ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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メロロンやっぱりヤベーやつだった・・・・。
愛が重くてポエミーだなんて、どんぶり飯もびっくりの盛りっぷりだぜ・・・・(褒め言葉)


偽物、第五の試練

「――――」

 

はた、と。

目の前がクリアになる。

何度も何度も経験してきた感覚。

『正気に返る』と名付けたこれとは、もう十年以上の付き合いだ。

 

「――――ッ」

 

洪水の様に押し寄せる、罪悪感と自責の念は。

決まって、幸福を感じた時にやってきた。

例えば、ツバサくんに知識を教わった時。

例えば、あげはさんと話が弾んだ時。

例えば、ベリィベリーさんとの鍛錬で、手ごたえを感じた時。

例えば、エルちゃんが笑ってくれた時。

例えば、ましろさんを愛おしく思った時。

 

「――――は」

 

充実して、満たされて。

顔が綻んでしまう度に。

闇が、徒党を組んで駆け寄って来る。

 

「――――っ、ぐ」

 

一口分の空気を含んで、飲み込む真似事。

 

「っ、は・・・・」

 

心の乱れを、文字通り飲み込んで。

表に出さないようにする為、最近出来た癖。

――――『ヤングケアラー』という言葉を知った。

将来のやりたいことの為、勉強やスポーツにまい進出来る未成年の権利が。

家族の介護に代表される、避けがたい要素の所為で阻害されるというもの。

片親家庭で、下の兄弟の面倒を見るお兄ちゃん・お姉ちゃんや。

精神を病んでしまった人を、何とか助けられないかと頑張る子も。

該当する。

 

「ソラさん?」

 

――――私は、随分長く。

ましろさんに甘えてしまっている。

だから、もう。

これ以上、苦労を掛けることがない様に。

 

「どうしたんですか?」

「――――いいえ」

 

大丈夫。

 

「なんでもないですよ」

 

繕うことには、慣れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――『ウイテルケワシー』。

スカイランドの屋根とも呼ばれる大山脈。

常に強風が吹きつけるが故に土が定着せず、ごつごつとした岩が大半を占める山肌では。

農耕は大変困難。

なので、ヒヒトを始めとした人々は、牧畜や採掘。

ギリギリ栽培出来るフルーツなんかを作って生計を立てている。

そんな過酷な環境もあってか、そこに力強さを見出して。

霊峰として信仰の対象にもなっている。

 

 

 

 

今回、七試練でSOSを届けて来たのは。

そんなウイテルケワシーの頂上付近に位置する村。

ベリィベリーさんの故郷である、『ニルビ』だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「――――やっっっと」」

 

珍しく、真っ青な顔をした私とあげはさんは。

 

「「ついたぁー・・・・!!」」

 

移動用に飼いならされた『ノシノシトカゲ』の背負う籠から降りて。

刑期を終えた囚人の様に、シャウトしたのだった。

いや、マジでしんどかった・・・・。

ウイテルケワシーの所謂『荷馬車』は、道中ほぼ垂直のルートを通ることもあるから。

お客さんがひっくり返ってしまわない様、座席がそれに合わせて回転する工夫がされてるんだけども。

それでめっちゃくちゃ揺さぶられた結果、まんまと乗り物酔いになってしまった次第・・・・。

 

「二人とも、お疲れ様。よく頑張ったな」

「ベリィベリーちゃんはケロっとしてるよね、羨ましい・・・・!」

 

地元民ということもあってか、ベリィベリーさんはけろりとしている。

あげはさんに全力で同意するわ、羨ましい・・・・。

 

「とにかく、今日はここで一泊だな」

 

――――今私達がいるのは、霊峰の中腹の町『カナンマド』。

ウイテルケワシーを越える、ないし登るにあたり。

誰もが高確率で立ち寄ることになる町だ。

 

「一晩かけて、気圧差に体を慣らしたら。明日いよいよニルビに向かう」

「ちょっともどかしいけど、しょうがないか・・・・」

 

一度触れた通り、ウイテルケワシーは指折りの過酷な山。

このまま強行軍をしてしまえば、確実に高山病になってしまう。

だから今回のメンバーは、受刑者である私と、地元民のベリィベリーさん。

そして、ミックスパレットでの回復が出来るあげはさんの三人だ。

ちなみに、エルちゃん(赤んぼ)ツバサくん(子ども)ましろさん(体力低め)はお留守番である。

連れてくわけにはいかないよ、こんな試され過ぎる山・・・・。

 

「それで、『しろがね様』だっけ?ベリィベリーちゃんは見たことあるの?」

「ああ、というか入隊するまでは、村の祭りで毎年拝見していたよ」

 

気を取り直して。

手配してもらった宿への道すがら、あげはさんの最終確認もかねた質問に。

ベリィベリーさんがこっくり頷いた。

――――ウイテルケワシーには、『タケートコング』という大猿が生息している。

過酷な環境を生き抜く力強さと、常にアルカイックスマイルを浮かべているような顔で。

ニルビ村を始めとした、一帯の集落から信仰されている動物だ。

特に群れのボスは、背中の輝くような銀色の毛並みから。

『しろがね様』と呼ばれて、親しまれているんだったか。

 

