ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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キミプリの映画に脳を焼かれ、チェンソーの映画主題歌をキメていたら。
ちょっと遅くなりました・・・・()



今回、再び昨年のコナン映画『100万ドルの五稜星』の内容に触れており。
更に、ネタバレスレスレのお話をしております。
読まれる際は、各自自己責任でお願いします・・・・!(五体投地)


偽物、人質を取られる

翌朝。

朝食の時間がコナン君一行とかぶったんだけども、特に何かしらを言及されることはなかった。

・・・・いや、なんか気まずそうな目を向けられはしたんだけど。

それだけだ。

推理の邪魔には、大してならなかったのかな?

だといいなぁ・・・・。

・・・・私とましろさんも、特に何もなかったよ?

当たり前でしょ?

ごほん。

 

「――――ソラさん!おはよー!」

「おはようございます、歩美ちゃん。ぐっすり眠れましたか?」

「うん!昨日は楽しかったー!」

「それはよかった」

 

朝ごはんも終えて、ひと心地ついていると。

歩美ちゃんがてけてけ駆け寄って来た。

今のところ、昨日の出来事がトラウマになっている様子はないな。

よかった・・・・。

ところで、何か御用かな?

 

「あ、それでね!ソラさん!」

「はい、なんでしょう」

「神社に、お守り買いに行こう!」

「おまもり」

 

提案をオウム返しすると、歩美ちゃんはにっこり頷く。

 

「ソラさん、これまですっごく大変だったから。お守りがあれば大丈夫かなぁって!」

「・・・・っ」

 

グ、グワーッ!!!!(浄化される音)

ええ子・・・・ええ子・・・・!

自分も大変な目に遭ってるって言うのに・・・・!

 

「いーじゃん!昨日の今日だけど、行ってみようよ!」

「ああ、彼らの安否確認もかねてな」

「うう、そうですね・・・・!」

 

胸を押さえている私を見て、虹ヶ丘邸のみんなも賛成してくれている。

そういうことで。

残りのスタンプを集める前に、もう一度永逢神社に足を運ぶことになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題(てってけてってけ)

 

 

 

 

 

 

 

「おはよーございまーす!」

「あれ、おはようございます」

 

今度は毛利探偵も一緒に。

周遊バスに乗って、再びの永逢神社である。

 

「おはよーさん!」

「みんな早いわね」

 

皆で長い階段を登れば、ちょうど境内を掃除している頼人君と福城さんが。

服部君や和葉さん、それから上原刑事と馬場巡査もいる。

 

「早くにすみません、用事が済んだらすぐにお暇します」

「もしかして、お守りっすか?掃除終わってからでよかったら、お売りしますよ」

 

そんなに長居しない旨を伝えると、用事の内容をすぐに察してくれる頼人君。

さすが神社の息子さんやでぇ・・・・。

なんて感心していると。

 

「だったら、一緒にやろうよ!」

「エ"ッ!?」

 

ましろさんが、そんな提案をしたのだった。

なるほど、ええやん。

 

「あら、いいわね」

「みんなでやった方が速く終わるよね!」

「ヤッ、でも・・・・!!」

「遠慮なさらず、押しかけているのはこちらですから」

 

顔を真っ赤にした頼人君には悪いけれど、ここはましろさんを援護させてもらう。

 

「ええやん、楽しそう!」

「そうだね、お言葉に甘えようか」

「俺も、いいと思います!」

 

和葉さんや福城さん、馬場巡査からも好反応をもらったので。

みんなで境内掃除を手伝うことになった。

落ち葉を入れるビニール袋や竹ぼうき、熊手を各々手に。

あっと言う間にあちこちに散らばってせっせとお掃除開始。

時折頼人君や福城さんに確認しながら、境内の落ち葉やゴミを掃除していく。

 

「随分マナーが悪い参拝客がいるのですね」

「これまでいなかったわけじゃないですが、鬼塚達が絡んでくるようになってからは・・・・」

「なるほど」

 

福城さんと、飲みかけのジュースや食べかけのお菓子を片付けながら。

事態の重さを、改めて噛み締めたのだった。

・・・・このタピオカミルクティー、村にないお店のやつだ。

わざわざ買ってきたってこと?

