ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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キミプリ17話、実は怖くてまだ見れてないんすよ・・・・()


偽物、祈る

夜、セツコさんのおうちでお夕飯をごちそうになっている。

メニューは、囲炉裏で作った寄せ鍋と焼きおにぎりだ。

 

「んんん~・・・・!」

 

うっま・・・・うんまっ・・・・!

炭火にするだけで、なんでこうも美味くなるんだろうか。

うまあぁ・・・・。

 

「それで、探しているのは、二人の思い出の木なんだって?」

 

舌鼓を打っていると、セツコさんが問いかけて来る。

気にかけてくれてたのか、ありがたい。

 

「はい!」

「手掛かりは見つけたんですけど」

「あらまぁ」

 

私が口に頬張っている横で、ましろさんとあげはさんが答えた。

そうそう、いいとこまでは行ってると思うんだけど・・・・。

ましろさんが言うには、あの日もシロを連れてお散歩に出ていたところ。

風で帽子が飛ばされてしまったんだそうな。

それを追いかけたのは、あげはさん。

一生懸命走るあげはさんだったけど、結局追いつけず。

あの木に引っかかってしまったんだそうだ。

 

「――――でも、その後が思い出せなくて・・・・」

 

夕飯後、輪になって覗き込むのは例の写真。

幼いましろさんとあげはさん以外にも、何か手掛かりがないかと探してみる。

 

「・・・・考えられるのは、あげはが無事に帽子を取れたことだろうな」

「ええ、それで二人が仲良くなれた・・・・で、合っていそうですが」

「それなら、写真のましろさんがかぶっているはずですよね・・・・?」

「・・・・確かに、どこにもないな」

 

ベリィベリーさんと一緒に、考えを口に出してみるけれど。

ツバサくんの指摘で、『そりゃそうだな』と撤回。

当事者二人は、どこか納得いかない顔だ。

 

「ここ!」

 

うんうん唸っていると。

何かを見つけたらしいエルちゃんが、ちいちゃな指を向ける。

その先を注目してみると、例の木の中に何かが見えた。

 

「本当だ!」

「全然気づかなかったぁ!?」

「エルちゃん、すごい!」

「えっへん!」

 

確かに。

よくよく見ないといけないけれど、子ども用の帽子が引っかかっているのが分かる。

ということは、

 

「帽子は取れなかったけど、二人は仲良くなった?」

「何があったんでしょうか?」

 

発見はあれど、深まった謎に。

再び首を傾げていると、

 

「帽子?」

「あ、ここです」

 

うっかり私達だけで盛り上がった所為で、セツコさんをちょっぴり置いてけぼりにしてしまった。

私が反省している横で、ましろさんが写真を手渡す。

 

「どれどれ・・・・?」

 

虫メガネで覗き込んだセツコさんは、次の瞬間。

 

「ああッ!!この木!!思い出したッ!!」

 

まさしくはっとなった顔で、大声を上げた。

 

「本当ですか!?」

「どこにあるか、ご存じですか!?」

 

『思い出した』の言葉に、ましろさんもあげはさんも身を乗り出す。

見守っていた私達も、期待に注視してしまっていると。

 

「ご存じ、と言えば、そうやねぇ・・・・」

 

対するセツコさんは、どこか気まずそうな表情になったのだった。

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

翌日。

再び外に繰り出していたソラ達は。

昨日とは打って変わって、一路真っすぐに目的地へ向かった。

 

「セツコおばあちゃんが言っていたのは、ここだけど・・・・」

 

そうして辿り着いたのは、昨日一番最初に見つけた公園だ。

 

「あ、あったぞ!」

「ここです!」

 

敷地内に入って、間もなく。

一同は、一つの切株の下に集まる。

 

『その木なら、去年の台風でやられてしまってねぇ・・・・』

(『うたかたはかつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし』、か・・・・)

 

思い出すのは、昨夜のセツコの様子。

加えてソラは、どこかで聞いた古文の一節も併せて思い出していた。

 

