ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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偽物、VSどんぐり

「シュランボーグ!!」

 

あげはとたけるのやり取りで、泣いてべしょべしょになったメイテイだが。

呼び出したシュランボーグは、実にやる気満々だ。

どんぐり型のそいつは、同じくどんぐり型のミサイルを周囲に撃ちまくる。

バタフライとウィングは、まずそれらを回避すると。

ウィングは足元へ、バタフライは頭上を陣取って。

 

「ハァッ!!」

「たぁっ!!」

「シュランボーグ!?」

 

バタフライが叩きつけてかがんだところへ、跳ね上げるようにウィングの追撃が入った。

 

「まだまだ行くよ!」

「はい!」

 

確かな手ごたえにも油断せず。

互いに檄を飛ばし合いながら、再び飛び出していく。

 

「――――みんな、慌てないで!」

 

――――一方。

たけるの報せを受けて、保育園の面々は避難していた。

 

「心配するな、あっちに逃げるぞ!」

 

不安げな子ども達を落ち着かせながら、先生達が先導する中。

たけるは年中さんの手を引いて、頼もしく声をかけていた。

 

「――――はああああ!!」

 

――――さて、場所は戻ってバタフライとウィング。

ウィングが素早さを活かして懐に入り込み、強烈な蹴り。

 

「シュランッ!」

「わぁ、っと・・・・!」

 

しかしシュランボーグは難なく受け止めると、引っ掴んで放り投げてしまう。

飛行能力も駆使して、どうにか体勢を立て直したウィングだったが。

 

「シュランボーグ!!」

「ウィング!」

 

それを好機とばかりに、どんぐりミサイルが乱射された。

咄嗟にバタフライが割って入り、バリアで防ぐものの。

爆発の中から、何かが飛び出してくるのに気が付く。

 

「あれは・・・・?」

「げげっ、まさか・・・・!?」

 

ウィングは首を傾げたが、保育士としての経験があるバタフライはすぐにピンときた。

所謂『どんぐり虫』と呼ばれるそれである。

 

「シュラーン!!」

「シュランボーグ!!」

 

飛び出してきたどんぐり虫達は。

バリアに取り付いたり、二人の周囲に散らばって。

次の瞬間。

閃光と、轟音。

 

「きゃああッ!!」

「ッく・・・・!!」

 

いち早くウィングが動いたことにより、直撃は免れたが。

余波のダメージはしっかり受けてしまう二人。

 

「バタフライ、大丈夫ですか?」

「大丈夫、ありがとうウィング!」

 

空中に躍り出た二人が、シュランボーグを見据えると。

 

「シュランボーグッ!!!」

「「「「「シュランボーグッ!!!」」」」

 

撃ちだされたミサイルと、どんぐり虫の爆弾に。

すっかり囲まれてしまって。

 

「ま、ず・・・・!」

 

反射で出そうとしたバリアも、間に合わないタイミング。

 

「――――ウィング!急降下してッ!!」

 

その声が聞こえたのは、まさしくこの時だった。

 

「プリズムショット!!」

「ッ・・・・!!」

 

ウィングはわざと能力を切り、処理されたミサイル群の爆風を使って急降下。

攻撃を避ける。

 

「――――月牙天衝ッ!!!」

「シュランボーグ!?」

 

更に、シュランボーグへ叩き込まれる追撃。

二人が揃って、そちらを見やれば。

 

「お待たせしました!」

 

スカイ、プリズム、エクリプスにマジェスティの四人が。

駆けつけてくれていた。

傍には、ウィングが伝言を託した小鳥達が飛んでいる。

 

「いらっしゃーい・・・・ズビ」

 

揃ったプリキュア達を前に、メイテイは呑気に鼻をかんでいた。

 

「・・・・もしかして、泣いていた?」

 

目の周りを真っ赤にした様を見て、首を傾げるスカイだったが。

シュランボーグが復帰したことで、思考をそちらに切り替えた。

 

「どんぐりみたいなミサイルと、どんぐり虫の爆弾を投げて来る!!気を付けて!!」

「承知した!!」

 

手短な情報共有を済ませて、プリキュア達は飛び出す。

 

「シュララララララララッ!!」

「全集中・風の呼吸ッ!!」

 

雨あられと撃ち出されるミサイルを掻い潜り、躍り出たのはスカイ。

 

「弐ノ型 爪々・科戸風!!」

「シュラーッ!?」

 

懐に潜り込み、暴風を叩きつけるが。

 

「ゥゥウ・・・・シュラーンッ!!」

「スカイ、後ろ!」

 

仲間の声と、シュランボーグの様子に後ろを振り向けば。

避けたはずのミサイルが迫ってきているのが見えた。

 

「ッづ・・・・!」

 

慌てて姿勢を思いっきり低くすると、ブレイクダンスの要領で攻撃を回避。

間一髪で、爆発から逃れる。

 

「「やあああああ!!」」

 

入れ替わる様に駆けだしたのは、マジェスティとプリズムだ。

マジェスティはミサイルを斬り捨て、プリズムは迎撃する。

しかし、如何せん数が多い。

 

「これじゃ持たないよ!」

 

プリズムはしっかり対処しながらも、苦い顔をした。

と、

 

「ぁ・・・・!」

「プリズム!」

 

とうとう一部のミサイルが、弾幕を突破してしまった。

慌ててウィングが駆けつけるが。

 

「やぁっ!!」

 

一拍、早く。

マジェスティが斬り捨ててしまう。

 

「マジェスティ、ありがとう!」

「な、ナイトがプリンセスに守られるなんて!!」

 

