こう『帯に短し、タスキに長し』みたいな文章量になると、切り上げるかどうかちょっと迷いませんか?(笑)
「えーっ!?エイリアンだと思われてるぅ!?」
「そうなんです・・・・」
夕方。
とてもしょぼしょぼして帰って来たソラに仰天して、訳を聞いたましろは。
驚愕に声を裏返した。
「
「し、正体がバレちゃったんですか!?」
「いえ、バレてないからこそ厄介なことになったというか・・・・」
幸いにも、キュアスカイに変身したところは見られていないらしい。
だが、空から降って来たところと、
『地球侵略に来た怪物の一派ではないか』と疑われている次第だった。
「騒ぎに気付いた社長さんと女将さんのお陰で、その場は収まりましたが・・・・どうしたものかと・・・・」
「プリキュアのことを言いふらすわけにもいきませんよねぇ・・・・」
礼儀正しい彼女にめずらしく、テーブルにぺしゃんと突っ伏している様から。
相当参っているらしい。
ましろも困った顔で眉をひそめて、悩み始めてしまった。
「・・・・まずは、敵意がないことを示すしかないでしょうね」
「・・・・そう、ですね。ことを打ち明けられない以上は、地道にやるしかない」
ヨヨの提案に、起き上がったソラは頭を抱えつつ頷いたが。
表情は晴れなかった。
「心配させてすみません、もう少し頑張ってみます」
「ソラさん・・・・」
それでも、ましろに笑いかけるのは。
年上の意地故だった。
◆ ◆ ◆
「おはようございます!」
「おはようソラちゃん!今日もよろしくね!」
「はいっ!」
尽きない悩みはあれど、今日も今日とてアルバイトである。
やっぱりどの世界でも先立つものは必要だからね・・・・。
「昨日はうちのドラ息子が悪かったね、あの後よく言っておいたけれど・・・・」
「いえ、大丈夫です!それに、外国の人間だから警戒しちゃったのかもしれません。それがらみの犯罪もないわけではないですし、警戒心が強いのはいいことだと思います」
前世でも実際、問題になってたよねぇ。
勝手に日本の法基準を無視した業務をする人達。
知らないということを加味しても、めちゃくちゃ悪質だという印象を持ったのを覚えている。
「だからって誰彼疑っちまうのはいけないことでしょう!ソラちゃんだって、そういうことしにうちに来たわけじゃあるまいに!」
「それはもちろん」
女将さんのフォローをありがたく思いつつも、ふと視線を感じたのでそちらを見れば。
こりずにこちらを警戒する鉄郎くんと目が遭った。
・・・・先は長そうだな。
「昨日はラベル張りとカートンの補充をやってもらったから・・・・今日は包装を覚えてもらおうかしら!こっちよ!」
「はい!」
ともあれ、まずはお仕事お仕事!
