「綺麗に真っ二つになったわねぇ・・・・」
「まっぷたちゅ・・・・」
バーストカリバーが折れてしまった翌朝。
改めて状態を確認したヨヨさんは困った顔をしていた。
ツバサ君に抱っこされているエルちゃんも、つられてしょんぼりとしている。
「どうしたらいいんでしょうか?」
「修理って言ったって、どこに持っていけば・・・・?」
「クシザスはどう?元々は、あそこで作られたんでしょ?」
「それなら、さっき真っ先に問い合わせましたよ・・・・ただ・・・・」
『バーストカリバー』の前身、『デインリアル』はクシザスで制作された魔剣。
もちろん、朝一番に問い合わせもしてみた。
実は、初めてバーストカリバーを手にした際。
私が寝ている合間に取っておいたらしいデータを基にした返答によると、『難しい』ということだった。
そもそも、『バーストカリバー』に変わったのは。
論理的にも学術的にも説明不能な、奇跡によって変化したもの。
物理でどうにか出来たとしても、魔術的な部分に異常が出る可能性があるとのこと。
つまるところ、『バーストモードが使えなくなるかもしれない』という。
戦力低下のリスクがあるということだった。
「元々は激ヤバな魔剣だったんだもんね・・・・簡単にはいかないか・・・・」
・・・・極端な話。
『なまくら』なんて呼ばれている通り、私は得物にこだわる必要はない。
武器が壊れてしまったのなら、また次を調達すればいいだけではある。
――――でも。
バーストカリバーだけは、違うんだ。
だからこそ、折れてしまったのが本当に。
本ッ当にショックなんだけども・・・・!!
「・・・・そうだ」
思わず項垂れてしまった目の前で、ヨヨさんがぽんと手を叩く。
どうやら、何か心当たりがあるらしい。
ツバサ君からミラーパッドを受け取ると、早速どこかへ通信を繋げ始める。
何事だろうかと見守る仲間達の前で、コール音が鳴る事しばし。
『――――もしもし?』
若い男性の声が、応答した。
「もしもし?コウちゃん?」
『その声は、ヨヨちゃんか!?久しぶりじゃのう!』
『本当にお久しぶりですわ、お元気?』
「うふふ、水晶さんもお久しぶり、元気よ」
女性の声も加わって、一気に和やかになるヨヨさんと通話相手。
彼らの様子から、結構昔からの仲良しであるのがよく分かる。
『して、どうしたんじゃ?何かあったのか?』
「朝早くにごめんなさいね、ちょっと困ったことが起きちゃって・・・・」
と切り出したヨヨさんは、てきぱきと事情を説明していく。
・・・・しれっとプリキュアのことも打ち明けていることから。
相当信頼している人物なんだなと推測出来た。
「――――と、いう訳で」
やがて、一通りの会話を終えたヨヨさんは。
にっこり微笑みながら私達を見渡して、
「私のお友達のところに行きましょう」
そう、宣言したのだった。
◆ ◆ ◆
「失礼します・・・・ぁ、すみません、どなたかとお話中でしたか?」
ちょうど会話が終わったところで、一人の教師が入室してきた。
水晶の通信状態が切れるのとタッチの差だったことで、気遣わせてしまったが。
「いや、今終わったところだよ。気にしないでくれ」
「そうでしたか・・・・お邪魔にならなくてよかった」
「・・・・ふむ」
問題ないと分かってほっとする彼女を、彼はしばし見つめて、
「・・・・実は今度、ナシマホウ界からワシの友人が来ることになったんじゃが」
「ナシマホウ界から?」
「ああ、どうやら困ったことになっているようでのう。こちらに招くことにしたんじゃ」
「それは・・・・大丈夫なんですか?」
「もちろん、心配はいらん」
『あちら側』から、人が来る。
それがどれだけのことかよく理解している彼女が、恐る恐る問いかけて来る。
「魔法使いではないが、こちらの事情も知っている。信頼できる人物じゃよ」
『ちょうど、貴女と彼女の様な関係に近いですわね』
分かっていた反応なので、安心させるように微笑んで説明すれば。
水晶の付け加えに、彼女は納得した顔をしていた。
「それに・・・・君達とも、無関係ではない」
「・・・・それってどういう意味でしょうか?」
発言の意図を読めないことに、申し訳なさそうに眉を潜める彼女を。
重ねて微笑まし気に見つめながら。
『そうだ』と、声を上げて。
「いい機会だ。彼女達を迎えに行ってはくれんか?」
「――――リコ先生」
◆ ◆ ◆
――――言うまでもないことだけど。