「でも、見つけられてよかった」

「うん、お陰で、あの時のことを、全部思い出したから」

 

一方で、当事者であるあげはとましろは、とても穏やかな顔で笑っていた。

記憶を思い出せたからだろう。

 

「聞いてもいいですか?」

「はい!是非!」

 

ソラの問いかけに、ましろは笑顔で頷いて。

とつとつ、語り出す。

――――幼いましろの帽子が、風に飛ばされてしまった後。

今は切株となっている思い出の木に、引っかかってしまったらしい。

帽子が手を離れてしまい、不安そうにしているましろの為。

幼いあげはは、木を登って取りに行こうとするも。

途中で現れたリスに驚いて、ずり落ちてしまったそうだ。

擦りむいた膝を見て、不安げにするましろをフォローすべく。

あげはは『へーきへーき!』と笑って、何でもないとアピールしたそうだが。

対するましろは『ダメ!病院行こう!』と、あげはの身を案じた。

この時、あげはは。

ましろがただの恥ずかしがりではなく、優しい心を持った子なのだと気付いたらしい。

それから、引っかかった帽子に、リスがすっかり居ついてしまった様子を見て。

『帽子を気に入ったのかな』、なんて笑い合ったりもして。

そうやって、心の距離を縮めた二人は。

現在の様な関係になったということだった。

 

「――――その時の写真なんですね」

「はい」

 

語り終えたましろは、改めて『ありがとう』を切り株に伝えていた。

と、見守っていた一同の耳が、生き物の鳴き声を捉える。

揃ってそちらを振り向けば、ブランコの上にリスがいた。

 

「あのブランコは、この木で作られたんですよね」

「きっとリスさんにも、大切な思い出の木なんだね」

 

・・・・リスの寿命を考えれば。

恐らく、ましろやあげはが見かけた個体の、子孫である可能性が高いだろう。

しかし、親から子へ。

ある日やってきた帽子と、それが鎮座していた木について。

何かしらが受け継がれているのだとしたら。

それは実に、ロマンチックではないだろうかと。

想像を膨らませることが出来た。

 

「僕らにとっても、そうですよ」

「ええ、みんなであちこち歩き回って・・・・宝探しみたいでした」

「そうだな、私もワクワクしっぱなしだった」

 

――――見つけた真実は、切ないものであったが。

それに勝る、温かいものを手に入れることが出来たのだと。

誰もが笑って、納得に頷き合う。

 

「じゃあ、みんなで写真撮ろっか?」

 

そして、最後の締めくくりに記念撮影をすることに。

ちょういいい位置にあったベンチに、ミラーパッドをセット。

思い出の木が生まれ変わったブランコに、居合わせたリスも一緒になって座る。

 

「それじゃあ、撮りまーす!」

 

ツバサがタイマーをセットして、準備は万端だ。

 

「5!4!」

 

みんなでカウントダウンしているところへ。

ひらひらと飛んできたのは、ちょうちょ。

 

「3!2!」

 

そいつは何を考えたのか、ソラの鼻先に止まって。

 

「はっくしゅん!!」

「わぁっ!?」

 

盛大にくしゃみしたタイミングで、シャッターが切られてしまったのだった。

 

「・・・・ふ」

――――あはははははははっ!!

 

一瞬驚き、固まるも。

次の瞬間には、笑い声を響かせる面々。

『もう一度撮ろうか』『いや、これはこれでありだ』と言い合いながら。

ひとまず、ミラーパッドを回収しようとした。

その時だった。

 

「――――楽しそーね」

「ッお前は!」

「メイテイ!」

 

ゆらりと現れた人影。

メイテイだ。

 

「おじさんも混ぜてよォ」

「なら、エルちゃんを諦めます?」

「ううーん・・・・それは困るなぁ」

「じゃあ無理だな」

 

いの一番に飛び出し、睨みを利かせるソラとベリィベリーの前で。

メイテイはがっくり肩を落とすと。

すぐにけろりと、姿勢を戻す。

 

「マ、俺らはやっぱりこうなるよね・・・・ラッシャイ!アンダーグエナジー!」

「――――シュランボーグッ!!」

 

そして、案山子を素体にしたシュランボーグを呼び出したのだった。

 

「こんなところにまで!」

「私達の大切な場所なのに!」

 

何にせよ、応戦するしかない。

それぞれ変身アイテムを手に、勇ましく掲げた。

 

――――ひろがるチェンジ!!

