防御がない口の中を。

容赦なく切り刻んでやる!!

 

「――――ギャアアアアア!!」

 

傷をつけられたせいで、自分の炎でのたうつミカヅキから。

プリズムを抱えて距離を取る。

 

「エクリプス!!」

「ああ!!」

 

私が合図した時には、すでに準備を整えていたエクリプスが。

必殺技の構えを取っていて。

 

「エクリプスジャッジメントォッ!!!」

 

その横っ面に、重い一撃が突き刺さる。

 

「ガッ!?」

 

防御も回避もままならず、もろに受けたミカヅキは。

ふらふらしながらもなお、私達に抵抗しようとしたけれど。

やがて、どう、と倒れ伏したのだった。

・・・・うへぇ。

今更ながら、すごいパンチ。

くっきり指の跡ついてんじゃん・・・・。

 

「スカイ」

「プリズム」

 

完全に沈黙していると分かっているので、遠慮なく近づいて覗き込んでいると。

プリズムが歩み寄ってくる。

 

「怪我は・・・・ないみたいですね、よかった」

「スカイこそ!大丈夫なんですか?」

「掠り傷です、問題ありません」

 

ぶっちゃけそこかしこがヒリヒリしてんねんけど。

みんなが無事やったから、ヨシ!!(某猫風)

 

「でも、本当にここでやっつけちゃわないでよかったんですか?」

「いいのよ」

 

バタフライが私に呆れた視線を向けつつ、ツムジ先輩に問いかけると。

先輩は、シンプルに首を横に振って。

 

「いかに害獣といえども、あなた達に殺しをさせるわけには、ね」

 

問いかけたバタフライはもちろん、プリズムやウィングにも目を向けて。

柔らかく微笑んだのだった。

ちなみに青の護衛隊である私とエクリプスは、除外対象である。

それがお仕事だしね・・・・当たり前だよね・・・・。

・・・・うん?

『それなら最初からプリズム達はお留守番させればよかったじゃないか』って?

それはそう(深く頷く)

でも、そうも言ってられないくらいの強敵だったのだ・・・・。

実際そうだったでしょ?(メメタァ)

 

「っと、いけない。ベリィベリー!合図をお願い!」

「はい!」

 

指示を受けたエクリプスが、指を上空に向けて雷を放つ。

雷鳴三つ、事前に取り決めた『作戦終了』の合図だ。

これを見てやってくるダーファン領の警備隊に、ミカヅキの後処理を引き継ぐことが出来れば。

今度こそ任務完了である。

・・・・本当は専用の信号弾があるけれど。

この強風の中だと、火薬がすぐに消えてしまうので。

エクリプスの雷が採用されたわけだ。

 

「さ!これが終わったら祭りよ!」

 

少しだけ沈んでしまった空気を払しょくする様に、ツムジ先輩が明るい声を出す。

 

「みんなも是非参加して頂戴な!」

 

こちらに近づいてくる警備隊を横目に。

プリズム達が楽しそうに笑っているのが見えて。

私も思わず、笑みを浮かべた。




次回くらいで、オリジナルストーリーはおしまいです。
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