今年の映画が面白かったのが悪い・・・・!()
「――――ソラさん」
雫が、一つ落ちてきた。
(ましろさん・・・・?)
いないはずの人の声がして、私の意識は浮上する。
・・・・私、あの後どうなったんだ。
死んだのか?助かったのか?
鼓動は聞こえる。
生きてはいるのか。
じゃあ、私の状況って・・・・?
「・・・・ッ」
固く閉じたまぶたを、何とか持ち上げると。
「――――ホッホッ」
シ●神様みたいな、アルカイックスマイルが。
のっそり覗き込んでいて。
「――――ウワーッ!!?ぁイッタァッ!!?」
「ひゃっ!?ソラさん!?」
痛いのも構わず、シャウトをかましてしまった・・・・。
◆ ◆ ◆
――――ソラの負傷を知らされたのは。
ツバサがマグカップを割ってしまった翌日のことだった。
落ち込んだ顔で戻って来たあげはとベリィベリーから、詳細を聞いたヨヨは。
祭壇の被害状況も確認する必要があると判断。
専門学校の単位があるあげはに家を任せると、ベリィベリーの他に、ましろを伴って。
急遽、ニルビへ向かうことになったのだった。
「ただいま、少年、エルちゃん!」
「お疲れ様でした、あげはさん」
「あげは、だいじょーぶ?」
「っ・・・・はは、うん!元気元気!」
「・・・・晩ご飯、好きなの作りますよ」
「ホント!?やった!」
「――――ここよ」
「ありがとうございます」
さて。
ちょうど出発するところだった、青の護衛隊と共に到着したましろとヨヨ。
挨拶もそこそこに、ヨヨは土砂崩れの現場となった祭場へ。
そしてましろは、ソラの病室へ案内されていた。
「――――ソラさん」
プールサイドチェアの様なベッドに、ソラが寝かされている。
「・・・・それじゃあ、私は行くところがあるから」
「あ、はい!ありがとうございました!」
案内してくれた村のシャーマンに、もう一度お礼を告げて。
ましろは改めてソラを見た。
体の至る所に包帯が巻かれており、特に胸周りが念入りだ。
・・・・それを目の当たりにして。
『胸を貫かれた』という話を思い出したましろは。
まず、そっと。
ソラの手を握った。
相変わらずごつごつした手のひらから、手首に指を埋めれば。
かすかな脈を感じる。
続けて、耳を傾けるように顔を寄せると。
静かに呼吸しているのが聞こえた。
「・・・・生きてる」
思わず、涙を零した。
悲しみではない。
安堵からだ。
嗚呼、何も思わないわけがないだろう。
胸だ。
心臓も肺も、それに繋がる太い血管だってある。
人体の弱点と言っても過言じゃない場所だ。
そこに風穴を開けられたなら、普通なら死んでもおかしくない。
「よかったぁ・・・・!」
安堵に俯いてしまいながら、ソラにすがりついたましろは。
後ろに現れた巨体と、目を開けたソラに気が付かず、
「――――ウワーッ!!?ぁイッタァッ!!?」
「ひゃっ!?ソラさん!?」
◆ ◆ ◆
――――起きたら●シ神様みたいな顔に覗き込まれていて、シャウトしてしまった・・・・。
駆けつけてくれたましろさんが、ちょうど頭を下げていたタイミングだったらしく。
びっくりさせて申し訳ない限り・・・・。
「――――心配かけてすみませんでした」
「目が覚めてよかったです」
ましろさんによると、戦いから三日も経っているそうで。
すでに青の護衛隊が到着し、怪我人の手当てや。
土砂に埋もれてしまった祭場の片付けに従事しているそうだ。
「しろがね様が暴れていたのは、みんなの為だったんですね・・・・」
「ええ」
――――そもそもここに来た理由。
『暴れているしろがね様』の真相は、意識を失う直前に気付いたそれで合っていた様だ。
タケートコングに限らず、動物は人間よりも鋭い。
だからきっと、しろがね様は誰よりも早く気づいていたんだ。
あそこで起こるであろう、土砂崩れに。
だから、自分達にとっても大切なあの場所で暴れた。
大好きな人たちを、危険から遠ざけて。
守るために。
「・・・・ソラ殿」
窓の外。
子ども達に囲まれて、嬉しそうに揺れているしろがね様を見ながら。
