ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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始めはTVスペシャルのつもりで構想を練っていたら、劇場版クラスになってしまって。
『ええい、ままよ!』と筆を走らせています。


偽物、休めそうにない

――――晴谷湖村。

長野の県境、山間の湖を囲む様に位置する村。

同じ県内の軽井沢と比べると、交通はやや不便。

若者向けのお店も充実しているとは言えないけれど。

その分ホテルなどはリーズナブルなお値段の為、一般庶民にとっては比較的気軽に訪れ易い避暑地である。

アクティビティだってないわけじゃないしね。

ハッシー以外の名物は、牧場での乗馬体験に、搾りたての牛乳とそれらの加工品。

それから、湖でのウォータースポーツらしい。

そんな平穏な村の最寄り駅では、ちょっとした騒ぎが起こっていた。

 

「大事になっちゃいましたね」

「ね」

「ねー」

 

事故現場が見えるベンチに、ましろさん、エルちゃんと一緒にちょこんと座って。

せわしなく動く交通課のお巡りさんを眺める。

あれから時間が経ったことも有って、霧はすっかり晴れて。

村本来の景色が見えていた。

まず目を引くのは、村の名前にもある『晴谷湖』だ。

次に、湖面の中心に小高い島が目に入る。

それから、山の斜面には民家もちらほらといったところか。

一部には牛や馬らしきものも確認できる。

有名どころほどじゃないけれど、そこそこ発展してるんだろうなというのが分かった。

地図と照らし合わせてみた感想は、『ちいちゃな滋賀』。

まさしく湖のほとりで人々が暮らしている村だった。

 

「――――本当に見たのか?」

「ああ・・・・!」

 

あげはさん達や毛利探偵の応急手当か、それとも駆けつけた救急隊員か。

とにかくみんなの手当てが上手くいったお陰で.

シャトルバスの運転手さんも、受け答えが出来るくらいに意識が回復したみたいだけど・・・・。

 

「霧の中だったが、確かに見たんだ・・・・ありゃあ間違いない・・・・ハッシーだ・・・・!」

「ハッシーって・・・・」

 

手帳を片手に聴取するお巡りさんに、こっくり頷いてからぶるりと身を震わせる運転手さん。

・・・・あまりにも荒唐無稽な証言に、お巡りさんは困った顔をしている。

それもそうだろう。

実在するかどうかも怪しい生き物が事故の原因だなんて、簡単に信じられるはずがない。

私も同じ立場なら、きっと怪訝な顔をしてしまうだろう。

ちゃっかり近くによって聞き耳を立てていたコナン君も、お巡りさんの困惑に同意しているみたいだったけど。

一方でただならぬ雰囲気も感じている様だった。

 

「あの・・・・」

 

――――だけど。

その様子を見ていたから、私の中の疑念も確信に変わる。

 

「ハッシーかどうかは分かりませんが、怪しい影なら私も見ました」

「ほ、本当かい!?」

「お、落ち着いて、傷に障るぞ」

 

膝に乗せていたエルちゃんを、ましろさんに任せて手を上げると。

思わぬ擁護に運転手さんが身を乗り出して、お巡りさんが宥めたところで。

改めて証言する。

 

「一度言った通り、ハッシーかどうかは分かりません。ですが、バスが突っ込んで来る直前に、縦に長い影が湖の方に行くのは見ました」

 

『ちらっとだけですが、バスには見えませんでした』とも付け加えると、お巡りさんはますます難しい顔をした。

何かあるのかな?