「昼飯だー!」
「あー、腹減った!」
包装以外にも、当然やることがある。
バタバタしていたら、あっという間にお昼を知らせるサイレンが鳴った。
時間が経つのって、こんなに早いんだな・・・・。
「おっ、ソラちゃんはお弁当かい?」
「はい、居候先の娘さんが作ってくれて」
ましろさんが持たせてくれたお弁当を広げていると、職人さんが話しかけてくれる。
「いいねぇ、愛妻弁当か!」
「おいおい!ソラちゃんは女の子だよ!」
「バッカ!この頃は女の子同士もアリなんだよ!知らねえのか!」
「「「ワッハッハッハッ!!!」」」
「ま、ましろさんはそうじゃないです・・・・!」
ご、豪快だ・・・・。
ひとまず『ましろさん愛妻説』を否定しておいたけど、聞いてもらえているかどうか・・・・。
でも、悪い人達ではなさそうで安心した。
ほっとしながら、くもぱんを頬張った時だった。
「おや、鉄ぼっちゃん!」
「んっぐ」
職人さんの一人が、その名前を口にしたものだから。
思わずドキっとしてしまう。
そちらを振り向くと、やっぱり警戒してる鉄郎くんが。
「ぼっちゃん、今日はご一緒しないので!?」
いつもは一緒に食べているのか。
屈強な彼らに、日ごろから可愛がられているのがよく分かる。
そんな鉄郎くんは、私から視線を逸らさないままこちらを睨んで。
「・・・・今日は、いい」
不機嫌にそう言うと、ぴゃっと去ってしまった。
「ありゃりゃ、行っちまった」
「ソラちゃん嫌ってるってのは、本当だったんか」
「なんで嫌われてるんかねぇ」
「あはは、私もよく分からなくて・・・・」
エイリアン疑惑持たれてるとか、言えるわきゃねぇわな・・・・。
「まああれだ、気にすんな!」
「そーそー!あれかもしんねぇぞ!?ソラちゃんかわいいから、ホの字の可能性も・・・・!」
「それ今はセクハラだよ!言葉にゃ気をつけな!」
「いっでぇ!女将さぁん!?」
背中を思いっきり叩かれて悲鳴を上げる職人さんを、他の人達と笑っている横で。
ちらりと、鉄郎くんが去っていった方を見た。
◆ ◆ ◆
「ちえっ、何だよ。父ちゃんも母ちゃんも・・・・!」
鋳頭鋳造、敷地内。
昼食も早々にすませた鉄郎少年は、ふてくされながら石を蹴っ飛ばしていた。
胸に抱くのは、自分は間違っていないという確信だ。
だって、彼は見たのだから。
営業に行っていた父を迎えに行った先。
はるか上空から落ちて来た、あの女を。
その後怪物が出てきて、人ごみに流された所為でその日は終わったのだが。
翌日、ソラシドモールで中学生くらいの女の子と一緒にいるのを見かけた。
その日も怪物が現れた。
数日後、丘の向こうの里山で友達と遊んでいると。
またあの女を見かけたのだ。
そして、怪物も再三現れた。
山の方は直接見たわけではないが、『ランボーグ!!』と叫ぶ声は間違いなく聞いた。
「剣で地面攻撃して無傷ってヤツが、怪しくないわけないだろ。ぜってー何かある」
あのいけすかない女の正体を、意地でも暴いてやる。
なんだかんだ鉄郎少年は、両親と、可愛がってくれる職人たちが大好きなのだ。
大好きなものに近づく悪い奴は、絶対に追い払ってやる。
子どもながらに、そんな決意を抱いていた。
その時だった。
「――――ここか、キュアスカイがいるのはッ」
何者かが、のしのしと敷地内に入って来た。
思わず隠れた鉄郎少年は、物陰からそっと覗き見てみる。
まさしくまるまるとしたボディに、豚のような顔。
そして、人には有り得ない肌の色。
(まさか、マジのエイリアン!?)
驚愕に目を見開く少年に気付かないまま、『エイリアン(仮)』はにやりと嫌な笑みを浮かべる。
「にっひっひ、オレサマ思いついたのねん!アップドラフト・シャイニングが厄介なら、一人の時を狙えばいいのねん!」
(まずい、みんなに知らせないと・・・・!)
気付かれないように、その場を立ち去ろうとした時だった。
「今日がお前の最後の日なのねん、覚悟しろソラ!!」
「――――ッ!」
――――今。
あの『エイリアン(仮)』は確かに。
『ソラ』と言った、口にした!
(やっぱりグルだったんじゃないか!あの女!!)
