ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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ヤギと言えば、トト■のあいつが印象的です。
とっても綺麗な歯並び・・・・。


偽物、思い出探し

「――――はわぁ」

 

さてさて。

うららかな秋晴れの日。

ひょんな切欠から、私達はアルバムを見せてもらっていた。

写真のラインナップは、もちろん虹ヶ丘家の皆さん。

主にましろさんが幼い頃のものを見せてもらっていた。

 

「ましぉ、ちっちゃい!」

 

葉書くらいのサイズに切り取られた、幼いましろさんが物珍しいのか。

エルちゃんはまじまじとアルバムを覗き込んでいる。

かくいう私もその一人だ。

はわわ・・・・かわよ・・・・。

私の恋人ってのを抜きにしても・・・・かわよ・・・・。

 

「わたしもエルちゃんみたいに、ちっちゃい時があったんだよ」

 

気を抜くと拝みそうになってしまう横で。

膝の上のエルちゃんに、『もう少し大きくなった写真も見る?』と問いかけてから。

また別のアルバムを開いてくれるましろさん。

 

「おや、この子はもしや?」

 

絵本を読んでいたり、見覚えのある遊具で遊んでいたり。

あるあるだけど、やっぱり新鮮なラインナップを眺めていると。

小さい頃のましろさんが、見覚えのある女の子と映っているのを見つけた。

この面影は・・・・。

 

「あげはさんです!」

 

やっぱり。

あげはさんによると、二人が出会った頃の写真らしい。

こんなに小さい頃からの付き合いなのか。

そりゃあ、仲が良いわけだ。

でもこの写真のましろさん、どこか浮かない顔をしているような・・・・?

 

「最初、ましろんってすっごく人見知りで、話しかけるとこんな感じだったもん」

「小さくて、あんまり覚えてないけど。そうだったみたい・・・・」

「「へぇー」」

 

なるほど。

かわいい(確信)

と、ここで。

素朴な疑問というか。

揃ってアルバムを覗き込むことになった、切欠を思い出す。

 

「お二人は、いつから仲良しになったんですか?」

「お、ソラちゃん嫉妬?」

「まさか、単純な疑問ですよ」

 

・・・・正直、ゼロとは言い切れないのも否めないんだけど。

普段から姉妹の様なお二人を見ているとね。

嫉妬よりも、微笑ましさが勝つよね・・・・。

楽しそうなましろさんが、ひたすら(てぇて)ぇのよ・・・・。

 

「えっとそれは・・・・」

 

私とあげはさんの茶番を横に、ましろさんがアルバムをめくると。

夕日の中で、二人でハートを作っている写真。

 

「素敵な写真ですね」

「はーと!」

 

この写真を皮切りに、ましろさんも慣れた様子で笑顔を見せているのが増えたので。

ここで仲良くなったんだというのがはっきり分かる。

 

「この木、覚えてる!確かここで仲良くなったんだよね」

 

視点は戻って、件の写真だ。

あげはさんの言う通り、幼い二人の背後には一本の木。

どうやらこれが、仲良くなる切欠だったようだけど。

 

「でも、仲良くなった切欠ってなんだったっけ?」

「私も、その肝心なところが思い出せないんだよねぇ」

 

やはりというか、昔の記憶だからか。

どうにもはっきり覚えていない様だった。

 

「あ、そうだ!」

 

『あらら、残念』なんて思っていると、あげはさんが指を鳴らす。

 

「ここ、行ってみない?実際に見たら、何か思い出すかも!」

「なるほど、思い出探しというわけか」

「そういうこと!」

「いいですね、楽しそうです!」

「うん!」

「いくー!」

 

私、ベリィベリーさん、ツバサ君はもちろん。

エルちゃんも文字通り諸手を上げて賛成したので。

ましろさんとあげはさんの、思い出巡りの旅が始まったのだった・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題(とてちてたー!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、いう訳で。

