みらリコはーモフが、予想以上に家族してる・・・・。
かわいい・・・・みんなかわいい・・・・。
偽物、特訓を見守る
「ごめんなさい・・・・パン、焦がしちゃった」
――――翌朝、虹ヶ丘家。
ましろさんが申し訳なさそうに抱えたバスケットには、言う通り黒焦げのパンが。
いつも賑やかな朝の食卓は、今日ばかりは重く静まり返っていた。
「昨日のこと、色々考えちゃって・・・・」
ましろさんに限らず、みんな同じことを。
昨日の攻防を考えていることだろう。
私も、みんなも。
徹頭徹尾、徹底的に相手のペースだった。
今ここに、無事でいられることが。
未だに信じ切れていない。
「スキアヘッド・・・・これからは、あの強敵を相手取らねばならんのか」
「メイテイの剣も、とても厄介です・・・・ソラさんの腕も、治らないままですし・・・・」
私の右腕も、結局治らないまま。
普通の怪我じゃないので、病院も頼れない。
なので、今はヨヨさんお手製の傷薬を塗って、骨折の様に腕を吊って固定していた。
ちなみにそのヨヨさんは、アンダーグ帝国のさらなる情報や、メイテイの剣『常夜丸』の呪いを解く方法を探す為に。
単身スカイランドへ渡ってくれている。
いつもありがとうございます・・・・!
「はいはいはい!!ひとまず切り替えよー!!」
手拍子が、落ち込んだ思考を一時停止させた。
いつの間にか俯いてしまっていた顔を上げると、目が合ったあげはさんが、パチンとウィンクする。
「起きたことを考えるよりも、これからを考えよう!今度はエルちゃんを奪われないように・・・・私達自身が強くなれるように!」
は、とまた視線を動かすと。
やや不安そうに私達を見渡すエルちゃんがいて。
・・・・本当に。
こういうところが頼れるんだよな、この人。
「・・・・そうですね」
「ああ、嘆いて強くなれるわけでもあるまいし」
「うん、頑張ろう!」
みんなも前向きになれたようで、何より。
食卓の雰囲気が軽くなったところで、ふと。
「あーう!まーじぇ、まーじぇ、まーじぇ!」
「・・・・そういえば」
不安が拭えたらしいエルちゃんが、スープをご機嫌に混ぜているのが聞こえて。
ツバサくんが、口火を切る。
「キュアマジェスティって、何者なんでしょうか?」
「言われてみれば・・・・」
「めちゃ強だったよね」
「本当に・・・・あの人がいなかったら、どうなっていたか」
口々にマジェスティのことについて語り合うみんな。
「ソラさんはどう思います?」
「ああっ!そうだよ!」
私はどうコメントしようかと考えていると、話を振られてしまった。
途端に、あげはさんが立ちあがって。
「バタバタしてて聞きそびれちゃったけど、昨日あの子にちゅーされてたよね!?」
「待っっっっって」
待っっっっって。
「浮気だ浮気!!」
「ご、誤解です!!っていうか、あの状態で何かしら出来ると思います!?」
いや、まあ確かにされてたけども!!
っていうか、それはましろさんの台詞では!?
「なんて話しているが、どうなんだ?」
「ああ、うん・・・・そうなんだけども」
ツバサくんに呆れた視線を向けられながら、あげはさんとわちゃわちゃしている横で。
ベリィベリーさんに問いかけられているましろさん。
すると彼女は、やや悩んだ様子を見せてから。
「びっくりはしたけど、なんか嫌な感じはしなくて・・・・」
「そうなのか?」
「うん、不思議だね」
そう、ましろさんがはにかんだ時だった。
「えるだよ!」
「うん?」
やり取りを見ていたエルちゃんが、手を上げる。
そして、
「える、きゅあまじぇすちなの!!」
元気いっぱいなカミングアウトをしたのだった。
「「「ええええええええッ!?」」」
「エルちゃん、それ本当?」
「あい!」
大分衝撃的な告白。
ちなみに私の感想は『やっぱり』だ。
「ソラちゃん、もしかして気付いてた?」
「まあ、あれだけ近づいたら、多少は・・・・」
あげはさんが物申した、額へのキスも含めて。
気配を探る機会が何度もあればね・・・・多少はね・・・・。
「うそじゃないの、ほんとなの!」
困惑し過ぎたのか、不安そうに見渡すエルちゃん。
「ッううん、みんなエルちゃんが嘘ついたって思ってないよ!ね?」
「ええ、むしろ納得です」
「確かに・・・・プリンセスは運命の子、その力が最強のプリキュアであることとしたら」
「はい、つじつまが合います!」
カバトンも、最初はエルちゃんに特別な力がある様な事を口走っていたし。
昨日だってそうだ。
私と二人がかりと言えど、メイテイに大ダメージを叩き込み。
スキアヘッドの攻撃を往なして、撤退させた。
あれが『運命の子』たる所以なのだとしたら、
「ねえ、エルちゃん。今、マジェスティに変身できる?」
「あい!」
ましろさんの提案に、また元気よく返事したエルちゃん。
「え~る~!」
ひとまず廊下に移動して、変身を見守ることにしたんだけども。
自信満々にエルちゃんが掲げているのは、愛用のスプーンで・・・・。
「ひろがるちぇーんじ!」
ぃ、いやいやいやいや、まあまあまあ。
こういうのはノリと勢いが大事って言うしね?
