ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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偽物、VSミノトン~リベンジ~

猛撃が爆ぜる、紫電が奔る。

地面が割れて、瓦礫が砕ける。

斬撃が飛ぶ、打撃が唸る。

切り裂く音、殴る音。

砂利が飛び散って、空気が揺れる。

 

「――――ぬらぁっ!!」

「ハァッ!!」

 

拳と刃が、ぶつかる。

何度目か分からない衝突音。

そのまま押し込まれて叩き込まれるミノトンの拳を。

前転を応用して避けたスカイは。

ブレイクダンスの要領で、ぎゅるりと身を回転させて。

回し蹴りを放った。

 

「グヌゥ・・・・!」

「セッ!」

 

そこから起き上がり、振り向きざまに一閃。

ミノトンはそれを凌ぐと、勢いを利用して後退。

立て直すスカイから、一度距離を取る。

 

「オオオッ!!」

「ッ・・・・!?」

 

再び読み合いになると思いきや、ミノトンはその場で六本腕を思い切り突き出した。

すると、空気が破裂する音がして、スカイは後ろに吹き飛んだ。

 

「ッ空気か・・・・!」

「察しが良いな!!」

 

相手の勘の良さに笑みを浮かべながら、今度は腕をバラバラに突き出していく。

大砲の様だった先ほどとは違い、マシンガンにも負けない連撃。

次々地面が爆ぜていく中を、スカイは駆け抜けていく。

 

「くっ・・・・!」

 

直撃は受けていない。

しかし、絶え間ない砲弾の雨は、容赦なくスカイを追いかけて来る。

 

(何より厄介なのは・・・・)

「ッ漆ノ型!!火雷神!!」

 

ミノトンのタフさは、十分すぎるくらいに知っている。

故にスカイは、打って出るが。

 

「ッそこか!」

 

背後からの急襲は、いとも簡単に受け止められてしまった。

 

(両側の顔!!あれがレーダーの役割を果たして、攻撃を読まれる!!)

 

今のスカイは、バーストモードと『痣』で強化されている状態。

素早さに定評のある『雷の呼吸』で動き回れば、まさしく稲光の様な速度で移動出来る。

常人に捉えられるのは、蒼い残像のみだろう。

だがミノトンもまた、増えた腕と顔を存分に活用して対応しているのだった。

 

「受けるが良い、我が新しき技ッ!!」

 

高速で動き回るスカイを捕捉し続けながら、ミノトンは再び腕を引き絞り。

 

業手(ごうしゅ)咆流星弾(ほりゅうせいだん)ッ!!」

 

新技の名を、高らかに叫ぶ。

刹那、ミノトンの周囲で夥しい破裂音が鳴り響き。

発射された空気の砲弾が、スカイに降り注ぐ。

 

「玖ノ型 水流飛沫!」

 

時折掠めながら、隙間を縫うようにスカイは疾走。

 

「破魔ッ!」

 

ミノトンの懐に潜り込むと、

 

「竜王・・・・!」

 

一撃を叩き込もうとして。

 

「――――業手 頑陣(がんじん)ッ!!」

 

器用に組まれた六本腕が展開した、障壁に阻まれた。

 

「伊達に増えたわけではない!!」

「ッしま・・・・!」

 

刀身を、引っ掴まれる。

それだけにとどまらず、もう一本の腕が首根っこを掴んできて。

 

「ふんぬらッ!!」

「わっ!?」

 

思いっきり、投げ飛ばされた。

スカイはすぐに身を翻して、立て直そうとするものの。

 

「逃さんッ!!咆流星大砲(ほりゅうすたいほう)ッ!!」

「――――ッ!!」

 

身動きの取れない空中にいるところを、見逃してもらえるはずもなく。

再びの六本同時に放つ『砲撃』が、容赦なく放たれた。

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

「――――は」

 

びょう、と。

息を吸い込む。

・・・・気絶してたらしいな。

派手に吹っ飛ばされた・・・・ここはどこだ?

全身が痛ぇ・・・・!!

