ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

154 / 172
拙作が、8/27の日刊ランキングにて。
総合151位、二次創作108位を頂きました!
日頃のご愛顧、誠にありがとうございます!
頑張って書きます!


偽物、駆けつける2nd

「ましろさん!!」

「ソラさん・・・・!」

「そらぁ・・・・!」

 

電話が終わるかどうかのタイミングで神社を飛び出したソラ。

周遊バスに乗る手間すら惜しみ、現場の郷土資料館へ文字通り駆けつけてみれば。

駐車場のベンチで項垂れているましろと、ツバサに抱かれたエルを見つけた。

こちらを見つけた彼女らは、両目からぽろぽろと涙を零し出す。

エルに至っては、地面に降りて歩いて来ようとしていた。

 

「ッ今行きます!」

 

その様を見て、直ちに駆け寄ろうとしたソラだったが。

 

「――――待った待った!現場に入らないで!」

 

警官に止められてしまった。

どうやら、規制線を乗り越えようとしてしまったらしい。

――――そもそも関係者以外立ち入り禁止というのもあるが。

最近、事件の関係者を装って。

マナーの悪い報道カメラマンが入り込んでしまうという、トラブルがあった故の対応だった。

だが、そんなことをソラが知る由もなく。

 

「ぁ、ッ、保護者です!!あの子達の保護者です!!」

 

一度怒鳴りかけたのを何とか飲み込み、しかし掴みかかりはしてしまい。

とにかく中へ入りたい旨を伝える。

 

「――――俺が保証する、行かせてやってくれ」

「は、はい!」

「っすみません、ありがとうございます!」

 

そこへ、先んじて駆けつけていたらしい小五郎が、フォローを入れてくれた。

名探偵のお墨付きならと、警官が規制テープを上げるや否や。

ソラは飛び込んで、ましろとエルを纏めて抱きしめた。

 

「うぅ・・・・わぁーん!!」

「ああ、よしよし・・・・ごめんなさい、傍にいられなくて」

 

途端に、エルはますます顔を悲し気にしかめると。

大声を上げて泣き始めたのだった。

 

「ソラちゃん!」

「あげはさん」

 

そこへ歩み寄ったのはあげはだ。

 

「大変な時にいなくて、すみませんでした」

「なーに言ってんの、ヨヨさんについててくれて、ありがとう」

 

軽口を交わしながら、あげはは手慣れた様子でスマホを見せる。

恐らく事の経緯が書かれているのだろう。

画面を見るソラの顔が、目に見えて険しくなった。

しかし、エルとましろを抱きしめあやす手は緩むことはなく。

本当に二人を大切にしているのも、改めてよく分かるのだった。

 

「――――ひとまずは、よかったかのう」

「よかったに決まってるよ、パパとママくらい信頼してるんでしょ?」

 

ましろやエルが、ソラを信頼していることは察していた阿笠と園子は。

安堵にわんわん泣く彼女達を見守っていたのだが。

 

「・・・・うん?」

 

ふと、蘭は不思議そうに首を傾げる。

 

「蘭、どうしたの?」

「いや、ちょっと・・・・」

 

園子に生返事を返しながら、晴谷湖村のマップを広げて。

しばしの間、うんうん唸った蘭は。

やがて、『あっ』と声を上げた。

 

「蘭お姉さん、どうしたんですか?」

「ねえ、ましろちゃんがおばあさんに電話をしたのって、五分くらい前だったわよね?」

「ええ?」

「そのくらいだったかぁ?」

 

今度は子ども達が首を傾げる中、蘭は父の小五郎が駆けつけた時間を根拠に『間違いない』と言い切る。

 

「でも、ソラさんがいたのはとわい?神社、でしょ?結構離れてるじゃない?」

「そうなのよ、バスで来たにしても10分はかかるところなのに・・・・」

 

蘭が手にしたマップには、村の中心である晴谷湖と周辺施設が書かれている。

そして、一同が宿泊するホテルと、永逢神社はちょうど真反対の位置。

単純計算では、ホテルから向かうにも神社から向かうにも、同じ時間がかかるということだ。

ソラ達は免許こそ持っていれど、愛車は置いてきたという。

つまり移動手段はバスか、徒歩。

徒歩は論外だ、どんなに頑張っても40分以上はかかる。

かといってバスも難しい。

待合時間も考えると、10分前後はかかってしまう。

 

「じゃあ、ソラさんどうやって・・・・?」

 

ツバサやベリィベリーとも無事を確認しあっているソラを、どこか緊張した面持ちで見つめたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

――――晴谷湖郷土資料館で、遺体が発見された。

胴体を両断され、まさしく上半身と下半身が泣き別れしてしまった成人男性が。

湖面に浮いていたらしい。

そんな状況を見て、警察は殺人事件と断定して。

最初に見つけてしまった歩美ちゃんに話を聞いているのだった。

で、私は何をしているかというと。

 

「――――やるべきことに真っすぐなのは、貴女の良いところだけど。真っすぐすぎるのも良くないわ」

「はい・・・・」

 

ヨヨさんに怒られてます・・・・はい・・・・。

ましろさん達のピンチと聞き、思わず『エッホエッホ』と飛び出してしまったのだけども。

うっかり生身で自動車張りのスピードを出してしまったのは良くなかった・・・・。

法定速度もちょっと超えちゃったしね・・・・。

え?そういう問題じゃない?

