ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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もう少し書きたかったのですが、長くなりそうだったので投稿しちゃいます。


偽物、ドナドナ

「ヨヨさん、殴られたの!?大丈夫!?」

「ありがとうコナン君、平気よ」

 

鬼塚達が制圧されてすぐ、コナンがヨヨに駆け寄った。

へたり込んでいた彼女に手を貸し、立ち上がる補助をする。

 

「おばあちゃん・・・・!」

「心配かけてしまったわね、ましろさん」

「ううん、よかった・・・・よかった・・・・!」

 

次にヨヨは、跳ねるように寄って来たましろも受け入れて。

優しく抱擁した。

 

「頼人君も、お怪我は?」

「な、ない、けど・・・・」

 

頼人には、ソラが安否確認。

問いかけに、彼はこっくり頷いたが。

その顔には困惑が色濃く出ている。

 

「その・・・・ソラさん、どうやってここに来たんだ?」

 

口にしたのは、至極真っ当な疑問だった。

それもそのはず。

彼らがやってきた桟橋は、目の前で爆破されて。

船諸共木っ端微塵になってしまったのを見ている。

泳いでいないのは明らかだし、あれから船を探したにしても早く着きすぎている。

・・・・同じ疑問を持つものは、他にもいた。

 

「――――そいつは俺も気になるな」

「ッ、鬼塚!?」

 

鬼塚だ。

鉄火場に慣れているだけあって、今回の様なダメージは屁でもないのだろう。

『今のは効いた』と言いながらむくりと起き上がると。

座り込んだまま、ソラを見据える。

 

「船は桟橋諸共吹っ飛ばした、あんたを巻き込んだのは偶然だったが・・・・『足』を潰したのは間違いない。ネェちゃん、どうやってここに来た?」

「――――頭悪いんだな、アンタ」

 

鬼塚に限らず、誰もが気になっていた疑問へ。

ソラが返したのはシンプルな罵倒。

 

「その程度も思いつかないのか、ああ、いや、今のは私が悪かった、考えることすら出来ないんだな?普段から薄汚い金儲けと、人を踏み躙る事しか考えてないから」

 

普段の礼儀正しい姿とはかけ離れた言動に、総じてびっくりする中。

更にまくしたてつつ、疑問に答える。

 

「どうやって来たかって、走ったに決まってんだろ。桟橋ごと船がお釈迦になったんだから」

「――――はっ?」

 

そして鬼塚は、目を点にした。

何かの冗談だろうと思いながら、共に来たコナンに視線をぶつけると。

 

「・・・・本当だよ」

 

無言の問いかけに気が付いたコナンは、『分かる分かる』とばかりの神妙な顔になる。

 

「ソラさん、湖の水面をシュバババーって走ったんだ。僕もびっくりして、咄嗟に飛び乗っちゃったんだよね」

「走るって・・・・」

「船は壊れた、そして私にはそれが出来た。それだけの話だ」

 

半ば投げやりな態度のソラに、流石に違和感を覚えたましろ。

彼女を観察すると、腹部がじわじわ赤くなっている。

 

「――――てめーら、ホントのホントにマジでふざけんじゃねぇぞ」

「そ、ソラさん?」

「こちとら徹頭徹尾バカンスのつもりで完全に休暇モードだったのにヨォ」

「ソラさん・・・・?」

「お前らの便所のネズミのクソにも匹敵するくだらねぇ金儲けの所為で全部パァだよどうしてくれんだよ」

「ソラさん!?」

「ねえソラさん!!傷が開いたんじゃないの!?」

「開いてるよ腹どころか全身が痛くて痛くてたまんねぇんだよコナン君とましろさんの手前年上の意地と根性で泣きたいのを我慢してんだよ頼むから空気読んでとっとと豚箱入ってくれよ」

「ソラさーん!?」

 

慌てるあまり、コナンも一緒になって名前を呼ぶも。

ソラの物申しは加速していくばかり。

ぶるぶる震えているのは怒りか、はたはた腹の怪我か。

どちらにせよ、なんとかして宥めないといけない。

コナンにもましろにも気遣えないまま、粗暴な口調を止めないという。

明らかに普通ではない様子に、慄いている中。

仕方ないわねとばかりに、ヨヨがため息をついて。

 

「はいはい、落ち着きましょう。タイムよ、タイム」

「ヴーッ!グルルルルルッ!」

 

身に着けていたストールを手にすると、ソラの頭をすっぽりと覆ってしまうのだった。

『猛獣宥めてるみてぇ』と、コナンが遠い目をする一方で。

 

「・・・・俺ぁ、大抵の人間は怖かねぇが・・・・バケモンは別だ」

 

一部始終を見ていた鬼塚は、『はぁーっ』と緊張の解けた息を吐き出して。

 

「バアさんあんた・・・・なんつーもんを手懐けてやがる・・・・!」

 

降参とばかりに、両手を上げたのだった。

 

「――――あら、失礼ね」

 

落ち着きを取り戻し、ゆっくり崩れていくソラを。

ましろと共に支えながら、ヨヨは抗議の声。

 

「ソラさんは素敵な女性(ひと)よ、『バケモン』なんかじゃないわ」

 

自慢げに、ソラの頭をひと撫でしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

「――――なんで動けてるんですか?」

「動けるからとしか言いようが・・・・」

 

――――さて。

鬼塚はあの後、福城さんや服部君と駆けつけて来た上原刑事により逮捕。

なんでも、唯一無事だった白鳥ボートに三人で無理に乗り込んで。

犯人確保のミッションがある上原刑事に体力を温存させるため、服部君と二人で『わっせ、わっせ』と漕いできたらしい。

・・・・ちょっと面白いなと思ったのは、内緒。

とにもかくにも。

連れ去られていたヨヨさん、ましろさん、頼人君も保護されて。

怪我をしていた私諸共、駆けつけた救急隊に運ばれることになった。

で、救急隊員さんに開口一番に言われたのが上記の台詞である。

解せぬ・・・・。

 

