ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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偽物、占われる

人ごみを避けて入り込んだ裏路地にも、いくつかの露店が並んでいた。

主にアクセサリーや射的、くじ引きと言った。

向こうの世界でもよく見かけるラインナップのお店が並んでいる。

なので、大通りに比べればひかえめではあるけれど、こちらもそこそこ賑わっていた。

 

「色んなお店があるんですね」

「ええ、見ているだけでも楽しいです」

 

購入したお面を頭に付け、しっかりお祭りを満喫している私とましろさん。

数少ない食べ物の屋台で買った雲あめ(綿あめ)を分け合って食べながら歩く。

 

「こっちも向こうも、お祭りの食べ物って似てるんですね」

「そういえばそうですね」

 

たこ焼きならぬ『カイト焼き』、お好み焼きならぬ『お好きに焼き』。

焼き鳥も、鳥型の種族に配慮して『串焼き』という名前だし・・・・。

と、

 

「――――もし、そこなお二人さん」

「ッ、はい?」

 

掛けられた声に振り向くと、占いの出店が。

他の屋台と違って、地べたに敷物を敷いているタイプだったので。

思ったよりも低い位置に相手がいて、ちょっとだけ驚いたのは内緒・・・・。

 

「占いは如何?」

 

目深くかぶったフードの下で、敵意のない笑みを浮かべる店主。

声の色からして、女性だろうか?

 

「わぁ、そういえばこの世界の占いって、初めてかも」

「・・・・その言い方」

 

興味津々のましろさんが、敷物の上に並べられた陣やアイテムを覗き込んでいると。

何か引っかかりを覚えたらしい店主さんが顔を上げて。

 

「貴女もしかして、ベルのお友達?」

「べる・・・・?」

「・・・・もしかして、ベリィベリーさんのことでしょうか?」

「当たり!」

 

店主さんは嬉しそうな声を上げるなり、フードに手をかけて顔を見せてくれる。

燃える様な赤い髪と目。

まさしくベリィベリーさんを大人っぽくした彼女は、弾んだ声で名乗ってくれる。

 

「初めまして、ベリィベリーの姉の『アンプル』です」

「わぁー!初めまして!虹ヶ丘ましろです」

「ソラ・ハレワタールです」

 

いやぁ、村で見習いシャーマンをやってるってのは聞いてたけど。

こんなところで会えるなんて!

 

「妹から話は聞いているわ、あの子がお世話になってます」

「そんな、こちらこそいつも助けてもらっていて・・・・」

「はい!すごく頼りになるんですよ!」

 

聞けば、修行の一環で辻占いをしているということなので。

お言葉に甘えて占ってもらうことにした。

 

「あ、先にお代を・・・・」

「いいわよ、二人とも来賓でしょう?そうでなくても、最初の一回はおまけさせてもらうわ」

 

『トビマンダーのこと、本当にありがとう』と言われてしまっては。

それ以上の話は野暮ということになってしまった。

 

「――――、――――」

 

まずはましろさん。

フードをかぶりなおして、お仕事モードに切り替えたアンプルさんは。

焚かれたお香のいい匂いが漂う中、何事かを唱えながらコップの様な容器に大小様々なおはじきを入れてカラカラ回す。

一通り回し終えると、容器の中身を陣の上に放り投げた。

 

「ふむ・・・・」

「ど、どうでしょうか?」

 

色とりどりの石が散らばった様を、観察するアンプルさんに。

やや緊張した面持ちのましろさんが思わず問いかける。

もう少しだけ沈黙を保ったアンプルさんは、やがてにっこり笑ってから。

 

「トータルで言うなら、悪くない」

 

まず、ましろさんを安心させてくれた。

 

「本当ですか!?」

「ええ、ほら、この石。恋愛運を示しているのだけれど、この位置にあるってことは、想い人との相性はばっちり!」

「やった!ソラさん!」

「ふふ、ええ、嬉しい限りです」

 

年頃の娘さんらしくはしゃぐましろさんが微笑ましくて。

自分が破顔してしまうのが分かった。

 