オッス、ソッスネ・・・・。

 

「普通に走って来たのね・・・・え、普通って何?」

「分からない・・・・分からなくなってきた・・・・」

 

くぅっ、蘭さん達も困惑させてしまっている・・・・!

びっくりさせてすみませんでした・・・・!

 

「あの、そろそろよろしいでしょうか?」

「ああ、ごめんなさい。大丈夫ですよ」

 

『未熟・・・・!』と改めて反省していると。話が終わるまで待ってくれていた刑事さんが、手帳を片手にやってきた。

名前は確か・・・・『上原由衣(うえはらゆい)』さんだったか。

長野県警からやってきた、きりっとした雰囲気がかっこいい女性刑事さんだ。

コナン君や、ヨヨさんを連れて来てくれた服部君とも顔見知りなところから。

どうやら『あちら側』の人物らしい。

 

「それで、遺体が発見された時、お二人が何をしていたのか伺いたいのですが」

 

私とヨヨさんは現場にいたわけじゃないけど。

第一発見者となったましろさん達の、関係者ではある。

一応証言を取っておきたいんだろう。

 

「私とソラさんは、同じ村内にある永逢神社におりました。息子さんの頼人君と、奥さんの甥っ子の聖君が証明してくれると思います」

「それから、服部君のお連れさんの、和葉さんもいるはずです」

「なるほど・・・・ちなみに、お二人が別行動していた理由は?」

 

手帳に少し書きつけてから、再び問いかけて来る上原刑事。

 

「頼人君は、友人夫婦の孫なんですが、困ったことになっていると聞いたものですから、様子を見に」

「困りごと?」

「ええ、今回と関係があるかは分かりませんが・・・・暴力団と諍いになってしまっている様で」

「ええッ!?」

「――――上原ァ、どうしたぁ?」

 

ヨヨさんから飛び出した、『暴力団』の言葉にびっくりしてしまった上原刑事。

そんな彼女の声を聞いて、また別のお巡りさんがやってくる。

 

「勘ちゃ、じゃなくて、大和警部」

「何があった」

 

大和勘助(やまとかんすけ)』警部、同じく長野県警。

左目の古傷がとってもいかつい印象を与えるお巡りさんだ。

片足を悪くしているらしく、杖をついてもいるけど。

『弱い』という言葉が全く似合わない。

そんな彼へ、『関係があるか分からないけど』とヨヨさんは再度前置きしてから。

永逢神社でのことをかいつまんでお話した。

 

「――――根志来組、か。また厄介な連中に目を付けられたな」

「ご両親が倒れて、今は学生と子どもだけって、暴力団対策担当(マルボウ)は何をしてるの!」

 

大和警部は険しい顔をして考え込み、上原刑事は頼人君達を心配してくれている。

 

「その状況で、孫がホトケを見つけたと来れば。そりゃ駆けつけるわな」

「ええ、幸い何事も無くてよかったけれども・・・・」

 

ヨヨさんの言う通り。

第一発見者と言うのは、得てして疑われやすい立ち位置だ。

今回はコナン君サイドの人達もいたから、真っ先に容疑者候補から外されたみたいだけど。

もしそうではなかったらと思うと、ぞっとする。

 

「――――そのことですが」

 

とにかく、みんなに疑いがかからなかったことに安堵していると。

また別のお巡りさんが会話に入って来た。

口ひげが印象的な、『諸伏高明(もろふしたかあき)』警部。

彼もまた、上原刑事や大和警部と同じ所属である。

『コウメイ』のあだ名に負けず劣らずの、鋭い観察眼の持ち主。

所轄にいた頃なんかは、まさしく『所轄のコウメイ』と言われていたらしい。

ヨヨさんが駆けつけた直後に、コナン君を送り届けてくれた人でもある。

 

「どうやら、無関係と断じることも出来なくなりそうです」

「どういうこった?」

「見つかった遺体の胸元に、刺青が入っていたんだ。『志』って字に、根っこが絡みついたようなやつがね」

「ッ根志来組のエンブレムじゃない!」

 

諸伏警部と、ちゃっかり現場検証に混ざっていたコナン君の報告に。

上原刑事が素っ頓狂な声を上げてしまった。

・・・・根志来組がちょっかいかけて来てるこの状況で、そこの組員の遺体。

確かに、無関係だとは言えないな。

・・・・っていうか、コナン君。

よくご遺体のところに行けたね・・・・。

エルちゃんがいるからって、わざわざブルーシートで区切られているのに・・・・。

 

「さっきもめたってことは、まだ村にいるはずだな」

「ええ、それこそ被害者を探している可能性もあります」

「話を聞く必要がありそうですね」

 

・・・・ごほん。

とにかく。

長野県警のお三方は、根志来組こと、鬼塚達にも聞き取りをするべきだと結論付けたらしい。

もちろん、奴らの被害者でもある頼人君達にも。

 