あげはさんのぴよちゃんに揺られる事しばし。

やって来たのは、垂れる稲穂の金色が眩しい田園地帯である。

いいなぁ・・・・日本の原風景って感じ・・・・。

初めて来た場所なのに、『懐かしい』って思っちゃう・・・・。

あ、赤とんぼ・・・・。

 

「それで、二人の思い出の木というのは、どこに?」

 

あざやかな山に歓声を上げるエルちゃんに、ましろさんが紅葉について教えている傍ら。

助手席のベリィベリーさんが、あげはさんに問いかける。

 

「まあ、ぶっちゃけ詳しい場所は覚えてないんだよねぇ」

 

それもそうか・・・・。

ましろさんはもちろん、あげはさんにとっても十年近く前のことだろうし。

よっぽどのことでもない限り、そんなに昔のことをはっきり覚えている人なんてのも、中々稀有だろう。

 

「ヨヨさんにも聞いてみたんだけど、そしたら・・・・」

 

『自分達で探した方が、宝探しみたいで面白いわよ』と言われたそうだ。

ヨヨさんらしい。

 

「まずは、今日泊まらせてもらうセツコおばあちゃんの家に行こう。前にもお世話になったし、何か情報をもらえるかも!」

 

ちなみにセツコさんは、ヨヨさんのお友達らしい。

交友関係広いな、ヨヨさん・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

――――重ねてちなみに。

私のバイクは廃車になりました。

あのハゲと酔っぱらい、絶対ぇ許さねぇ・・・・!

 

 

 

 

 

 

「よぉ来たねぇ、あげはちゃんもましろちゃんも大きくなって!」

「お久しぶりです!」

 

急な訪問にも関わらず、笑顔で出迎えてくれたセツコさん。

まさしく『田舎のおばあちゃん』といった、優しいオーラのご婦人だ。

 

「急にお邪魔しちゃって、すみません」

「遠慮せんでいいって!賑やかなのは好きだし、お友達も大歓迎よ!」

 

頭を下げるあげはさんにもこの笑顔。

年を取ったら、こんなおばあちゃんになりてぇな・・・・。

 

「懐かしいなぁ・・・・」

「あ、そうだ。セツコおばあちゃん、この木見覚えあります?」

 

にわとりに興味津々なエルちゃんを見守る傍ら、縁側でお茶を頂いていると。

早速あげはさんが、セツコさんにあの写真を見せていた。

受け取ったセツコさんは、『どれどれ?』と覗き込むけど。

 

「見たことある気もするけど、分からんなぁ・・・・」

 

と、申し訳なさそうながらも答えてくれた。

 

「そうですか・・・・」

「きぃ、みつかんない?」

「まだまだこれからですよ」

「その通りだ」

「あちこちお散歩して探しましょう!」

 

少し残念そうなましろさんに、エルちゃんがやや不安げに首を傾げたので。

ツバサ君と一緒にフォローを入れれば、みんなが頷く。

まあ、そもそも長丁場は想定していたわけだしね。

すっかり心地よくなった陽気の中を、のんびり歩くのも乙でしょう。

その際、セツコさんが『シロも連れてってくれんかね』と言ったので。

『シロ』をお迎えに行ってみたんだけど。

 

「べえええー」

 

・・・・なるほど、シロ。

 

「白くて、ふわふわで、目もくりっとしてて、かわいいでしょー?」

「てっきり犬だと思っていたんですが・・・・確かに可愛いですね!」

 

とにもかくにも。

山羊のシロさんを連れて、思い出の木探しに繰り出していく私達であった。

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

「おっしゃんぽー、おっしゃんぽー」

「べええー」

 

エルの鼻歌をBGMに、まさしく『長閑(のどか)』というべき景色を歩いていく一行。

車の中からは分からなかった、土と藁の匂い。

それから虫の歌声が。

心を穏やかにしてくれる。

 

「いい天気だなぁ」

「まさしく絶好のお散歩日和です!」

 

ベリィベリーとツバサのコメントに、皆が同意しながらも進んでいくと。

バス停らしき小屋の隣に、比較的最近整備されたらしい公園が見えてきた。

特に目を引いたのはブランコ。

一見だけでも分かる柔らかい木目は、座れば木の香りに包まれるであろうことが用意に想像出来た。

 

