ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

146 / 172
偽物、入眠

「お、おう・・・・」

 

目をキラッキラさせるツバサくんを前にして、すっかり勢いが削がれている様子の『彼ら』。

 

「じ、じゃあ、怖くないのか?」

「怖いだなんて!!」

 

恐る恐るの問いかけにも、声を弾ませて即答するツバサくん。

私が剣を納める傍らで、彼が語るには。

『竜族』とは、大昔に存在したとされる伝説の種族らしい。

今となっては、本などの記録にその存在が記されている程度で。

既に絶えてしまった、というのが通説だったらしいが。

 

「実際にお会いすることが出来て、とてもうれしいです!」

 

なお感激してやまないツバサくんに対し、竜族の皆さんは困惑顔。

・・・・『怖くないのか』と聞いてきたあたり。

かつての吸血人の様に、何か蟠りが出来てしまっているのかもしれない。

 

「あ、失礼しました。僕はプニバード族のツバサと言います」

 

ぽん、と。

鳥の姿に変身しながら、自己紹介するツバサくん。

 

「ハレバレジュエルの光が消えてしまったので、取り戻す為にこの島にやってきました!」

「は、ハレバレジュエル!?」

 

次いで、島にやって来た目的を話すと。

竜族は明らかに動揺した。

 

「今、分かり易く動揺したね?」

「ああ、手に取る様にとはこのことか」

「え、いやぁ、俺達は・・・・」

 

・・・・なんだろう。

悪い人達じゃないのはとっくに分かり切ってるんだけども。

なんか、こう。

触れてほしくなさそうな感じだ・・・・。

 

「みんな、夜飛べなくて困っているんです。何か知っていることがあれば、教えてください!」

 

ツバサ君なりに、誠意を示しているのだろう。

鳥姿のまま、彼らの足元に歩み寄ったツバサ君は。

小さな眼差しで、大きな竜族たちを。

真剣に見つめていた。

 

「スカイランドの人達を、助けたいんです。お願いします」

 

私も援護するべく、ツバサ君と一緒に頭を下げると。

 

「――――ある」

 

赤い鱗の方が、観念したように口を開いて。

 

「ここに」

 

丁寧に包まれた、ハレバレジュエルを見せてくれた。

 

「お、おい・・・・!」

「ジュエルを戻したいのは本心だろ?」

 

どうやらお仲間さんはもう少しだけ黙っていたかったみたいだけど、そのまま話してくれるようだ。

ありがとうございます・・・・!

 

「わぁ・・・・!」

「これが、ハレバレジュエル・・・・!」

「しかし、何故ここに?」

 

包みを解いて、輝きも見せてくれた赤い鱗の竜族は。

ベリィベリーさんが代表して口にした疑問に、とつとつ訳を話してくれた。

――――そもそもハレバレジュエルとは。

竜族が先祖代々守って来てくれたものらしい。

あの夜。

ジュエルの輝きがいまいちに見えたそうなので、張り切って磨いていたそうな。

・・・・って。

 

「エッ!?ジュエルは、曇りなく永遠に輝くのでは!?」

 

うんうん!

私も寺子屋でそう習ったよ!?

そう思いながら、ツバサ君に頷くと。

 

「「そんな訳ないだろ」」

「アッ、ッス・・・・」

 

至極真っ当なツッコミを入れられてしまった・・・・。

し、衝撃の事実が明かされたけど、今は重要じゃないから。

おいといて・・・・!

と、とにかく!

最高の輝きにしようと、作業に集中していた竜族さん。

すると、足場が突如崩れてしまったらしい。

幸い竜族さんにケガはなく、ハレバレジュエルも無事だったそうだけども。

結局元に戻せないまま、今に至るそうな。

 

「てっぺん近くの階段が崩れてしまっては、俺達にはどうしようもない・・・・」

 

なるほど・・・・。

そんな事情があったんだな・・・・。

 

「遊覧鳥さんに乗せてもらえば、元の場所に戻せないかな?」

「そうだな、ハツさん達に聞いてみよう」

「それは助かる!」

 

ましろさんの提案に、一度は喜色満面になった竜族さんだけど。

 

「竜族がハレバレジュエルを守ってくれてたって知ったら、スカイランドのみんなも協力してくれるよ!」

 

あげはさんの言葉には、

 

「ダメだ!!誰にも言うな!!」

 

思わず、大声を上げてしまっていた。

 

「・・・・俺達のことは、秘密にしておいてくれ」

 

突然怒鳴ってしまった負い目からか、続く言葉は抑えめだったけど。

それでも、激情がにじみ出てしまっていた。

 

「どうして・・・・?」

「・・・・スカイランドのみんなが、怖がってしまうからだ」

 

呆然と聞くましろさんに、竜族さんは再び話してくれる。

かつて彼らのご先祖様は、その容姿から怖がられてしまっていたそうだ。

共存しようとしたけど、結局叶わず。

安息の地を求めて、逃げるようにやって来たのが。

この乱気流に囲まれた島だった、ということだ。

・・・・一度は迫害されてしまった彼らだけども。

塔の上にハレバレジュエルを置き、スカイランドのみんなの為にその輝きで導き続けた。

 