「毎年この時期になると、ニルビ村を含めた周辺のヒヒト達が一斉に集まって、収穫祭をやるんだ」

 

今年もまた、『しろがね(さい)』とも呼ばれる行事に向けて、周辺の集落が協力して準備に当たっていたらしい。

今回は、(トト)を始めとした数少ない農産物が豊作だったこともあって。

特に力を入れて居たそうなんだけども・・・・。

 

「どういう訳だか、ご乱心なされたんですよね」

「ああ・・・・」

 

私も、シャララ隊長から聞いた事を思い出しながら話せば。

ベリィベリーさんの顔が、目に見えて沈んでしまった。

――――ヒヒトの皆さんが、はりきって準備をしていた最中。

突如、様子のおかしい『しろがね様』が現れて。

とにかく滅茶苦茶に暴れ回ったらしいのだ。

 

「報告を聞く限り、明らかにランボーグにされている・・・・加えて、怪我人が揃って急性アルコール中毒の様な症状を訴えているとなると」

「メイテイ・・・・」

「ぬあー!やっぱりあの酔っぱらいか!」

 

頭を抱えるあげはさんの横で、私は貫かれた右肩になんとなく触れる。

・・・・クルニクルンを得た後も、何度か湯治をした結果。

どうにか傷は塞がったんだけど、痕が残っちゃったんだよな。

別にそれ自体は何も問題はない。

けれど、この前ましろさんと脱衣所で鉢合わせちゃったとき。

右肩を見て、明らかに落ち込んだ顔をしてたんだよな・・・・。

そうでなくても、常世丸(あの剣)が普通に厄介だから。

警戒しまくってるわけだけども。

 

「と・・・・ついたな」

 

話している内に、今日の宿についたらしい。

あちらの世界にもありそうな、山小屋のような外見だ。

受付でチェックインして、通された部屋には。

卵の様なデザインの家具が、三つ並んでいた。

 

「え、もしかして、これがベッド・・・・?」

「ああ、高地では横になるとかえって危険なんだ」

「そうなんだ!?」

 

私も聞いた事がある。

寝転ぶと、血流の酸素を運ぶ能力が低下するんだったかな?

だから、富士山みたいな標高の高いところでは、横になると著しい低酸素状態になって。

高山病の症状が悪化してしまうんだったか。

実際、そういった事例が何件もあるらしい。

こわ・・・・。

 

「へぇー、それでこんなかわいい形なんだぁ」

 

あげはさんは、物珍しそうにベッドを観察していた。

かくいう私も、初めて見るタイプのベッドに興味津々である。

なんか、こう。

向こうの世界でも、こういうインテリアで通じそう・・・・。

ここが宿であることを踏まえても、とってもおしゃれ・・・・。

 

「では、少し早いが夕飯にしようか」

「賛成です、明日も早いですから」

「私もさんせー!ね、ここは何がおいしいの?」

「トトやペーア()の様な果物もあるが、ヤマプーシ・・・・そちらで言うヤギの牧畜が盛んだから、その肉と乳を使ったチーズが美味いぞ」

 

『モシティーヤ』という、トルティーヤに似た薄いパンではさんで食べると最高らしい。

絶対美味いヤツじゃん・・・・!

 

「っはー!・・・・って、大変なのに浮かれてられないかな」

 

一度は目を輝かせたあげはさんだけども、ここに来た目的を思い出して苦笑い。

・・・・かく言う私もちょっと浮かれそうになってらからな。

反省・・・・!

 

「まあ、緊張し過ぎて、普段通りの動きが出来ないのも問題だ。『腹が減っては』とも言うだろう」

 

――――当然。

青の護衛隊も、救助に向かうべく準備をしているけれど。

私達が先遣隊として、先んじて向かうことになったのだ。

護衛隊全体だと、全員分の装備をそろえるのに時間がかかってしまうけど。

三人だけならすぐに済むもんね。

ベリィベリーさんにフォローされつつ、やや緊張感の漂う町を歩いてく。

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

「――――シュランボーグ!!!」

 

――――霊峰の頂。

妖しき酒の霧に満ちた大気を、轟くドラミングが揺さぶっている。

 

「――――ッ」

 

只人はもちろんのこと、生き物もまともに動けない中で。

そいつは徳利を傾ける。

 

「――――育って、貰わないとねぇ」

 

ほう、と自らの口からも酒気を吐き出しながら。

 

()()の、為にサ」

 

抱いたそれは、夢か、現か。




おまけ
タケートコング
拙作オリジナル要素。
ウイテルケワシーに生息する、平均3〜4メートル程の巨大な猿。
巨体に似合わず温厚な性格。
クォッカワラビーよろしく、常にアルカイックスマイルを浮かべている様な顔が特徴。
一帯の集落から信仰の対象になっており、特に群れのボスは『しろがね様』と呼ばれ、親しまれている。
ネーミングは、「高ぇとこ」+「コング」。
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