ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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わんぷり44話・・・・神回でした・・・・。
まさかそこまで切り込んでくれるとは・・・・。
もう、プリキュアは義務教育にするべきでは・・・・?


偽物、第四の試練

――――突然だけど。

スカイランドには、火山がない。

でも、『温泉』はある。

どういうこっちゃというと。

熱源になるマグマがなくても、地下水は豊富にあるので。

それを組み上げて沸かしたお風呂にするのだ。

鉱物がとれるところだと、その成分なんかも溶け込んでいるから。

場所によっては、あちらの世界の『湯治』と同じ効果が得られるのである。

スカイランドの庶民のお風呂は、基本的に公衆浴場。

大体はその町や村の住人が使うけれど、たまに旅人がお邪魔したりもする。

するとその旅人が、『この街のお風呂に入ると、体の調子が良くなる』って話を別の地域で広めて。

そして町や村も、ちゃっかりそんな噂話に乗っかって、お風呂を観光の目玉に。

なんなら普通の水しか湧かないところも、専門の薬屋が調合した入浴剤入りの『薬湯(くすりゆ)』を売りにし始めちゃったりして。

こうして出来上がるのが、スカイランド流の『温泉地』や『湯治場』なのだ。

 

 

 

 

 

さて。

ここまで説明した私が、どこにいるのかと言えば。

 

 

 

 

 

「――――はぁ」

 

湯船に体を沈めて、一息。

天井をぼんやり見上げれば、白い湯気が揺れては消えていく。

吹き抜ける風も心地よくて・・・・。

やばい、溶けそう・・・・。

 

「はぁーっ・・・・」

 

また深く息を吐きながら、今度は肩まで沈む。

 

「・・・・ッ」

 

右肩の傷口。

傷薬を挟んで撒かれた布から、黒いもやが昇っては消えていった。

――――メイテイにつけられた『治らない傷』を、アンダーグエナジーによる呪いではないかと推測を立てたヨヨさん。

とはいえ以前と違い、ポーションの為にキラキラエナジーを集めている余裕はない。

かといって、私が変身出来ないままなのを、メイテイやスキアヘッドが見逃してくれるとは思えないし。

何より怪我をそのまま放置していては、破傷風などの最悪の事態を招きかねない。

そこでヨヨさんが目を付けたのが、スカイランドの温泉だ。

これは私もびっくりしたことなんだけど。

そもそもスカイジュエルのエネルギーの正体こそが、キラキラエナジーなのだそうだ。

で、スカイランドの温泉地によっては、スカイジュエルの成分が溶け込んでいる所もあるらしく。

『そこで湯治をしてみては?』という提案に乗った次第である。

で、どこの湯町に行かせようかと探してくれている中。

何処から話を聞きつけたのか。

国王陛下達が、

 

『それなら行きつけのとこに話つけとくよ(意訳)』

 

と、おっしゃって下さったらしく・・・・。

ハイ、そうです。

町の中でも結構上質な、王族御用達のお風呂に浸かってます・・・・。

眺めも良くて、一面の緑と大空の青のコントラストがマジで最高で・・・・。

ふええ・・・・こんなことになるとは・・・・。

でも、見方を変えれば、それだけアンダーグ帝国の案件を重要視しているとも取れるだろう。

事実、一人娘が現在進行形で狙われているし。

マジェスティに覚醒したこの頃なんか、『攫うの諦めて抹殺するよ!(意訳)』なんて言われてるしね・・・・。

そんな状況下で、戦力が欠けたままにしておきたくないだろう。

誰だってそうする、私だってそうする。

この優遇だって、だからこそだろうしね・・・・。

何より、お二人だって人の親だ。

 

(心配でたまらないんだろうなぁ・・・・)

 

お陰で動かせるようになった右腕も使って、顔にお湯をかける。

・・・・心配と言えば。

私は、ましろさんが気がかりだ。

エルちゃんがマジェスティに覚醒して以来、どうも物憂げな顔をしがちだと思う。

多分、エルちゃんが戦うことに対して悩んでいるんだろう。

・・・・分からなくもない。

自分で選んだといえども、あの子はまだまだ赤ちゃんだ。

今まで後ろに回して守って来た子が、いきなり肩を並べて戦う様になるっていうのは・・・・うん。

 

(やっぱり心配だよなぁ・・・・)

 

けれども、スキアヘッドやメイテイにこてんぱんにしてやられたことも事実。

だからこそ、エルちゃんに決意を抱かせてしまったのだろうし・・・・。

ぐぬぬぬ、あちらを立てればこちらが立たぬ・・・・。

 

