「おはよー!」
「おはよう、あげは」
「おはようございます」
――――翌朝。
おいしいごはんと、長めにとった睡眠で。
しっかり英気を養った私達は、いよいよニルビに向かう。
「二人とも、体調は?」
「ええ、問題ありません」
「私もばっちり!!」
私もそうだけど、二人も調子はばっちりの様だ。
よかった。
「それで、ここからはやっぱり徒歩?」
「さすがにそれは無謀だよ、ニルビから迎えが来るはず・・・・お」
さて、現地にはどうやって行こうかと、悩んでいると。
ベリィベリーさんが一点に目を止める。
倣ってそちらに目を向けると。
「やっほー!」
「ロメラさん!シーナさん!」
大きな籠を背負った、ヒヒトが三人。
その内の二人は、ダーファン祭りでもお会いしたロメラさんとシーナさんだ。
あと一人は・・・・初めて見るな。
なんて、思っていると。
「――――身の程知らずに護衛隊行ったやつが、今や『伝説の戦士サマ』か」
男の子らしいヒヒトが、やや剣呑な顔でベリィベリーさんを威嚇してきた。
「お前も随分偉くなったもんだな、『尾無し』」
『尾無し』・・・・聞きなれない言葉だけど、嫌な雰囲気なのは分かる。
と、次の瞬間。
「あッ!んッ!たッ!はァッ!まァた出会いがしらに!!」
「ッで!?」
「正直引くー」
「っだ!?」
シーナさんに頭をはたかれ、ロメラさんにむこうずねを蹴り飛ばされていた。
「カキ・・・・」
「お知り合いですか?」
「ああ、昔馴染みで、村長の息子なんだ」
苦笑いするベリィベリーさんは、懐かしそうに『相変わらずだな』と呟いていた。
なるほど、昔からあの態度、と。
「ハァー・・・・悪いわね、早々に」
「いえ、今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ、来てくれて助かるわ」
やれやれとため息をつくシーナさんと握手して。
お三方が持ってきた籠に乗り込む。
これがウイテルケワシーにおけるタクシーの様だ。
「さ、乗って!乗り心地は保証するわよ!」
「――――ベル!みんな!」
籠ごと背負われる事、また数時間。
お昼になる前には、やっと現場に到着できたのだった。
村の門を潜ると、ダーファン祭りでもお会いしたアンプルさんが出迎えてくれる。
「来てくれてありがとう、早速だけど、こっちへ」
「早速出番ってところです?」
「そんなところよ、早々に悪いけど・・・・」
「全然オッケーですよ!」
早速変身して、準備万端のバタフライと共に。
怪我人が集められているという集会所へ、足を運んだ。
「――――うぅ」
「いてて・・・・」
――――想定よりも、深刻な状態だ。
幸い欠損している方や、死亡してしまった方はいないようだけども。
それでも、包帯がない人を探す方が難しい。
「ッ重傷の人って、一か所に集められますか?」
「元々怪我の度合いで分けてあるわ、こっちよ」
「ありがとうございます!」
アンプルさんに連れていかれた先で、バタフライがミックスパレットを使い始めている。
「私達は中・軽傷の人々だな」
「はい!」
もちろん、私達も突っ立っているつもりはない。
持ち込んだ救急キットを手に、応急手当の手伝いに入る。
その合間に、話す余裕のある人たちから、詳しい話を聞いていたんだけども・・・・。
「――――え?ランボーグになったのは2・3日のことなんですか?」
「ああ、祭りに向けて、祭壇を整えていたら、急に・・・・」
「幸いその時怪我人は出なかったし、それ以降も、どちらかというと追い払われる感じで・・・・近づかない限りは大丈夫だったんだが」
「そうそう、あのらんぼーぐ?になってからだったか。見境なくなったのは、それからだな・・・・」
「嗚呼、しろがね様。どうして・・・・!」
『ランボーグになったのは、つい最近』という話を、ちらほら聞いた。
被害者全員から聞けたわけじゃないけれど、聞き出せた話が揃って同じ内容だ。
『与太話』と切り捨てられない。
「――――ええっ!?最初はアンダーグエナジー無しで暴れてたの!?」
「あげはさん、声、声」
「ご、ゴメン・・・・!」
それぞれの作業が一段落したところで、情報を共有していたところ。
やっぱりあげはさんが素っ頓狂な声を上げてしまう。
分かる、びっくりするよね・・・・。
「・・・・・これは、確認なのですが・・・・しろがね様が、理由なく暴れることってあるんですか?」
・・・・いや、マジで申し訳ない。
ベリィベリーさんや、お話を聞いた皆さんの様子から。
『しろがね様』なる個体が、如何に敬われ、大切にされているかがよく分かるだけに。
今口にした質問は。
なんか、こう。
他の獣と同列に扱うような気持ちになって・・・・!
