ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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本年度最後の更新です。
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大変ありがとうございました。
来年度もどうぞ、拙作をよろしくお願いいたします。


偽物、遺跡の中で

「――――これは」

 

――――さて。

遺跡の中を進むことしばらく。

私達は、最奥らしき場所に辿り着いていた。

見上げるほど大きな壁には、エルちゃんともマジェスティとも取れる少女の姿が描かれている。

 

「なんでしょうか・・・・」

「私にもよく・・・・」

 

私の呟きを拾ったベリィベリーさんが、『だが』と壁画を見上げて。

 

「あれが無関係なはずがない」

「ですね」

 

壁画の少女が手を伸ばしている、一冊の本を一緒に見上げた。

 

「あーい!」

 

神妙な顔になってしまっている横で。

エルちゃんがぴょーんと飛び上がってしまう。

そして、無邪気に手を伸ばすと。

本が光ると同時に、壁画の人物が一気に増えて・・・・って。

 

(あれ、私達・・・・?)

 

そう見えた瞬間。

迫った光に、飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁーあ・・・・」

 

遺跡の外。

ソラとヨヨ以外のプリキュアを送って来た遊覧鳥は、ごろんと寝転がって微睡んでいた。

 

「ええ陽気やなぁ・・・・」

 

プリキュア達が遺跡の中に入って、早小一時間と言ったところか。

すっかり暇になってしまったが、この後は彼らを王宮まで送らなければならない。

しかして、待ち人が一向に戻ってくる気配もなく。

ひと眠りくらいは許されるだろうと、目蓋を閉じようとした時だった。

 

「・・・・んん?」

 

上空に、何かが見える。

何だろうかと目を凝らす間に、みるみる大きくなって。

 

「ぎょ、ギョエーッ!!?」

 

『それ』が、見上げるほどの大男であることに気が付いた遊覧鳥。

悲鳴を上げながら、何とか飛び立って回避。

同時に、巨体が轟音を立てて振り落ちた。

 

「ゥゥゥウウウウ・・・・!」

 

ぬう、と起き上がった巨漢、ミノトンは。

遊覧鳥には目もくれず、遺跡を見据えると。

 

「オオオオオオオオッ!!!」

 

猛然と、突進していった。

途端に正面のオブジェが煌めいて、遺跡を包み込む巨大なバリアを展開した。

 

「ヌウウウウウ・・・・!!」

 

当然、その程度で撤退するわけがないミノトン。

スパークに冒されながらも、果敢にバリアに掴みかかる。

対するオブジェも、機械的ながらその役目を全うせんとする。

 

「プリキュア・・・・プリキュアアアアアアアアアアッッ!!」

 

削れたバリアの破片が、花吹雪の様に飛び散る中。

ミノトンの咆哮が、周囲の全てを震わせて。

 

「え、えらいこっちゃ・・・・!!」

 

一羽(ひとり)空に逃れた遊覧鳥は、戦慄を口から零した。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆    ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――は」

 

一瞬意識が飛んで、次に視界がはっきりした時には。

別の空間にいた。

壁も、床も、空気も。

さっきまでとは打って変わって、どこか異質だ。

 

「ッヨヨ殿は!?」

「・・・・ホントだ、ヨヨさんいない!?」

「ヨヨさん!?」

 

呆気にとられながら周囲を見渡していた私達は。

ヨヨさんだけがいないことにびっくりして、大声を上げながらきょろきょろすると。

 

「――――私は大丈夫よ!」

「ッヨヨさん!」

 

後ろの壁の向こうから、ヨヨさんの声。

 

「そこは、貴女達プリキュアしか入れない様なの!」

 

――――どうやら、普通においてけぼりになっただけらしい。

声の感じからも、何かしらの危機的状況にあるわけではなさそうなので。

一安心。

いや、心配なのに変わりはないんだけども。

 

「みんなは安心して、先に進んでちょうだい!」

 

ここでまごまごして状況が好転するわけでもなし。

居場所が分からないよりはずっとマシだと思うことにする。

 

「おばあちゃん、大丈夫かな・・・・」

「居場所が分からないよりはずっといいだろう、進もう」

「だね!」

 

心配そうなましろさんを、同じ考えだったらしいベリィベリーさんが宥めてくれて。

それから、あげはさんの音頭で先に進むことになった。

――――改めて見渡してみた周囲は、やっぱり荘厳な雰囲気の場所だ。

視界が開けているのもそうだけど、道らしい道が一つだけということもあって。

『ここが最深部だ』という確信を抱かせてくる。

・・・・あと。

某天空の城の映画で、大佐の部下さんが置き去りにされた場所にも似てるな・・・・。

流石にニッチ過ぎて伝わらんかな?