(うーん・・・・でも、エルちゃんが自分で決めたことに間違いはないしなぁ・・・・)

 

『赤ん坊に自意識とかあるの?』って突っ込まれたら、ちょっと困るけれど。

でも、あの時の涙と叫びが。

嘘だったと思いたくない。

 

「はぁーっ・・・・」

 

それはそうと、やっぱりエルちゃんを戦わせる羽目になってしまった、自分の力不足も否めないわけでして。

 

「考えることが多いなぁ・・・・」

 

ちょっと行儀悪く首まで浸かって、天井を見上げた。

と、

 

「――――失礼致します、ハレワタール様」

「ッ、はい!」

 

脱衣所の方から、仲居さんの声が聞こえる。

 

「お寛ぎのところ、大変申し訳ありません。つい先ほど、スカイランド城より、ハレワタール様当てのお手紙が早鳥(そくたつ)で届きました故に、お知らせを」

「ッありがとうございます、すぐに行きます!」

 

湯船から飛び出して、手早く着替えと身支度。

髪を拭くのもややおざなりにして、手紙を受け取る。

手紙は二通。

一方には、丁寧なヨヨさんの字。

もう一方には、七試練の目玉模様が。

上部に大きく書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――私と別行動していたヨヨさんが、不思議な遺跡を見つけたそうだ。

湖の底に沈んでいたらしいそれは、出現時期がマジェスティの覚醒と一致することから。

『プリキュアと関係が深い可能性が高い』という結論を出した。

そこで私達プリキュアに召集をかけて、遺跡を調査しようということになったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、ソラさん」

「ヨヨさん、お久しぶりです!」

 

幸い現場は、私のいた湯治町からほど近い場所にあったので。

体の慣らしがてら、ランニングで現着。

 

「右腕、すっかり良くなったみたいね」

「はい、お陰様でこんなに動くようになりました!」

「あらあら」

 

先んじてヨヨさんと合流した私は、早速動くようになった右腕を見せると。

微笑ましいものを見る目を向けられる。

 

「さすがはエノカーの温ね」

 

我に返って、ちょっと恥ずかしくなったので。

苦笑いで誤魔化していると。

 

「――――ばぁばー!しょらー!」

 

はるか上空から、元気な声。

一緒に見上げると、遊覧鳥に乗ってやってくる仲間達が。

エルちゃんも元気に手を振り回している。

うん!今日もかわいい!

明日もきっと可愛いぞ!我らのプリンセス!

 

「エルちゃーん!」

 

そちらにも分かり易く右腕を振ってやれば、わっと明るい声がこだましたのだった。

 

「ソラちゃん!もう完全復活な感じ?」

「いえ、実はまだ本調子じゃなくて・・・・」

 

続々と降りて来る仲間達を代表した、あげはさんの質問に。

私は首を横に振って答える。

 

「でも、そこそこ動けるようにはなりましたので!」

「そっか!」

「ひとまずの快復、何よりだ」

 

次に話しかけてきたのは、ベリィベリーさんだ。

 

「無理をするなよ?私もいるからな」

「はい、頼らせてもらいます」

「僕もいますからね!」

「ええ、もちろん」

 

ベリィベリーさんには肩を叩かれつつ、ツバサくんには両手を振り上げてアピールされながら。

最後に、ましろさんに目をやった。

 

「お久しぶりです、お変わりありませんでしたか?」

「はい!大丈夫でした!スキアヘッド達も来ませんでしたし・・・・」

 

・・・・そういう意味の大丈夫じゃないっていうのは。

分かっているんだけども。

それ以上上手く突っ込める気がしないので、今は無事を喜ぶことにする。

 

「それで、ヨヨさん。これが?」

「ええ、みんなに話していた遺跡よ」

 

全員揃ったところで、改めて件の建造物を見上げてみる。

外観は半球のドーム状・・・・いや、『お椀をかぶせたような形』と言う方が通じるかな?

元々この辺りまで人が来ることは少なかったらしく。

来たところで、水の中まで探る人もいないだろうことは想像に易い。

そんなこんなで、長い間誰にも知られていなかった遺跡は。

この頃になって水上に浮かび上がって来た、と。

ただ、この遺跡。

どんなに探しても、入口が見当たらないとのことだった。

 

「これは・・・・?」

 

そして、手前の方には。

巨大なスカイジュエルで出来ているらしい、翼型のオブジェがそびえて居た。

何か文字が刻まれているけれど・・・・文字が古すぎて読み取れないな・・・・。

でも、入口探しに関係あるのは間違いなさそうだ。

 

「これが、何かしらの手掛かりだろうな」

 

同じ見解を示してくれたベリィベリーさんにほっとしつつ。

刻まれた文字を覗き込んでいると。

 

「古代スカイランド文字ですか?」

「さすがね」

 

ツバサくんが一発で見抜いた。

す、すげー・・・・!

