ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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実は前回から、イメージOPがFL○Wなんですよね(蛇足)

追記∶すみません、やっぱりLI○Aにさせて下さい!()


偽物、引き離される

「――――プリンセスの為に行ったのに、結局僕達が楽しんじゃいましたね」

 

帰り道。

スマホに転送してもらった写真を見ながら、ツバサがしみじみ呟く。

夕焼けに照らされた車内の、静かな微笑みが。

彼の感想に、同意を示していた。

 

「ましろん、エルちゃんの様子は?」

「ぐっすりだよ」

 

声を潜めながら、ぐっすり眠っているエルを見守るましろ。

時折むにむにと口を動かす様子が、とても愛らしい。

 

「ふふ、今日は楽しかったもんねぇ」

 

ふと、小さな手が所在なさげに握ったり開いたりしていたのを見つけて。

そっと、指を寄せる。

予想通りにぎってくれたのを見て、ましろは静かに破顔した。

 

(戦いが終わるのがいい、それが一番)

 

指を解き、エルの手をそっと握り返す。

 

(エルちゃんだって、パパとママのところに帰れるんだもん。分かってる)

 

そう、分かっている。

『ずっと』なんてなくて、『いつか』は必ず訪れて。

だけど、それでも。

 

「どうした?」

「ああ、えっと・・・・」

 

感情が出てしまっていたのか、ベリィベリーに問いかけられて。

だけど、うまく言いつくろえる気がしなかったから。

 

「――――続けばいいなぁって」

 

素直に、白状してしまう。

 

「エルちゃんのこれからを、ずっと、見守っていたいなって」

 

吐き出し切ってから、我に返ったましろ。

『あはは』と、誤魔化しの笑い声を零す。

 

「ごめん、変なこといっちゃった」

「・・・・いや、そうでもない」

 

苦く笑うましろへ、ベリィベリーは静かに首を振る。

 

「私も覚えがある」

 

それから、窓の外に視線をよこして。

しみじみと、呟いたのだった。

 

「だからこそ、そう焦らなくともいいだろう。来る『いつか』は、今日じゃない」

「はい!その日まで、一緒にプリンセスを守りましょう!」

 

『ソラさんも、きっと同じ気持ちです!』と断言するツバサに。

ましろは、笑って頷いたのだった。

 

「ふふ・・・・うん?」

 

後ろのやり取りを見守っていた(感じ取っていた)あげはが。

ふと、改めて前を見た。

――――人が、立っている。

 

「ぅわっ!?」

「わわわっ!?」

 

咄嗟に急ブレーキ。

車輪から甲高く悲鳴を上げた車は、もう数メートル進んでから停止する。

 

「な、なんですか!?」

「ぃ、今確かに人が・・・・!?」

 

助手席のツバサと一緒に、前を見渡すあげは。

一人バイクで並走していたソラも、バイクから降りて車の前を探す仕草をしているので。

幻覚の可能性は消えてしまう。

 

「何があったんだ?」

「えぅ・・・・」

「大丈夫、大丈夫だからね」

 

後ろでは、ましろが起きてしまったエルをあやしている横で。

ベリィベリーも急ブレーキの要因になった人影を探している中。

 

「――――ぁ」

 

あげはの視界に入った、バックミラー。

先ほど見かけた人影が、ぽつんと立っていて。

 

「――――逃げろォッ!!!」

――――バンッ!!