と、

 

「あーい!」

「エルちゃん!?」

 

何かを見つけたらしいエルちゃんが、爆速で先に進んでしまう。

慌てて後を追いかけると、小高いところに鎮座する一冊の本が見えた。

 

「まじぇすてぃくるにくるん!!」

「マジェスティクルニクルン・・・・?」

「エルちゃん分かるの?」

 

紫を基調とした本。

一般的な本よりは薄いけれど、絵本と言うにはやや厚い。

エルちゃんは迷いなく名前を口にしていたけれど、多分本人も分かっていないだろうな・・・・。

 

「きゃふふっ!!」

 

早速本を手にしたエルちゃんは、当然開こうとする。

だけど、

 

「あう?うー・・・・うー・・・・!」

 

その表紙は中々めくれない。

 

「ううー!」

「ああ、ほら。貸して」

 

ちいちゃな指にいくら力を込めても開かない本に業を煮やしたのか、やや押し付ける様にバトンタッチ。

受け取ったあげはさんは、同じく本を開こうと試みるけど。

やっぱり開かなかった。

 

「あー、ダメだ。ソラちゃんバトンタッチ!」

「おっと」

 

私にも回って来たので、開けようとしてみるけれど。

結果は案の定だ。

 

「ソラさんでもダメだなんて・・・・」

「ぜぇ、ぜぇ・・・・何か条件があるんでしょう」

「だな、封印されているのは明らかだ」

 

肩で息をする横で、ツバサくんとベリィベリーさんが顎に手を当てて思案顔。

そもそも、読めないならまだしも、開かないとなるとね。

そう考えるのが自然だよね・・・・。

 

「これが究極の力そのものにしろ、手掛かりにしろ。まずは開いてくれないことにはなんともならん」

「どうしたらいいんだろう・・・・」

 

みんな揃って、私の手元を覗き込む中。

一様に頭を抱えていると。

 

「ぅわ・・・・!?」

「わわわッ!なになになに!?」

「なんだ!?」

 

突然、地面が揺れた。

エルちゃんを庇いながら、あるいは周囲を見渡しながら。

それぞれに警戒していると。

 

「・・・・ッ!!」

 

――――よく知っている、気配。

続けて、壁の向こうから破壊音が聞こえてくる。

 

「わ、ソラちゃん!?」

「何か来てるんですね!?」

 

思わず飛び出せば、何か危機的状況にあることは理解してもらえたらしい。

剣に手をかけた私が一番前。

そのすぐ後ろで、ベリィベリーさんが拳を構えてくれている中。

じぃっと目の前を睨み続ける。

やがて、遠かった音が爆速で近づいてきて。

 

「――――ガアアアアアアアアアッッ!!!」

 

――――やっぱり来やがったか。

ミノトン!!

 

「まずは応戦しよう!!ここで暴れられては敵わん!!」

「同感です!!」

 

壁の向こうにいたはずの、ヨヨさんの安否も気になる。

とにもかくにも、まずはあいつをどうにかしないと・・・・!!

 

――――ひろがるチェンジ!!

 

各々アイテムを掲げて、変身した。

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

「――――霹靂一閃ッ!!」

 

まず一番に飛び出したのは、やはりスカイだ。

雷鳴の如き踏み込みと足運びで、一気にミノトンの懐へ飛び込んだ彼女は。

振り下ろされた拳へ、斬撃を放つ。

衝撃が広がる中、ウィングとエクリプスが二手に分かれて突撃。

 

「やあああああッ!!!」

「おおおおおおおッ!!!」

「ゴア・・・・!?」

 

片や踵落としを、片や右ストレートを叩き込む。

 

「ッ・・・・!」

「ヌゥン!!」

 

即効でスカイを弾き飛ばして両手を開けたミノトンは。

二方向からの攻撃を容易く受け止める。

しばし迫り合う三者だったが。

 

「オアアアアアアアアアッッ!!」

「な、わあっ!?」

「くっ」

 

拮抗を崩したのは、ミノトン。

ウィングの足を引っ掴んで投げ飛ばし、エクリプスは虫の様に払いのけた。

空中で静止、あるいは着地した両者と入れ替わる様に飛び出したのは、マジェスティ。

 

「はあっ!!」

 

足音をドップラー効果で置き去りにしながら、あっという間にミノトンの懐へ入り込むと。

まずは一閃。

 

「ヌゥア!!」

 

