追記∶タイトル修正しました。
こっちが合ってるな……。
「ここで、風に乗って上へ!」
「右にうねっている気流があります!流されると島から遠ざかってしまうので、出来るだけ距離を取ってください!」
「下に沈む風に乗って、すぐに上昇気流に乗ってください!」
「あそこの無風地帯に飛び込んで、左へ!」
「あとは目の前の風に乗れば・・・・もうすぐです!」
「ふう、ふう・・・・!」
「さすがに疲れたわぁ・・・・!」
「お
い、一生分のジェットコースターに乗った気分・・・・!
あの乱気流を乗り越えて、無事に浮島へ上陸した私達。
ハツさん達も、辛そうに呼吸している。
本当にお疲れ様でした・・・・!
「さすがにちょいと休ませてもらいますぅ・・・・」
「帰りもちゃんと送るから・・・・ワイらはここで・・・・!」
「はい、ゆっくりお休みください」
「ありがとうございましたー!」
「ました!」
お
目の前にひろがるまさしく『ジャングル』は鬱蒼としていて、先が全く見通せない。
・・・・暗がりから飛び掛かられたら、怖いな。
今からでも警戒しておこうと、周囲を探った。
――――何かの、気配を感じた。
「ッ誰です!?」
ミラージュペンから喚び出した剣に手をかけ、声を張る。
風にそよぐジャングルの中を、睨みつける。
・・・・離れたか?
「何かいたの?」
「ええ、確かに気配を・・・・もう遠ざかりましたが」
「警戒は続けて損はなさそうだな」
とにもかくにも、進まないことには始まらない。
気配の主について警戒しつつ、ジャングルへ足を踏み入れる。
「すごい生い茂ってますね・・・・」
「だねぇ、虫よけ持ってくればよかった」
「確かに・・・・エルちゃんが刺されたら大変だよ」
ましろさんのぼやきには、同意しかない。
虫刺されから感染する病気とか、この世界にもあるからね・・・・。
と、思っていたら。
「僕、持ってきてますよ!」
「ホント!?」
ツバサくんが持ってきてくれていた。
ィヨッ!出来るナイト!
「プリンセス用のだけですが・・・・『こんなこともあろうかと』、実際に言ってみるとワクワクしますね」
「さっすが少年!」
いやいや、エルちゃん用のだけでも用意していたのはファインプレーよ。
そもそもこの任務自体、急に決まったものだからね。
全員分用意出来ていないのは、『しょうがない』と言う他ない。
「ハレバレジュエルは・・・・島の中心か」
「はい、このまま直進していれば着くはずです」
エルちゃんが虫よけを塗ってもらっている間。
私とベリィベリーさんは、剣と雷で道の確保。
・・・・すごいな。
いや、ロープと見間違えそうなツタもそうだけど。
静電気よりちょっと大きいくらいの威力を保ったまま、次々ツタを焼き切ってる。
私も、あれくらい切れ味を調節出来るようにならないと。
(それにしても)
一方で、ちょっと気になることが。
「・・・・何者か、住んでいるのでしょうか?」
「さっきの気配か?」
「それもそうですが・・・・あまり、手入れしなくても先に進めそうですよね」
「ッ・・・・定期的に整えられている、ということか」
「おそらく」
・・・・それが友好的であれ、敵対的であれ。
彼らにとっての私達は、侵入者であることに変わりはない。
「みんなには?」
「・・・・共有しましょう、何が起こるかわかりませんから」
「分かった・・・・みんな!」
エルちゃんの虫よけも塗り終わった様だ。
こちらに合流してくるみんなへ、ベリィベリーさんが駆け寄っていく。
・・・・ましろさんと、目が合った。
そう認識できた瞬間に、さっと逸らされてしまう。
・・・・当然の反応だな。
あんなことがあったばかりなんだから。
(とはいえ、なんとかしないとな・・・・ずっとこの調子はさすがにへこむ・・・・)
重たくなった心を、ため息で減量して。
私も、みんなと合流した。
◆ ◆ ◆
「――――ましろん、ソラちゃんと何かあった?」
「ぁ・・・・」
ソラが前方のツタや藪を処理し、ベリィベリーが後方を警戒してくれている中。
声を潜めたあげはが、ましろに話しかけた。
ましろはしばし沈黙を保った後、言葉なく頷く。
「そっか・・・・聞いてもいい?」
よほど心配してくれているのだろう。
気づかわし気に問いを重ねるあげはへ、ましろはもう一度黙して考えた。
・・・・正直、自分で抱えきれる自信がない。
吐き出していいのなら、吐き出してしまいたい。
(――――だけど)
『だけど』と、躊躇してしまう根拠は。
昨晩のソラの様子だった。
『――――なんで、そんなこと言うの』
――――本当は、ずっと怖かったのだと。
ずっと痛くて、ずっと立ち止まりたかったと。
泣き出しそうな顔で、曝け出してくれた胸の内を。
果たして、言いふらしていいものかと。
優しさゆえに、ましろはためらってしまう。
何より。
吐露してしまった後の、ソラの様子。
苦しそうに喉元を押さえる様は、きっと。
これ以上、吐き出してしまわない為で。
(――――ソラさんはきっと、お墓まで持っていく覚悟で、黙っているつもりだった)
ましろはもちろんのこと、エルやあげは、ツバサにベリィベリー。
信頼していて、尊敬していて。
その幸せを、心から願ってやまない人達に。
大切にしている人達に。
何も、背負わせない為に。
(そんなの、こっちだって辛いし、悲しい・・・・でも)
でも、と。
ましろは、口元を噛み締める。
(ここで話しちゃうのって・・・・ソラさんの気持ちを、踏み躙ることになるらないかな?)
