ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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メロロン・・・・ものすげぇ濃い味のキャラだな・・・・。


偽物、探し回る

「そうですか、たまきさんが・・・・」

 

たまきさんが、手術を受けることになったと聞いたのは。

明日の来る試合に向けて、横断幕を作っている最中のことだった。

 

「肘の怪我、思ったよりも重いものだったんですね・・・・」

「ああ・・・・」

 

・・・・少し前まで、試合に出たがっていたことを知っているだけに。

やるせない気持ちになってしまう・・・・。

いや、一番しんどいのはたまきさんなのは当然だけどさ・・・・。

 

「しゅじゅちゅって、なぁに?」

 

と、ここでエルちゃんがこてんと首を傾げた。

いかんいかん、難しい顔になっていたか・・・・。

 

「イタイイタイしているところを、お医者さんが治してくれるんですよ」

「はゎ・・・・しゅじゅちゅ、こぁーい・・・・!」

 

安心させる為か、微笑んだツバサくんがざっくり説明するけれど。

『痛いとこに何かする』ということだけは分かった様で、エルちゃんは両手でほっぺたを挟んでいた。

・・・・『あっちょんぶりけ』って、今どのくらいの世代に通じるだろうか。

 

「・・・・扇が」

 

考えていると、ベリィベリーさんがぽつりと口火を切った。

 

「四宮を、心配していた」

「そうなんですか?」

「ああ・・・・『表向きは明るく振る舞っているが、一番つらい思いをしているのだ』と言っていた」

 

・・・・そうか。

ベリィベリーさんも怪我を経験していたんだった。

故郷で起きてしまった地滑りで、腕の膂力が落ちてしまって。

それが原因で、護衛隊の入隊試験にも何度も落ちてしまった過去がある。

・・・・心無い言葉をかけられたこともあったんだっけ。

だから出会ったばかりの頃は、ガルガルしてたわけで・・・・。

 

「治るなら、それに越したことはない。こちらの医療技術はすごい」

 

ベリィベリーさんは、口調こそ明るいけれど。

その顔はどこか浮かないまま。

 

「・・・・だが、だからといって、不安にならないわけではないだろう」

「・・・・ええ」

 

あちら(スカイランド)でも、こちら(ソラシド市)でも。

自分の体を切り開いて、果たして本当に治るだろうかという不安は。

共通していた。

 

「まあ、私達に出来る事は、応援することだろうね」

「ええ、野球部の皆さんだって、その為に特訓してきたわけですから」

 

あげはさんの言葉を肯定しながら、横断幕の作業に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そこ誤字!!」

「エッ!?あ、本当だ!?ど、どどどどうしたら・・・・!?」

「大丈夫、ここをこうして・・・・ヨシ!誤魔化せた!」

「さすがです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――そんなこんなで。

とうとうやって来た、大会の日。

私達はそろって、試合会場であるグラウンドへ足を運んだんだけども。

そこで出会った女子野球部の皆さんは、揃って浮かない顔をしていらした。

 

「何かあったのか」

「アカネゾーラさん、それが・・・・!」

「たまきが、病院からいなくなっちゃったって!」

「なんだと?」

 

聞けば、ついさっき病院から連絡があって。

たまきさんが行方知れずになってしまっているというのだ。

もちろん、野球部の皆さんにとっても寝耳に水。

姿を消したたまきさんを、それぞれ案じているのだった。

 

「どうしよう・・・・」

 

さすがのかなめさんも、この事態に狼狽えている。

・・・・当たり前か。

怪我をしている状態で、行方不明だなんて。

心配で落ち着かなくなっても、しょうがない。

 

「――――しっかりしろ」

 

そんな彼女へ、凛、と喝をいれたのは、ベリィベリーさんだ。

かなめさんの肩に手を置いて、しっかりと目を合わせる。

 

「四宮はこちらで探す、お前達は試合に集中するんだ」

「・・・・ッ・・・・そう、だね」

 

かなめさんは、深呼吸一つ。

それから、ぱちんと自分で両頬を張ってから、チームのみんなを見た。

 

「みんな!今はとにかく試合に集中しよう!!ここで負けたら、それこそたまきを追い込むことになる!!」

「・・・・うん、それもそうだね!」

「オッシャー!!」

「やったるぞー!!」

「ウオーッ!!」

 

かなめさんの檄を受けて、やる気十分とばかりに腕と声を上げる野球部の皆さん。

よかった、ひとまずは持ち直したみたいだ。

 

「ベリィベリーさん、私達も探します」

「僕達も!」

「えるもやる!」

「ああ、助かる」

 

何はともあれ。

今は手分けして、たまきさんを探さないと・・・・!

