ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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誠にありがとうございます。
誤字報告も大変助かっておりますが。
あえてその表現にしているパターンでは、勝手ながら取り消させてもらっています。
ご容赦ください。



メイテイ編は、これにて完結です。


偽物、なんか入った

「中身は既に無い、か・・・・」

 

真っ二つに折れたそれを、見下ろす。

 

「最後の最後まで・・・・小賢しい」

 

忌々し気に吐き捨てても、現状が好転するわけでもない。

荒ぶる心を、ため息で沈めて。

次の策を練り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――島での戦闘が始まって間もなく。

短時間で全体に異変が起こったことも有り、早くに緊急事態を察知した二羽(ふたり)の遊覧鳥は。

すぐに大空へ飛び立ち、救援を呼びに行った。

共に一度飛べば気流を覚えられるほど優秀であったことも幸いし、行きとは打って変わって易々と飛行した二羽(ふたり)

青の護衛隊とクシザス騎士団の双方が、近くで控えてくれていたことも加わって。

比較的迅速に駆け付けることが出来たのだ。

 

吸血鬼(ヴァンパイア)、じゃなくて、えっと・・・・」

吸血人(ヴァンピール)、ですわ」

 

シャララとブリュンヒルデを始めとし、ヨヨも駆けつけた浮島。

そんな中、竜族は自分達の知識よりもずっと先を進んでいた外界を目の当たりにして。

目を丸くしていた。

 

「本当に、人間と手を取り合っているんだな。あっ、いや、『ですね』?」

「ふふっ。ええ、もう五百年になります」

「ごっ、ごひゃくねん!?」

 

『姫君だ』と紹介されたブリュンヒルデに対し、姿勢を低くし、一生懸命敬語を使う竜族。

そんな彼らの気遣いが分かったからこそ、ブリュンヒルデは気を悪くすることなく。

ニコニコと微笑みを湛えていた。

 

「改めまして、竜族の皆々様。永きに渡る間、ハレバレジュエルの輝きを保ち、夜空の安全を守っていただいた事、夜を生きる吸血人を代表し、深く深く感謝いたします」

「エッ!?アッ!?イヤ、そんな!!」

「顔を上げてくれ!じゃなくて!下さい!俺達そんな、大それたことは・・・・!」

 

それもつかの間。

ドレスの裾を手に、恭しく頭を下げるブリュンヒルデ。

彼女の姿を見て、竜族達はそれぞれわたわたあわあわと。

なんとか下げられた頭をどうにかしようとしていた。

 

「いいえ、とても重要な役目です」

 

・・・・真っ先に体に触れて、無理やりあげさせない辺りに。

見守っていた周囲も、ブリュンヒルデ本人も。

竜族の善性を感じ取る。

 

「夜を生きる我らにとって、道しるべとなるハレバレジュエルは欠かせないもの。これは国の姫としても、吸血人の一人としても、大恩ある貴方方への、然るべき礼儀です」

「我らスカイランド王国からも、代表してお礼を申し上げる。知らなかったとはいえ、多くの人と鳥を昼夜問わず導いて頂き、心より感謝する」

 

故にこそ、この下げた頭を容易く上げるわけにはいかないと。

一国の姫君に言われてしまった挙句。

国の防衛を担う猛者までもが、同じく頭を下げる始末に。

流石の竜族達も、照れくさいやら恐れ多いやらで、言葉を詰まらせるしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ハレバレジュエルが塔の上に戻り。

空の便の運航も、通常通りに再開した。

竜族という新たな仲間を受け入れた人々の反応は、始めこそおっかなびっくりだったけど。

シャララ隊長やブリュンヒルデ姫。

更にヨヨさんや国王陛下達が好意的に接していることもあって。

徐々に打ち解けている様だ。

浮島の塔の崩れた個所も、近いうちに大工が派遣されることになって、修理の目途が立ったらしい。

よかった。

それから、竜族達を説得した功績で、ツバサ君が『賢者』の称号をもらうことになったとか、なんとか。

すごーい!!

あ、ついでに私の七試練の刺青も消えてた。

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、世の中が色々変わりつつある中。

私がどこにいるかというと。

 

 

 

 

 

 

「――――やはり、アンダーグエナジーが宿っておるな」

「っそんな!」

 

私の、傷が塞がった左目に手を翳していたミノトンは。

手を下ろしながら、結論を教えてくれた。

――――あの後。

負っていたはずの深手が、ミックスパレットの支援も無しに。

ほんの三日で完治した。

特に完全に潰れていたはずの左目も、以前と同じく見えるようになっただけでなく。

色まで変わってしまう始末。

明らかな異常事態に連れて来られたのが、晴天の郷。

もっと言うと、晴天流の食客となった(見て見ぬふりをすることになった)ミノトンの下に連れて来られていた。

 

「何とかならないの!?」

「何とも言えんし、何ともならん!」

「ましろーん、どうどーう」

 

診断が終わるや否や、いの一番に食って掛かったましろさんを。

宥めにかかったあげはさんに向け、『落ち着け』と押しやる。

 

「でも、モノがモノだから心配ってのは同意かな。ソラちゃん、体に違和感は?」

「特にありません」

「って言ってるけど?」

「何故我に聞く・・・・少なくとも、気の流れに乱れはなかったぞ」

「さすがにそれは可哀そうですよ、あげはさん・・・・」

 

