皆様、日ごろのご愛顧、誠にありがとうございます!
この嬉しさと、「アーッ!!ソラましーッ!!」のパッションで書き上げた最新話。
どうぞお納めください(笑)
『――――全く、悪い子です』
「ッ、壊されたか・・・・」
ホテル、コナン達の部屋。
早くも夢の中に入った小五郎の隣。
ツバサに仕掛けた盗聴器の様子に、耳を傾けていたコナンは。
うんともすんとも言わなくなった向こう側に、そう判断した。
(あの声はソラさんだったな・・・・)
何はともあれ、壊れたものはしょうがないと。
しわの寄った眉間を揉みながら、コナンはベッドに倒れ込む。
そもそも、彼女達が犯人ではないのは分かりきっている。
欲しかったのは、ヨヨが、『ヨヨ達が』持っている聖地の情報だ。
管理を任されているヨヨはもちろんのことだが。
コナンが注目していたのはソラ、ツバサ、ベリィベリーの三人。
平次が見せてくれた画像に、彼らが顕著な反応をしたことが引っかかっていたコナンは。
あわよくば情報をつかみたいと思っていたのだが。
まさか、こんなに早くバレるとは。
(まあ、こればっかりはな)
盗聴器を仕掛けたことがバレた以上、容疑者として疑われているのではと警戒されては元も子もない。
暴力団に目を付けられ、警察も上手く動けていないこともある。
守れるなら、守りたいのだ。
無用な心配はさせたくない。
(――――何より)
気の所為でなければ。
聞こえたソラの声に、敵意は感じられなかった。
いたずらを咎める様な雰囲気はあったが、それだけ。
その態度に、コナンは
(また明日、だな)
何にせよ、今日はこれ以上出来る事はない。
あくびを一つ。
大いに働いた頭を休ませるべく。
コナンもまた、夢の中へ赴くのだった。
◆ ◆ ◆
「――――はぁーッ」
さて、時刻は22時過ぎ。
大浴場の利用時間が、23時までなのはありがたいけども。
人のいなさそうな時間を狙っていたら、ギリギリになってしまった・・・・。
まあ、そんなに長湯するつもりはないから・・・・(震え声)
「いい月だぁ」
やや行儀悪く足を延ばして、月を見上げる。
もはやおなじみの霧がうっすら掛かっていて、まるで真っ白なヴェールをかぶっている様だった。
・・・・あーあ、これで事件がなかったらなぁ。
コナン君も、聖地のことがよっぽど気になってたらしい。
盗聴器だか何だかを、ツバサ君に仕掛けちゃってたくらいだし・・・・。
スカイランドのことを知られるわけにはいかないから、外させてもらったけど・・・・。
いらん
「もどかしいな・・・・」
彼なら大丈夫だって分かっているだけに、口をつぐまなければならない罪悪感ががが・・・・。
ヴーッ!!(うめき声)
今頃反応が無くなった盗聴器に慌てふためいているんだろうな・・・・。
本当、推理に余計なノイズを入れてしまって・・・・。
誠に・・・・誠に・・・・!
「ソラさん?」
「ギャアッ!!」
不意に後ろから声をかけられて、この世の終わりみたいな悲鳴を上げてしまった。
びっくりしたまま振り向くと、明らかにしょんぼりしているましろさんがいて。
「『ギャア』は、さすがに傷つきます・・・・」
「ああああああ、すみませんすみません!考え事に夢中になっていたものですから・・・・!」
グワーッ!!
やーらーかーしーたー!!
「ご、ごめんなさい・・・・」
あまりの急な出来事に、情けなく肩を落として謝るほかない。
だけど、その様がよっぽど滑稽に見えたのか。
ましろさんは『しょうがないなぁ』とばかりに笑みを零したのが聞こえた。
「いいですよ。こっちこそ、急に話しかけちゃってごめんなさい」
「は、はい・・・・」
何はともあれ。
場所が場所なだけに、このままでは風邪をひいてしまいかねないので。
一緒の湯船に入ることになった。
・・・・なった、んだけど。
「・・・・何故、近くに来るんですか?」
「逆になんで離れるんですか?」
「いや、なんでって・・・・」
・・・・何となく、距離を取って入り直したら。
ましろさんは当然のように隣に陣取って来た。
離れようと距離を取る度に、その分を詰められてしまう。
そのままだと露天風呂を一周してしまいそうだったので、最後には白旗を上げて止まった。
・・・・お風呂で蒸されて、しっとり湿った肌が。
どうしても、目についてしまって。
(違う)
違う、違う、違う。
そうじゃない、違う。
好きだけど、好きだけど。
違う、この目は違う。
間違っている。
「ソラさん?」
「ッ・・・・」
熱暴走を起こしかけていた思考が、ましろさんの声で引き戻された。
あっっっっっっぶな・・・・何か変な方向に行きかけてた・・・・!
っていうか今何考えてた?何を思ってた?
