ひろプリが二年前になってしまうとか、嘘だと思いたい・・・・。
ついにマジェスティ覚醒回・・・・!
「あれは・・・・!?」
ツバサくんの鳥友達からのエマージェンシーを受けて、押っ取り刀で駆けつけてみれば。
市街地で暴れ回るミノトンがいて。
・・・・いや、あの。
「でっっっかぁ・・・・」
デッッッッッッカ・・・・。
四階建てのビルくらいある・・・・。
ビルドアップにもほどがあるでぇ・・・・。
「ヌウゥ・・・・?」
ひとしきり暴れたミノトンは、こちらに気が付いて振り向いた。
・・・・完全に正気じゃねぇ目だな?
例えるなら、世界的知名度を誇る
「キタカ、プリキュアアアアアッ!!!」
案の定、明らかにただ事ではない声色で咆哮を上げたミノトンは。
猛然と突進してきた。
「ッハァ!!」
変身の隙はないかと、焦った瞬間に。
ベリィベリーさんが前に出て、魔力の手で受け止める。
「ヌォアアアアアアアアアッ!!!」
「っづ・・・・!!」
止められてもなお、ズンズン前に進むミノトン。
対するベリィベリーさんは、じりじり押し込まれていく。
「ぃ、まの、うちにいぃ・・・・!!」
「ありがとう!待っててね!」
「行こう!」
なんとか踏ん張りながら、変身を促されて。
ベリィベリーさん以外のみんなは、ミラージュペンを構えた。
「エルちゃん、こっちに」
「えう・・・・」
怪我人の私と、変身出来ないエルちゃんは。
大人しく物陰に隠れる。
ついでに少しでも安心出来たならと、動く左手で抱き留めた。
無意味かもしれないけどね・・・・。
「今は無理してはいけません、一緒にいましょう」
「あう」
やや遅れて変身したエクリプスの背中を、目で追いかけながら。
変わり果てたミノトンを見上げた。
◆ ◆ ◆
「オオオオオオオオオオ―――!!!!」
豪速で飛んでくる拳を、散開で回避。
まず、ビルに張り付いたプリズムが光弾を連射。
意識が逸れたところへ、懐に入り込んだバタフライが投げキッス。
爆発に怯み、のけ反ったミノトン。
「「ひろがるッ!!」」
その頭上に躍り出たウィングとエクリプスが、必殺技の構えを取って。
「ウィングアターック!!」
「エクリプスジャッジメントオォッ!!」
顔面に、叩き込んだ。
「グ、オオオ・・・・!」
ぐらり、と。
巨躯が傾いて。
「ヌウウウウウウウウウ!!!!!」
――――轟音を上げて、踏ん張った。
「イマノイチゲキ・・・・」
様子がおかしいながらも、賞賛を口にしようとするミノトン。
「テキナガラ、アッパ・・・・」
『変貌しても、いつもの彼なのでは?』という一抹の予感は。
「ヌウ"ウ"ウ"ウ"ウウウウウッ!?」
彼を抑え込む様に迸った、アンダーグエナジーによって否定された。
「ヌラァッ!!!」
「な、っぐ・・・・!」
「うわぁっ!?」
まず、ウィングとエクリプスを一蹴。
「ウオオオオッ!!」
次に高架に移動して陣取っていたプリズムへ、拳を叩きつける。
なんとか避けたプリズムだったが、ミノトンはそのまま腕を振るって瓦礫を飛ばす。
「プリズム!!」
バタフライが咄嗟にバリアを張るものの。
「ガアアアッ!!」
それを待っていたとばかりに、踵落としを放った。
「しま、きゃあああッ!」
「あああッ!!」
地面が砕け、衝撃に全身を揺さぶられた二人は。
耐え切れずに吹き飛ばされてしまう。
「みんな!」
「ダメ、危ないです!」
プリキュア達を案じて、物陰から出てしまいそうになるエルを。
ソラがなんとか抑えていると。
「――――なかなか良いでげしょ?」
小高いところから、声。
揃って見上げれば、高架から伸びる電柱の上にメイテイが陣取っている。
「っく・・・・」
「やっぱり来たな・・・・!」
「今度は何をしたの、酔っぱらい!!」
苦悶に顔を歪めながらも、果敢に問いかけるバタフライ。
「いやぁ、ミノさんってば、あんまりにもお仕事をしないからサーァ?」
相変わらず酒を呑みながら、メイテイはにんまり笑って。
「怒ったエライさんがアンダーグエナジーぶっ込んで、ちゃんとお仕事するようにしたの♪」
「アンダーグエナジーを・・・・!?」
その時、プリキュア達の脳裏に過ぎったのは。
ランボーグにされてしまったシャララと、殺人マシーンにされてしまったソラの二人。
「シャララ隊長や、ソラと同じことを・・・・!?」
「なんてことを・・・・!」
「どうしてそこまでして、プリンセスを攫おうとするんだ!?」
「あー、それねぇ」
なんとか立ち上がったウィングの叫びに、いつもの様に酒徳利を煽ったメイテイは。
「もーこだわってないのよね、攫うことにゃ」
まるで日常会話の様に、そんなことを宣うのだった。
「・・・・攫うことに」