「――――犯人は、あなた達ですね」

 

その一方では、コナン名物の推理ショーが行われていた。

諸伏警部や大和警部をメインに、今回捜査に加われなかったコナン君と服部君が合いの手を入れる形で展開。

私も思わず忘れかけていた、郷土資料館での殺人事件。

 

「――――何も言い訳はいたしません。法の裁きも、主の罰も、心して受ける覚悟です」

 

犯人はなんと、施設付近で目撃されたという、資料館の館長とエンジニア。

それから、鏑良神父の三人だった。

動機は全員、永逢神社に関係したもの。

神父は、先日も話してくれた神社への恩から。

館長さんは、地元への郷土愛から。

そしてエンジニアさんはなんと、かつて頼人君のお母さんへ想いを寄せていたからとのこと。

結婚を切欠に区切りをつけて、今は尊敬の感情になっているようだけど・・・・。

とにかく、神父が誘い出し、エンジニアが殺害。

人払いなどのサポートを館長さんが努めて、後片付けは全員で協力して。

被害者を手にかけたとのことだった。

 

「根志来組の計画は、三年前から始まっていたんだ」

「あいつら元々は、来善さんと美智代さんを、事故に見せかけて誘拐するつもりだったらしい」

「しかし、計らずとも死なせてしまった彼らは計画を変更し、この村の評判を落とす作戦に出たのです・・・・家手は、実行犯の一人でした」

 

職業柄、物陰にいる機会が多かったらしいエンジニアさんがその話を聞き。

上司である館長さんに相談。

その館長さんもまた、神父さんに相談したことで。

今回の殺人を計画したとのことだった。

 

「許されないことをした自覚はあります。しかし、警察の対応を待っていては、手遅れになる可能性が高かった・・・・」

 

一番は警察を始めとした公的機関に相談すること。

だけど、今回の様な危機的状況ではどうしても動きが遅くなってしまう。

かといって、初期の頃に相談しても、証拠が不十分過ぎてそもそも動いてもらえないことが多い。

だからこそ、鏑良神父達は行動を起こした。

・・・・起こしてしまった。

 

「・・・・例え、誰かの為であっても、相手が反社会的組織であっても。殺人を許すわけにはいきません」

 

犯人たちの自白を聞き終えた諸伏警部は、強く咎めるように語気を強めれば。

鏑良神父を始め、犯人たちは重々しく顏を伏せたのだった。

・・・・そうだよな。

人が、人を手にかけるだなんて。

許されないよな・・・・。

 

「ではハレワタールさん、そろそろ搬送しますねー」

「ア、ハイ」

 

それはそうと。

重傷判定が下されてしまったので。

救急車で運ばれてしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

「はあー・・・・結局最後の最後まで蚊帳の外だったな」

「まあ、今回は相手が悪かったんや、色々とな・・・・」

 

駅前にて、晴れ渡って見晴らしの良くなった湖を眺めながら。

コナンと平次はしみじみと今回についての感想を漏らす。

 

「とはいえ、あの根志来組が関わって、死人が出ぇへんかったんは、奇跡やで・・・・いや、向こうには一人出とるけど」

 

――――最大の功労者であるソラは。

腹部を始めとした傷を理由に、入院することになってしまったが。

どうやら数日のうちに退院することになるらしい。

『全治数か月はかかるはずなんだけど』と、哀も首を傾げていた。

 

「いやぁ、京極さん以上のびっくり人間はもうおらへんと思ってたんやけどなぁ・・・・」

「ホントになぁ・・・・」

 

二人の脳裏に、同じ光景が思い浮かぶ。

刀を握ってからも当然凄まじかったが、竹ぼうきだけでなんとか凌いでいたのにも遅まきながら舌を巻く二人。

そして何より、コナンを背負った状態で湖面を駆け抜けていくという絶技。

 

「蘭が張り切ってたぜ・・・・」

「奇遇やな、こっちは和葉や」

 

身に着けた武術で、子ども達を含めた全員を守り切ったことをうけて。

特に蘭と和葉はベリィベリーと、真剣な面持ちでトレーニングメニューについて今も話し合っている。

少年たちは、乾いた笑い声を上げた。

 

「あーあ、島の秘密も、結局は分からず仕舞いやな」

「まあ、確かに・・・・色々と消化不良だけど・・・・」

 

ここでコナンは、しがみついていた欄干から飛び降りて、伸びを一つ。

すっきりした視界で、改めて聖地を眺める。

 

「――――ヨヨさんが、命がけで守った秘密だからな」

 

最後に二人が思い浮かべたのは。

体を這って、鬼塚達と対峙し続けたことについて。

胸を張るヨヨの姿。

 

――――例え、私が撃たれて死んだとしても。

――――ソラさんが必ず駆けつけて、ましろさんも頼人君も助けてくれるって。

――――信じていたから。

 

「その覚悟に免じて、そっとしておこうぜ」

「・・・・せやな」

 

振り向いた二人の視線の先。

互いの無事を喜び合う、虹ヶ丘邸一行を見つめて。

コナンと平次は、笑い合ったのだった。




ヤクザと救急隊にドン引かれた女、ソラ(偽)さん!(笑)


コナン編、次回でやっと最終回です(白目)
謎解きありきの展開は別作品でやったので、こちらではアクション多めになりました。
でもやっぱり謎解きも書きたくなったので、もしかしたらまた登場するかもしれません・・・・()
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