 

「それが本当なら、今年五件目だ・・・・」

「五件?こういう事故が、今年だけで五件も続いているの?」

「あ、ああ・・・・」

 

コナン君の質問に、お巡りさんがこっくり頷く。

素人目でも分かるぞ。

現実で言うなら『ネッシーにびっくりした』って起きた事故が、今年だけで五件だ。

一、二回なら偶然か見間違いを考えるだろうけど・・・・。

それが『五件』。

数字は少なくても、明らかに何かあると見ていいだろう。

 

「三年前からかな・・・・こういう霧の深い日には必ず『ハッシーを見た』『光る大きな影を見た』って、事故が起きるようになったんだ」

 

『警察としては、情けないけど』、と。

事態を解決できないやるせなさを吐き出しながらも、そう教えてくれるお巡りさん。

・・・・本当に悔しいんだろうなっていうのが、手に取る様に分かる。

私も、曲がりなりにも青の護衛隊に、人を守る職に就いている。

痛いほどに、共感を覚えたところへ、

 

「――――それ、もしかしたら人為的なもんかもしれんで」

 

さらなる第三者の声がした。

っていうか、この声は・・・・!

 

「君は・・・・?」

「はっと・・・・へ、平次兄ちゃん!」

 

ウワーッ!!『服部平次』だ!!

『せやかて工藤!!』の台詞が有名過ぎて、『ゼ〇ダと間違えられるリ〇クみたいになってないかな・・・・』って心配になっちゃう服部平次だ!!

え!?主人公(コナン)よりもテンション高いって!?

しょうがないじゃん!!

初めて見たコナン映画は、『迷宮の十字路』だったんだよ!!メメタァ

ラストのチャンバラシーン大好きだったよー!!

 

「君は・・・・?」

「俺の名前は服部平次!『西の高校生探偵』言うたら、そこそこ通っとると思うけど」

 

その後ろから彼の幼馴染である『遠山和葉』ちゃんがやってきているのも見えた。

蘭さんや園子さんときゃっきゃしてる。

かわいい(確信)

 

「それよりも、『人為的』とは?」

「さっき、他の警官にも話したんやけどな」

 

・・・・誰にも知られず、気を取り直したところで。

服部君が語り出す。

なんでも、偶然シャトルバスの後ろをバイクで走っていた服部君たちは。

淡く光りながら動く大きな影を、はっきりと目撃。

その直後、前を走っていたバスがハンドル操作を誤って、事故を起こしてしまった。

幸い車間距離を取っていた二人は無事だったけど、服部君は明らかに自然現象ではない影が気になり。

通報を和葉ちゃんに任せて、影が出た付近に近づいたらしい。

すると、斜面を滑り降りて逃げていく人の音と、恐らくあらかじめ用意していたボートに飛び降りたらしい音。

そして、逃げていくモーターの音を聞いたということだった。

 

「ボートの音は、うちも聞いたで!」

「和葉ちゃん、それ本当?」

「蘭ちゃんだって、うちの耳の良さは知っとるやろ?間違いない!」

「そんで俺の方は、やつらがおったらしい場所に、なぁんか置いとった痕跡・・・・おそらく、三脚かなんかの跡が、ばっちり残っとったのを見つけたっちゅうわけや」

 

自信満々に証言する和葉に、緊迫した空気を程よくほぐされながら。

服部君は証言を締めくくった。

 

「――――もしかして」

 

一通りの話が終わって、呟きを零した人物がいる。

 

「ブロッケン現象、かもしれません」

 

我らのツバサ君だ。

航空力学のお陰で、気象知識も豊富な彼には、思い当たるものがあったらしい。

 

「ぶろっこりー現象?」

「ええーッ!歩美、ブロッコリーきらーい!」

「ブロッコリーじゃなくて、ブロッケンね」

「ツバサお兄さん、それって一体どんなものなんですか?」

「お兄さん・・・・!」

 

子ども達が微笑ましいリアクションをする中。

光彦に『お兄さん』と言われ、僅かにときめきを覚えたらしいツバサ君は。

授業をするように話し出す。

 

「今日みたいな霧の出る日に、太陽を背にして立つと、霧がスクリーンになって、目の前に自分の影が映るんです。ドイツのブロッケン山でよく目撃されたので、この名前が付いたんですよ」

「へぇー!」

 