結局のところ。
一番の懸念はそれだった。
傷つきやすい愛しい人を、これ以上傷つけたくなかったから。
ましろは慎重に言葉を吟味していた。
(傷つけることに、ならないかな・・・・?)
「・・・・やっぱり、言えない?」
「ぁ・・・・ご、ごめん」
「いいって」
思ったよりも考え込んでしまっていたのか、あげはが申し訳なさそうに話しかけてくる。
「・・・・うん、今は話せないかな」
「そっか・・・・分かった・・・・とはいえ、話したくなったらいつでもいいよ!あげはお姉さんが、受け止めて進ぜよー!」
「あははっ・・・・うん、ありがとう」
沈黙を選んだことを、尊重してくれるあげはに。
ましろは静かに感謝して、改めて歩き出す。
◆ ◆ ◆
「ふぅ・・・・ふぅ・・・・」
「そろそろ休憩にしましょうか」
「さんせー・・・・結構広いよ、この島・・・・」
しばらくどんどん進んでいた私達だけど。
ましろさんを始め、何人か息が上がってきたので。
一度、小休止を入れることに。
「そういえば、いいものあるんだ!」
そんな中あげはさんが取り出したるは、まるっとした風呂敷包み。
なんだかおいしそうな匂いがする。
「じゃーん!晴天の郷の皆さんから、お弁当もらってるよー!」
「おおー!」
聞けば、あの後やるはずだった宴の料理を包んでもらったらしい。
風呂敷を解けば、人数分の料理が入っていた。
見た目だけなら、『ハンバーガーサイズの角煮まん』が近いだろうか。
メイン料理であるお肉の朴葉焼きを、サンチュに似た葉っぱで包んだものが。
さらに、真っ白に蒸された生地で挟んであった。
エルちゃんの分は、小さかったり、お肉が薄かったりする代わりに。
錦糸卵を入れてくれている心遣い。
ありがたい・・・・!
「せっかくだから、食事にするか」
「賛成です」
私の胃袋も、空腹を訴え始めている。
いつまで歩くか分からない以上、少しばかりお腹に入れておくことにした。
お昼も食べ終えて、少しの休憩を挟んでから。
再び歩き出す。
ハレバレジュエルがあるはずの塔は近づいてきている。
道は間違っていないらしい。
よかった・・・・。
「あれ?これって・・・・」
どんどん歩いている中。
ましろさんの声にふと足を止める。
振り向くと、足元のヤシに似た葉を拾い上げていて。
次の瞬間、びょう、と強風が吹く。
「うわっ!?」
「持っただけで、こんなに風が・・・・!?」
「『かぜゆりの葉』ですね、ハンモックにも使える丈夫な葉っぱです」
「そういえば、さっきも市場で見たかも!」
ツバサ君の言う通り、スカイランドでは簡易的な寝具にも使われる植物だ。
主に市場に併設されている、簡易宿泊所で見かけることが多い。
大きな葉っぱは扱いを気を付けないと、さっきの様に少しの動きで強風を起こしてしまう。
「えるも!えるもやる!」
「お、いいね!やってみようか!」
感心したましろさんが見つめるかぜゆりの葉に、テンションを上げたのはエルちゃんだ。
分かる分かる・・・・特に子供は興味津々になるよね・・・・。
かく言う私も、ちょっとだけときめいている・・・・。
具体的に言うなら、あれ。
たんぽぽの綿毛を見て、久しぶりに吹いて見たくなる『アレ』・・・・。
「気を付けてね」
「そーっと、そーっと」
「そぉーと、そぉーと」
あげはさんに手伝ってもらいながら、かぜゆりの葉を受け取ったエルちゃんは。
「えーい!」
と、渾身の力で振り回した。
もちろん赤ちゃんの『かわいいかわいいおてて』によるものなので、大人に比べればたかが知れているけど。
手にしているのは、何気なく持っただけで強風を起こすかぜゆりの葉。
何も起きないはずはなく。
っていうか、今まさに突風がこっちに迫って来てるぅー!!