「――――おいッ!!」
忌々しい顔が浮かんで、鉄郎少年はかっとなって。
思わず飛び出してしまっていた。
「ああん?」
「お前、あの女と!ソラと知り合いなのか!?」
「お前こそなんなのねん?ガキンチョ!」
『エイリアン(仮)』が思ったよりも大きくて、怯みそうになる鉄郎だが。
退きそうになる足を奮い立てて、前に出る。
「ここの人達に手を出してみろッ!!ただじゃすまさないぞ!!」
「ぐぬぬぬ、生意気なのねん!このガキンチョ!」
鉄郎の強気な態度が癪に障った『エイリアン(仮)』は。
――――カバトンは。
凶悪な笑みを浮かべて。
「いいだろう、お望みならやってやるのねん!!」
手を、地面に叩きつけた。
「来い!来い来い来いッ!!!」
ここに来る前に、たっぷりのカロリーを摂取してきたカバトン。
「――――アンダアァーグ!!エナジイイィー!!」
以前の電車ほどでないにしろ、大量のアンダーグエナジーを呼び出して。
「――――ランボォーグッッ!!」
廃棄に出されていた、不良品のやかんに取り付かせたのだった。
◆ ◆ ◆
「――――バケモンだあーっ!!」
そんな悲鳴が上がったのは、昼休みが終わるや否やというタイミングだった。
「ランボーグッ!!」
休憩終了のサイレントとともに、やかん型のランボーグが飛び出してきた。
「逃げろー!!」
「早く、避難するんだ!!」
「ソラちゃんも!ほら!」
「はいっ!」
十中八九カバトンだろうけど、今は人目も多い。
今はみんなと行動して、なんかいいいところでフェードアウトしようと考えていた。
「鉄郎?鉄郎ッ!!」
女将さんの、悲鳴を聞くまでは。
「あれっ!?ぼっちゃんは!?」
「おおい!そっち見てないか!?」
「こっちにもいねぇぞ!!」
「ってことは、まさか・・・・!?」
従業員一同、そろって工場を見る。
当たり前だが、依然ランボーグが大暴れしていた。
「そんな、鉄郎・・・・鉄郎オオォー!!」
「バカ!死ぬぞ!!オイッ!!」
叫びながら戻っていく女将さん。
社長が引き止めようとするけど、手があと少し届かなくて。
女将さんは、工場に戻っていってしまう。
「クソッ、あのバカ!!」
「社長待った!あんたまで行っちまったら・・・・!」
「じゃあこのまま女房と倅見捨てろってか!?あ"あ"ッ!?」
社長も戻ろうとしたけど、職人さんに引き止められてしまった。
・・・・これは。
悪いけど、利用させてもらおう!!
「私が行きます!」
「ハアッ!?ソラちゃん!?」
「皆さんは待っていてください!」
他の職人さんたちは、社長を引き止めるのに精いっぱい。
だから、難なく現場に飛び込むことが出来た。
「待て!おい!ソラちゃん!!」
「戻れー!!」
「嘘だろあの子足速ーッ!?」
良い人達を騙してしまうこと、心配させてしまうこと。
少しの罪悪感を抱いて、駆け抜ける。
「鉄郎くん!女将さん!」
「――――ソラちゃん!」
まずは二人の救助を優先して、ランボーグが暴れる中を走っていると。
幸いにも、二人はすぐに見つかった。
・・・・だけど。
「ソラちゃん!どうしよう、鉄郎が!!」
しゃがんで狼狽える女将さんの足元。
工場の天井の下敷きになってしまっている鉄郎くんが、うめき声をあげている。
隙間が大きくて、中の様子が確認できた。
鉄骨がのしかかってしまっているが、素人目でも潰れていないだろうと判断できる。
それでも骨折は必至だろうが・・・・まだ、十全にやりなおせるチャンスがある!
「てこでどかしましょう!」
「え、ええ!!」
近くにいい感じの瓦礫とパイプを見つけたので、それを持ってきて。
女将さんと協力して、持ち上げようとする。
「ああっ!?」
「そんな・・・・!」
でも、天井の重さに耐えきれず、パイプが曲がってしまった。
くそ、諦めてたまるか!