しみじみしてるとこに声をかけてくれたのは、村の筆頭シャーマンである『ドーリャ』さん。
アンプルさんのお師匠でもある御方だ。
「私が不在の間のことは、村長達から聞きました。しろがね様が故あって荒ぶっておられるのは、私も勘付いておりましたが、祭事に向けた沐浴に努めておりました為・・・・」
聞けば、祭事を執り行うシャーマンは、お祭りの少し前から身を清める為に沐浴をするらしい。
『一度始めたら、中断してはならない』の他、厳しいルールの中にあったこともあり。
今回は、アンプルさんを始めとした教え子達に託すしかなかったんだそう。
「しろがね様のことも、村の危機のことも、迅速に対応して頂き・・・・なんと報いればよろしいものか」
「いえ、そんな・・・・責務を全うしたまでです」
大切な祭りの為と言えど、村のことがとても心配だったんだろう。
ドーリャさんが帰った時の安堵が、どれほどのものだったかは。
深々と下げられた頭が雄弁に教えてくれていた。
「それよりも、お祭りはどうなりそうですか?」
「確か、大切なお祭りなんですよね?」
このニルビを含めた、周辺地域が一つになって行う『しろがね祭』。
主役であるしろがね様が暴れた上、祭場も土砂で埋まってしまっている。
当然、用意されていた祭具も土の下だ。
今、護衛隊と周辺住民の皆さん。
それから、しろがね様の群れが一緒になって撤去作業に従事しているらしいけど。
あの量だ、短くても数か月単位だろう。
「日にちはややずらすことになるが、何、問題はない」
そんな私達の心配を吹き飛ばす様に、自慢げに胸を張るドーリャさん。
何でも、他の村々とも話し合った結果。
近辺に仮設の祭場を作って、そこでやることにしたらしい。
なので、主要な祭具を優先的に探してもらっているとのことだった。
そもそもの環境が過酷なウイテルケワシーだ。
多少のトラブルはなんのその、ということか。
「何より、一番の功労者を差し置いて祭りなど出来んよ」
「・・・・恐縮です」
なんだか、ちょっとくすぐったい気持ちだ。
『責務を全うしただけ』というのは間違いなく本音なんだけども。
こう、感謝を受け取っちゃうと、ね?
照れくさいよね?
なんて一人むずむずしていると、
「――――ホッホッホッ」
サンタが笑ったような鳴き声に、一緒に振り向く。
先ほどまで子ども達と遊んでいたしろがね様が、また覗き込んで来ていた。
「事態終息の為と言えど、先日は大変失礼しました。お加減はその後いかがでしょうか?」
・・・・神様向けの丁寧な言い回し何てよく分からないけど。
分からないなりに、精いっぱい敬意を込めて話しかけてみる。
すると、
「ホッホーウ!」
窓から距離を取ったしろがね様が、軽快なステップを踏みながらお尻を振り出した。
相当愉快な性格してますね?貴方・・・・。
「ホッホッホッホッ」
何はともあれ、元気そうな様子に安心していると。
しろがね様がおもむろに、自分のわきの下を探り出す。
そうして取り出したのは・・・・
「あれって、スカイランドの桃ですよね?」
「ええ、でもどうして・・・・」
「しろがね様、それは・・・・!」
『入院のお見舞いかな?』と思っていたけど、驚いたドーリャさんの態度からちょっと違う様だぞと分かる。
「良いのですか?」
「ホッホッホッ」
ドーリャさんへの返事代わりに、
そしてそのまま、
うおおおお、痛くはないけど産毛がちくちくする・・・・。
あ、でもいい匂い・・・・。
めっちゃおいしいんだなって分かる・・・・。
「しろがね様、一度お手を止めて下され・・・・!」
「ホッ」
ドーリャさんの言葉で、ぐりぐりは終わったけれど。
手が引っ込む様子がない。
・・・・受け取れ、ということなんだろうか?
「――――しろがね祭では、様々な果実をお捧げする」
首を傾げていると、ドーリャさんが口を開く。
「当然神にお捧げするのだから、その年で一番上質なものを選ぶのだが・・・・稀に、しろがね様手ずから、一部を手渡される者がおる」
それがこれ、ということだろうか?