クッキングダムやヒーリングガーデンに代表されるように、色んな世界がある。
その中の一つに、魔法使いたちが暮らす『マホウ界』というものがあるらしい。
ヨヨさんが連絡したのは、そこの魔法学校の校長先生だったそうだ。
お互いにちゃん付けで呼び合うくらいに仲の良いその方が。
バーストカリバーが折れた話を聞いて、力になってくれると寛大なお返事をくれたので。
私達はそちらに向かうことになったのである。
で、私達がまず足を運んだのが。
「ここが
「結構にぎやかなとこだね」
諸事情あって大人数なので、レンタルのミニバンとバイクで移動することしばし。
私達は、待ち合わせである
・・・・車はともかく、バイクもレンタルあるのは助かる。
「――――しっかし、もう着いちゃうなんて。こっちの乗り物は速いんだねぇ」
それぞれバイクと車を返却して*1、みんなと合流すれば。
ツバサ君より少し低いくらいの女性が、感心したように周囲を見渡している。
「タタラさん、乗り物酔いは大丈夫?」
「ああ、へっちゃらさね」
気遣うあげはさんへ、にかっと笑うのは。
クシザスからの同行者、『タタラ・スレイヴ』さん。
『ドヴェルグ』というドワーフに似た種族の女性で、現役の鍛冶師さん。
子どもと見間違えそうなビジュアルだけど、御年28歳のれっきとした大人だ。
さらに付け加えると、デインリアルを作った職人『ダイン・スレイヴ』の子孫でもある。
今回バーストカリバーを修理するに辺り、一族を代表して見届けに来たのである。
「それで、待ち合わせは駅なんだっけ?」
「ええ、向こうに行くために必要なの」
なんでも、コウちゃんこと校長先生との約束で。
マホウ界について教えてもらう条件の一つに、ミラーパッドでの直接転移をしないことがあるんだとか。
まあ、元々一般人に知らせちゃダメっていうのがあちらの決まりみたいだしね。
尊重できるところは尊重する。
ヨヨさんを尊敬する点の一つだ。
そんなこんなで、てくてく歩いていくと。
大きな建物が見えて来る。
「これが『エキ』って建物かい!?なんて大きな・・・・!」
「あはは、確かに結構大きな部類の駅だね」
タタラさんが、駅の大きさにびっくりしている中。
待ち合わせ場所にいるはずの送迎の方を探すべく、周囲を見渡していると。
ふと、クマのぬいぐるみをかかえた女性と、ばちっと目が遭って。
「――――」
火花が散ったような感覚を覚えた。
今まで感じたことのないそれに、戸惑っていると。
向こうはお連れさんらしいブラウスの女性に話しかけ、こちらをちらちらと伺っていた。
「――――あの」
もしかして、と思っているところへ。
案の定、女性二人(withクマちゃん)が歩み寄って来た。
ブラウスを着た、礼儀正しそうな方が。
思い切った様子で声をかけて。
「虹ヶ丘ヨヨさん、でしょうか?」
「ええ、貴女達がコウちゃんの言っていたお迎えかしら?」
「はい・・・・失礼、自己紹介が遅れました、魔法学校教師『十六夜リコ』です」
「『朝比奈みらい』です!よろしくお願いします!」
やっぱり、お迎えの方で間違いなかったらしい。
「で、こっちはモフルン!」
「モフー!」
「ぬ、ぬいぐるみが喋っている・・・・!」
なんか前にも似たようなことあったな?
・・・・元気してるかしら、マロンさん。
気を取り直して。
「初めまして、虹ヶ丘ヨヨです」
「タタラ・スレイヴだよ、今日はよろしく」
ヨヨさん、タタラさんに続いて、私達も自己紹介。
モフルンさんに夢中になったらしいエルちゃんは、早速抱っこさせてもらっていた。
すみません、ありがとうございます・・・・!
「それでは、早速ご案内します」
恐縮しつつも、ぬいぐるみと戯れるエルちゃんに浄化されている横で。
リコさんは凛と背筋を伸ばして。
「――――マホウ界へ!」
まるで舞台役者の様に、両手を広げたのだった。
と、いう訳で。
先輩とのコラボ第三弾は、まほプリです!
おまけ
タタラ・スレイヴ
ドヴェルグという、ドワーフに似た種族の女性。
慎重はツバサよりちょっと低いくらいだが、れっきとした大人(28)。
デインリアルを鍛え上げた鍛冶師、『ダイン・スレイヴ』の子孫。
自身も優秀な鍛冶師である。
後ろ指をさされることを覚悟で、キルミラを封じる魔剣を鍛え上げた先祖を。
世界を救った英雄として尊敬している。
ネーミングは北欧神話の魔剣『ダインスレイヴ』と、『たたら製鉄法』。