ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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うかうかしてたらわんぷりが終わり、キミプリが始まってしまった・・・・。
わんぷりは戦わないことに意味があるプリキュアだったし、キミプリは一年ぶりに拳を振るうプリキュアだし。
いやぁ、今後が楽しみっすね!!


偽物、すぐ見抜く

「おはな、いっぱい!」

 

図書館に隣接した植物園。

メインである花々の鑑賞はもちろんのこと。

子ども達や若者が、駆けまわったりスケボーしたり出来る広場も完備されている。

 

「エルちゃん、あちらに黄色いお花がありますよ」

「きいろー!」

 

色とりどりの花達に目を輝かせ、エルがてちてち歩いていく。

 

「えっと、わたし、その辺でスケッチしててもいいですか?」

 

そんな彼女を見送りながら、ましろはブランコ型のベンチを指さした。

 

「おっけー!」

「お気を付けて」

 

『新作だろうか』と思いながら、エルについていく面々。

そんな仲間達を見送って、ましろも踵を返した。

 

「――――」

 

――――さて。

色とりどりの花を前に、スケッチブックを開いたはいいものの。

鉛筆を握った手元は、止まったまま。

心ここにあらずといった具合に、真っ白なスケッチブックを見下ろして。

ぼんやりとしていた。

 

――――だって、つまんないんだもん

 

反芻してしまうのは、やはり先ほどのこと。

今までは、エルやソラ達はもちろん。

あの図書館での読み聞かせだって、概ねは好反応ばかりだった故に。

子ども達に拒絶されるなど、ましろにとって初めてのことだった。

否、ましろとて全てが全て受け入れられることがないのは分かっていた。

世の中色んな人がいて、好みだって千差万別。

自分の作風が合わない人の一人や二人、いてもおかしくないと。

頭ではきちんと理解していたつもりではあった。

 

「・・・・」

 

目の前に止まった蝶をスケッチしようとして、手元が動かなくて。

動かそうとするけれど、鉛筆は何も描いてくれない。

 

「・・・・ぁ」

 

そうやってもたもたしているうちに、蝶は飛び去って行ってしまった。

・・・・何でもないことのはずなのに、何だかとてつもないものを失った気がして。

束の間沈黙を保ったましろは。

 

「・・・・はあ」

 

とうとうため息の重さに負けて、顔を俯かせてしまった。

と、足元に転がってくるもの。

絵筆だ。

顔を上げれば、青年が一人通り過ぎていく。

どう見ても彼のものだろう。

 

「ッあの!落としましたよ!」

「ええっ!?僕の大事な絵筆を!?」

 

生来の優しさから、ましろが思わず声をかけると。

青年がぎょっと振り向いた。

ややオーバーなリアクションが、ほんの少し違和感を与えて来るが。

ましろは気のせいだろうと結論付けて、拾い上げた絵筆を青年に手渡す。

 

「ありがとう、助かったよ。君は僕の恩人だね」

「恩人だなんて、そんな」

 

絵筆を受け取りながら、嬉しそうに笑う青年。

対するましろは、照れくさそうにはにかむ。

 

「いやいや、これは僕にとって命も同然だ。それを拾ってくれたんだから、感謝しないとバチが当たってしまうよ」

「命・・・・?」

 

ましろが青年の言葉に首を傾げて、その肩に下げられたカバンを見やると。

色んな画材や画板が入っているのが見えた。

 

「そういえば、名乗るのが遅くなってしまったね。僕は紋田、しがない美大生さ」

 

――――さて。

第四の壁よりお見守りの皆様には、もうバレバレであろうから明かしてしまうが。

『美大生の紋田』を名乗るこの男。

何を隠そうバッタモンダーその人である。

『紋田』という名前はもちろん、美大生という設定も嘘である。

 

「美大生・・・・ってことは、絵もたくさん描いているんですか?」

「うん、見てみるかい?」

「是非!」

 

『これだよ』とスマホに表示させた作品も、もちろん偽物。

ネットで適当に拾ってきた画像である。

 

「わぁ、すごいです!」

「ははは、そう言われると、ちょっと照れくさいね・・・・」

(ケーケケケ!騙されてやんの!おっかしー!)

 

そんなこととは露とも知らず、思惑通りに信じ込んでしまうましろ。

なんとも呑気な様子に、内心で邪悪にほくそ笑むバッタモンダーこと紋田。

 

(このまま追い詰めてやるぜ・・・・!)

「ところで、その反応を見るに、君の絵を描くのかい?」

「あ、その、趣味で、絵本を・・・・」

「絵本?お話まで書けるのか、すごいな!」

「いえ、そんなわたしなんて全然ダメで・・・・」

 

目を伏せてしまったましろに、『うん?』と内心で首を傾げる紋田。

何もしていないのに落ち込んでいる相手の様子に、疑問を抱いたのだ。

 

(いや、むしろチャンスだ!)

「何か悩みでもあるのかな?」

 

ここぞとばかりに問いかければ、ましろは無防備に話し出してしまう。

少し前から、趣味で絵本を作っていること。

新作を図書館で読み聞かせたところ、一部の子どもに絵本よりも楽しいことがあるという反応をされたこと。

みんなが喜ぶ絵本を作るには、どうすればいいのか。

悩んでしまっていることを。

 

(なぁんだよ、わざわざ圧し折る必要ないじゃん!!)

