ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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7/5の予言。
結局何も起こりませんでしたね(笑)


偽物、大失態

――――クルニクルンの遺跡で別れた後。

アンダーグ帝国に戻ろうにも戻れなくなったミノトンは。

スカイランドでの鍛錬行脚に繰り出した。

基本のトレーニングは欠かさず。

それでいて、プリキュア達に在って、自分には無いものを見つける為に。

猛獣を中心とした、様々な強敵を相手にして。

時には現地の人と交流しながら。

各地を転々と廻ったミノトンが、最終的に辿り着いたのが。

この『晴天の郷』であった。

――――300年前までは、『悪鬼村』と呼ばれていた晴天の郷。

けんかっ早い乱暴者として遠ざけられていたガオニ達が変わったのは、流れ着いた女傑『ターシャ・ケンノーデ』が。

自らが拓いた流派『晴天流』をもたらしてから。

よそ者である彼女を受け入れたから、『乱暴者』達は『武人』へと変化して、その価値観を広げることが出来た。

それまで疎んじられていたガオニ達は、頼れる存在として見られるようになったのだ。

故に、他の場所では『怪人』として恐れられてしまったミノトンも、容易く受け入れてしまったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わっはー!おいしそー!」

 

ソラとミノトンの決闘に端を発した騒動は、無事に終息。

今は、駆けつけた面々への歓迎とお詫びを兼ねた、宴会の準備が行われていた。

 

「こん後直火で炙って、焼き目ば付くっとですよ」

「特製の味噌だれ塗って、青葉に挟んで食べてみんしゃい。『キャーン!』飛んで行きますけん!」

「楽しみですー!」

 

朴の葉に似た大きな葉に包まれて焼かれる、大きな肉の塊。

歓声を上げるあげはに、村の女性達がにこにこ話しかけていた。

 

「――――まさか、行商人までグルだったなんて」

「ああ、関わった人々が多すぎる・・・・」

 

一方、聴取を終えたシャララとブリュンヒルデは、頭を抱えていた。

晴天流道場の師範や門下生達、そして郷の住民までは予想できたが。

まさか、事態の発端になった行商人達も彼らに協力していたとは。

彼らはいつも通りに郷を訪れた際、早まった子ども達に襲撃されてしまったらしい。

その後慌てて出て来た大人達に事情を説明され、ならばこちらも一枚かませてくれと。

名産品である竹細工を交換条件に、郷と道場の人々に協力したらしい。

 

「処遇を考えなければなりませんが・・・・どうしたものか・・・・」

 

ぎゅ、と眉間にしわを寄せて悩むブリュンヒルデを見守って。

シャララは、『仕方ない』と笑みを零す。

 

「――――まあ、住民たちに悪意がないことは分かったのだし、一度置いても良いんじゃないかな」

「シャララ様、ですが・・・・」

「私もお前も、今は考えも行き詰まってしまっている。ここで結論を急く方が良くない」

 

シャララ自身も、考えすぎて頭が濁っている自覚がある。

ならば、姫君といえど年端もゆかぬブリュンヒルデは、もっと迷っているだろう。

 

「事後処理は残っているが、しばし休息しても問題はあるまい。私もいる・・・・ジークも、目くじらを立てんよ」

「・・・・はい」

 

――――王太子の娘から。

第一王位継承者になってしまった、姪の様にも思っている少女。

この子に尊敬の目を向けられる者として、自分は正しく在れているだろうかと。

シャララは目を細めていると。

 

「た、隊長!!プリンセス・ブリュンヒルデ!!」

「失礼致します!!」

「アラシ、どうした?」

「ヨブも何事ですか?」

 

アラシとヨブ。

それぞれの部下が、切羽詰まった様子で走って来た。

ただ事ではない雰囲気に、努めて冷静に話しかけるシャララとブリュンヒルデ。

その甲斐あってか、息を整えたアラシ達は夜空に指を向けて。

 

「一大事ですぞ!!」

「ハレバレジュエルが!!」

「――――何?」

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

「――――?」

 

――――意識が浮上する。

和風の部屋に敷布団という、ものすごく懐かしさを感じる内装の中で。

すっかり痛みが引いた体を起こす。

・・・・なんか、すっごく軽いな。

気絶する前の疲労が嘘みたいだ。

 

「・・・・どこだろう」

 

辺りを見渡しながら、耳を澄ませると。

なんだか賑やかな声が聞こえる。

・・・・ここにいても、埒が明かなさそうだ。

軽く柔軟してみたけれど、特に異常はない。

移動してみようと、まずは障子を開けた。

 

「――――ソラさん!?」

 

縁側の廊下に出ると、ちょうどましろさんがやって来る。

 

「ましろさん、ご無事でよかった」

「ソラさんこそ、目が覚めたんですね」

 

・・・・怪我は、なさそうだな。

よかった。

 

「すみません、またご心配をおかけしました」

「ホントですよ!もう、バーストモードは使わないでください!」

「努力、したいんですけどぉ・・・・」

 

いや、ましろさんの心配はもっともだ。

特にこういう大きな戦いの後には、絶対にぶっ倒れてるし。

その度にみんなに心労をかけてしまうのは、こちらとしても本望ではない。

だけど、メイテイやスキアヘッドといった強敵達がいる現状で、出し惜しみ出来るかどうかと言えば・・・・。

ぬううううん・・・・あちらを立てればこちらが立たぬ・・・・!