プリズムはお礼を言う一方、ウィングは己の不甲斐なさに頭を抱えた。

マジェスティはそんな二人に振り向いて、無事に安堵していたが。

 

「「「「「ヒィーック!!」」」」」

 

そうやって視線を逸らしていたから。

斬り捨てた破片から飛び出してくる、どんぐり虫達に気付くのが遅れた。

 

「ッしま・・・・!」

「プリンセス!!」

「マジェスティ!!」

 

輝き出す虫達を前に、脂汗を浮かべる三人だったが。

刹那、雷光が走って。

 

「――――霹靂一閃・八連」

「――――フウウゥゥゥ」

 

駆けつけたスカイとエクリプスによって、救助されたのだった。

 

「ありがとう」

「油断しないで」

 

お礼を言うマジェスティの頭を、窘めるように撫でながら。

スカイはシュランボーグを睨む。

 

「あのどんぐりが厄介だな」

「あれだけでもなんとか出来たら・・・・!」

 

腕を組むシュランボーグと、うぞうぞ動くどんぐり虫達を前に。

苦い顔をする面々。

 

「・・・・そうだ」

「バタフライ!?」

 

バタフライも同じく表情を苦くしていたが、何かを思いついたらしい。

誰に何を言うでもなく、飛び出していく。

 

「・・・・何か、考えがあるようです」

「だな、フォローの用意を。特にウィングは、いつでも飛べるようにしてくれ」

「はい!」

 

邪魔にならないように、フォローはいつでも出来る様に構えて。

一人走るバタフライを見守る。

 

「シュランボーグッ!!」

「「「「「ボーッグ!!」」」」」

 

接近してくるバタフライへ、シュランボーグは再三ミサイルを放つ。

どんぐり虫達も一斉に飛び掛かり、取り付こうとするが。

 

「ふっ!!」

「「「「「ボーッグ!?」」」」」

 

命中直前、バタフライは思いっきり跳躍。

引っ付きそこなった虫達が、ミサイル共々爆発。

その爆風に乗り、バタフライは空へ踊る。

 

「――――ええーん!こわいよぉ!」

 

遥か高く飛んで見えたのは、避難した園児達。

中には予想通り、泣いてしまっている子がいたが。

 

「大丈夫!」

 

たけるが、その子の肩に。

手を置いていて。

 

「バタフライが守ってくれる!」

 

何かを語り掛けながら、キラキラとした目を。

こちらに向けて来た。

 

「最強なんだ・・・・いつも笑顔で、優しくて・・・・手がとってもあったかいんだ!」

 

刹那、『熱』が灯る。

 

「――――絶対にみんなを守る」

 

追撃のミサイルも、バリアを使って往なしながら。

 

「最強の保育士になるって、決めたから!!」

 

決意を、夢を。

口にして。

眼下のシュランボーグに、狙いを定め。

 

「ひろがるッ!!バタフライプレス!!」

「シュラーンッ!?」

 

展開したバリアを再利用して、手痛い一撃を叩き込んでやったのだった。

 

「今だよ!」

「分かった!」

 

もちろん、その隙を逃す手はない。

バタフライの合図に、マジェスティはクルニクルンを手にして応える。

 

――――ひろがる世界へ!

 

――――テイクオフ!

 

浄化のオーラを纏い、天空にエンブレムを描いて。

 

――――プリキュアッ!!

 

――――マジェスティックハレーションッ!!

 

必殺技を、叩き込んだのだった。

 

「はー・・・・負けたけど、いいもん見せてもらった・・・・メイテイテイ」

 

シュランボーグが浄化されると。

やっと涙が落ち着いたらしいメイテイは。

いつも通り撤退していったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――それから、あげはさんに聞いた話によると。

無事に保育園を守った後。

たける君のお迎えに、お母さんとおばあ様がいらしたらしいんだけど。

なんと、そのおばあ様が、あげはさんが保育士を志す切欠になった、あの『先生』だというのが判明したそうだ。

『先生』は、何日も落ち込んでいたたける君が、また笑ってくれるようになったことを。

とても喜んでいたらしい。

 

『あの子の心に寄り添ってくれて、ありがとう』

『たけるにとって、今のあげはちゃんは、誰よりも素晴らしい《先生》だわ』

 

と、嬉しいお言葉を頂いたそうだ。

・・・・何にせよ

 

(あげはさんとたける君が、思い切り笑ってお別れ出来て、よかった・・・・)

 

職場の休憩所。

缶コーヒーを飲みながら、この前のことを思い出している。

と、

 

「ソラさん」

「鉄郎くん?」

 

何の用だろう?

 

「あの、クラスメイトが、河川敷でキュアバタフライを見たって言ってて・・・・」

 

周りに人がいなくても、秘密基地ではないからか。

声を潜めて聞いてくる鉄郎くん。

 

「それって、いつです?」

「この前、土曜日」

「・・・・ああ」

 

たけるくんをお見送りした日か。

 

「そいつ、塾に急いでたから正体を見たとかはなさそうなんだけど、技みたいなのを使ってたって話だったから」

 

一般の人に見られたから、心配してくれたんだな。

 

「大丈夫ですよ。何か、危機が迫っていたとかではないので」

「そうなの?」

「ええ、申し訳ないですが、詳細は私の判断では話せませんけど・・・・」

「そっか、ならいいんだ」

「こちらこそ、教えてくれてありがとうございます」

 

黙っててもよかったのに、律儀に報告してくれたことへお礼を述べると。

休憩終了のサイレンが鳴った。

 

「大会は来週でしたよね?」

「うん、今日もよろしくお願いします」

「はい、微力を尽くします!」

 

私も、まずはお仕事を頑張りましょうかね。

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