自覚すればするほど、背筋が凍り付いていくのが分かる。
「あの」
「ちょ、ちょっと待って!今はダメ!」
伸ばされた手を、しぶきを上げながら叩いてしまう。
・・・・嗚呼。
最悪だ、最悪だ。
最悪過ぎる!
私、今。
人として、大人として。
とんでもなくとんでもないことを考えていたな!?
のぼせてる?うん!!のぼせてる!!
「ぁ、がりましょうか!!」
「え、でも」
「のぼせましたお願いします上がりましょう!!」
上がろっか!?
うん!!上がろう上がろう!!
そうしよう!!
来たばかりのましろさんには悪いけどね!!
上がろうぜ!!
「ソラさん、落ち着いて・・・・!」
狼狽え過ぎていたのか、ましろさんが手を伸ばしてくる。
それからも逃げようとして、
「ッぁ・・・・!」
「――――ッ」
足を、滑らせる。
「ひゃっ・・・・!」
「ッ・・・・!」
ばしゃん、と。
派手に水柱を立てて、背中から倒れる。
あいたたた・・・・でもお湯がクッションになってくれたのが分かるや。
助かった・・・・。
「す、すみません。ましろさん、お怪我は――――」
濡れた顔をおざなりに拭いながら、前を見る。
――――ましろさんが、目の前にいて。
思考が停止する。
・・・・えっ、なんで。
すごく近い。
もしかしてものすごい姿勢になってる?
「そら、さん」
顔、が、近寄って。
キス、されて。
――――ッッッッ!!!!!!
「コラッ!!どこで覚えたんですかッ!?悪い子ッ!!」
「あぃたッ」
すぐに引き離して、おでこにチョップ!
いや、悪いけどこれは!!こればっかりはダメだよ!!
マッッッッッジであっっっっっっっぶなかった!!!!!!!!!
開いちゃいけない扉を開くところだった!!!!!!!!!
「・・・・ソラさんなら、いいのに」
「貴女が良くても私がよくないです!!」
「むぅ・・・・」
・・・・信頼は、嬉しいけれど!!
それはそれ!!これはこれ!!
ましろさんの顔がぷっくり可愛く膨らんでしまっても!!
ダメなものは!ダメ!
「――――お客様ー!そろそろ終了時間ですー!」
「ッはーい!」
天の助けと言わんばかりに、従業員さんの声が聞こえた。
よかった・・・・安心した・・・・!
「ほら、部屋に戻りましょう」
「・・・・分かりました」
ましろさんには悪いけれど、これ以上は良くない。
タオルで体を隠して、手を引く。
「お邪魔しました」
「いえいえ、ありがとうございましたー」
掃除に入る従業員さんと軽く挨拶を交わしながら、脱衣所へ。
当たり前だけど、私とましろさん以外誰もいなかった。
「早くお部屋に戻りましょう、皆さん心配してるかもしれませんから」
「・・・・はい」
・・・・着替え終えたのはいいけれども。
ましろさんはすっかりご機嫌ナナメになってしまっている。
うう・・・・思えばちょっと強めに言い過ぎたかもしれない・・・・。
・・・・機嫌を直してもらう方法。
思い付きはしたんだけども・・・・うう・・・・こんなの大人がやることじゃないよ・・・・。
でも、このまま戻ったらあげはさんが怖いし・・・・。
何より、私が納得できない。
背に腹は、代えられないかぁ・・・・。
「――――ましろさん」
「何です、ぁ・・・・」
むくれた彼女の手を取って、物陰に引き込む。
適当な場所を選んだけれど、浴場からも廊下からも見えない位置。
そんな都合のいい場所で、唇を寄せる。
「――――貴女が嫌いじゃないんです」
離しながら、真っ赤になった顔を見下ろす。
「ご両親や、ヨヨさんが、大事にしてきた人ですから・・・・私も大事にしたいんです」
「ぁ、ッ・・・・」
「先ほどは大変失礼しました、どうかご容赦を」
・・・・強気だった先ほどとは打って変わって。
可愛らしい反応をしてくれているましろさん。
私はこのまま部屋に戻るつもりだったんだけども。
「ま、待って」
引き止めるように、浴衣を握られる。
こちらを見上げる目は、期待に潤んでいて。
「はい、何でしょう」
続けても、止めてもいい様に。
落ち着いて問いかける。
二度、深呼吸したましろさんは。
改めて、見上げて来て。
「もう、一回・・・・キス、して、くれたら・・・・許します」
そんなことを、言ってくれたから。
「・・・・はい、仰せのままに」
もう一度、唇を落とした。
コナン君
鬼塚達を出し抜き、ヨヨや永逢神社の面々を守るために。
少しでも「聖地」の情報を集めたかった。
即効で盗聴器を壊されたことで、要らぬ警戒を持たせているのではと思っている。
ソラ(偽)さん
コナン君が敵ではないと確信しているけれど。
それはそうとスカイランドのことを隠す為に、盗聴器を壊したので。
要らぬ疑念で推理を邪魔してはいないかと心配している。