 

「は、は、ごほっ・・・・っづ・・・・!」

 

痛みに耐えながら起き上がると、周囲の景色が一変していた。

右を見ても竹、左を見ても竹。

・・・・この辺り、竹林なんてあったんだな。

 

「は、は、は、は・・・・!」

 

呼吸を整えて、何とか痛みに慣れて。

 

「はあああぁーっ・・・・!」

 

深く、深く。

息を吐き出したところで。

 

「剣は・・・・?」

 

手に何も持っていないことに気が付く。

恐らくミノトンは、とっくにこっちを捕捉して向かっているだろう。

 

(今無手でいるのはまずい・・・・!)

 

焦りながら、辺りを見渡していると。

 

「――――スカイ!」

「ップリズム?」

 

仲間達が先行させたんだろうか。

時折竹を押しのけながら、プリズムがこちらに駆け付けてきている。

そして、ちょうど私達の中間地点に。

バーストカリバーが落ちているのを見つけた。

 

「今行きます!」

 

プリズムも気が付いてくれて、途中で拾い上げるのが見えた。

 

「――――ここにいたかッ!!!」

 

と、同時に。

ミノトンがやってきてしまった。

 

「ックソ!」

 

正直、バーストモードの反動がしんどいけれど。

そんな甘ったれたことを言ってられないな・・・・!

 

「っ・・・・!」

 

プリズムも急いでくれているけど、間に合いそうにない。

幸いにもここは竹林。

選り好みの暇はないし、その為の鍛錬だ!!

ちょうど近くに落ちていた竹を二本、蹴り上げる。

 

「スカイ!!」

 

同じタイミングで、プリズムがバーストカリバーを投げてくれたのが見えたので。

一本は普通に、もう一本は口に咥えちゃう。

そして飛んできたバーストカリバーを、空いた片手でキャッチした。

 

「ほう、三刀か!!是非も無し!!」

 

対するミノトンも、ノリノリで六本腕を構える。

・・・・ぶっちゃけ。

この戦いに負けたところで、エルちゃんが攫われることはない。

だけど、だからって『負けてもいいや』だなんて考えは、ハナからない。

 

「参る!」

「ッ・・・・!」

 

口に咥えてて喋れないので、切っ先を突き付けて応じた。

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

ミノトンの拳を、スカイの得物が受け止める。

スカイの斬撃を、ミノトンの拳が迎え撃つ。

 

「わっ、わわ・・・・!」

 

打撃と斬撃があちこちに飛んで、駆けつけたプリズムの周囲にもいつくかが着弾。

足元の土と枯れ葉を巻き上げた。

 

(隙があるなら援護したいって、思ったけど・・・・!)

 

飛び散る腐葉土から顔を守りながら、苦い表情。

目の前の攻防は凄まじい速度と、凶暴な威力。

下手に手を出せば、こちらがダメージを受けてしまいそうな迫力。

 

「スカイ・・・・!」

 

見ていることしか出来ない自分が、情けなくて、悔しくて。

自然と、奥歯に力が籠った。

 

「業手 破壊殴刺(はかおうし)!!」

――――鬼斬りッ!!

 

唸る打撃が、スカイに迫る。

スカイは三刀を駆使して受け止めると、反撃を繰り出す。

鬼が無造作に繰り出した様な斬撃が、ミノトンに襲い掛かる。

同じく防いだミノトンだったが、明らかに上がった威力に顔をしかめた。

 

――――虎狩りッ!!

「武威 狩毘(かるび)六連ッ!!」

 

虎の猛撃に等しい斬撃を、文字通り六倍になったミノトンの攻撃が迎撃する。

スカイの剣は、ミノトンの手指にいくつか切り傷を付けた。

 

――――爪竜連牙斬ッ!!

「ぬうううううッ!」

 

そのままさらに踏み込んで、ミノトンの懐へ。

引場がそうとしてきた六本腕を、諸共に切りつける。

 

――――牛鬼幽爪ッ!!

「ぐ、ハハッ!やりおる!」

――――魔王地顎陣ッ!!