ちなみに、原理が分かっていなかった頃は『ブロッケン山の怪物』とされていたのは、割と有名な話だと思う。

調べてみたら分かると思うけど、あの辺の山って『踏み外したら、死』みたいなとこがゴロゴロあるみたいだし。

そんなところで、いないはずの人影を見たら・・・・さぞ、びっくりしただろうな。

それこそ、足を踏み外すくらいに。

逆に日本では『御来迎(ごらいごう)』と言って、仏様が現れる現象だと言われていたそうな。

文化って、不思議(あたまのわるいかお)

 

「なによりこれは、人の手でも再現出来るんです。特に今日みたいな霧の日は、懐中電灯さえ用意すれば」

「なるほどなぁ、それこそ霧の多いここではやりたい放題っちゅーわけか」

「つまり、これまでの『事故』は全て、人為的に引き起こされたものかもしれないということか・・・・!!」

 

ブロッコリーが苦手だといった歩美ちゃんへ、ヨヨさんが含まれる栄養について補足する横で。

二人の話を聞いていたお巡りさんは、納得がいった故の険しい顔をしている。

蘭さんや園子さんを始めとした面々が、コナン君以外で賢い子どもを見たことに慄いているならば。

お巡りさんは前提が覆ったことに慄いている様だった。

事故が起きたのは、いずれも霧深い日だという話だし。

人為的である証拠も、まさしく霧に紛れて消されてきたことだろう。

 

「服部君ッ!!」

「うおっ!?」

 

しかし、流石は本職と言うべきか。

すぐに取り直すと、服部君の肩を引っ掴んだ。

 

「このまま、捜査に協力してくれないか!?」

「あー、それはやまやまなんやけど、俺は別件で来とってなー?」

 

お巡りさんの頼み事は実に自然なことだったけど、彼が口にしたのは断り文句だった。

・・・・何か、珍しいような?

コナン君もだけど、こういうことには積極的に首を突っ込みそうだと思ってたんだけど。

 

「それに、ほら。ここには俺以外にも探偵がおるさかい、そっちに頼めばええ」

「君以外?」

「――――うぉっほん!!」

 

服部君の言葉に、お巡りさんと一緒に首を傾げていると。

わざとらしい咳払い。

目をやると、やや不機嫌な毛利探偵がいた。

・・・・ごめんなさい。

話に夢中になってました・・・・!

 

「あ!貴方は!」

「ええ、『名探偵』の!毛利小五郎です!」

 

『名探偵』を強調しながら、キラッキラの(ちょっと趣味の悪い)名刺を差し出した毛利探偵に。

服部君に断られて落ち込んでいたお巡りさんは、ほっとした顔をしていた。

全国的に有名な探偵さんが協力してくれるんだもんね。

そりゃ心強いよね。

・・・・確かに推理はいまいちかもしれないけど。

だからと言って、まるっきり役に立たないわけじゃないのは。

『コナン』を愛している人には、言うまでもないことだろう。

 

「・・・・お前の言う別件って、なんだよ」

「ああ、なんや『宝探してくれ』ってな」

「宝ぁ?」

 

お巡りさんにキラキラとした目を向けられ、毛利探偵が上機嫌な高笑いを響かせる中。

コナン君が服部君にこっそり問いかけるのが聞こえた。

そういえば、どうしてここにいるんだろう。

一緒に居る様には見えないけれど・・・・?

 

「『永逢(とわい)神社』ってとこから、ちょっと縁があったもんで、依頼が来たんや」

 

と思っていたら。

特に隠すつもりはなかったのか、そんなことをぽろっと零す。

 

「――――なんですって」

 

へぇー、本当に遠方から依頼が来るんだと思っていると。

意外な反応をしたのは、ヨヨさんだった。

コナン君と服部君が振り向くと、目をまぁるくさせて、驚いた顔をしている。

ど、どうしたんですか・・・・?