「こだわって」
「いない・・・・!?」
もう攫う必要はない。
なのに、こうやって襲撃を続けている。
と、いうことは。
「――――ッ」
一つの可能性を導き出したソラは、歯を剥いた険しい顔でエルを抱きしめた。
「ま、どっちにせよ
「オオオオオオオオオオオオッ!!!ギョイッ!ギョイッ!ギョイイイイイイイイイッ!!」
そんなソラを面白そうに見下ろしたメイテイは、プリキュア達を指さす。
指示に咆哮を上げたミノトンは、再び猛然と走り出した。
「は」
「ちょ、はや」
巨体とは思えぬ豪速に、プリキュア達の判断が遅れる。
やっと身構えた頃には、すでに拳が繰り出されていて。
「っわああああああああ!!」
「きゃあああああああッ!!」
猛撃を前に、成すすべなく吹き飛ばされてしまった。
「ッ・・・・!」
「みんなぁ・・・・!」
今度こそ倒れ伏してしまった仲間達を、苦い顔で見つめるソラ。
エルに至っては、ぽろぽろと涙を零している。
「トドメダ、ウケルガヨイイィ・・・・!」
対するミノトンは、両手を互い違いに組み合わせて引き絞る。
「ッいけない・・・・!」
「そら?」
エネルギーが溜まる様を見たソラは、抱き留めていたエルを放すと。
「ッエルちゃんはここにいて下さい!」
「そらぁ!」
呼び出したバーストカリバーを左手に握りしめて、飛び出した。
「サイキョウトナッタワレノ・・・・!」
「月牙・・・・!」
ついに放たれた、気功の砲撃を。
「サイキョウノワザヲオオオオオオオオッッ!!」
「――――天衝ッ!!」
今打てる最大の技で迎え撃つ。
瞬間、閃光、轟音。
一時拮抗した両者だったが、
「オオオオオオオオッ!!!」
「ッ・・・・!」
ミノトンが力んだことと、やはり片腕というハンデがあったことが重なって。
ソラが押され始めて。
「ッ、この・・・・!」
体を大きく捻って、軌道を逸らす。
意地で自分と仲間達への直撃は回避させたものの。
余波と熱気に炙られて、ソラの肌が一気に赤くなった。
「っづ・・・・!」
「ソラちゃん!」
体勢を崩して、膝をついてしまうソラ。
右腕を吊っていることも有り、ボロボロ具合が際立っていた。
「はー、頑張る頑張る!」
相変わらず呑んでいたメイテイは、倒れ伏してしまったプリキュア達を見下ろして感嘆の声を上げる。
同時に、見えて来た勝利にほくそ笑んでもいた。
「さーて、こっからどーするのかナー?」
見下ろしながらニヤニヤからかって、次の手札を晒す様に促すメイテイ。
(――――このままじゃ全滅だ)
対するソラは、苦い顔で彼を見上げていた。
(右腕は使えないままだけど、変身するか?)
負傷した右腕の次に意識を向けたのは。
物陰に隠れたエル。
(せめて、最悪の事態だけでも回避しないと・・・・!)
ここで全滅なんてことになってしまえば、エルを守る者がいなくなる。
どう切り抜けるか、全神経を逆立たせて集中していると。
「――――あらぁ?苦戦してるの?なんでぇ?」
メイテイが、心底不思議そうにソラを見下ろす。
「この前はすごかったじゃないの?」
(煽りか?スルーしよ・・・・)
ちらりと視線をやるだけで、すぐ目の前に集中するソラだったが。
「――――あの翼みたいな痣は、もう出せないの?」
その言葉だけは、聞き逃せなかった。
「痣?そんなのあったっけ?」
「分かりません、あの時はいっぱいいっぱいで・・・・」
「私もそうだ、気にするな」
仲間達は困惑に互いを見合うが、やはり互いに首を横に振る。
そんな中、ソラを案じて見つめていた、プリズムだけが気が付いた。
「――――ッ」
「ソラさん・・・・?」
彼女の目が、顔が。
驚愕のあまり、見たことのないほどの動揺を露にしていることに。
「マ、いいか・・・・出来ないなら好都合、やっちゃえミノさん」
「ッオオオオオオオオオ!!!!」
そうして隙を晒してしまったところへ、すかさず号令をかけたメイテイ。
応じたミノトンは咆哮とともに腕を組み、アームハンマ―を叩きつけようとして。
「――――だめえええええ!!」
「ヌ・・・・?」
割り込んできた小さな影に、手を止めた。
「エルちゃん!?」
「プリンセス、危険です!」
「物陰に戻って!!危ないから!!」
「やっ!!」
口々にエルを案じ、敵前から離そうと必死になるが。
振り向いた顔をぽろぽろ流れる涙に、言葉を詰まらせてしまう。
「やだ!だいじ!みんな、だいじ!みんな、だいすき!」
涙でいっぱいの目に、一人一人を映しながら。
エルは必至に訴える。
――――今まで、ずっと。
守られてきた。
みんなが傷ついているのを、後ろで見ているしか出来なくて。
「えるも、まもる・・・・!」
だけど、今は。
光を得た、今は・・・・!
