ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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誠にありがとうございます。
誤字報告も毎回助かっています。
どれほどチェックしても出てきてしまう、不思議・・・・!()



それから。
今回、昨年のコナン映画である『100万ドルの五稜星』の内容に触れていますので。
未試聴の方は、ごめんなさい・・・・!


偽物、睨み合う

「――――この度は当ホテルの職員が、大変なご迷惑をおかけしました!」

「いいんですよ、こっちも霧が深い中、お迎えに来させてしまったし。対応してくれたのに、すみませんでした」

 

――――何はともあれ、まずはホテルにチェックインを済ませることになった。

フロントで支配人と園子が頭を下げ合い、今後の濃霧の際の送迎について、軽く意見交換をしている横で。

成り行きで共に行動することになったメンバー―――仮に『虹ヶ丘邸一行』と呼ぶ―――を、コナンは改めて観察してみる。

 

 

まずは一行の中心的存在である『虹ヶ丘ヨヨ』。

上品な佇まいは、まさしく『老婦人』という言葉が似合う。

阿笠と渡り合える博識ぶりと、孫娘を含めた多くの若者を自宅に住ませる程懐の深い女性。

その一方でとても好奇心旺盛であり、阿笠と知り合うきっかけになったサイエンス同好会の他。

乗馬やカヤック、社交ダンスにチェロ、果てはボクシングまで。

実に幅広い趣味を持っている。

今回平次が依頼を受けた『永逢神社』に、昔からの友人がいるそうで。

何も聞いていない彼女は、何かあったのかと心配している。

 

 

次にその孫娘である『虹ヶ丘ましろ』。

淡い臙脂色の長い髪を靡かせた、思いやりの心に溢れている少女。

両親が海外出張に出ているため、祖母の家に住んでいるそうだ。

ニコニコと笑顔を絶やさず、会話にツッコミを入れたりするノリの良さもある。

将来は絵本作家を目指しているのだというだけあって、絵心があるようで。

バスが突っ込んで来る前は、植え込みの花をスケッチしていた。

 

 

そんなましろと同じ学校に通っているのが、『ベリィベリー・アカネゾーラ』。

二つに結わえた赤い髪に、武人の様な口調の少女。

スカンジナビアから、見聞を広める為に留学しに来たという彼女は。

祖父が拓いたというマイナーな拳法の使い手でもある。

将来は彼と同じ警察官になるのが夢らしい。

 

 

一行の黒一点、『夕凪ツバサ』は。

12歳にしては思慮深く、落ち着きのある性格の少年だ。

一方で、光彦などの年下に尊敬の視線を向けられると、年相応に照れるところもある。

『空を飛ぶ』という夢をかなえる為、航空力学を修めに単身虹ヶ丘邸にやって来たという。

先ほども、コナンやソラ達の話を聞いて、ブロッケン現象について言及していたので。

その知識は確かな様だ。

 

 

ツバサの腕に抱えられている赤ん坊は『エル』。

今年の初めにやっと一歳になったという彼女は、この頃おしゃべりを覚えたそうだ。

ツバサとベリィベリーには、何故か『プリンセス』と呼ばれ、丁寧な対応をされているが。

これについてコナンが指摘すると、『女の子はみんなプリンセスだからね』という返事が来た。

 

 

コナンに『女の子はみんなプリンセス』とはぐらかした(?)『聖あげは』は、若者組の年長者である。

ソラシド市の専門学校に通い、『最強の保育士』を目指しているという。

整った顔立ちをしており、実際モデルにスカウトされたこともあるらしいが。

『なりたいのは保育士だから』ときっぱり断る芯の強さを持った女性だ。

 

 

最後に『ソラ・ハレワタール』。

あげはと同い年の彼女は、左目を両断するような古傷というワイルドな見た目とは裏腹に。

誠実さがにじみ出る、礼儀正しい女性だ。

エルやベリィベリーの遠縁らしく、同じスカンジナビアの出身。

こちらも警察を目指しており、剣道の達人らしい。

転ぶところを支えられた歩美や、バスの衝突から助けられた哀が。

『手がとっても硬かった』と証言している。

 