 

「なんや、ばあさん。どうかしはったんか?」

「・・・・そこは、私のお友達の家なの」

「おばあちゃん、それ本当?」

 

ましろさんも知らなかったのか、似た様な驚きの表情でヨヨさんに問いかけると。

ヨヨさんは、こっくり頷いた。

 

「心配ですね、何か困りごとでしょうか」

「ほな、ばあさんも来るか?」

「願ってもないけれど、いいのかしら?」

「ええって、遠慮せんと」

「うちも賛成!おばあさん、一緒に行こ!」

 

和葉さんにも手を握られて(ついでに自己紹介もされつつ)、行き先は決まったらしいヨヨさん。

 

「みんな、ごめんなさい。せっかくの旅行だけど」

 

すると、申し訳なさそうにこちらを見て来た。

・・・・もう。

何を言い出すかと思えば。

 

「水臭いですよ!ヨヨさん!」

「うん、むしろ行かなきゃだよ!」

「だね、お友達が大変かもって時に、呑気にバカンスなんてやってらんないよ」

「ああ、その通りだ」

「今調べましたが、神社にもバスが出ているようです。行かない手はないでしょう」

 

私含めた、『虹ヶ丘家』の意見は満場一致だった。

普段からお世話になってるヨヨさん、そのお友達の困りごと。

せっかくここまで来ておいて、放置?

無いっしょ!!

 

「ありがとう、みんな」

 

何はともあれ、ヨヨさんの助けにはなれそうで。

私も少しばかりほっとしたのだった。

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

「俺達少年探偵団も手伝うぜ!!」

「あら、あなた達も?」

「もっちろん!これでも数々の事件を解決してきたんですから!」

「歩美達に任せて!」

 

平次への依頼も気になるが。

今そちらに行こうとすれば、必ず少年探偵団はついて来ようとするだろう。

というか、今まさにヨヨ達一行へ向けて協力を申し出ている。

 

「やめておきなさい、何があるか分からないんだから」

「その通りじゃ。何より、これは服部君への依頼じゃろう?横入りはよくないぞ」

「「「えーッ!!」」」

 

哀と阿笠が窘めているが、引き止められそうにない。

こういう時真っ先に止めにかかる小五郎は、まだ警官と話し込んでいるし。

どうしたものかと、コナンも頭を悩ませ始めた時。

 

「じゃあ、一つお願いをしようかしら」

「おおっ!!なんだなんだ!?」

 

ヨヨが、子ども達と目を合わせて、優しく語り掛けた。

 

「今回の事故もだけど、お友達の神社も、この晴谷湖に住んでいるという『ハッシー』が関わっているの」

「そうなんですか?」

「ええ、だから・・・・」

 

身を乗り出す光彦達へ差し出したのは、一枚のチラシ。

駅のビラ置き場に出ている、スタンプラリーの広告だった。

 

「このスタンプラリーを回って、ハッシーの情報を集めてきてくれるかしら?」

「そんなんでいいのか?」

「もちろん」

 

訝し気な元太にこっくり頷いて、ヨヨは続ける。

 

「実は私、この村は久しぶりで、ハッシーのことを少し忘れてしまっているの。けれど、お友達も心配だから早く駆けつけたいし、毛利探偵もお忙しそうでしょう?そこで、少年探偵団を頼りたいの」

 

『ダメかしら?』と首を傾げれば、頼られて気を良くした探偵団は『しょうがないなぁ』と得意げに笑い合って。

 

「そういうことなら、分かった!」

「この少年探偵団に、どーんと任せて下さい!」

「ハッシーの情報、ばっちり調べて来るからね!おばあさん!」

「みんなありがとう、とっても助かるわ」

 

上手い、と思った。

ハッシーに関するスタンプラリーに誘導することで。

子ども達を危険から遠ざけつつ、事件の調査にもほんのり関わらせている。

 

「スタンプの台紙は、『晴谷湖郷土資料館』ってところで配っているみたいだから、まずはそこに行ってみて」

「「「はぁーい!」」」

 

顛末を見ていた哀もまた、『今後の参考にしようかしら』と思いながら。

ヨヨと目を合わせて、黙礼する。

――――かくして。

彼らはこうやって、行動を共にすることになったのだった。




キャラが多いとこんなに書きにくいんだなと若干後悔しつつあります()
弱音を吐くな、お前が始めた物語だろ(ケツバット)
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