「みつけたの・・・・!」
灯ったそれを、祈る様に握りしめて。
「えるも、ぷりきゅあ!」
高く、掲げた。
「スカイミラージュ!」
「トーンコネクト!」
「ひろがるチェンジ!マジェスティ!」
小さな体が、ぐん、と年頃の少女に成長する。
髪のボリュームがたっぷりと増えて、足元がヒールの靴で上品に飾られる。
「きらめきHOP!!」
頭に羽を広げた様なカチューシャ。
両耳には、ちょっとやんちゃな棘付きのイヤーカフが煌めいた。
「さわやかSTEP!!」
ドレスとしても通用しそうな衣装は、紫を基調とした高貴な色合い。
「はればれJUMP!」
両腕に長手袋。
後ろの裾に一番星が宿った。
「――――降り立つ気高き神秘」
もう守られるだけではない。
愛する家族と肩を並べて、脅威に立ち向かう。
彼女の、名は。
「――――キュアマジェスティ!」
◆ ◆ ◆
「キュア・・・・」
「マジェスティ・・・・!」
――――昨日見た奇跡が。
エルちゃんが掴み取った光が。
再び目の前に降り立った。
「やりましたね・・・・!」
「ああ、お見事・・・・!」
「見つけたんだね、エルちゃんだけのミラージュペン!」
薄々気付いてはいた。
あのペンは、自分の中の気持ちが形になったもの。
気持ちが負ければ、いつかの私の様に無くなってしまうけれども。
願いや祈りがある限り。
何度でも現れてくれる・・・・!
「バタフライ、もしかして最初から気付いてたの?」
プリズムの問いかけに、バタフライは快活に笑いながらウィンク。
それだけで、彼女も同じ結論を抱いていたと分かった。
「――――信じてくれて、ありがとう」
私達を背に佇むマジェスティは、こちらに振り向いて嬉しそうに微笑む。
「ありゃあ、本格参戦ー?ミノさん、気を付けて―!!」
「グヌゥ・・・・!」
一方のメイテイやミノトンも、マジェスティが秘めているパワーを感じ取ったらしい。
意識を奪われていても、そういう勘は健在のようだけれど。
「エエイ、カエリウチニシテクレル・・・・!!」
やっぱ破壊衝動が上回るらしく、牽制の光弾を放ってきた。
「ふっ・・・・!」
対するマジェスティはというと、突き付けたスカイミラージュから光の刀身を伸ばして。
放たれた攻撃を次々両断。
軽々としたステップで、あっという間にミノトンの懐に潜り込んで。
「――――はあっ!!」
「グオオッ!?」
重い突きを叩き込んだ。
「っ・・・・!」
ミノトンの腕が弾き飛ばされて、胴体ががら空きになる。
その隙を見逃さないマジェスティは、軽やかに飛び上がると。
「えいっ!!」
蹴りを叩き込んで、巨体を大きく後退させてしまった。
・・・・いや、昨日も思ったけれど。
つよぉ・・・・。
「ヌゥン、コシャクナ・・・・!!」
「ミノさんファイト!相手は起きたばっかのひよっこだよー!!」
ひっくり返されつつある戦況に、苛立ちを覚えているらしいミノトン。
「・・・・?」
しかし、彼の目が前方を捉えた時には。
既にあの子の姿はなく。
「――――ッ」
「ミノさん!!後ろッ!後ろーッ!!」
呑気に探している後ろに、マジェスティが現れた。
メイテイが指示するけど、時すでに遅く。
「ハッ!!」
斬撃を叩き込んで、ミノトンを電線にぶつけてしまった。
「アッババババババババ・・・・!」
「み、ミノさーん!?」
当然の如くショートして、ぶすぶす煙を出して一度ダウンするミノトン。
その後ろでは、マジェスティが優雅に着地しているところだった。
・・・・一瞬ホバリングしてから降り立つって。
どこで覚えたの?そんなかっちょいい着地方法・・・・?