 

実に個性的で不思議な一行だが、哀の『センサー』にも反応が無いことから、少なくとも黒の組織ではないのは間違いない。

何より、危うく轢かれそうになった哀を助けてもらったほか、小五郎と一緒に運転手を救助したところも見ている。

悪人だとは思えないというのが、コナンの感想だった。

 

「あ、あれじゃない?」

 

今は、永逢神社からの迎えを待っているところだ。

神社を訪れることにしたヨヨだったが、如何せん『足』がない。

平次のバイクも、和葉との二人乗りで満員である。

そこで平次が、相手方へヨヨのことを伝えると。

迎えをよこしてくれると返事が来たのだった。

園子が、ロータリーに入って来た一台の車を指さす。

車は送迎用のスペースに停まると、運転手が降りて来て。

 

「あれッ?」

 

その顔を見たコナンは、声を上げる。

 

「――――(ひじり)さん!」

「――――やあ、コナン君。久しぶり」

 

福城聖(ふくしろひじり)』。

春先、函館で起こった事件をきっかけに出会った、医学生の青年だ。

卓越した居合道の腕も持っている。

 

「どうしてここに?」

「永逢神社には、叔母がいてね。そこにお世話になっているんだ」

「へぇー!」

 

・・・・少しだけ、嘘が入っているのを。

コナンは知っていた。

函館の事件に巻き込まれたり、加担したりした彼は。

行われた司法取引により、その罪を見逃される代わりに。

監視付きではあるが、自由を手にしたのである。

とはいえ、初対面の人がいることもあり、聖は口にしなかったし。

コナン達も言及することはなかった。

 

「貴女が虹ヶ丘ヨヨさんですね。初めまして、福城聖です」

「ご丁寧にありがとう、よろしくお願いします」

「ヨヨさんの付き添いの、ソラ・ハレワタールです。お迎えに来て頂き感謝します」

 

ヨヨと聖、それからヨヨに付き添うソラが握手を交わし合う。

 

「苗字が『聖』の、あげはです!うちのヨヨさんとソラちゃんを、よろしくお願いします!」

「おねがいしましゅ!」

「はい、お二人のことは任せて下さい」

 

・・・・その隙に、平次の依頼が気になっていたコナンは。

こっそり車に乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

――――ヨヨさんのお友達の下へ駆けつける為に。

『福城聖』さんが運転する車に乗った私とヨヨさんなんだけど。

 

「もー、なんでこっち来ちゃったんですか・・・・」

「えへへ、ごめんなさーい」

 

なんと、車にはコナン君も乗り込んでしまっていた。

なんでも、函館で福城さんに助けられたらしいコナン君。

その時のお礼も言いたくて、どうしてもこっちに来たかったのだと話していた。

・・・・本当は、服部君への依頼が気になったんだろうけども。

それを突っ込むとこっちも手痛い反撃を受けそうなので、お口をナインチェにしておく・・・・。*1

 

「ましろさんから蘭さんに伝えてもらっているから。服部君とお話したら、みんなの所に行くのよ?」

「私も一緒に行きますから」

「はーい」

 

とはいえ、来てしまったものはしょうがない。

車から直ちに下ろすのも忍びないし、ひとまず一緒に神社へ向かっている次第である。

 

「あ、ここですか?」

「はい、駐車するのでもうちょっと待っててください」

「こちらは構わないから、安全運転でね」

 

そんなこんなで車に揺られることしばし。

件の神社が見えて来た。

山の斜面に佇む社は、湖が一望出来るだろうことが、想像に容易かった。

代わりに、とっても長い階段が見えるんだけども・・・・。

 

「行きましょうか」

「はい」

「はーい!」

 

何はともあれ、行くしかあるまいて(白目)

 

「――――だから、帰れっていってんだよ!!!!」

 

――――予想通りのクソ長階段を上り切って。

始めに聞こえたのは、少年の叫び声だった。

鳥居をくぐると、参道で言い合っている人影を見る。

一方には、ましろさんと同い年くらいの男の子と平次君達。

もう一方には、なんかいかにも『ヤなヤツです』って雰囲気の人達がニヤニヤしている。

 