金と時間と労力を無駄にかけてんな。

アホくさ・・・・。

なんかもう、徹底的に嫌がらせしようって魂胆が見え見えで。

比較的第三者の立ち位置にいる私ですら、辟易してしまう。

 

「・・・・?」

 

つくづく厄介だなと考えていると、福城さんの様子がおかしいことに気付く。

なんというか、怖い顔になっている・・・・?

 

「あの、福城さん?」

 

根拠はないけれど。

なんとなく、本当になんとなく。

放っておいてはいけない様な気がして。

声をかけようとした。

 

「――――キャアアアアアアアアアッ!!」

 

ましろさんの悲鳴が聞こえたのは、その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

「はきはきー♪」

「そうそう、エルちゃん上手!」

 

ましろの箒に手を添える形で、上機嫌に落ち葉を掃いていくエル。

そんな微笑ましい光景を横目に、蘭やあげは、園子達も熊手で砂利を整えていく。

 

「ええッ、馬場巡査って元ヤンだったんですか?」

「はは、実はそうなんです。お恥ずかしい」

 

その一方で、馬場と作業していた和葉は。

驚きの声を上げていた。

 

「僕が学生だった十年前、この辺にはよく暴走族が来ていて。うちの両親はもちろん、村のじいちゃんばあちゃんも騒音に悩まされていたんです」

 

田舎ということも有り、警察が駆けつけるまでに逃げられてしまう。

『ならばその前にやっつけてしまえ』と考えた若き日の馬場は。

暴走族が出る度、バットを片手に戦いを挑んでいたらしい。

 

「でも結局、僕のやっていたことも暴力という犯罪です。結果的に、暴走族諸共警察に捕まってしまって・・・・」

 

幸いだったのは、きちんと話を聞いてくれるタイプの警官に対応されたことだろう。

馬場少年の言い分を聞いてくれた警官は、むやみな暴力を強く戒めた上で。

『人の為に戦えるキミは、警察官に向いている』と言ってくれたらしい。

 

「実際、元は不良だったって警官は多いわよ。私の同期にも何人かいるわ」

「へぇー!」

「馬場巡査の同期はどうでしたか?」

「さあ、僕の場合、元ヤンって負い目でもあったので、ちょっと聞きづらいところがあって・・・・」

「あ、すみません。気が回らなくて・・・・!」

 

話を聞いていた面々が、上原の補足に感嘆の声をあげている中。

当然の疑問を持った蘭が、慌てて馬場に頭を下げる。

その時だった。

 

「へーえ、どこにでも昔ヤンチャしてたヤツはいるんだな」

「――――ッ」

 

ましろの耳に、一番警戒するべき声が聞こえて。

抱いていたエルに、銃口を突き付けられた。

 

「キャアアアアアアアアアッ!!」

「ッましろん!?」

「プリンセス!」

「鬼塚ッ!?」

「この、離れろ!!」

 

突然の、そしてあまりの出来事に仰天したましろが。

咄嗟に悲鳴を上げれば。

境内にいた面々が、一気に駆けつけて来る。

ましろとエルを手中に収めた鬼塚が、得意げに笑う後ろからは。

銃火器を持ったガラの悪い連中が、続々とやってきていた。

 

「よう!バアさん!取引だ!」

「・・・・何かしら」

「なぁに、簡単なことさ・・・・孫の命が惜しかったら、聖地の扉を開けな」

 

文言では『孫』と言っているのに、銃口を向けているのがエルであるところが実にいやらしい。

 

「ならば、せめてエルちゃんにはその銃を向けるべきではないわ。私の孫ではないの」

「けどだぁいじにしてんだろ?『ばぁば』だなんて、可愛い呼び方されてんなぁ」

 

ヨヨは必死に平静を保っているが、その手元は震えていた。

当然見抜いている鬼塚は、ニヤニヤ顔を崩さない。

蘭や平次を始めとした、腕に覚えのある面々は身構えてこそいるものの。

人質がいることと、暴力団達がアサルトライフルやサブマシンガンなどの、高火力の銃器を手にしていることで。

二の足を踏んでいた。

 