 

ベリィベリーの絶叫、急かす様に車体を平手打ちするソラ、急発進させるあげは。

全てが、同時に起こったことだった。

 

「アンダーグ帝国の新たな刺客なら、戦うべきです!」

 

パトカーがすっ飛んできそうな猛スピードで走る車内。

いの一番に進言したのは、ツバサだ。

 

「ヤバいよ、あれ」

「え」

「ただの敵ではない」

 

バックミラー越しに目を合わせたあげはの次に、ベリィベリーが断言する。

 

「あの目・・・・戦いの前につきものの、高ぶりも、緊張も、怒りも憎しみも、何もなかった・・・・!!」

 

その隣、エルを庇う様に覆いかぶさっていたましろは。

ベリィベリーの手が、震えていることに気付いた。

 

「あんな空虚な目、見たことがない・・・・!!」

 

恐らく、ソラも同じものを感じ取ったのだろう。

だから車を叩く蛮行に出たのだ。

『戦い』よりも、『逃げる』ことを選択し。

あげは達にも、それを促す為に。

 

「ッ、上か!?」

 

直上から、ドンという音。

はっきりと分かる威圧の中、ハンドルを握るあげはは振り落とそうと蛇行を開始。

ピヨちゃんが動きやすいよう、やや下がったソラも。

今まさに上に乗っている下手人を叩き落とすべく、バイクの上でバーストカリバーを握りしめる。

しかし、

 

「――――飛べ」

 

一手、遅かった。

 

「――――ッ!」

 

逃げ場のない、橋の上の。

さらに逃れようのない車の中。

下手人以外が出来たことは、開いたゲートにまんま飛び込むことだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗転。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲートの先は、空中だった。

薄暗いそこを照らすべく、咄嗟にライトを点灯させたあげは。

先ほどまでの勢いのままに飛び出してしまった車が、思ったよりも早く地面に降り立ったのに安心しながら。

全力でブレーキを踏みしめて、やっとの思いで車を止める。

 

「・・・・ここ、どこ?」

 

周辺には霧が立ち込めている様だ。

とにかく現状を把握しようと、あちこち見下ろしていると。

 

「ぁあッ・・・・!?」

 

後部座席から、ましろの悲鳴が聞こえた。

 

「ッどうしたの!?」

「エルちゃんが・・・・エルちゃんが・・・・!」

 

ツバサと一緒に、身を乗り出してみれば。

確かにチャイルドシートにいたはずのエルが、忽然と姿を消している。

 

「ックソ!!」

 

ほぼほぼ投げる形でシートベルトを取っ払ったベリィベリーが、車を飛び出す。

追従して出て来た面々も、必死になって目を凝らす中。

ふと、上空に目を向ければ。

 

「いた!!プリンセス!!」

 

――――いた。

もはや届かないはるか上空。

シャボン玉の様なバリアに閉じ込められたエルが。

今まさに、新たなゲートに吸い込まれるところで。

 

「ッさせるか!!」

 

変身の暇はないと判断したベリィベリーは、生身で『魔力の手』を召喚。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」

 

足元を思い切り叩きつけて跳ね上がると、今度はスカイジュエルの雷で更に踏み込んで。

 

「ップリンセス!!!」

 

エルに、めいいっぱい手を伸ばす。

――――だが、

 

「――――吹き飛べ」

「なっ、がああッ!?」

 

やはり。

横合いから、あのローブの人影が現れて。

ベリィベリーを吹き飛ばしてしまった。

 

「ベリィベリーちゃん!!」

 

叩き落とされる彼女に、あげはが駆け寄る中。

呆然としていたましろは、わなわなと口を動かす。

 

「・・・・うそ、こんなの、嘘だよ」

 

エルが、ゲートの向こうに吸い込まれる。

その事実を呑み込めないままに、処理しきれない感情が言葉となってなだれ落ちる。

 

「だって、さっきまであんなに楽しかったのに・・・・!」

 

『ああ、どうか悪い夢であってくれ』。

 

「・・・・ぁ」

 

そんな祈りを、嘲笑う様に。

 

「・・・・ぁぁ」

 

ましろは、もう一つの絶望に気付いた。

気付いて、しまった。

 

「ソラさん、は?」

「――――ッ!」

 

はく、と吐き出された疑問に。

全員が総毛立つ。

そうだ。

エルが連れ去られたあまり、気付かなかったが。

一人、バイクに乗っていたソラが。

影も形も見当たらない・・・・!