「辛い目に遭わせてしまったのに、どうして・・・・?」

「さあ?それが竜族の伝統だからな・・・・」

 

思わず零してしまうと、そんな諦めに似た返事が返って来た。

 

「とにかく、また人々の前に姿を見せれば、怖がられてしまう・・・・」

「そんなこと・・・・」

「そもそもだ、代々籠り続けて、俺達は羽が退化してしまった・・・・もう空は飛べんし、この島から出ることは出来ない・・・・」

 

・・・・もう、かつてのスカイランドとは違うと。

ツバサ君は伝えたかったようだけども。

竜族のとどまり続けたい決意が固いと知って、それ以上何も言えなくなってしまった様だった。

――――だけど。

 

「人族にとって、竜族も吸血鬼(ヴァンパイア)も同じさ・・・・」

 

その、言葉に。

私達は、一筋の光を見つける。

吸血鬼(ヴァンパイア)吸血人(ヴァンピール)の古い呼び名。

ということは、彼らのご先祖がここに来たのは、500年以上前ということになる。

 

「ッそれは――――!」

 

ツバサ君も、そこに突破口を見出したらしい。

彼らを説得しようと、身を乗り出した時だった。

 

「――――アンレマッ、竜族じゃないの」

 

ふわりと漂った、酒の臭いに。

私は、竜族以上の警戒を以て剣を抜く。

睨んだ先にいたのは、やっぱり。

 

「メイテイ!」

「やっほー!」

 

相変わらず千鳥足な奴は、しかしてどこか違う雰囲気でいて。

 

「早速だけど・・・・ラッシャイ!アンダーグエナジー!」

「――――シュランボーグ!!」

 

違和感を覚える中、目の前でシュランボーグが召喚される。

キノコとハエトリソウ(に似た植物)を媒体にして生み出されたそいつの横で。

メイテイは得物をすらりと抜き放って、

 

「――――起きろ、常夜丸」

「――――ッ!!」

 

あの日も見せた、解放状態で。

私に斬りかかって来た。

・・・・重い、速い!!

やっぱりあの時は本気じゃなかったか!!

 

「やーね、俺もエライさんに怒られたからね!」

「が・・・・!」

「ソラさん!」

 

蹴り飛ばされた先で、なんとか着地して。

メイテイを見据える。

 

「――――ちょっと本気でいくわ」

「ッひろがるチェンジ!!」

 

粟立つ肌と、すくむ足を叱咤して。

私達は、変身した。

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

「こっちは私達がやる!プリズムはスカイを!」

「分かった!」

 

無数に伸ばされるツタを掻い潜り、プリズムはスカイの下へ駆けつけた。

 

「――――ハッハハー!!」

「・・・・ッ!」

 

いつかも見た、鬼の様な姿になったメイテイと。

目にもとまらぬ攻防を繰り広げるスカイ。

斬撃が当たり前に木々を薙ぎ倒し、ちぎれたツタや木の葉が豪雨の様に降り注ぐ。

 

「そりゃッ!」

「・・・・ぁ!」

 

黒い刃が、とうとうスカイを捉えかけたところで。

 

「――――ハァッ!!」

「オット!」

 

プリズムは、光弾を放った。

その好機を逃さず、スカイは一閃。

メイテイの腹を蹴り飛ばすと、更に一閃叩き込んだ。

 

「っと・・・・やるじゃん!」

 

ヘラっと笑ったメイテイは、お返しとばかりに剣を振り上げ。

 

「どっせい!!」

「破魔・竜王刃!」

「プリズムショット!」

 

地面を叩き、衝撃波を放った。

スカイは即座に技を打ち返して迎撃。

プリズムもそれを隠れ蓑にメイテイの側面に回ると、必殺技を放った。

 

「そーっれ!!」

 

メイテイもまた、手始めにスカイの反撃を更に叩き切ると。

ついでとばかりにプリズムショットを両断。

 

「ップリズム!こっちはいいから、マジェスティ達を――――」

 

相手の本気度を目の当たりにしたスカイは、プリズムだけでも遠ざけようとする。

それは、シュランボーグを早急に何とかするべしと判断したのか。

はたまた別の要因か。

 

「一人でまともに戦えてない人は黙ってて!!」

「エエッ!?」

 

何にせよ、プリズムが拒否するのに変わりはない。

 

「オヤオヤ喧嘩ァ?ダメだよォ、仲良くしなきゃ!」

 

もちろんメイテイも、その隙を見逃すはずもなく。

 

――――泥酔(でいすい)多重死界(たじゅうしかい)

「っこれは・・・・!?」

「分身!?」

 

二人の周囲を、メイテイの分身が取り囲む。

 

「さてさて」

「どれがモノホンか」

「わっかるっかなー?」

「偽物は切られてもダイジョブだけど」

「モノホンは当然アウトだから」

「頑張って探して、ネッ♡」

 