「ただ、近い未来に試練有りと出ているわ。気を付ける事ね」

「は、はい・・・・!」

「あとは・・・・将来に関する分野ね」

 

『この石よ』と、指し示すアンプルさん。

 

「これも、要注意の結果が出ているわ。断言はできないけれど・・・・何か、大きな悩みに直面するかもしれないわね」

「な、なるほど・・・・」

 

『要注意』と言われてしまって、身構えてしまうましろさんに。

アンプルさんは『大丈夫よ』と微笑んで。

 

「この周りに、家族や友人を示す石があるでしょう?これは、貴女が孤独ではないことを教えてくれている・・・・まあ、『困ったときは頼りなさい』ってこと!」

「そうですね、遠慮なく相談してください」

「はい!」

 

私も一緒になって微笑めば、不安は除けた様だった。

よかった・・・・。

 

「さて、次は貴女ね」

「お手柔らかにお願いします・・・・!」

 

ましろさんと入れ替わって、今度は私が対面に座ろうとするけれど。

 

「ああ、ちょっと待ってちょうだい」

 

アンプルさんが、立ち上がろうとしたましろさんを引き止めて。

焚いていたお香の火を消す。

 

「消しちゃうんですか?」

「ええ、一人ごとに焚きなおすの。『香が焚かれている間は、起こる事すべてに意味がある』・・・・ヒヒトの拝み屋では、常識よ」

「なるほど」

 

もう座っていいとのことだったので。

新たに焚かれる目の前に座った。

 

「――――、――――」

 

再び何事かぶつぶつ呟きながら、容器の中のおはじきをかき混ぜるアンプルさん。

・・・・ちょ、ちょっと緊張してきた。

どんな結果が出るんだろう・・・・?

 

「それっ!」

 

そして、満を持して石が投げられた。

 

「ううーん」

 

バラバラと音を立てて陣に撒かれた石達。

・・・・素人目に見ても、はっきり分かる。

なんか、ましろさんの時と比べて、がっつり偏ってる・・・・!!

 

「想像以上に波乱万丈ね!!」

 

一緒に覗き込んでいたアンプルさんは、まず明るく言い切った。

 

「こんなに偏ってるのは初めて見た・・・・すご・・・・」

「そ、そんなに・・・・!?」

 

まるで、お医者さんが珍しい症例を見た様な反応に。

私も戦々恐々としてしまう。

 

「ひとまず、貴女の危難がご家族に及ぶことはないわ。これは安心していい」

「よ、よかった・・・・」

 

本当によかった・・・・。

 

「けれど、お友達・・・・この場合は、プリキュアの仲間も含めた方がいいでしょうね。貴女自身もそうだけど、多くの困難が待ち受けているわ」

「・・・・なるほど」

 

困難、か。

人を前に向かせるのが占いだから、柔らかい表現を使ってくれているのかもしれない。

本当は、もっと悪いことの予兆なのかもしれない。

・・・・立ち向かうのは当然だ。

逃げるなんて、有り得ない。

そんなことは許されない。

今一番大事なのは、どうやってみんなを守るかだ。

最悪、私がいなくなっても。

 

「――――大丈夫です!」

 

暗がりに沈みかけた思考を引き上げたのは、ましろさんの手。

 

「私達みんなで、乗り越えるので!」

 

『ね?』と微笑みかける彼女に、暗いものがスゥっと引いていくのが分かる。

 

「・・・・そうね」

 

何だか照れくさい思いを抱いていると、アンプルさんは優しく笑って頷いてくれた。

・・・・そうだな。

あんまり気負い過ぎて、仲間達に迷惑かけるのはよくないよな・・・・。

なんて、考えていた時だった。

 

「しょらー!ましぉー!」

 

・・・・ん?