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

「――――シュランボーグ!!」

 

先手必勝とばかりに、シュランボーグが竹やりを突き出してくる。

その速度と言ったら!

避けるのが精いっぱいだ・・・・!

 

「あの槍、ちょっと厄介だね」

 

流石のみんなも、仕掛けるのに躊躇してしまっている。

・・・・でも。

 

「正面がダメでも、側面なら・・・・!」

「隙は私が作る!行けッ!」

「はい!」

「うん!」

 

まずエクリプスが突っ込んで、相手の攻撃を引き付けてくれる。

私とマジェスティは、その隙に相手の両側面へそれぞれ回り込んで。

 

「「破魔ッ!竜王刃ッ!」」

「ランボッ!?」

 

まずは一発、叩き込む。

 

「伍ノ型 炎虎ッ!」

「えっと、まじんけんッ!」

「シュラーッ!?」

 

さらに追撃を加えて。

 

「エクリプスジャッジメントッ!!」

「シュランボーグッ!?」

 

体勢が大きく崩れたところに、エクリプスがダメ押しのクリーンヒットを与えた。

ヒューッ!!

 

「すごい!」

「あの三人、ますます息ぴったり!」

「プリンセスの剣技も、随分様になって・・・・!」

 

それなー!

あんなにたどたどしかったマジェスティの『竜王刃』が、今やすっかり頼もしくなって・・・・!

 

「気を緩めるな!相手はまだ倒れていないぞ!」

「そーだそーだ!シュランボーグちゃん、やったれー!」

 

エクリプスの一喝と、メイテイの野次が飛ぶ中。

立ち直ったシュランボーグが、あろうことか持っていた竹槍を膝にぶちあてて。

真っ二つにする。

 

「シュランボーグ!!」

 

そうして出来た二本槍を振り回して、猛然と突っ込んできた。

 

「シュラーッ!!」

 

まずは突き込みを避ける。

マジェスティは横へ、エクリプスは後ろへ。

そして私は上空へ。

それぞれ飛びのいたんだけど、

 

「シュランボーグッ!!」

「づ・・・・!」

 

シュランボーグは、突き立てていた片方を地面から抜いて。

上空の私へ振り払ってきた。

吹っ飛ばされてしまうけど、防御は間に合ったし、すぐに立て直せる。

 

「スカイ!」

 

だけど、マジェスティが私を案じたばっかりに。

相手から視線を外してしまった。

 

「後ろ!!目を外さないッ!!」

「・・・・ッ!」

「シュランボーグッ!!」

 

案の定、相手はその隙を突いてきた。

けど、ウィングの救出と、エクリプスのフォローが間に合う。

よかった・・・・。

 

「ここから反撃、と行きたいところですが。あの槍をどうにかしないと・・・・」

「ああ、このままでは近づけん」

 

改めて並んでシュランボーグと向き合う。

ウィングの言う通り、あの槍が実に厄介だ。

くぅっ、さすがは世界各地で猛威を振るった武器。

単純な長いリーチが、実に手ごわい・・・・!

でも、詰んだわけじゃない!

 

「私が何とかします、みんなはその隙を!」

「オッケィ、任せた!」

 

背後で仲間達が散開していくのを感じながら、飛び出していく。

 

「シュランボーグ!!」

 

対するシュランボーグは、相変わらず手数とリーチを存分に発揮して。

突出してきた私に的を絞って来た。

 

「・・・・ッ!」

「逃げてばかりー?そんなんじゃ勝てないよー!」

「シュランボーグ!!」

 

とにかく全力で。

相手の攻撃を。

避けて、避けて、避けまくって。

 

「ヒィーック!!」

 

そして、ついに。

二本一気の刺突が来た。

――――ここだ!!