 

『全ての人を救う、究極の力がこの地に眠っている』

『その力を手に入れなさい、運命の子よ』

 

先んじて調査していただけあって、内容をすらすらと諳んじたヨヨさん。

『運命の子』って・・・・エルちゃんのことだよな。

だけど、『究極の力』・・・・?

 

「あーい!」

 

一体何が眠っているんだと戦慄する横で。

楽しそうな声を上げたエルちゃんが、スカイジュエルにペタっと触る。

『そ、それいいんか!?貴重な遺跡とちゃうんか!?』と慌てそうになった目の前。

エルちゃんが触った箇所から、光が広がって。

 

「ッ!?」

「これは・・・・!?」

 

オブジェの向こう側に、地下へ続く階段が口を開けた。

思わず元の場所に視線を向けると、心なしかオブジェの透明度が増しているように思う。

何か抜けたんだろうか・・・・?

 

「やはり、鍵はエルちゃんだったようね」

「きゃーう!えるー!」

「あ!プリンセス!」

 

開いたことが嬉しいのか、ハイテンションで飛び込もうとするエルちゃんを追いかける。

幸い、ツバサくんの声で止まってくれはした。

 

「そろーりそろーり・・・・」

「随分深くまで続いていますね」

「ほんとだ、灯りはあるみたいだけど・・・・」

 

みんなで一緒になって、開いた入口を覗き込む。

 

「風は・・・・流れ込んでいないな、むしろ下から吹きあがっている」

「フンフン・・・・妙な匂いも、今はしませんね」

「入っても大丈夫な空気があるってことですか」

「今のところはな」

 

ベリィベリーさんが、髪の揺れ方と、ちろっと舐めた指先のダブルチェックで。

風の流れを確認していたので。

私も鼻をすんすんさせて、軽く匂いをチェック。

淀んでいるような感じもしないし、一応入っても問題はなさそうだ。

 

「おおー、ソラちゃんもベリィベリーちゃんもプロっぽい!」

「一応本職だぞ」

「同じく、でも経験ならベリィベリーさんの方が――――」

「――――ねえ!」

 

『圧倒的に上』と、続ける前に。

ましろさんが、声を張り上げた。

 

「ここって、危ない場所かもしれないんですよね!?」

「・・・・まあ」

「否定は出来ん」

 

入口から、風の流れとか、匂いを嗅いだだけだしね。

中に何が待ち受けているのか、実際に入ってみないことには分からない。

それこそ、某インディばりの罠や、あるいはとんでもねぇモンスターが待ち受けているかもしれないのだ。

 

「だったら・・・・!」

 

透けたオブジェの向こうで。

初めて、不安でいっぱいの表情を曝け出しながら。

 

「そんなとこに、エルちゃんを連れて行くわけにはいかないよ・・・・!」

 

声にすら、不安を滲ませて。

そんなことを言うのだった。

 

「エルちゃんは置いて、わたし達だけで行きましょうよ・・・・!」

 

・・・・一理ある。

ましろさんの心配は、至極真っ当なものだ。

だけども、ここまで来てエルちゃんだけ一人にするというのも。

ちょっと賛成できない。

 

「ましろん」

 

どう伝えようかと悩んでいると、あげはさんが先に口を開いた。

 

「『エルちゃんを危ない目に遭わせたくない』、その気持ちはみんな一緒だよ」

 

真っすぐに目を合わせて語り掛けてくれているので、見守りに徹することに。

 

「王様達だってそう・・・・こっちに来る時、見えなくなるまで手を振ってたでしょ?」

 

『そうなの?』と無言で仲間達に目を向けると、ツバサくんもベリィベリーさんもこっくり頷いた。

・・・・まあ、当たり前か。

機能不全家庭でもない限り、親が子供を心配するなんて、普通のことだしな。

 

「でも、遺跡がエルちゃんを呼んで、エルちゃんも運命に向き合おうとしている・・・・もちろん、エルちゃんも難しいことまでは理解してないかもだけど」

 

確かに。

オブジェにももろ『運命の子』なんて書かれてたし。

ここがエルちゃんの為の場所なのは、なんとなく察しがついている。

 

「今私達に出来るのは、エルちゃんを守って、サポートしてあげることだと思う!」

「・・・・それは」

 

あげはさんの言い分を聞き終えて、ましろさんはまだ不安に満ちた声で話し始める。

 

「キュアマジェスティになったエルちゃんはすごく強いし、けど・・・・」

 