 

ほくそ笑む紋田だったが、高揚する己を『いやいや』と諫める。

 

(このまま放っておいても、なんやかんや立ち直りかねない連中だしな・・・・ここは念入りに、俺自ら最後の一押しをしてやろうじゃないか)

「君、絵本作家になろうとしているのかい?」

 

人のよさそうな笑顔の裏で、邪悪な高笑いを響かせながら。

紋田は努めて穏やかに問いかける。

 

「えっ?あの・・・・なれたら、いいなって・・・・」

 

予想通り、ましろは煮え切らない回答。

しめしめとばかりに、紋田は仕上げにかかる。

 

「なら・・・・少し、厳しいことを言ってしまうのだけれど」

 

如何にも申し訳なさそうに眉を潜めて、

 

「プロの作家になれば、悪く言われるのは仕方ないんじゃない?それが嫌なら、描くのを止めるしかないよ」

「――――ッ」

 

止めと言うべき言葉を放てば。

ましろは息を呑む。

 

「僕も言われたことがあるんだ、『君の絵はつまらない』ってね」

「ッその時、紋田さんはどうしたんですか?」

 

食い気気味に問いかけて来る彼女へ。

紋田は更に追い打ちをかけるべく、口を動かした。

 

「――――何も」

「ぇ?」

「何も感じなかったんだ」

「ど、どうして・・・・?」

「覚悟があるからね。そう言った心ない言葉を言われる・・・・覚悟が」

 

――――顔こそきりりとさせている紋田だが。

内心は思いっきり邪悪な笑顔で笑いっぱなしである。

 

「覚悟・・・」

(ギャーハハハ!!効いてる効いてる!!)

 

狙い通り、神妙な顔で俯いてしまったましろを前に。

内心でゲラゲラと笑い続ける紋田。

 

(お前のちんけな夢なんか、ここで潰れちまうのがお似合いなんだヨォーッ!!)

 

そうやって、ハイテンションでましろを小馬鹿にし続けていると。

 

「――――ましろさん」

「イ"ィッ!?」

 

横合いから、一番聞きたくなかった声。

錆びた機械部品の様に振り向けば。

 

「様子はどうかなぁと思って来ちゃったんですけど・・・・そちらは?」

「ソラさん」

 

案の定、ソラがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

――――一人になったましろさんが気になったので、ちょくちょく目をやっていたら。

知らない人がいたので、けん制も兼ねて近寄ってみたんだけど。

 

(・・・・この気配)

 

バッタモンダーやん。

 

「あの、こちら。美大生の紋田さん!」

「ど、どうも」

「こんにちは」

 

ましろさんに何かしようとしていたのか?

必死に出さないようにしてるけど、相当焦っているな・・・・。

 

「美大生・・・・ということは、貴方も絵を?」

「あ、ああ。ここにはよくスケッチに来るんだ」

「なるほど」

 

話しながら、バッタモンダーこと紋田のバッグを覗いてみるけど。

キャンバスに何か描かれている様には見えない。

・・・・まあ、突っ込んだところで『今日はまだ描いてない』で交わされるだろうな。

 

「じゃ、じゃあ、僕はそろそろ・・・・!」

 

考えている内に、向こうは撤退を判断したらしい。

まあ、離れてくれる分にはありがたいなと思いながら。

そそくさと踵を返そうとする紋田を見送っていると。

 

「エルちゃん?」

「っど、どうしたのかなぁ?」

 

いつの間にか、ヤツの足元にエルちゃんがいた。

じぃっと食い入るように相手を見つめたエルちゃんは、ちいちゃな指を向けて、一言。

 

「ばった」

「――――ッ!!」

「んっ、ん"・・・・!!」

 

――――吹きそうになったのを、全力で耐えた私を。

誰か褒めてほしい。

冷静に見れば、確かに紋田の頭にバッタが乗っているのが分かるんだけど。

あいつの狼狽えようから見るに、多分バレたと思い込んでるな・・・・。

 

「あ、本当だ」

「捕まえましょう!」

 

集まって来た皆も、紋田を取り囲んでバッタを捕まえようと身構える。

 

「あ、いや、その・・・・!」

 

まだまだ頭のバッタに気が付いてないらしい紋田は、『万事休す』と考えているのが丸分かりだ。

・・・・ちょっと楽しくなって来たかも。

 

「動かないで、一歩でも動くと大変ですよ」

「あばばばば・・・・!」

 

わざと誤解させるような言動で、紋田の反応を楽しんでいると。

――――鼻をくすぐる、アルコールの臭い。

 

「――――楽しそうだねぇー?おじさんも混ぜてくれる―?」

「ッお前は・・・・!」

「メイテイ!」

 

不意の語り掛けに、顔と体を強張らせて振り向けば。

気怠そうに柵に寄りかかったメイテイが。

その手にはやっぱり酒徳利が下げられている。

 

(ヤバい!アンダーグ帝国は失敗したものに容赦しない!!バレたら処刑される!!)

「ヒイィーッ!!」

「あ、紋田さん!?」

 

これを好機と思ったのか、紋田がすたこらさっさと退避してく。

思わずそちらに意識を向けていると。

 

「イヒヒッ・・・・ラッシャイ!アンダーグエナジー!!」

 

メイテイが、いつもの様にアンダーグエナジーを喚び出した。

んだけども・・・・。

 

「――――シュランボーグッ!!!」

 

現れたのは、これまでとは全く違うランボーグ。

媒体はスケボーとフリスビーの様だけれど・・・・。

 

「シュランボーグ・・・・!?」

「これまでとは全く違う、どうして!?」

 

相手の全身から、スチームやスモークの様に噴き出す気体。

漂ってきた臭いから、それがアルコール由来なのが手に取る様に分かった。

 

「ヒヒヒッ、戦えば分かるさね」

 

やっぱり徳利を煽りながら、ニヤつくメイテイ。

・・・・何にせよ、放置するわけにはいかない!

 

「みんな、行こう!」

 

ましろさんの声に応じながら、ペンとグローブを掲げた。




ところで、主人公の犬がツダケンって強すぎませんか・・・・?(キミプリの話)
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