正直に答えたのに・・・・傷つく・・・・。

いつもはぷりぷり怒るツバサ君も、さすがに擁護に回ってくれるくらいの信用の無さ・・・・。

いや・・・・これまでを振り返ると無理もないのか・・・・。

 

「ただ、一つ付け加えるなら・・・・」

「付け加えるなら?」

「何かを閉じ込めているような、そんな印象を受けた」

「閉じ込めている・・・・ですか」

「うむ、今のところ出て来る気配はないがな」

 

閉じ込めているっていうか、閉じこもっているが正しいのか・・・・。

・・・・え、待って。

何入れられたんだろう。

 

「何かしらの意識があるということだろうか?」

「そこまでは・・・・あくまで武人の観点にて抱いた印象故に」

 

そこはかとない寒気を感じて、思わず抑えるように左目に触れた横で。

ベリィベリーさんの質問に、ミノトンは首を横に振る。

 

「でも、見方を変えれば、大人しくしてる今がチャンスじゃない?アンプルさん辺りに連絡して、なんかこう、『エイヤーッ!』って封印出来ないかな?」

「エイヤーって・・・・」

 

言わんとしていることは分かるけど。

あげはさんの脳内に、今何のビジョンがあるんだろう・・・・。

 

「だが、出来ないことはないと思う。一応、姉さんに手紙は出してみるよ」

「お願いします」

 

とはいえ、ツバサ君はさすがにさっぱりな分野な上。

頼みのヨヨさんも忙しくしている今。

他に頼れる人もいない。

ひとまずは、アンプルさんの返事待ちということになり。

その場は解散ということになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、騒ぎを起こした晴天の郷の皆さんだけども。

クシザスやスカイランドのあちこちで、奉仕活動をすることで話がまとまったそうだ。

さっそく門下生と師範代が、青の護衛隊やクシザス騎士団と一緒にパトロールしたり、臨時コーチをしたりしているとか。

なんとか・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

療養を命じられた私と、アンプルさんとの渡りをつけてくれるベリィベリーさんを除いたみんなは。

明日、ソラシド市に帰ることになっている。

・・・・心配してくれるのは、申し訳ないし、ありがたいんだけども。

みんなにはみんなの生活があるからね。

正直、ほっとしているところもある。

 

(気持ちいい・・・・)

 

縁側に出て、柱に寄りかかる。

吹く風は心地よくて、目を閉じれば寝てしまいそうだ。

 

(あーダメ、寝る・・・・)

 

そのまま、微睡みに身を任せそうになって。

 

「――――何してるんですか、ソラさん」

「――――ましろさん」

 

・・・・気付かなかった。

相当疲れているな、こりゃ・・・・。

 

「・・・・風邪ひきますよ」

「すみません、夜風が心地よくて」

 

すとん、と。

隣に座るましろさんに窘められながら、苦笑い。

いや、ほんと。

全く以てその通りなので、謝る他無ぇや・・・・。

 

「・・・・本当に、大丈夫なんですか」

「ええ、本当になんともないです」

 

寄せられた頭を撫でながら、聞かれたことに嘘偽りなく答える。

『そう、ですか』と、静かな返事が来て。

また、沈黙。

言いようのない気まずさのままに、夜空を見上げれば。

左目と同じ黄色い満月が輝いていた。

と、

 

「――――『痣』のこと」

 

ましろさんの声に、体が強張って。

 

「あげはちゃん達には、伝えてないんです」

 

次の言葉に、目が点になる。

 

「ミノトンにも、『内緒にして』ってお願いしました」

「・・・・どうして?」

 

やっと返事を紡いだ口が、ましろさんのそれに塞がれる。

 

「これで、共犯ですね」

 

何も理解が追いつかない私の目の前で。

あの子は、いたずらっぽく目を細めながら。

嬉しそうに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

キスに照れて、共犯宣言にびっくりして。

あわあわと慌てる人へ。

温めるように身を寄せる。

――――戦いは苦手で、どうしても助けられがちで。

それでも、無茶をしがちなこの人に、なんとか寄り添いたくて。

独りにしたくなくて。

未熟な頭で考えだした、苦肉の策。

少しばかりの申し訳なさはあるけれど。

それ以上に、これでいいんだという達成感が大きかった。

ソラ・ハレワタール。

優しい人、尊敬できる人、大好きな人。

いつも一人で抱え込んでしまう、頑張り屋さんの荷物を。

一抱えだけでも、引き受けてやれたなら。

それはきっと、虹ヶ丘ましろにとっての。

大きな一歩なのである。




おまけ
シャララ「剣を教えてほしい、ですか?」
エル「うん!」
シャララ「しかしプリンセス、向上心は大変結構なのですが――――「ひろがるチェンジ!」うおッ!?」
マジェスティ「――――お願いシャララ!!このままじゃダメなの!!このままじゃ、ソラがずっと痛いまんまだもん!!そんなの、ヤダ!!」
シャララ「・・・・分かりました。ただ、元の貴女は赤子です、あまり本格的なことは教えられません」
マジェスティ「・・・・ソラにも、おんなじこと言われた」
シャララ「そうでしょう・・・・なので、その御姿での実戦訓練となります。よろしいですか?」
マジェスティ「わぁ・・・・!よろしいです!ありがとう!!」


――――マジェスティの『回避』『受け流し』『カウンター』のスキルが上がった!
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