でも、『ランボーグになる前から暴れている』という話が出ている以上、聞かないわけにもいかなくて・・・・!!(ろくろを回しながら)
「・・・・ない、と言い切れないが、考えにくい」
こちらのそんな葛藤をくみ取ってくれたベリィベリーさんは、やはり難しい顔をしながら答えてくれた。
「タケートコング・・・・特にしろがね様の群れは賢くてな。ここニルビを含めた周辺の村々と、共生関係を築いているんだ」
昔から信仰されているからか、それとも信仰されているから長いこといるのか。
とにかく、しろがね様が率いる群れと、ウイテルケワシー頂上付近の村々は、とても仲が良いそうだ。
毎年のお祭りはもちろんだけど。
普段からも一緒に遊んだり、農作業したりと関わる機会が多いらしい。
何なら、それぞれの子どもが遊ぶこともよくあるんだそうだ。
なので、敵対する理由があまり思いつかないという話だった。
「ニルビを含めた誰かが、知らない内に無礼を働いていたというのであれば、また別の話だが・・・・」
「それを言い出しては、キリがないでしょう」
「だね、一旦置いといてもいいかも」
何はともあれ、これ以上考察できるような事柄もない。
「とにかく、シュランボーグは速く討伐するべきだ」
「同意です。奴の放つ酒の霧が、範囲を広げています。アンプルさん含めた、シャーマンの皆さんが結界を張ってくれていますが・・・・」
「それも、いつまで持つか分からないもんね」
事態は想像以上にひっ迫している。
あんまりのんびりしていたら、今度こそ死人が出てしまうかもしれない。
「拡大速度もとてつもない・・・・それこそ、ウイテルケワシーだけで収まるとも限らん」
「じゃあ、もう行っちゃう?」
「ええ、異論はありません。ベリィベリーさん、案内をお願いします」
「ああ、任せろ」
頷き合って、出発を決断した。
◆ ◆ ◆
想像以上に大きな被害と、災害の進行を前に。
拙速を尊ぶことを決断したソラ達。
ちょうど近くを通ったアンプルに出立を告げると、その足で酒精渦巻く村の外へ出た。
「うっっっわ、酒クサッ!!」
「はい、村の中よりも強く感じる・・・・!」
「見方を変えれば、結界を張っていてもあれだけ臭う程、強力なものということだ・・・・!」
ばしん!と顔を抑えるバタフライに、全力のしかめっ面で同意するスカイ。
一方のエクリプスは、首に下げていたお守りを引き出して。
「姉さん達が持たせてくれたこれが無ければ、我々も危なかったな・・・・」
アンプルを始めとした、村のシャーマン達が持たせてくれたお守りを。
祈る様に、握りしめた。
「・・・・行きましょう」
「だね、私達もいつまで持つか分かんないし」
「そうだな・・・・すまない、先を急ごう」
足を止めたわけではなかったが、緊急時に話し過ぎてしまったのも事実。
謝罪を口にするエクリプスに、スカイもバタフライも『気にするな』をそれぞれ告げて。
シュランボーグが待ち構える、しろがね祭の祭壇へ向かった。
「――――ッ」
――――足を踏み入れて分かる。
全身を、針で刺すようなプレッシャー。
「ヒィーック・・・・!」
剣や拳を構えて警戒する目の前。
巨体がゆっくり振り向いて。
「シュランボーグッ!!!」
「やる気満々ってところだね!!」
「来るぞ!」
身構えた三人の真上に、飛び掛かって来た。
「ヒノカミ神楽ッ!!」
バタフライとエクリプスが散開する中、一人とどまったスカイは剣を抜き放って。
「碧羅の天ッ!!」
ぐるんと体を振り回して、迎撃と酒精の振り払いを行った。
「バタフライキッス!」
「ハァッ!!」
続けて、散開していた二人がそれぞれ牽制を放つ。
「シュラーンボオオオオー!!」
周囲を囲まれてしまったシュランボーグは、雄叫びを上げながら胸を激しく叩く。