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

ソラ達は、とにかくたまきを探して回った。

病院の周辺はもちろんのこと。

通学路や、駄菓子屋、コンビニなど。

心当りを探して回った。

 

「四宮、無事でいてくれ・・・・!」

 

そんな中、ベリィベリーが向かったのは学校のグラウンド。

野球部として、一番密な時間を過ごした場所故に。

足を向けたのだ。

 

「四宮!!」

「ッ・・・・アカネゾーラ、先輩」

 

――――果たして、たまきはそこにいた。

マウンドに佇む彼女の下へ、ベリィベリーが駆け寄れば。

不安げな顔で振り向くのが見える。

 

「よかった、何もなくて・・・・急にいなくなって、心配したんだぞ」

「ご、ごめんなさい・・・・」

 

ほっとするベリィベリーを目の当たりにしたたまきは。

安心した顔から、段々と表情を陰らせていく。

病院から逃げてしまったことに、後ろめたさを感じ始めた様だ。

 

「――――手術が怖いか?」

「・・・・・ぁ、その・・・・」

 

指摘は図星だったらしい。

分かり易く動揺したたまきは、視線を散々泳がせてから。

再び俯いてしまう。

 

「・・・・懐かしいな」

「え?」

 

その様子が微笑ましかったものだから。

ベリィベリーはつい、微笑みと共に口火を切った。

 

「私も昔、腕を怪我をしていたんだ。二度と、動かせなくなると言われたよ」

「ぇ、ぁ・・・・そんな、どうして・・・・!?」

 

部活で指導している時を始めとした、運動神経抜群な動きを知っているからだろう。

動揺のままに、たまきは呆然と問いかける。

 

「山滑り・・・・こちらだと、土砂崩れだったか。それにまんまとやられてな」

 

だから、ベリィベリーは静かに答えた。

『もうずいぶん昔のことだ』と笑う彼女に、たまきは三度口を閉ざす。

 

「・・・・どうやって」

 

しかし、それもつかの間。

どこか縋る様な目で、ベリィベリーを見た。

 

「どうやって、立ち直ったんですか・・・・?」

 

至極当然の疑問が、呟かれたその時。

 

「――――おじさんもしりたーい」

「ッ・・・・!」

「な、何!?」

 

無粋な乱入者の声に、二人同時に振り返る。

たまきは周囲をせわしなく見渡すが、ベリィベリーは迷わず一点を見上げた。

視線の先には、案の定メイテイ。

今回は空に寝そべる様な形で浮かんでいた。

 

「貴様・・・・!」

「やっほ!」

「そ、空に人が・・・・!」

 

睨む視線もなんのその。

へらへらと軽薄な態度のまま、メイテイはいつもの様にアンダーグエナジーを片手に宿す。

 

「ヒヒッ」

「ッ逃げろ!!」

 

ベリィベリーの警告空しく。

 

「ラッシャイ!アンダーグエナジー!」

「――――シュランボーグッ!!!」

 

バッティングマシーンを、ランボーグへと変えてしまった。

 

「シュランボーグ!!」

「クソッ・・・・!」

「わ・・・・!?」

 

大砲の様な腕を向けて、巨大なボールをいくつも射出。

動揺に硬直したたまきを、ベリィベリーはほとんどタックルする形で抱きかかえて飛びのく。

 

「ひ・・・・」

 

背後で起こった爆発に、たまきがか細い悲鳴を上げた。

 

「あれって、最近出てるって言う怪獣・・・・!?」

(止むをえまい・・・・!)

 

迷いは一瞬。

機密よりも命を最優先にして、ベリィベリーはルナグローブを装着する。

 

「四宮、すまない!」

「えっ?」

「これから見ることは、どうか内密に頼む!」

「ええっ?」

 

本当に申し訳なく思いながら、構えを取って。

 

「ひろがるチェンジ!!!」

「へっ?」

「月下にひろがる裁きの雷鳴!キュアエクリプスッ!」

「へぇっ!?」

 

エクリプスに変身した。

 

「えええええええッ!?」

(すまない・・・・!)