「特にトトは特別。しろがね様が下賜なさったそれには、万病快癒、不老長寿の加護が宿るとされている」
『事実として、栄養豊富だからの』と、ドーリャさんの解説を聞きながら。
手中の
・・・・この世界に来て。
初めて
やっぱり、桃ってありがたい存在なんだな。
「今年はまだ選別しか済ませておらなんだと言うに・・・・気が早うございます」
「ホホホッホッ」
『まあまあ、いいじゃん』とばかりにまた鳴いたしろがね様は。
改めて、ずい、と桃を差し出してくる。
「・・・・どうかお受け取りを、
「ああ、はい・・・・」
とにかく、受け取らないことには話が進まなさそうだ。
神様手ずからの下賜なので、やや緊張しながら受け取る。
「・・・・ホホ?」
「アッ、ハイ。イタダキマス」
受け取ったはいいものの、どうしようと一瞬悩んだけれど。
また顔を覗かせたしろがね様が、『食べないの?』とばかりに首を傾げて来たので。
頂くことにする。
「皮、剥いてきますね」
「はい、ありがとうございます」
皮を剥いてもらう為、一度ましろさんに手渡す。
そのままましろさんは、刃物を借りに行って席を外した。
「――――」
束の間、沈黙が降りて。
さて、何か会話した方がいいかなと悩み始めると。
「――――其方、何を急いでおる」
ドーリャさんが、口を開く。
急ぐって・・・・?
「まだ子どもだろうに、そんなに削ってしまって」
「――――」
――――そういう、ことか。
シャーマンは伊達じゃないんだな。
「もう十年も生きられんだろう・・・・何が、其方をそうさせる?」
隠し立ては、無意味だろう。
少し考えてから、私も口を開く。
「・・・・責務です、無様にのうのうと生きている私の」
――――そう。
誰にも背負わせられない。
私だけで、死ぬまで背負わなければならない。
責務。
「――――死ぬまで抱えるつもりか?」
「はい」
「命を削ってでもやることか?」
「はい」
「其方一人でか?」
「はい」
「・・・・何もかも、覚悟の上か」
「はい」
ドーリャさんが、深々とため息を吐く。
「なんともまあ・・・・過酷な道を・・・・」
・・・・もしかしたら、しろがね様にも見抜かれたんだろうか。
だから、不老長寿の加護があるという
分けてくれたんだろうか。
「――――ソラさん!切ってきましたよ!」
「ああ、ありがとうございます」
会話が一段落したところで、ちょうどましろさんが戻ってきてくれた。
持っているお盆には、切り分けられた
「見た目は桃なのに、切ってる感覚は梨だったんですよ。すっごく不思議な感覚でした」
「私も向こうの
「えへへ、はい!」
添えてくれていた爪楊枝で、一切れ頂く。
しゃくっとした歯ごたえと共に、爽やかさもある甘味が口いっぱいに広がる。
うーん・・・・神事でお供物になるだけあって、めっちゃ美味い。
これ、しばらく市販の果物食べられないかも・・・・うま・・・・。
「ましろさんも食べてみて下さい、おいしいですよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて・・・・」
ましろさんも一切れ口にすると、笑顔を綻ばせている。
かわいい(確信)
「・・・・傷が癒えるまで、ゆるりとされよ」
「はい、ありがとうございます」
――――幸い。
常夜丸は解放状態じゃなかったから、傷は普通に治る。
大人しく療養していよう・・・・。
◆ ◆ ◆
「――――これでまた、強くなってくれたかな」
ビールを傾ける。
泡が喉を焼き、アルコールで頭がふわふわする。
「頼むよォ」
夢うつつに微睡みながら、にやりと笑う。
「全ては、我が主の為に」
拙作オリジナル要素解説
『カナンマド』
ウイテルケワシーの中腹にある町。
ほとんどの登山者達はここで一泊し、山の気圧に体を慣らす。
名物は
ネーミングは『ど真ん中』の逆さ読み。
『ニルビ』
ウイテルケワシー頂上付近にある、ヒヒトと人間が共存する村。
拙作ベリィベリーの故郷。
ネーミングは『ビニールハウス』。
『ドーリャ』
ニルビ村の筆頭シャーマン、ヒヒト。
アンプルの師匠で、他にもたくさんの弟子がいる。
『しろがね祭り』に向けた沐浴の為、村の危機に駆け付けることが出来なかった。
ネーミングは『ドリアン』。
『しろがね様』
ニルビ村を始めとした、ウイテルケワシー頂上付近の集落群から信仰されているタケートコング。
シ●神様から、不気味さを半減させたような顔をしている。
ネーミングは『シルバーバック』から。