ゴリラにも見られる、ドラミングだ。
「わわわわわッ!?」
「ッ・・・・!」
「ぐッ・・・・!」
あっと言う間に衝撃波となった轟音が襲い掛かり、スカイ達は各々防御や迎撃、回避でなんとかしのぐ。
しかし、わずかながらも崩れた姿勢が、見逃されるはずもなく。
「シュランボォーッグ!!」
「っ、しま、ああッ!!」
「スカイ!!」
薙ぎ払いがクリーンヒットし、スカイが吹っ飛ばされる。
「クソッ・・・・!」
「シュランボーグ!!」
立て直そうとしているスカイへ、追撃を加えようとするシュランボーグ。
「――――ひろがるッ!!」
と、そんな奴の頭上に躍り出た影。
バタフライだ。
「バタフライプレスゥッ!!」
「シュランボッ!?」
「からの、バタフライキッス!!」
顔面に必殺技を叩きつけると、そのまま相手の顔面を足場に跳躍。
投げキッスを放って、追撃を加えた。
「しろがね様、ご容赦を・・・・スカイ!」
「ッ、ええ!」
巨体が傾く横を、エクリプスが駆け抜けつつ声を張れば。
意図を組んだスカイも、彼女の反対側へ回り込む様に駆けて。
「今更ながら、お
「エクリプスジャッジメント!!」
互いの必殺技を、すれ違いざまに叩き込んだ。
「シュランボーグ・・・・!!」
弱い声音を吐きながら、轟音を立てて膝をつくシュランボーグ。
しかし、立て続けに必殺技を受けてもなお浄化されない相手を見て。
三人は苦い顔を禁じ得ない。
「やっぱり、マジェスティックハレーションとかじゃないと難しいかな」
「いえ、まだ手はあります」
「悔しいが・・・・スカイの言う通りだな」
酒気で上手く回らない頭を、それでも必死に回すバタフライを。
バーストカリバーに意識を向けるスカイと、その負担を鑑みたエクリプスが慰める。
「でも、バーストモードは・・・・!」
「ええ、負担は大きいですが・・・・マジェスティ達を置いてきてしまった今、他に手はありません」
「ううん、背に腹は抱えらんないか・・・・!」
個別の技以上、それもシュランボーグを浄化しうる技と言えば。
マジェスティックハレーションに、アップドラフト・ライジング。
そして、
「スカイザンバーで浄化出来るまで、とにかく削りましょう」
「ああ、村人達の話では、数日あの状態だ。しろがね様の容態も気になる・・・・!」
「オッケィ、じゃあそれで行こう!」
悩む時間も、議論する時間も惜しい。
方針を手短にまとめた三人は、再び散開する。
「シュラーン・・・・!」
唸り声を上げながら、周囲を警戒するシュランボーグ。
その視線が外れた隙に飛び込んだのは、エクリプスだ。
「ふっ・・・・!」
「シュラン!?」
彼女は一度、右手をスパークさせて注意を引き付けた後。
更に懐に潜り込んで、
「エクリプスジャッジメント!!」
「シュランボオオォーグッ!?」
人間で言うみぞおちの部分に、重い一撃を叩き込んだ。
「ミックスパレットッ!ブルーッ!ホワイトッ!」
次に躍り出たのはバタフライだ。
ふらつくシュランボーグへ、ミックスパレットの筆を突き付けて。
「空気の力、サガっちゃえ!!」
容赦なく、下半身を氷漬けにしてしまった。
「シュラアアァン・・・・!!」
「スカイ!!」
「今ッ!!」
動けなくなった相手を前に、仲間達が声を張る中。
スカイは、バーストカリバーを握りしめる。
「バースト、オンッ!!」
蒼炎を、身に纏う。
「ヒィーロォーガァールゥーッ!!」
『初手より奥義にて仕る』とばかりに、炎の刃が天を衝き。
「スカイ・・・・!!」
叩きつけようとして。
「――――せっかちさんだねェ」
――――スカイの胸。
その中心から、黒い刃が伸びる。
「っ・・・・は・・・・!?」
「もっと楽しもうよォ」
柄まで貫きながら、耳元でメイテイが囁いた。
主人公は死なせかけてナンボ()