 

明らかに混乱しているたまきを、あえて置いてけぼりに。

エクリプスが飛び出す。

 

「シュランボーグ!!」

「ふっ!ハッ!セイッ!」

 

再び放たれたボールを次々殴り飛ばしながら、エクリプスはシュランボーグへ肉薄。

まずは拳を叩き込んだ。

 

「ふっ」

 

そのまま、大きくのけ反るシュランボーグの横合いに素早く潜り込むと。

 

「ダァッ!!」

「シュラーッ!?」

 

蹴りを叩き込んだのだった。

 

「オオー、頑張るねぇー!」

 

いつもの様に徳利を傾けながら、軽薄にからかうメイテイは。

ふと、視線をするりと滑らせて。

たまきに目を付ける。

 

「そっちも構ってやんな、シュランボーグ」

「ヒィーック!!」

「なっ・・・・!」

 

巨体が、ぎゅるんと反転する。

勢いにエクリプスが吹っ飛ばされ、その隙にシュランボーグがたまきへ接近。

振り上げた腕を、叩きつけようとしたが。

 

「させるかぁッ!!!」

「わぁっ!?」

 

間一髪のところで、雷鳴と共に駆けつけたエクリプスに抱えられ。

たまきは何とか逃れることが出来たのだった。

 

「ッ・・・・!」

「せ、先輩・・・・!」

 

エクリプスの苦い顔に、血が流れ出るほどの傷がついていることに気付いて。

たまきはさっと青ざめた。

 

「ご、ごめんなさい。私の所為で・・・・!」

「――――いやぁ、本当だよぉ」

 

エクリプスが口を開く前に、メイテイが声を上げる。

 

「さっきのお話聞く限り、ビビッて治療から逃げて来たんでしょォ?そんな腰抜け、庇う意味なくない?」

「・・・・ッ」

 

メイテイの言に、とうとう押し黙ってしまうたまき。

それは、同意の沈黙であった。

 

「だったら、ほら。そのままほっときゃいいじゃん?律儀に助けないでサァ」

 

にやけ顔を止めないまま、メイテイが畳みかけて来る。

 

「君は手間が省けてラッキー、娘っ子はこわーい治療から逃げられてラッキー、俺も邪魔がいなくなってラッキー!いいことずくめ!」

「――――それで終いか?」

 

得意げな演説をぴしゃりと遮ったのは、エクリプス。

 

「んん?」

「頭まで酒に満たされて、耳がバカになったらしいな」

「アカネゾーラ先輩・・・・?」

 

一歩、一歩。

隠せない怒りのままに、踏み出して。

 

「それで終いかと聞いているんだ、外道・・・・!!」

 

刹那。

紫電が雄叫びを上げて迸る。

 

「四宮が腰抜けだと?見当違いも甚だしいッッ!!」

 

面白そうに見下ろすメイテイを見返して咆えるエクリプス。

 

「この子はむしろ頑張っていたんだッ!!自分がいかにチームに貢献していたか知っているからッ!!怪我が切欠で、皆のプレイが曇らぬように走り回っていたんだッ!!」

 

呆然と、その背中を見つめていたたまきは。

 

「それを腰抜け?邪魔?挙句に助けずともいいだと?バカも休み休み言えッ!!!!」

 

指先を動かすこともままならないまま、言葉を発することもままならないまま。

 

「そこを動くなよッ!!せせら嗤ったこと、心の底から後悔させてやるッッ!!!」

 

静かに、涙した。

 

「――――四宮」

 

呼びかけに顔を上げると、振り向いたエクリプスが微笑んでいる。

 

「大丈夫、お前は一人じゃないよ」

「せ、ん・・・・ぱっ・・・・」

「私もそうだった、だからここにいる」

 

そうして右腕を掲げる、たまきに見せる為だ。

 

「一人じゃなかったから、また『こう』なれた」

 

姉や祖父母といった家族と、治療に当たってくれた医者はもちろんのこと。

ロメラやシーナの様な友人達に、村の大人達。

みんながベリィベリーを支えてくれたから、動かないと言われた腕を再び動かせた。

 

「――――だから」

 

エクリプスは改めて、眼前の敵と向き合う。

 

「四宮、お前もそうだよ」

「ヒィーック・・・・!」

 

ゆるゆると駆け出せば、シュランボーグも身構えた。

 

「お前も、一人じゃないよ」

「・・・・ッ」

 

息を呑むたまきの前で、エクリプスとシュランボーグの拳が激突。

衝撃が暴風となって、グラウンドの砂を巻き上げる。

 