「お前らにやるもんは何一つない!!いくら偽モンの紙きれ持ってきたって、無駄なんだよ!!」

「おいおい、随分なこというじゃないか。ボウヤ」

 

髪をオールバックにしたおっさんが、平次君と和葉さんに引き止められている男の子へ。

何かの書類を突き付ける。

 

「いいかい?子どもの君には、これが偽物かどうかを決める立場にないんだ。法的効力が認められている以上、間違っているのは君の方になるんだよ」

「ふっざけんな!!」

「ッ待て待て待て!」

「あかん、今飛び出したらやられてまう!」

 

『子どもの君には』と、煽る様な言い方にまんまと乗せられてしまった男の子は。

制止を振り切らんばかりに歯を剥いて怒鳴る。

 

「勝手に持ってって!!勝手に押したハンコで!!薄汚い金儲けをやろうって魂胆が見え見えなんだよッ!!帰れッ!!ここはお前らなんかお呼びじゃない!!」

「ッハハハハハ!!よく言うぜ!!」

 

対するおっさんは、おかしくってたまらないとばかりに大笑い。

それから、また別の紙を突き付ける。

あれは・・・・ハッシーのスタンプラリーの?

 

「『ハッシー』だなんてキャラクターで、金儲け企んでる神社の息子とは思えない発言だな」

「こ、ッの!!」

 

あ、ダメだ。

あの子、完全に頭に血が上っている。

このままでは、あの子が望まない結果になってしまうと。

踏み出そうとした時だった。

 

「――――信仰とは、変わりゆくもの」

 

凛、と。

声を上げたのは、ヨヨさん。

 

「時代を超え、世代を経て、適した形に移ろうものよ」

 

たった一声で、場を支配してしまった彼女に感心しながら。

せめて、その『ただならなさ』の一助になればと。

一歩引いた位置から、おっさんの取り巻きを睨みつつ一緒に歩いていく。

 

「時には悪とされたものが善となるし、逆に善とされたものが悪となってしまったりすることもあるわ」

 

虚を突かれて、脱力してしまった男の子を。

平次君と和葉ちゃんがおっさん達から引き離しているのを横目に。

ヨヨさんはおっさん達の前に立った。

 

「それを考えると、この神社はまだいいわね。形を変えても、神様が愛されるように努めている」

 

ここでヨヨさんは、おっさんの手からチラシを取ると。

男の子の方に振り向いて。

 

「私は好きよ。『ハレヤ様』がこんなに可愛くなって、とっても嬉しいわ」

 

にっこり、微笑んだのだった。

 

「なんだバアさん、大事な話してるときに横入りしやがって」

「余所(もん)はすっこめよ!」

 

おっさんの取り巻き達が、突っかかって来たので。

私と、それから福城さんが並んで彼らを阻む。

ありがとうございます、福城さん・・・・!

 

「あら、余所者だなんて、寂しいことを言うのね」

「・・・・と、なると?あんたも関係者だっていうのか?ご婦人」

「ええ、この神社の聖地の管理を任されているの」

 

小声で小さくお礼を伝えてくれたヨヨさんが。

彼らへ向けて、『聖地の管理』を口にした途端、雰囲気が変わった。

・・・・なんとなく、分かったかも。

服部君への依頼にあった『宝』っていうのは、『聖地』とやらにあるもので。

奴らはそれを狙っている、かも、知れない・・・・。

いや、情けないけど、実際に聞いてみないと分からないな。

 

「・・・・ああ、なるほど、あんたが虹ヶ丘ヨヨか」

「うふふ、意外と有名人なのね。私ったら」

 

とはいえ、当たらずとも遠からず、と言ってよさそうだ。

おっさんの狙いが、明らかにヨヨさんに定まっている。

っていうか、名乗ってもいない名前を知っている時点で。

私の中では、グレーが限りなく黒に近くなった。

 