「グヌヌ・・・・アリエン・・・・!」
しかし、ミノトンも中々タフだ。
未だに煙を上げつつも体を起こして、
「ワレハ、サイキョオオオオオオオッ!!!!」
果敢に殴りかかるけれど。
「ッ・・・・!」
――――ふわり、と。
風に煽られる羽根のような軽やかさで。
攻撃を回避したマジェスティは。
電線をばねの様に利用して、勢いをつけて。
「ハアアアアッ!!」
ミノトンへ、更に一撃。
「――――やっぱ、強すぎ」
「すごい、これがプリンセスの」
「ああ・・・・キュアマジェスティの力」
あまりの奮闘ぶりに、私達が圧倒される目の前で。
マジェスティは破れかぶれに放たれた攻撃も切り捨てると、再び距離を詰めて。
「ヌオオオオオオオ!!」
「セイッ!」
目にもとまらぬ連撃を叩き込んだ。
「グウウウウウウウウ!?」
「ミノさーん!?」
とうとう膝をついてしまったミノトン。
「――――今よ!」
「おっけー!」
「お任せください!」
敵の勢いが完全に削がれたと判断したマジェスティの声に。
バタフライとウィングが飛び出して。
「「――――プリキュア!」」
「タイタニックレインボー!!」
「――――アタック!!」
虹兒を、容赦なく叩き込んだ。
「スミキッタァー・・・・」
虹色の光が収まれば、元に戻ったらしいミノトンが落ちて来るけれど。
「――――おっと」
それを受け止めたのは、アンダーグエナジーのゲート。
「メイテイ!!」
「いやぁ、困るんだよねぇ。うちのを勝手に浄化されるのはサァ」
仲間達全員で睨む中。
『どっこいしょ』と立ち上がったメイテイは、とっても愉しそうに見下ろして。
「そういうわけだから、今日はここまで!もーちょっと遊んでネ!」
『メイテイテイ』と、いつもの文言を残し。
撤退していったのだった。
「――――エルちゃん!!」
苦い顔を隠しきれずにいると、切羽詰まった声がする。
振り向くと、マジェスティが変身を解きつつ落ちていくところで。
「ッエルちゃん!!」
「プリンセス!」
思わず駆け寄る目の前で、ゆりかごが上手くキャッチしてくれたことに一度。
覗き込んだ中で、すやすやと寝息を立てていることに二度。
安堵したのだった。
「――――プリンセス、ぐっすりですね」
帰り道。
未だに深く眠るエルちゃんを覗き込みながら、家路を歩く。
「こんな小さな体に、あんな大きな力があるなんて・・・・」
「そうだなぁ・・・・」
「――――みんな、どう思う?」
しみじみ感想を言い合っていると、あげはさんが私達を見渡した。
「心配は心配だけど・・・・これからは私達の目の届くところで、一緒に戦った方がいい気がするなぁ」
足を止めて、そんな意見を言うあげはさん。
・・・・確かに。
敵はどんどん手強くなって、してやられてしまうことも増えた。
そんな中で、エルちゃんに自衛の手段がないのは。
正直言って不安だ。
「確かに・・・・」
「・・・・まあ、一理あるな」
「ソラちゃんは?」
「・・・・そうですねぇ」
ツバサくんとベリィベリーさんは肯定的な中。
私も少しだけ考えて、意見をまとめて。
「・・・・正直言って、気は進まないというのが本音です」
まずは、そう告げる。
「でも、同じくらいにあげはさんに賛成もしています・・・・そもそも、自分を守れなくてこの体たらくですからね」
言いながら、右ひじをひょこひょこ動かしつつ苦笑い。
「プリキュアになれば、出来る事も増えます・・・・いざと言う時に逃げてもらうためにも、やはり、マジェスティとして近くにいてくれる方が守り易いと思うんです」
そうすれば、昨日みたいに『ちょっと目を離した隙に・・・・』なんてのは避けられるはずだしね。
「ああ、それに、プリンセスにおんぶ抱っこになるつもりもないしな・・・・それは、みんなも同じだろう?」
「もっちろん!」
「当たり前です!」
数歩前に出たベリィベリーさんの、軽くシャドーをしつつの問いかけに。
みんなで全力で頷く。
「最強のエルちゃんを守るために、私達ももっともっと強くなりましょう!」
「ソラちゃんはまず怪我を治さないとね」
「ウッス・・・・」
ちょっと勢いを削がれてしまいつつも。
エルちゃんが見せてくれた、新しい可能性を。
変わらずに守っていこうというのは、同じだと分かったので。
私は静かに安堵した。
――――どうやら私は。
間抜けにも、うっかり『前借』してしまったようだしね。
――――必ず。
例え命と引き換えにしようとも、必ず。
(――――必ず、守り抜きますからね)
未だに眠るその頬に。
そっと、指を這わせた。
「――――」
ましろさんの、不安そうな視線に。
気付けないまま。