「シュラーン!!」

「――――ッ」

 

豪快な足払いを避けると、片手をピストルの形に握り。

指先に、紫電を宿す。

 

「シュラーンッ!?」

 

刹那、閃光が駆け抜けて。

シュランボーグが撃ち抜かれていた。

 

「プリズムの真似事だが、いい威力だろう?」

「シュラーンッ!!」

 

『やってくれたな』とばかりに猛進するシュランボーグ。

拳を続けざまに叩き付け、エクリプスを懐へ誘い込むと。

 

「シュララララララ・・・・!」

 

以前の個体も見せたシバリングで、あの『酒気』を振りまいた。

 

「ぐ・・・・!」

 

咄嗟に全力で距離を取ったエクリプスだったが、ほんの一吸いが一気に意識を削っていく。

 

「シュランボーグ!!」

「ッアカネゾーラ先輩!!」

 

好機とばかりにアームハンマ―を放ってくるシュランボーグ。

 

「――――言ったはずだぞ」

 

思わず声を張ったたまきの目の前で。

エクリプスは、にやりと笑って。

 

「私は、一人じゃないと・・・・!」

「――――ヒィーロォーガァールゥーッ!!」

 

シュランボーグの懐。

青が、はためいた。

 

「スカイソード、ゲイルゥッ!!」

 

駆けつけたスカイが、一閃。

エクリプスを鈍らせた『酒気』を、文字通り吹き飛ばす。

 

「バタフライキッス!」

「はぁっ!!」

「シュラーンッ!?」

 

スカイだけではない。

プリズム、ウィング、バタフライ、マジェスティ。

錚々たる面々が並び立つ。

 

「遅れました」

「来てくれて助かった」

 

立ち上がりながら、スカイと手短に言葉を交わすエクリプス。

 

「四宮もいる、拙速を尊ぶぞ」

「ええ、もちろん!」

「せっそく・・・・?」

「とっととやっつけようってこと!」

「そっか!」

 

知らない言葉に首を傾げるも、バタフライの解説で理解したマジェスティは。

その手に、全てを救う書物を呼び出した。

 

――――マジェスティ・クルニクルン!!

――――ひろがる世界へ、テイクオフ!!

 

揃ってオーラを纏って、揃って上空へ。

チームエンブレムを描いた面々は、毅然と手を掲げて。

 

――――プリキュア!!

――――マジェスティック・ハレーションッ!!

 

極光が、降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

『アーア、負け負け、また今度ー』

『――――メイテイテイ』

 

たまきさんを戦いに巻き込んでおきながら、軽ーい口調で撤退していったメイテイ。

いや、とっとと帰ってくれる分に越したことはないんだけどもね?

いつぞやの戦いぶりを知っていると、この頃のランボーグを呼び出すお行儀のよさがちょっと不気味でね?

・・・・気を取り直して。

プレッシャーのあまり、病院をエスケープしてしまったたまきさんは。

とにかく無事に保護。

エクリプスの正体を知られてしまうというハプニングはあったものの、きちんと内緒にしてくれることを約束してくれた。

ありがとうございます・・・・!

 

「――――こいつこいつこいつ!!」

「どんだけ心配したと思ってんのさ!!」

「マジでよかった!!無事でよかった!!」

「あわわ・・・・ご、ごめんなさい・・・・!!」

 

で、今。

病院に戻れば、ちょうど試合を終えた野球部の皆さんも駆けつけてくれていて。

無事に一回戦を突破したことを報告してくれた後、たまきさんを全力でもみくちゃにしていた。

やっぱり可愛がられてるよな、エース・・・・。

 

「たまき」

「かなめ先輩」

 

一段落したところで、かなめさんが歩み寄ってくる。

名物コンビなだけあって、言葉はなくとも通じ合えるようで。

 

「・・・・はい、今度は私の番ですね!」

「そーだ!いけーッ!たまきー!」

「ファイトー!」

 

声援を受けながら、たまきさんは困った顔で笑うお医者さんと共に。

院内へ入っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――後日。

たまきさんの手術は無事に終わり、経過も良好。

野球部の部室にも、新しい優勝旗が飾られることになったそうだ。




本家での放送当時。
ちょうど某谷選手が、たまきさんと似たような症状で手術を受けると話題になってましたね。
どちらも経過良好で、本当によかった・・・・。
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