 

「ハアアァッ!!」

「シュランッ!?」

 

まずは槍の交差点に剣を叩き込み、二本いっぺんにぶち抜く。

 

「デェイヤッ!!」

 

さらに、剣の柄に踵落としを叩き込めば。

槍が地面に縫い留められた!!

 

「今ッ!!」

「プリズムショットォッ!!」

 

合図と共に飛びのけば、構えてくれていたプリズムが攻撃をぶち当ててくれる。

 

「シュラーッ!?」

 

ちょうど私が陰になって、プリズムが見えていなかったらしいシュランボーグは。

哀れ、直撃をくらって吹っ飛んで行ってしまった。

たーまやー!

 

「ヨッシャ!やったね!プリズム!」

「スカイも、流石だ!」

 

これにはバタフライもにっこりピースである。

 

「一気に決めよう!!」

 

エクリプスも私を褒めてくれる横で、マジェスティがクルニクルンを掲げた。

 

――――ひろがる世界へ!!

 

――――テイクオフ!!

 

後はもはや、言うまでもないだろう。

 

――――プリキュア!

 

――――マジェスティックハレーション!!

 

加減なしの極光を叩き込んで。

シュランボーグは浄化されてしまったのだった。

 

「――――もう、攫うことにこだわっていないのなら、いい加減に諦めたらどうですか?」

「それがそうもいかないのよねぇ・・・・」

 

切っ先を突きつけつつ問いかけると、軽薄に肩をすくめるメイテイ。

 

「こっちだって、譲れない物ってのがあんのヨ」

「それは・・・・?」

「おっと、喋り過ぎた。ジャネッ!メイテイテイ!」

 

そういうと、いつもの文言を唱えて。

退散していってしまうメイテイだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、無事虹ヶ丘邸に戻ったソラ達。

写真を一枚一枚見返して、一喜一憂して。

『楽しかったね』と笑い合って。

ましろとあげはに至っては、新しく出来た思い出を。

愛おしそうに噛み締めていた。

 

「――――」

 

その日の夜。

ふわっと浮き上がる様に、ソラは目を覚ました。

セツコ宅の宿泊部屋と間違えそうになって、虹ヶ丘邸の自室であることを思い出す。

寝ぼけ頭で視線を下にやると、穏やかに寝息を立てるましろとエルの姿があって。

エルのご所望で一緒に寝ることになったのだというのも、続けて思い出した。

 

(二人とも、思い出を取り戻せて嬉しそうだったな)

 

眠るましろの前髪に触れるソラ。

脳裏に浮かぶのは、仲良くなったきっかけを、はっきりと思い出せて安堵した。

ましろとあげはの姿。

 

「んぅ~・・・・」

「っ・・・・」

 

と、間のエルが唸り声を上げた。

寄り過ぎたことを自覚し、苦しかったかと慌てて身を離せば。

何事もなかった様にむにゃむにゃと寝息を立てるエル。

どうやら、寝言未満の声を出しただけらしい。

 

「ふふっ・・・・」

 

もっちもちなほっぺを、指で撫でてやって。

ソラは改めて、二人を見やる。

――――言うまでもなく守らなければならない命と。

『生きていていい』と言ってくれる、愛しい人。

 

(大好きだなぁ)

 

目を閉じれば、すぐに思い出せる。

鍛錬漬けで、決して『優しい』とは言えない手を。

『大好き』と言いながら触れてくれる、二人の笑顔。

大切で、大好きで、守りたくて。

その為なら、なんでも出来て。

 

「・・・・」

 

自分の左頬に触れる。

発現させてしまった『それ』からは、逃れられない。

 

(・・・・それでもいい)

 

どうせ。

そもそも許されない命なのだから。

だから、せめて。

 

(どうか、君達の未来が。輝きに満ちていますように)

 

静かに祈りながら、微睡みに目を閉じる。

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