 

「あれ?エルちゃん?」

「エルちゃん、ですよね?でもどこから・・・・?」

「・・・・あ」

 

二人でキョロキョロしていると、一緒に探してくれていたアンプルさんが何かに気が付いたらしく。

 

「あれじゃない?」

 

指さす方向、即ち上を見上げると。

 

「あれー?アンプルもいるー!」

「あの二人で間違いないですか?プリンセス?」

「うん!!」

 

二人のヒヒトが、まさに飛び降りて来るところだった。

のんびりしてそうな方は、いつものだっこ紐にエルちゃんを抱えている。

 

「お疲れ、ロメラ、シーナ」

「わわっ!?孫悟空!?」

 

アンプルさんとお知り合いらしい二人。

目の前に降りて来た彼らにびっくりしたましろさんは、世界一有名なおサルさんの名前を口にしたのだった。

分かる(分かる)

私も実際に見るのは初めてだけど、存在を知った時はそうだった・・・・。

 

「そん・・・・?」

「あちらの世界の、おとぎ話のヒーローなんです」

「おー」

「そら!ましろ!」

 

伸ばされてきたちいちゃな手を握り返しつつ、エルちゃんを受け取る傍ら。

お二人がベリィベリーさんの幼馴染であること、お祭りに出稼ぎに来ていたこと。

そして、ベリィベリーさんのお願いで、はぐれてしまった私達を探してくれたことを話してくれた。

 

「山登りが大得意だから、建物や街灯だって、私達にとっては『通り道』よ」

「怒られるからー、普段街中ではやらないんだけどー」

 

『お祭りだから、特別ー』と、ロメラさんがのほほんと教えてくれる。

聞けば、商いの方はベリィベリーさん達が変わってくれているということだった。

 

「あ、アンプルさん、すみませんが・・・・」

「ええ、構わないわ。お友達を安心させてあげて」

 

お香をしっかり消しながら、アンプルさんがニッコリ笑ってくれる。

 

「すみません、ここで失礼します!」

「占い、ありがとうございました!」

「こちらこそ、ご利用どうも。ベリィベリーにもよろしくね!」

 

手を振ってくれるアンプルさんに、エルちゃんと一緒に振り返しながら。

ロメラさんとシーナさんにそれぞれおんぶしてもらって、仲間達の下へ急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

「――――さて」

 

妹の友人達を見送ったアンプルは、後片付けをしようと陣を見下ろして。

 

「――――ッ」

 

――――先ほどまでは、出ていなかった結果に。

息を呑む。

 

(香はちゃんと消した、ということは、消す前に起きた変化ということ?)

 

魔法でもあるまいに、石が勝手に動くわけがない。

切欠があるとすれば・・・・。

 

(ロメラ達が降りて来た時ね)

 

あの時、全員の意識がそちらに向いていたし。

石の移動距離からして、音もなく転がったというのも十分に考えられる。

――――いや。

それよりもだ。

アンプルにとっての気がかりは、ソラ自身を照応させた石の。

今の位置。

 

(死相・・・・!!)

 

『香が焚かれている間は、起こる事すべてに意味がある』。

ならば、この先。

彼女に待ち受けているのは――――。




拙作オリキャラ紹介

ロメラ
ヒヒトの少女、ベリィベリーの幼馴染。
とってものんびりしている。
ネーミングは「メロン」。


シーナ
ヒヒトの少女、ベリィベリーの幼馴染。
しっかりもの。
ネーミングは「梨」。


アンプル
ヒヒトと人間のクォーター、ベリィベリーの姉。
見習いシャーマン。
作中では描写されなかったが、某野菜人の様に猿の尻尾が生えている。
ネーミングは「リンゴ(apple)」。



ヒヒト
ウイテルケワシーで暮らす少数民族。
二足歩行する猿の姿をしている、みんな大体フィジカルオバケ。
四肢はまさしく『四本の腕』と言っても過言ではないくらいに起用に動かせるので、険しい岩山もすいすい動ける。
普段はその身体能力を利用して、山岳地帯の物流や、往来する人々の護衛を引き受けている。
獣に近しい姿から、差別を受けた歴史もあるので、『猿』は禁句。
若い世代も、ロメラの様に初対面には寛容な者もいるが、いい顔はしない。
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