これは、久々にがっつりするべきか?鍛錬・・・・。

ちょうど晴天流の聖地(メッカ)にいるわけだしさぁ・・・・。

 

「・・・・そんなに頼りないですか」

「えっ?」

 

聞こえた呟きに、我に返る。

ましろさんが、目の前で泣きそうな顔をしている。

 

「わたし達、そんなに頼りないですか?」

「はっ、まっ!?」

「魂を削るって、何をしたんですか?命を削ったってことなんですか?」

 

ぽろぽろと涙が零れ始めた涙に、狼狽えている間に。

さらに重ねられた問いかけに、情けなく硬直してしまう。

 

「どうして・・・・独りで抱えちゃうんですかッ・・・・!?」

 

・・・・多分。

ミノトンだな。

あの問答の場に、すでにいたんだ。

だから今、こうやって泣かせてしまっているわけで。

嗚呼、それよりも。

今は、まず。

 

「――――ましろさんの所為じゃないです」

 

塗れる頬を拭ってやりながら。

とにかく、それだけを断言する。

そうだ。

『全集中の呼吸』だけじゃなくて、他の剣術を修めたのだって。

出来るだけ『痣』を避ける為だった。

・・・・今となっては、無意味になってしまったけれど。

 

「私だって、そのつもりはなかったんですけど・・・・あの時のメイテイは、それが『甘え』になるほどの強さでした」

 

マジェスティが初めて現れたあの日。

本気を出したメイテイに、私は手も足も出なかった。

それでも負けるわけにはいかなくて、みんなを守りたくて。

死に物狂いで立ち向かっていたら、『痣』が浮かんでいた。

 

「だから、その・・・・情けない話、有り体に言えば『うっかり』なんです。私一人の、どうしようもなく馬鹿らしい失態で・・・・余計に、言えなくて・・・・ははっ」

 

抑えられない自嘲が、乾いた笑い声になって零れる。

 

「・・・・ごめんなさい。間違いなく『余計なもの』で『いらないもの』ですから・・・・背負わせたくなかったんです」

 

――――吐き気がする。

なんとか出力した言葉は、全て言い訳だ。

この状況を切り抜けるための、浅ましいおべっかだ。

その証拠に、ほら。

 

「・・・・余計でも、いらなくもないです」

 

ましろさんの表情は、何一つ晴れることはない。

 

「ソラさんは、ソラさんしかいないんです。代わりなんて、どこにもいないんです」

「ましろさん・・・・」

「自分のことを、そんな風に言わないでください!ちゃんと、大切にしてください・・・・!」

 

・・・・困った。

どうしよう。

どうしたら、この子の涙が止まるんだろう。

何もしないでいられなかったので、とにかく涙を拭おうと手を伸ばすと。

ちょうどそのタイミングで、ましろさんが顔を上げて。

 

「わたしの大切な人を蔑ろにするなんて、例えあなた自身でも許さない!!」

 

――――何も。

何も、出来なかったし。

何も、言えなかった。

理解している、自分の仕出かしたことは。

理解している、ましろさんが圧倒的に正しいのは。

理解している、どうしようもなく自分のツケであるのは。

 

(そのはず、なのに)

 

そのはずなのに。

どうしてもその願いを。

『自分を大切にしてほしい』という願いを。

受け入れられない自分がいた。

 

「――――なんで」

 

名前も分からない激情が、口を突いて出る。

 

「なんで、そんなことを言うの」

「ソラさん・・・・?」

 

零してしまってから、気が付いた。

 

「ずっと、ずっと、頑張って来たのに」

 

嗚呼、最悪だ。

私は、今。

癇癪を起こしている。

 

「怖いのも、痛いのも、面倒なのも、ずっと我慢してきたのに・・・・なんで、そんなこと言うの」

 

違う、違う、違う。

こんなこと言うべきじゃない。

こんなことは間違っている。

こんなの、ヒーローがやることじゃない。

 

「そんな、今更やめろだなんて」

 

やめろ。

今すぐやめろ。

 

「・・・・私のこれまでは何だったっていうの」

 

口を閉ざせ、舌を噛み切れ。

それ以上、何もしゃべるな・・・・!!

 

「私のこれまでを、他でもない貴女が否定するの・・・・!?」

 

こんなもの。

ましろさんがぶつけられる謂れは、ないだろうが!!

 

「――――ひゅっ」

 

喉が、鳴る。

やっと制御が元に戻って、口元を抑えるけれど。

もう、後の祭りだった。

 

「そら、さん」

 

呆然と。

ましろさんが、目を見開いている。

瞳を揺らしているのは、色濃く出ている『怯え』だ。

・・・・馬鹿野郎。

馬鹿野郎。

馬鹿野郎!!

なんてことをしたんだ!!

 

「ま、まし・・・・」

 

違う、そうじゃない。

貴女は何一つ悪くない。

それを伝えようと、手を伸ばそうとした時だった。

 

「――――ソラ!!ましろ!!大変だ!!」

「・・・・どうしたんですか?ベリィベリーさん」

 

――――最悪のタイミングで現れたのに。

安堵を覚えている自分を、憎悪しながら。

泡を食った様子のベリィベリーさんへ、努めて穏やかに話しかける。

 

「ついさっき、ハレバレジュエルの光が消えた!!」

「なんですって?」

 

思わず指さされた方を見るけど、ダメだ。

ちょうど庭の木で隠れてしまっている。

 

「とにかく隊長達のところへ!ましろも!」

「ぁ、ぅ、うん!」

 

ベリィベリーさんが、状況に水を差したお陰か。

なんとか落ち着いたましろさんと一緒に。

仲間達の下へ駆けた。




書いてる本人もしんどかったです・・・・。

おまけ
晴天の竹細工
晴天の郷の名産品。
質の良い竹で出来た籠や灯籠は、インテリアとしても人気が高い。
出来立ては香り高く青々と、使い込めば黄色がかって何とも言えない味を出す。
特に「ケトリ翁」という人物が作ったものは、最低で五桁の金額で取引される。
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