まず斬りかかって来たメイテイ達を、交差する様に避けるスカイとプリズム。

片や一閃を、片や光弾を放って牽制しながら。

背後を取られないように立ち回る。

 

 

 

 

一方その頃。

 

 

 

 

「――――大変!スカイとプリズムが!」

「分かってるけどこっちも大変なんだよー!!」

「シュランボーグ!!」

 

スカイとプリズムが気になりつつも、シュランボーグを前に苦戦していたエクリプス達。

シュランボーグ自体は、地面に固定されているタイプなのか動かない。

動かないが、代わりに攻撃がこれでもかという程に激しい。

 

「うわぁーっ!!」

「こ、ここまでなのか・・・・!?」

「助けてくれ、ご先祖様・・・・!!」

 

お陰で竜族の避難もままならず、防戦一方を余儀なくされている。

 

「せめて、あのツタをどうにかしないと・・・・!」

「ツタ・・・・なら切っちゃえばいいよね!」

 

攻撃を掻い潜ったマジェスティは、シュランボーグの懐へ飛び込むと。

 

「えーい!!」

 

ぐるりと体を回転させて、斬撃を放ったが。

 

「シュランボーッグ!!」

「わわわッ!!」

 

地面から、新たなツタが津波のように溢れ出して。

マジェスティを捕らえようとして。

 

「下がれ!!戯けッ!!」

 

駆けつけたエクリプスに、首根っこを引っ掴まれて回避した。

ツタの津波はなおも追いかけて来るが、雷撃によって爆ぜ飛んだ。

 

「ッ無暗に突っ込んでは危険です!」

「ごめんなさい!ありがとう!」

 

一度遠慮のない言葉で諫めた罪悪感から、改めて丁寧に戒めると。

マジェスティは気にした様子もなく、素直に頷いた。

 

「地面からも出て来るなんて厄介すぎ!」

「何とかしないと、竜族達も危険です!」

 

怯え切った竜族達に目をやり、状況の打開を求めようとした。

その時だった。

 

「うわわわわッ!?」

「な、なんだ!?」

 

竜族諸共、四人を取り囲む様に。

地面からツタが飛び出してくる。

 

「くそ、こんなにツタを操れるとは・・・・!」

 

すっかり壁の様になったてっぺんから、ハエトリソウの頭が覗き込んできた。

 

「ヤバい、捕まる!!」

「っみなさん!こっちに!」

「わ、分かった!!」

 

ご丁寧にガチガチと牙を鳴らす様を見せつけられ、焦るバタフライ。

それを目の当たりにしたウィングは、竜族達を近くに呼び寄せる。

 

「エクリプス!!今度はいい!?いいよね!?」

「ええ、一緒に!!」

 

一方のマジェスティは、先ほど諫められたことも有り。

エクリプスに確認しながら剣を構えた。

対する彼女も、両腕を激しくスパークさせ。

まずは共に、目の前の壁を破壊せんとするが。

 

「――――シュランボーグ!!!」

「なっ!」

「えっ!?」

 

飛び出した矢先、待ってましたとばかりに。

ハエトリソウが地面をぶち破って来て。

ばくん、と。

頬張ってしまった。

 

「プリンセス!!」

「エクリプス!!」

 

二人を案じたバタフライとウィングの足元にも。

まるで落とし穴の様にハエトリソウが現れて、同じように頬張ってしまう。

 

「ひぃーッ!」

「お、俺はおいしくないぞー!!」

「ご先祖様ーッ!」

 

聞こえた悲鳴から、竜族も同じ目に遭っている様だ。

 

「――――この!」

「出してよー!!」

 

ハエトリソウの中。

幸い無事だったエクリプスやマジェスティは、脱出を試みて全力で藻掻く。

もちろんバタフライ達も同じくだ。

 

「舐めるな!!」

 

今度は右手のみをスパークさせ、深緑の戒めを脱しようとして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――強い酒の香りに、意識を飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

「みんな!!」

 

なんてこった。

分身に手こずっている間に、仲間達が拘束された!!

本体はあっちだったのか!!

 

「よそ見ー?」

「随分余裕だねェー?」

「そんで隙アリ!」

「しまっ・・・・!」

 

アーッ!!悪いことが連鎖するゥッ!!

そっちに意識を裂いた隙を突かれ、分身達に取り囲まれてしまった。

 

「「「ィヨイショォッ!!」」」

「ぐぁああっ!」

 

成されるがまま姿勢を崩されて、四肢を固定されてしまう。

 

「スカイ!」

 

プリズムが、こっちを案じてくれるけど。

今はダメだ!!

背後にツタが!ハエトリソウが!

 

「プリズム!!こっちはほっといて!!自分を守って!!」

「ぁ、しま・・・・!」

 

警告、空しく。

何もできない目の前で、プリズムがツタに絡まれていく。

 

「――――ましろさん!!」

 

私もまた、ハエトリソウの牙に飲み込まれて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――それじゃあ、良い夢を」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――献魂酔眠(こんこんすいみん)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――むせ返る様な、酒の香りに。

抗うことは、出来なかった。




コソコソッ(無限●車を見ながら書きましたw)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。