「おうともさ、この土地の所有権を譲渡する書類に、ちゃあんと書かれてるんだぜ?」

「ッだから!!それは、お前らが盗んだ印鑑で勝手に作ったもんだろうが!!」

頼人(らいと)君・・・・!」

「今は落ち着け、手ぇ出したらあかん!」

 

再び男の子に突き付けていた書類を見せると、こちらも再び男の子が荒ぶり始める。

『ライト君』って言うのか、あの子。

 

「見せて頂いても?権利はあると思うのだけれど」

「ああ、どうぞ」

 

私達越しであることを含めても、ガラの悪い連中に一歩も退かないヨヨさん。

一方のおっさんは、絶対の自信があるのか。

余裕な態度で、あっさりと書類を渡した。

丁寧に受け取ったヨヨさんが、文面を見つめる事しばし。

 

「――――ところで」

 

ぽつ、と話し始める。

 

「人間って、お芝居上手だけども、意外と素直なの」

「・・・・なんだ、急に?」

「嘘をつく時の反応のお話よ」

 

『ありがとう』と、書類を返しながら。

昔話でも語り聞かせるような、穏やかな口調で語るヨヨさん。

 

「よく言われるのは、目線が右上を見るというものね。けれどもこれは、あまり信用できないものなのよ。左利きの人だと逆になってしまうから」

「・・・・何が言いたい?」

「じゃあ、これは知っているかしら?」

 

おっさんの視線が鋭くなっても、ヨヨさんは微笑みを絶やさない。

 

「こういった霧が出やすいところで嘘をつくとね、その緊張で、鼻の頭に汗をかくのよ」

 

すると、ヨヨさん。

『あら?』と、わざとらしく声を上げて。

 

「貴方たち、とっても汗っかきなのねぇ」

「――――ッ」

 

次の瞬間。

おっさん達は面白いくらい一様に、顔面に手を当てたのだった。

 

「・・・・ぁ、汗なんてねぇじゃねぇか!!」

「嘘こきやがってクソババア!!」

「ええ、でも・・・・貴方たちを信用するわけには行かなくなったわ」

「・・・・なるほど、『間抜けは見つかった』訳ですか」

 

『やれるもんならやってみろ』と、睨みを利かせながら嗤ってやると。

それが皮切りになったらしい。

 

「・・・・退くぞ」

「え、でも」

「鬼塚さん!!」

「いいから、行くぞ」

 

『鬼塚』というらしいおっさん。

やっぱりただ者ではない様だ。

舌戦ではヨヨさんに敵わないと分かるや否や、大声ではない、けれど強い口調で取り巻き達を制して。

砂利を踏み散らしながら、立ち去っていった。

・・・・行った?

行ったね?

 

「っはぁー・・・・肝が冷えましたよ、ヨヨさん」

「うふふ、ごめんなさい。傍にいてくれてありがとう、ソラさん、聖さん」

「もー・・・・!」

 

鬼塚達が完全に離れていったのを確信してから、どっとため息。

いや、ほんとに緊張した・・・・!

もし荒事になったら、みんな守り切れるかってヒヤヒヤした・・・・!

ヨヨさんかっこよかったけど・・・・!

それはそれ、これはこれなんよ・・・・!!

 

「ヨヨさん、無事でよかった」

「心配かけてごめんなさいね、コナン君」

 

ああ、そうだった。

緊張のあまり、コナン君がいたことすっかり忘れてた・・・・!

マジでスマン、国民的主人公・・・・!

私が未熟なばっかりに・・・・!

 

「あ、あの・・・・」

「一応お久しぶりね、頼人君。おじい様とおばあ様の、お葬式以来かしら」

「ッス・・・・」

 

コナン君に内心で謝っている間に、ヨヨさんはライト君に話しかけている。

どうやら、一度顔を合わせたことがあるらしい。

 

「何があったのか、教えてもらえる?」

 

どんな関係だろうと、首を傾げる間に。

ヨヨさんが背筋を正したので、私も姿勢を正す。

対するライト君もまた、こっくり頷いたのだった。

*1
(・×・)




福城(ひじり)
(ひじり)あげは。

オッス、それだけッス・・・・。


次回でやっと事件発生させます。
展開遅くてすみません・・・・()
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