「ぁう・・・・」
とはいえ、何も起こらないのも事実でして・・・・。
「ぷりきゅあ!ぷりきゅあ!ぷりきゅあ!」
エルちゃんは、ポーズを次々変えて変身しようとするけれど。
なかなかマジェスティになれる気配がない。
「ちぇんじ!ちぇんじ!ぷりきゅあ!つよいの!」
エルちゃん本人も、だいぶ焦っている様子で。
「うぅ、ほんと・・・・ほんとなのにぃ・・・・!」
終いには、プンプンとスプーンを振り回して泣きそうになってしまった。
「はい、ストップ」
振り回す手を、包む様に握って止める。
「本当なのは分かっていますよ。貴女は確かに、キュアマジェスティです」
「そらぁ・・・・!」
「ソラちゃんの言う通り!でも今は、なぜか変身出来なくて、こまったこまった、なんだよね?」
「えう・・・・!」
あげはさんに抱っこされて、涙目のエルちゃん。
変身出来なくて、悔しそうだな・・・・。
私達に、ちゃんと出来ているのを見られていただけに。
悔しさもひとしおだろうな・・・・。
「よぉーし!ここは最強の保育士とボディガードコンビにお任せあれ!」
「そうですね、変身する方法を一緒に考えましょう」
「・・・・あーい!」
実際右腕は使い物にならないしね。
大人しくこちらを手伝うとしよう。
「なら、私達は特訓だな」
「はい!」
「プリンセスに頼りきりになるんじゃなくて、僕達自身が強くならないと!」
みんなもそれぞれやる気になったし、前向きになれてよかった・・・・。
◆ ◆ ◆
「カイゼリン様・・・・ついに、あのキュアマジェスティが現れました」
アンダーグ帝国、玉座の間。
スキアヘッドの報告に、女帝『カイゼリン』は忌々し気に舌打ちする。
「まだその強大な力を使いこなせぬうちに、消し去らねば」
「・・・・よかろう」
「はい、全てお任せを」
深くこうべを垂れて、謁見を終わらせたスキアヘッド。
「――――あれは?」
「だいぶタフだからねぇ、まーだ抵抗してるよォ」
玉座の間を出た彼は、真横で壁に寄りかかっていたメイテイに問う。
「マ、時間の問題だろうけど」
「・・・・ならば、良い」
淡々と確認を終えたスキアヘッドは、闇に消え。
それを見送ったメイテイもまた、踵を返して別の闇に消えた。
◆ ◆ ◆
「――――ひろがるちぇんじ!」
めいいっぱいの声を張り上げて、色んなポーズを試すエルちゃん。
私達のはもちろんのこと、いつか出会ったデリシャスチームや、ヒーリングっどチームのポーズも試しまくっているけれども。
未だに変身の兆候は見られない。
「う"ぅ"~!」
散々試行錯誤しても、なかなかうまくいかない状況に。
涙をいっぱい溜めて、今にも泣き出しそうになるエルちゃん。
「なかなか上手くいかないねぇ」
「少し、お休みしましょうか」
「そらぁ・・・・!」
「よしよし」
ぐずりそうになるエルちゃんを膝に乗せて、よしよしする。
「うーん、流石に頭打ちかなぁ・・・・」
「ですねぇ」
いっぱい頑張ってるんだけどなぁ・・・・。
変身出来たのが、偶然だとは思えない。
何かのきっかけがあるはずだ。
「ここは、先輩のアドバイスの出番じゃない?」
先輩・・・・ちょっとくすぐったい響きだ。
って、照れてる場合じゃないや。
「おしえて!おねがい!」
エルちゃんのやる気もまだ尽きていないし、応えたい。
「・・・・そうですね」
今、出来そうなアドバイスは。
「――――体の力を抜きましょう」
「ちから?」
「はい」
見上げて来る真ん丸な目を、見つめ返す。
「今のエルちゃんは、頑張ろうって思い過ぎて、知らない内に体が疲れちゃってるんです」
もにもにと、ちいちゃな肩を揉みながら。
伝わりやすい言葉を、何とか選ぶ。
「だから、一度体の力を抜いて、リラックスしましょう」
「なるほど、瞑想だね!」
「はい!」
「めーそー?」
「大きく息を吸って、吐いて。心と体を、ふわーってさせるんだよ」
エルちゃんをあげはさんに託して、足を組む。
右腕はそのままに、左手を膝に置いて。
「ヒュウウウゥゥ・・・・」
たっぷり時間をかけて、ゆっくり呼吸する。
「おおっ!堂に入ってるね・・・・」
「えるぅ・・・・!」
「エルちゃんもやってみる?」
切りのいいところで目を開けると、あげはさんがエルちゃんに提案しているところで。
エルちゃんはやや悩んでから、
「・・・・やる!」
ふんす!と鼻息荒く意気込んだのだった。
「はい、ここに座ってください」
「あい!」
胡坐はさすがに無理なので、椅子を用意する。
「お膝に手を当てて、目を閉じるんです」
「える・・・・!」
「それからゆっくり、息を吸って・・・・吐いて・・・・」
「すぅー・・・・ふぅー・・・・!」
エルちゃんの手に、私の手を添えて。
ゆっくり呼吸をさせる。
けれど、やがて櫓をこぎ始めてしまう。
「おっと」
「ありゃりゃ、寝ちゃった」
とうとう、すやすやと寝息を立て始めてしまった。
「まあ、ちょうどいいかもね」
「ええ、頑張ってましたからね」
小一時間くらいだろうか。
色んな変身ポーズと、発声を頑張ってたんだ。
休憩するには、ちょうどいいタイミングと言っていいだろう。
「起きたら、他のみんなのとこにも行ってみようか」
「はい」
何はともあれ。
今はゆっくり寝かせてあげよう。
あ、新章スタートです(今更)