ううん、もう一押し必要かぁ・・・・。

と、思っていると。

 

「える、いきたい!!」

 

ひょい、と。

目を輝かせたエルちゃんが、ましろさんの下へひとっ飛び。

 

「いっしょにいこ!ましろ!」

「ッ・・・・ぅ・・・・ぁ・・・・!」

 

明るい声でおねだりされても、対面する顔が晴れることはなく。

すぐに、返事を出来ないでいるうちに。

 

「ぅう、ひっく・・・・!」

「ッああ、ご、ごめんね、ごめんね・・・・いっしょにいこうね・・・・」

 

エルちゃんが、泣き出しそうになってしまって。

思わず抱きしめたましろさんは、とうとう折れてしまうのだった。

 

「えゆ・・・・あーい!」

「・・・・ああ、ダメって言えないよぉ・・・・」

 

途端にご機嫌になったエルちゃんを、『びっくりしたねぇ』とあやすましろさんに歩み寄る。

 

「ここで置いて行っても、スキアヘッドやメイテイが諦めてくれるわけではありません・・・・守るためにも、一緒に行きましょう?」

「・・・・はい」

 

笑顔のエルちゃんに癒されて、なんとか持ち直してくれたましろさんに。

ヨヨさんも加えて。

私達は、遺跡の中に行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――行き止まり?」

 

階段を降り切った一行だったが、いくばくも行かないところで立ち往生してしまう。

 

「どこかに仕掛けがあるのか・・・・ソラ、そっちを頼む」

「はい」

 

一番遺跡探索の経験があるベリィベリーの指示で、ソラが反対側の壁を調べようとすると。

 

「あーい!」

 

エルが、まるで最初から分かっていたかのように壁にタッチ。

するとプリキュアの紋章が現れて、壁が消えていく。

 

「・・・・さすがプリンセス」

「すごい?すごい?」

「ええ、とっても」

 

出鼻を挫かれる形になったベリィベリーが、賞賛を口にすると。

エルは嬉しそうに笑顔をはじけさせた。

 

「って、高ぁ!?」

 

これで先に進めると思いきや、今度は底が見えない奈落が顔を覗かせる。

ソラが試しに、近くで拾った小石を落としてみると。

あっと言う間に暗闇に消えた。

 

「・・・・落ちた音がしませんね」

「こんなに高いところ、どうやって渡ればいいのー!?」

 

また頭を悩ませた一行に、解決を導き出したのはエルだ。

 

「あーう!」

「あ、エルちゃん!」

 

空飛ぶゆりかごに乗っているとはいえ、奈落に飛び込むエルに。

一同驚くものの。

次の瞬間現れた足場に、もう一度驚嘆した。

 

「これ、乗れるの・・・・?」

 

ましろの疑問に対し、ツバサが『物は試し』とばかりに飛び乗る。

 

「大丈夫みたいですよ!」

「さっすが少年!」

 

一呼吸間を置いても崩れる様子のない足場を見て、今度は安堵の声が上がった。

 

(正当な継承者にだけ、道が開かれるのね)

 

ひとりでに動く床で、向こう岸に渡って。

なおも先へ進む一行。

 

「――――『全ての人を救う究極の力』とは、どんなものだろうな」

 

階段を上ったり、降りたり。

意外と複雑な道中で。

ベリィベリーがふと、疑問を口にした。

 

「確かに気になりますね、今のままでも十分強いのに・・・・」

「プリンセスは、これ以上どう強くなるんでしょうか?」

「巨大化とか?あの、三分しか戦えないヒーローみたいにさ!」

「ええっ?」

 

思わず目を剥き、一同あげはを注視するが。

 

「いや、冗談だよ」

「なぁんだ」

 

視線に負けたあげはが、すぐネタ晴らしをして。

笑い声が響く。

 

(――――心配しすぎだったかな)

 

笑い合う仲間達の、やや後ろを歩くましろの顔が。

再び陰っていく。

 

(でも、もしもこの先、エルちゃんが怪我したら?痛い思いをしたら?)

 

――――いや。

仮にそうなったら、一番に動くのは。

 

(そんなの、やっぱりやだよ・・・・!)

 

ソラと笑い合うエルを視界に収めて。

ましろは祈る様に目を閉じる。




おまけ
湯の街『エノカー』
拙作オリジナル。
スカイランドでも指折りの湯治街。
スカイジュエルの成分が溶け込んだ地下水をお風呂にしているので。
なんか、めっちゃ元気になる()
王族御用達の宿があるほど良い泉質。
ネーミングは『箱根(HAKONE)』をひっくり返して、『エノカー(ENOKAH)』。
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