「あの頃とちょっと違うところがあるけれど、この道は前も通ったよね」

「うん」

 

そんな公園を眺めながら、あげはとましろは記憶を確認しあう。

どうやら、件の木に近づきつつあるようだ。

 

「では、このまま進んでみましょうか?」

「だね」

 

まだまだ探し始めたばかり、公園に用事もない。

 

「ほぁ・・・・」

 

そのまま進みだそうとする横で、物珍しそうにブランコを見つめていたエル。

どうやら、ベンチの様に長いタイプが興味深いらしかった。

 

「ぶらんこ!」

「プリンセス、遊びたい気持ちは分かりますが、今は我慢です」

 

それでも指を向けて、きちんと『ブランコ』だと認識するエルを見て。

遊びたいようだと判断したツバサは、宥めにかかる。

 

「その代わり!木を見つけたら、あのブランコで僕と心行くまで――――!」

 

どちらかというと、エルと遊ぶのが楽しみな様子で。

顔をキラキラさせながら、ツバサは拳を握るが。

 

「ちゅばさ、はやく!」

「えっ?」

 

窘める声に、我に返って振り向けば。

あげは達と一緒に、先に進み始めているエルが。

みんなとの中間には、ソラがわざわざ足を止めて待ってくれている。

 

「ちゅばしゃ、あしょぶのあと!がまん!」

「べえええー」

「ツバサ君、はぐれますよ」

「いや、僕は・・・・!」

 

決してサボろうとしていたわけではないが、意図せずその形になってしまったツバサは。

シロにまで突っ込まれたことや、ソラを待たせてしまったことで。

段々といたたまれなくなって。

 

「ぬぐぐ・・・・待ってくださーい!!」

 

慌てて駆け寄っていったのだった。

 

 

 

 

それからも一行は、あげは達の記憶や写真を頼りにして。

人に聞いてみたり、つり橋を渡ったり。

一度来た道を戻って、先ほどとは反対方向へ曲がっていったりもしてみた。

それでも、中々それらしいものを見つけることが出来ないまま。

気が付けば、日が傾き始めていたのだった。

 

 

 

 

「なかなか見つからないな・・・・」

 

夕暮れなのも相まって、輝いているように見えるススキ野原。

広大な風景を前に、ベリィベリーがため息を吐く。

 

「この辺りに見覚えは?」

 

念のために、ソラがましろ達に問いかけてみるが。

 

「ないねぇ」

「前はこの辺りまで来なかったかも」

 

ましろもあげはも、首を横に振ったのだった。

 

「でも、綺麗!」

「べえええ」

 

しかし、次に浮かんだのは笑顔だ。

風にそよぐ野原を前に、シロも同意する様に鳴く。

 

「ここは、みんなで見つけた、新しい思い出の場所だねぇ」

 

目的はまだ遂げられていないが、納得のいくものは得られたことには。

誰もが揃って頷いた。

 

「じゃあ、そろそろ戻ろっか」

 

とはいえ、日も沈みつつある。

セツコの家に向け、踵を返そうとした時。

 

「あ、ぼうし!」

 

強い風、一陣。

エルの帽子が、あっと言う間に攫われてしまった。

 

「すぐに取ってきます!」

「ここでお待ちを」

 

即座にツバサとベリィベリーが駆け出して、未だ宙を舞う帽子を追いかけ始めた。

 

「――――ぁ」

「ましろさん?」

 

幸いすぐに追いつけそうだとソラが安心していると、ましろが何かを思い出したらしい。

 

「確か、あの時も帽子が・・・・」

「あ、そうだった!」

 

帽子を追いかけていく二人が切欠になったらしい。

 

「・・・・何やら、貴重な手掛かりを見つけたようですね」

「はい!」

「でも、どっちにしろ明日だね」

 

『おーい!』と手を振りながら、無事帽子を回収したツバサ達と合流して。

一行は今度こそ、セツコの家に向かうのだった。

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