 

「プリンセスのみならず、ソラまで・・・・!」

「ただでやられるとは思わないけどね、何とか探さないと!」

 

とにかく、今やれることを。

行動を起こそうとした面々を、阻む様に。

足音が、静かに響く。

 

「――――ッ」

 

振り向けば、先ほどのローブの人影が佇んでいて。

剣呑のままに、変身アイテムを握りしめる。

 

――――ひろがるチェンジ!

 

「ッエルちゃんを返して!!」

「答えろ!!プリンセスはどこだ!!」

「ソラちゃんの行方も、キリキリ吐いてもらうよ!!」

 

プリズムの啖呵を皮切りに、それぞれの疑問をぶつけると。

やや沈黙を保った人影は、やはり冷たい目を向けて。

 

 

「――――プリンセスは、アンダーグ帝国へ」

 

 

「キュアスカイには」

 

 

「――――先んじて死んでもらう」

 

 

端的に、一方的に。

宣言したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ぐあッ!?」

 

どがしゃん、と。

バイク諸共、強かに地面に打ち付けられた。

木々が生い茂る獣道を、愛車がゴロゴロ転がり落ちていく横。

しばし痛みに呻いてしまう。

クッソが、やってくれたなあのヤロウ。

中古だろうと、めちゃくちゃ気に入ってたんだぞ!!ツバメちゃん!!(あげはさん命名)

 

「ッ、みんな・・・・!」

 

霧が濃い。

現在地がどこか分からない。

何が起こっているのかも、未だに把握できていない・・・・!

ヘルメットを取り払って視界を、確保する。

周囲は想像通りの雑木林と、転がり落ちて行ったバイクから。

山であろうと言うことは想像出来るけど。

日も落ち始めた時間帯なだけあって、辺りは薄暗く。

更に鬱蒼としているので、景色から近場の街を探すことも出来なさそうだ。

幸い、バーストカリバーは近くに落ちていたので。

拾い上げて、とにかく歩き出そうとした。

――――その、矢先。

 

「ッ・・・・!?」

 

背後に敵意を感じて、飛びのく。

葉っぱと土に塗れながら転がって、立ち上がれば。

海辺で出会った、酔っぱらい顔。

 

「メイテイ・・・・!」

「イエーイ!久しぶりー!」

 

手持ちの酒徳利を、ぐびっと煽ったメイテイは。

地面に叩きつけていた剣を、ずるりと持ち上げる。

・・・・刀身も、柄も。

区別がつかないくらいに真っ黒。

不気味な剣だ・・・・。

 

「お前さんの、真っ白(まっちろ)なイチモツとは違うでげしょ?」

 

ガン見していいたのが見透かされたのか、面白そうにヘラヘラ笑うメイテイ。

・・・・言われてみれば。

あいつの剣と、私のバーストカリバー。

白と黒で、なんだか対照的だ。

 

「――――そのまま見とれてていいのヨン?」

「ッ・・・・!」

 

繰り出された一閃を、間一髪で受け止める。

・・・・あっぶね!!

すぐに弾き飛ばすけれど、あっちもすぐに踏みとどまって斬撃を繰り出してくる。

 

「・・・・ッ!」

「おおっ?」

 

何合か斬り合い、相手の剣を木に食い込ませたところで。

一気に距離を取って、ミラージュペンを取り出す。

 

「ひろがるチェンジッ!!」

 

変身して、改めてメイテイと向き合う。

・・・・周辺からは、私達以外の気配を感じ取れない。

完全に分断されている。

 

(みんなの様子も気になる・・・・!)

 

あの時合わられた、ローブのあいつ。

これまでの連中とは、比べ物にならない威圧感だった。

心配だ・・・・!

 

「ヘヘヘッ・・・・他人のことを、気にしてられるといいネェ?」

「・・・・ほざけ、酔っぱらい」

 

油断なく、切っ先を向ける。




意外と長くなりそうなエピソードです。
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