「なぁに躊躇ってるんだよォ、簡単な話だろォ?」

 

そんな面々を前に、勝ち誇った鬼塚は役者よろしく手を広げる。

 

「たったの一回だ、たった一回頷くだけで。救える命が二つもあるんだぜ?」

 

簡単に命を奪える無法者が、『命は大事にしないと』と言い聞かせる光景は実に滑稽だったが。

しかし、相手の言い分も一理あると感じているのもまた事実。

失われた命は、回帰しない。

どんな奇跡も、どんな神も。

『死』を完全に覆すのは、叶わない。

 

「ふざけるなッ!結局金じゃないか!!」

 

医大生として学んでいた故にこそ、それを痛いほどに理解している聖が。

足を踏み鳴らして前に出る。

 

「それで得た汚らわしい金を元手に!!また新たな犠牲者を出すつもりだろうッ!?」

 

訳知りのコナンと平次は、聖の気迫に一瞬肩を跳ねるだけだったが。

ソラやあげはを始めとした、虹ヶ丘邸の面々は。

彼の変わりようにびっくりしていた。

 

「はは、抜かしやがる」

 

対する鬼塚は、聖の気迫を前にしても余裕を崩さずに。

 

「俺ら顔負けにやべぇことに加担してた兄ちゃんが、いっちょまえに吠えるじゃねぇか」

「――――ッ」

 

聖の二の句を、封じた。

 

「知ってるぜ?お前と親父さんが、函館でやらかしたあれこれ!とんでもない人死に出しかけといて、よくもまあ善人面出来るもんだな」

 

そうして、何も言えなくなった聖を。

実に実に、愉しそうに見つめていた。

困惑と、驚愕に。

誰もが言葉を失った中。

声を張り上げたのは。

 

「――――一緒にすんなやッッッ!!!!!」

 

平次だ。

 

「そりゃあ、こいつと良衛(りょうえ)さんがやったことは、絶対に許されへん!!せやけどな!!お前らみたいな、人を傷つけてナンボや思うとる連中と同じなわけ、ないやろうが!!!」

 

事件解決に携わり、聖とは文字通り刃を交えた平次。

彼らの動機の根幹にある、戦争への怒りと危機感を。

切欠となった『喪失』を知っていた彼は。

鬼塚を視線だけで倒せそうな気迫を見せる。

 

「良衛さんと聖さんがあの事件を起こしたのは、自分達が出してしまう以上の犠牲が見えていたからだ。選んだ手段を許してはいけないけれど、根底にあったのは平和を祈る気持ちだ!!」

 

誰もが気圧される中で、同じく事件に立ち向かったコナンが言葉を引き継ぐ。

 

「他人の人生を踏みつけにして、他人の尊厳を貪って得たもので、さらに多くの犠牲者を望むてめーらとは、天と地ほどの差があるんだよ!!」

 

そしてこちらもまた、子どもとは思えない迫力で鬼塚に物申したのだった。

 

「・・・・そうだよ」

 

さらに引き継いだのは、頼人だ。

 

「何の反省もしないお前らなんかより、聖兄ちゃんの方を信じるに決まってんだろ!!なんでどや顔出来るんだよ!!ダッセーやつらだな!!」

「・・・・ッ」

 

何もできない子どもだとばかり思っていたのだろう。

頼人の反撃に、鬼塚の顔が目に見えてひくついた。

 

「だいたい、女の子と赤んぼだなんて、弱いって分かってるのを人質に取ってる時点で程度が知れてんだよ!!バァーカッ!!」

「・・・・じゃあどうすんだよ、お前さんなら」

 

もはや笑みを消し、静かに見据える鬼塚へ。

少年は気圧されてしまいながらも、自分を奮い立たせながら。

親指を、胸に立てた。

 

「ッ俺とエルちゃんを交換しろ!!話はそれからだ!!」

「何?」

「俺は聖地についてまだ何にも教えられてない!けど、間違いなくこの神社の後継ぎだ!!仕掛けの解除に関係ないわけ、ないだろう!?」

 