「ウワーッ!?」
「すごい風!」
間一髪で半身ずらせば、私の『天魔・飛翔閃』や『風の呼吸』に勝るとも劣らない暴風が。
スレスレを駆け抜けて行く。
すっげ・・・・もろにうけてたら尻もちついてたかも・・・・。
なんて考えながら、なんとなくどこまで行くか見つめていると。
「・・・・ん?」
・・・・枝葉が文字通り吹き飛ばされたからか。
なんだか開けた空間が見える様な?
「あそこ、開けてないか?」
「ええ、広場に見えます」
どうやら私の見間違いというわけでもなさそうだ。
・・・・ハレバレジュエルの塔にも、近い様に思う。
「・・・・周囲は鬱蒼とした森、他に手掛かりも無し」
「行ってみる価値はありますね」
仲間達と頷き合って、見つけた場所へ進みだす。
「――――わぁ」
――――さて。
足を踏み入れたその場所は、やっぱり広場だった。
予想通り、ハレバレジュエルの塔も目の前。
・・・・何より。
明らかに人の手が加わっている。
「・・・・ッ」
・・・・こちらを見ているであろう存在を、刺激しないように気を付けながら。
手癖を装って、剣の柄を撫でた。
と、なんとなくましろさんに目が行く。
視線に気づかない彼女は、足元を凝視している。
「・・・・?」
私も倣って、視線を落とすと。
明らかに人間のそれではない、三つ指のでっかい足跡があった。
ご丁寧に、鋭い爪があるのが良く分かるビジュアルだ。
「ましろん?」
「ソラもどうした?足元なんか見て」
二人そろって同じことをしていたからか、仲間達から不思議そうに見られてしまっている。
「ぁ、あのね!」
ましろさんはこれを好機と捉えたらしく、足跡について話そうとしたみたいだけども。
「――――」
「えっ!?」
「ッ誰だ!?」
茂みが激しく揺れたと思ったら、大柄な影が五つ飛び出してくる。
ベリィベリーさんが反対側に立って構えてくれる中、私も剣を抜き放った。
――――見た目は三メートルほどだろうか。
地球・スカイランド、双方の平均的な成人男性より、一回り高い様に見える。
顔は犬のように長く、大きな目玉と口元の牙。
そして、立派な角が生えていた。
腕には、翼の名残の様な羽が揺れていて。
足は足跡から予想出来た通り、鋭い爪が生えた三本指。
蹴られたらひとたまりもないだろうな・・・・。
後ろを見る余裕はないけど、あげはさん、ましろさん、ツバサくんは。
エルちゃんを守る様に身構えていることだろう。
「――――何の用だ?」
睨み合いの最中。
私の正面にいた一人(一頭?)が口を開いた。
人語を介する、言葉が通じる?
あちらから感じ取れるのは、こちらと同じく警戒だ。
・・・・今すぐ飛び掛かってくる様子はなさそう?
「もしかして・・・・」
私が考えている間に、今度はツバサくんが口を開く。
「貴方達は、竜族ではありませんか?」
「・・・・だったら何だってんだ?」
彼らの正体に、気付いたらしいツバサくんに対し。
『竜族』と呼ばれた彼らは、剣呑な態度を崩さない。
・・・・何が起こっても大丈夫な様に。
油断なく身構えていたけれど。
「――――感激です!!」
――――どうやら、杞憂に終わりそうだ。
おまけ、ソラ以外の竜族との遭遇時のリアクション
ましろ→エルを庇う。
ツバサ→冷静に見極めようとしている。
あげは→エルを庇い、かつ、万が一の逃走ルートを考えている。
ベリィベリー→ソラが反応すると同時に反対側に陣取り、拳を握る。
エル→かわいくファイティングポーズ、負けないぞ!