一度振り払われてしまうが、踏みとどまって果敢に飛び掛かる。

一閃、十閃、百閃。

一歩も退かぬ攻撃の応酬。

斬撃に素手で挑むミノトンに、相手の拳に一歩も退かないマジェスティ。

激しい攻防は、ミノトンの腕が弾かれることで変化が訪れる。

大きく打ち上げられ、胴体を晒してしまうミノトン。

両手を組み、立て直しも兼ねてアームハンマ―を放とうとするが。

 

「やあぁッ!!」

 

それよりも、マジェスティが速かった。

突きを叩き込み、相手の勢いを削ぎ落すと。

無防備になった胴体に、怒涛の連撃を叩き込んでいく。

 

「だぁっ!!」

「グアアアアアアッ!!」

 

仕上げに、渾身の一撃を放てば。

ミノトンはうめき声を上げながら、体を傾けた。

 

「マジェスティ、やっぱり強いね」

「うん・・・・」

 

支援と援護の為に後方に下がっていたバタフライは、不安そうに相槌を打つプリズムへ。

案じる視線を向ける。

戦闘中なので、すぐに切り替えたものの。

やはり、何か悩んでいる妹分のことが気がかりなのだった。

 

「グウウウウウッ・・・・!!」

 

一方のミノトン。

ボロボロになりながらも起き上がると、手に何かを持っている。

『あれはなんだ』と疑問に思う目の前で、ミノトンは手に持った瓶の中身を飲み干した。

刹那、

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」

 

ミノトンの体内で、筋肉がはち切れるほどのエネルギーが産まれる。

留めきれなかった分は、禍々しいオーラとして迸り。

暴風がプリキュア達に吹きつけた。

 

「――――Bゥ乱■(ブランド)ォ」

 

怯んだ隙を見逃さず、

 

「――――散ァ■Nが(さんが)ァッ!!!」

 

連撃を()()()()()()

 

「ッ散開!!」

 

あっと言う間に黒煙に撒かれながら。

全員で散り散りになり、物陰に隠れる。

周囲全体から満遍なくやってくる轟音と、衝撃。

そして黒煙に。

誰もが攻めあぐねている中。

は、と。

プリズムは我に返る。

 

「マジェスティは、エルちゃんはどこ!?」

 

見渡しても、飛び散る瓦礫と黒煙ばかり。

姿の見えないマジェスティに、不安を募らせた時だった。

 

「――――ッ!?」

 

攻撃の一つが、直撃しそうになって。

 

「マジェスティ!!」

 

間一髪のところで、マジェスティが間に合った。

しかし、彼女が防御に展開した光は、徐々に呑み込まれていく。

今のミノトンは、それだけ強化(狂化)されているのだろう。

 

「っく・・・・!」

 

後ろにプリズムがいるからと、退こうともしないマジェスティ。

あわや、その白魚の様な手指が苛まれるかというところで。

プリズムが彼女を連れて行こうとするが。

 

「ああっ!!」

「きゃあっ!!」

 

一歩間に合わず。

爆発に呑まれてしまったのだった。

 

「ああッ!?」

 

二人の悲鳴に気が付いたバタフライが、思わず身を乗り出せば。

見つけたとばかりにミノトンが迫り、蹴り飛ばす。

 

「このっ!!」

「よくもバタフライを!!」

 

さらにそれを目の当たりにしたウィングとエクリプスは。

再び果敢に飛び掛かるが。

 

「ガアアッ!!」

「づあ・・・・!」

「うわーっ!!」

 

一瞬で返り討ちにされてしまった。

 

(ッこのままじゃ、全滅だ・・・・!!)

 

圧倒される仲間達を見て、スカイは険しい表情をする。

 

(思い出せ、思い出せ)

 

汗を滝の様に流すミノトンが、目の前で再び黒いドリンクを飲み干す。

すると、やはり再びエネルギーが滾る。

 

「ヴウウウウウウウウウ―――ッ!!!」

 

どころか。

ぼこぼこと体のあちこちが盛り上がったと思えば。

新たな腕と、頭が生えて。

 

(メイテイと戦った、あの時を思い出せ・・・・!!)

 

まるで阿修羅の様な風貌になったミノトンを見据えて。

スカイは剣を構える。

 

(もっと多く酸素を取り込め、もっと早く心拍数を上げろ)

 

――――代償は、発現時に支払われている。

つまり、それ以上失うことはない。

今一番避けるべきは。

この場で全滅すること。

 

(立ち止まるな、ヒーローガール!!)

 

迷いは、ない。

 

「――――バーストオンッッ!!」

 

頬に、大翼をひろげながら。

スカイは、炎を纏った。

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