提案に、鬼塚は敵ながら感心してしまう。

上原と馬場が構えている、小さな拳銃では太刀打ちできない銃火器が並び。

追い打ちをかけるようにエルとましろが人質になっている中で。

非力なりに自分に出来る事を考えて、それを実行する度胸を持っている。

御しやすい、そして潰しやすい子どもだとばかり思いこんでいただけに。

鬼塚の顔に、獰猛な笑みが戻ってくる。

 

「・・・・いいだろう。おもしれぇもん見せた褒美だ、言うこと聞いてやる」

「頼人君・・・・!」

 

エルが敵から離れるのは、何よりの僥倖だ。

しかし、代わりに同じく守られるべき頼人が鬼塚の手に渡ってしまう。

本来なら、ましろ共々救い出さなければならないのに。

この場の誰も、その手段を持ちえない歯がゆさに。

上原達警察や、小五郎を始めとした年長者たちは。

口元を噛み締めたり、目を伏せたりしていた。

 

「――――分かったわ」

 

もうこれ以上の抵抗は不可能だと判断したのだろう。

やり取りの間に、たっぷり逡巡したらしいヨヨが。

静かに、頷く。

 

「さっすが♪」

「おばあちゃん・・・・!」

 

守るべき人が、立て続けに悪人の手に渡ってしまう状況に。

声を上げたましろを始め、現場の全員が悲痛な顔をする。

誰よりも事の次第を理解しているヨヨは、重い溜息を吐き出すと。

 

「――――けれど」

 

凛と、視線を鬼塚に向ける。

 

「どんな結果になっても、私は責任を取れないわ。それでもいいのね?」

「ッハ!中に池しかねぇ場所で、何を覚悟しろってんだよ!」

「・・・・ちゃんと言ったわよ」

 

どこか呆れた様子で再び息を吐くヨヨの傍らで、ツバサがましろの下へ駆けだした。

エルを引き取るためだ。

 

「プリンセス、よくぞご無事で・・・・!」

「ちゅばさ・・・・!」

 

ツバサがましろに駆け寄り、エルを抱っこひもごと受け取る。

 

「ツバサ君、あとはお願い」

「はい・・・・ましろさんも、お気を付けて」

「まちろぉ・・・・!」

 

いやだいやだと、伸ばされる手を。

胸が引き裂かれる思いで制しながら、ツバサは仲間達の下へ戻っていく。

 

「――――お互い、いい取引になって何よりだ!!」

 

ヨヨどころか、ましろと頼人も手中に入れた鬼塚は。

銃口をましろに突き付けたまま、上機嫌に声を張ると。

 

「じゃあ、俺達はこのまま聖地に行くから!!あばよ!!」

 

そのまま、三人を連れて行ってしまうのだった。

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

――――畜生。

畜生、畜生、畜生・・・・!!!

徹頭徹尾、あいつのペースだった!!

ましろさんどころか、ヨヨさんも守れなかった!!

それどころか、エルちゃんの為に、頼人君まで・・・・!!

 

「――――悔しがるのは後にしろ」

 

後悔に呑まれかけていたのを、引き戻してくれたのは。

ベリィベリーさんの一喝と。

 

「――――ッ」

 

一斉に向けられた、銃火器達。

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

「――――話が違うわ!!」

 

階段を降りている最中。

響き渡った銃声に、ヨヨが食って掛かる。

 

「私どころか、ましろさんや頼人君もこちらに来た!!手にかける必要はないはずよ!!」

「――――ばあさん、なぁんか勘違いしてねぇか?」

 

剣幕もどこ吹く風。

気だるそうにうなじをかいた鬼塚は。

次の瞬間、ヨヨの横っ面を張り飛ばす。

 

「ああっ・・・・!」

「おばあちゃん!!」

「いや、あんたの言い分も最もだけどさ」

 

危うく倒れるところを、頼人に支えられたヨヨへ。

煽る様に顔を寄せて。

 

「そもそもの話、俺は『殺さない』なんて一言も言ってねぇんだわ」

「――――ッ!」

 

浮かんだ笑みは、彼らが徹底的に『相容れない生き物』であることを思い知らされて。

ヨヨ達人質は、背筋を凍らせた。




次回、『暴力団、死す』!()
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