 

ガラ空いた胴体へ攻撃を叩き込むと、更に追撃を加えた。

 

「だが、舐めるなッ!!」

 

当然、ミノトンも負けていない。

腕三本でスカイの得物を抑え込むと、残りの三本を引き絞り。

 

「業手、咆流星弾(ほりゅうせいだん)ッ!!」

「――――ッ!!」

 

ドバン、と空気が破裂して。

スカイが吹っ飛ばされる。

 

「ふはははははっ!!良いぞっ!!実に良いぞっ!!キュアスカイ!!」

「ッこっちは笑いごとじゃないんだよ・・・・!!」

 

地面に叩きつけられた衝撃で、口の竹を吐き出してしまったスカイは。

悪態をつきながら、立ち上がって。

残った二刀を構えて、迫るミノトンを迎え撃つ。

 

「業手 怒牙素(あんがす)!!」

「ッ弐ノ型 稲玉・双閃!!」

 

燃え盛る拳と、紫電奔る刃が激突。

再三の衝撃波が竹林を揺らし、笹が吹雪の様に落ちていった。

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・・!」

 

――――先んじて、バーストモードを使ったからだろう。

スカイの顔には疲労の色が濃く出ており、呼吸も荒い。

はっきり言って、ここまで戦えたことは奇跡だろう。

それでも戦意が衰えないのは、賞賛に値すると。

ミノトンは目を細める。

 

「・・・・何故(なにゆえ)か」

 

このまま押しきってもいいだろう。

しかし、ミノトンの信条が許さない。

故に彼は口火を切る。

 

「何故、そこまで勝利を求める。貴様はあくまで『ヒーロー』、武人とは違うのではなかったのか」

 

問いかけに対し、しばし黙し続けたスカイは。

やがて呼吸を落ち着けて、ミノトンを見据える。

 

「――――こんな、ところで」

 

刹那。

津波のように押し寄せたのは、闘気。

 

「こんなところで、負ける様なヤツにッ!!守りたいものを守れるわけが、ないだろうッ!!」

「・・・・ハハ、それもそうか!!」

 

武人ではない、目指すのは高みではない。

しかし、同じ手段を用いている『尊敬すべき強者』を前に。

ミノトンは獰猛に破顔する。

 

「しかして、我とて矜持はある!次で終いにしようぞッ!!」

「ッ・・・・!」

 

負けず劣らずの闘気に、スカイの顔が引き締まる。

気が付けば、降り注いでいた笹の葉も残りわずかだ。

互いの視界に、一つ、二つと横切るのみ。

――――満ちる戦意が、肌を刺す。

両者の視線に映るのは、敵只一人。

黙して、睨んで、伺って。

 

「――――ッ」

「――――」

 

笹の葉一枚。

やけにゆっくりと、地面に落ちた。

 

「ッ焔業乱舞!!」

「翔破ッ、裂光閃ッ!!」

 

弾かれたように飛び出す。

スカイ、ミノトン。

それぞれの全力が、竹林をなぎ倒す。

 

「きゃああああああッ!!」

 

戦いを見守っていたプリズムが、余波に悲鳴を上げる中。

土煙の向こうで、蒼炎が灯って。

 

「――――閃けッ!鮮烈なる刃ッ!」

 

土煙を振り払って、スカイが飛び掛かる。

 

「無限の闇を鋭く切り裂き、無限の希望を切り拓くッ!!」

「ヌウウウッ!業手 頑陣ッ!!」

 

目にもとまらぬ速さで、ミノトンに浴びせられる斬撃。

彼が展開した防御の陣も、諸共に叩き切っていく。

 

「これが、私のッ!!」

 

反撃したいミノトンにも、戦いを見守るプリズムにも。

捉えられるのは青い残像のみ。

 

「――――漸毅(ざんこう)ッ!!」

「――――見事!」

 

もはや打てる手はないと悟ったミノトンは。

ただただ賞賛を口にして。

 

「―――狼影陣(ろうえいじん)ッ!!!」

 

最後の一閃を、受け入れた。

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

「が、は・・・・!」

 

――――前が見えねぇ。

辛うじて地面に倒れたのは分かるんだけど・・・・。

ああ、クソ。

さすがに無茶しすぎた・・・・!

 

「スカイ!!」

 

プリズムの声と、駆け寄る足音が聞こえる。

応えたくても、応えられない・・・・。

 

「スカイ、スカイ・・・・ッソラさん!!」

 

・・・・ごめん。

ごめん。

また、心配かけてるね。

 

「今、あげはちゃん連れてきますから!待ってて!」

 

嗚呼、だから。

どうか。

泣かないで・・・・。




ミノトンの技名は、我ながらいいネーミングだなと(笑)
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