「他のものを探してきます!女将さんはここに!」
「お、お願い!」
すぐに新しい棒を探そうと、踵を返した時だった。
「・・・・なんで、助けるんだよ」
「えっ?」
鉄郎くんの声が聞こえて、思わず振り返る。
「なんで、助けようとするんだよ。自分を叩いた、嫌なやつだぞ!」
「鉄郎!あんたこの期に及んでまだ――――!」
「――――そんなの知るかッッ!!」
まだ警戒が解けていないのか、そんな恨めしそうな声で言ってくる鉄郎くん。
状況が状況なだけに、ついかっとなってしまって。
大声を出してしまった。
「あなたが危険な場所にいて!助けなきゃいけない状況にあるッ!ほかに理由が必要!?」
「で、でも」
「『でも』も『けど』も『へちま』もないの!!いいから黙って助けられてなさい!!」
指を突き付けて、今度こそ新しい棒を探しに行こうとした。
その時だった。
「見つけたぞ!!」
ばりばりがらがら。
残っていた天井が引き裂かれて、ランボーグと一緒にカバトンが見下ろしてくる。
・・・・このランボーグ。
あの電車ほどじゃないにしても、結構な量のアンダーグエナジーを与えたな!?
これまでと、気配が違う!
「イーッヒッヒッヒ!やーっぱり一人だった!」
「カバトンッ!」
どうする、どうする!?
まだ二人がいる、変身するか!?
迷った一瞬が、明確な隙になってしまって。
「まずは一人だ!やっちまえランボーグッ!」
「ランボーグッ!!」
機関車よろしく蒸気を上げたやかんのランボーグは。
高温で赤熱した腕を振り下ろしてきた。
・・・・まずい、判断ミスった!
間に合わないと分かっていても、足元のパイプを拾おうとした。
――――カバトンは勝利を確信していて、私も敵を注視している。
だからこそ、彼の接近に気付かなかった。
「――――隙ありだぜ!!デカブツウウウウウ!!」
どしゃーん!と、派手な音。
思わずそっちを見ると、フォークリフトがランボーグの足元に突っ込んでいた。
「ラ!ラ!ラ!ラアアアアアアアンッ!?」
完全に不意を突かれたランボーグは、片足で跳び跳ねながら後退して。
ついには倒れてしまう。
フォークリフトを、運転していたのは。
「晴海!鉄郎ォッ!」
「あんたぁっ!?」
「父ちゃん!?」
一目散にかけて来た社長は、女将さんと鉄郎くんをまとめて抱きしめてしゃがみこんだ。
どうやら、制止を振り切って来てしまったらしい。
「ぐぬぬぬぬ、やってくれたのねん!脇役の癖に!」
「うるっせぇ!!この豚野郎!!」
カバトンが恨めしそうに睨みつければ、社長はありったけの声で怒鳴り返す。
「先祖代々継いできた工場だけじゃなく!!倅と女房まで傷つけやがって!!このッ、くらえッ!!」
果敢に啖呵を切るなり、足元の手ごろな瓦礫を一つ掴んでカバトンに放り投げる。
それは全然届かなかったけれど、カバトンを苛立たせるには十分だった。
――――嗚呼、もう。
秘密だのなんだの、言ってられないな。
ここまでの勇気を見せられて、ここまでの家族愛を見せられて。
黙って見過ごすなんて、それこそ。
ヒーローのやることじゃない!
「YOEEE癖に生意気なのねん!!良いだろう、まずはお前達からぺしゃんこにしてやる!その次はお前だ!キュアスカイ!」
「――――いいえ、次はありませんよ」
一歩、前に出る。
手にはもちろん、ミラージュペン。
「ソラちゃん?」
ここで困惑する社長一家に、鉄郎くんに振り向いて。
「――――鉄郎くん、私の正体がなんなのか、でしたっけ?見せてあげます」
「えっ」
「他のみんなには、内緒ですよ」
しーと、ジェスチャーをしてから。
改めて、ランボーグと相対する。
「スカイミラージュッ!」
「トーンコネクトッ!」
「ひろがるチェンジ、スカイッ!!」
――――ああ、後でましろさん達に謝らないとな。