「コウメイ、ここを頼む。俺は鬼塚を探し出して聞き取りをする」

「ええ、引継ぎが終わり次第僕も合流します」

「分かった・・・・上原は永逢神社の方を頼む。無関係とは言い難くなったからな、一人息子と奥さんの甥っ子から、話を聞いて来てくれ」

「了解!」

 

上原刑事に指示を出した大和警部は、次の瞬間。

にやりと、獰猛な笑みを浮かべて。

 

「ついでだ、マルボウどもの情け無ぇ(ケツ)を、蹴っ飛ばすネタを持って来い!」

「ええ、もちろんッ!!」

 

ともすれば、こちらが『その筋のモン』では、となりそうな顔に。

上原刑事は、ノリノリで頼もしい返事をしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題(エッホエッホ)

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――うおー!ホントになげー階段!!」

「こりゃあ、着くころには膝が大変なことになってそうじゃのう」

 

それから少し後。

ヨヨさんの護衛を、ベリィベリーさんと交代した私は。

ましろさん達の他、コナン君一行も加えて。

再び永逢神社を訪れていた。

事件現場となってしまった郷土資料館の館長さんが、探偵団を気遣ってくれて。

『少しでも楽しい思い出を』と、スタンプラリーの台紙をくれたのだ。

だけど、そのコースの中に永逢神社が入っていた。

暴力団に狙われているということもあって、行こうか行くまいか悩んでしまったんだけども。

 

『――――ソラちゃんとヨヨさんが追い払ったばっかりだし、行くなら今じゃないかな』

『危ないとこならなおのこと、とっとと済ませちゃおうよ』

 

というあげはさんの鶴の一声により、一足先に神社に向かうことになったのだ。

 

「今度は抜け駆けすんじゃねーぞ!コナン!」

「ソラさんもいるんですからね!」

「わぁーってるよ、ったく・・・・」

 

――――例の如く服部君についていこうとしたコナン君。

もちろんそれが『正しい』のは分かっているけど・・・・。

うちの子達がいる手前、今回は『大人としての矜持』を貫かせてもらうことにした。

具体的には、首根っこを掴んで引き止めた。

 

「おばあさん、大丈夫かなぁ」

「大丈夫だよ、ベリィベリーちゃんも強いもん!」

「ええ、安全面はばっちりですよ」

 

あんなことがあったのに、ヨヨさんを心配してくれる歩美ちゃんへ。

あげはさんと一緒に、フォローを入れる。

うちの頼れる同僚ですよ!

スカイランド云々は言えないけどな!

 

「あ、そろそろ一番上かな?」

「なんだか、足腰鍛えられそうですね」

「確かに、いいトレーニングになりそう」

 

蘭さんも交えて、長い階段についてコメントし合っていると。

登り切ることが出来た。

 

「ひゃっほー!スタンプどーこだ!?」

「あ、待ってくださいよー!元太くーん!」

「歩美も行くー!置いてかないでー!」

 

子ども達が駆けて行く中、境内を見渡せば。

ちょうどお話を終えたらしい上原刑事とヨヨさんが。

見送りの頼人君と福城さんと一緒に出てきているところだった。

 

「あ、おばあちゃん!」

 

無事な姿を見て、ましろさんが明るい声を上げた。

まさしく花が咲くような笑顔を見せられて、ヨヨさんも同じようにほっとするのが見える。

そんな二人に、私もまた安堵を覚えたんだけども。

 

「――――ッ」

 

ぼうっと、ましろさんを見つめる頼人君の様子は。

流石に看過できなかった。




おまけ、モッタイナイオバケが降りて来たので・・・・。

――――『穴が開く程』とは、このことかと。
大和は、己を見上げる赤子を見下ろし返す。
元々の顔もそうだったが、左目に傷がついてからは。
子どもには泣かれるのが常だった彼にとって。
目の前の赤子は、エルは。
ただただ物珍しそうに大和を見つめるにとどまっている、珍しい類の子どもだった。
そのまま両者ともなく、視線を外せないまま。
じぃっと見つめ合っていると。

「――――めんめ、たいたい?」
「あ?」

ぽつりと、エルが呟く。
喃語なこともあり、大和は生返事。
対するエルは、構わずに両手を広げて。

「たぁいのたぁいの、てんでけー!!」

これは大和にも分かった。
それはそうと、突然かけられた『痛いの飛んで行け』に、きょとんとせざるを得ない。
――――一方のエルは。
大和の左目と、ソラの左目が。
重なって見えていた故にこその行動だったが。
大和が知る由もない。

「たいたい、ないない?ないない?」

得意げに笑いかける顔が、なんだかおかしくなってきて。

「――――おう、『ないない』だ。ありがとうな」
「あーい!ないなーい!」

にかっと笑い返したのだった。

「――――あの子、かなりの『大物』ですね」
「ん"ん"ッ、かわい・・・・!」

一部始終を見ていた諸伏は、エルの肝っ玉に感心し。
上原はあまりの尊さに胸を押さえたのだった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。