まほプリのネタバレもあります、どうかご用心を・・・・(晒し首)
『マホカ』という、魔法使いの通行証を使って入った先。
まず見えたのは、大きなカタツムリ達がずらりと並んでいる光景だった。
まさしく『カタツムリニア』という名前のこれらが、マホウ界とを繋ぐ交通手段らしい。
で、今まさしく、こちら側(向こうではナシマホウ界と呼ばれているとか)からマホウ界に向かっている最中だ。
「おほしさまー!」
「ねー、キラキラしてるねぇ」
ホント、すっごい綺麗・・・・。
銀河鉄道を思い出しちゃう。
ヴッ・・・・ジョバンニ・・・・カムパネルラ・・・・!
「みらいさん達もプリキュアなんですね」
「そうなんだぁ、魔法学校で待ってるはーちゃんもいれて、『魔法使いプリキュア』!よろしくね!」
「よろしくお願いします!」
その隣では、ましろさんとみらいさん、リコさんがお話している。
なるほど・・・・顔を合わせた時のびりッとした感覚は。
所謂『プリキュア同士は惹かれ合う』ってやつだったのか。
そりゃなるわな・・・・。
――――ナシマホウ界のみらいさんと、マホウ界のリコさんが。
ひょんなことから出会ったのは、もう七年も前のことらしい。
一時は敵を倒した影響で離れ離れになっていたそうだけども。
『また会える』と信じ続けた結果、今に至るのだそうだ。
「わぁ、素敵!」
「うんうん、特別な絆って感じで、いいよね!」
そんなお二人の話に浮足立ち、きゃっきゃとはしゃぎあうましろさんとあげはさん。
一方の私は、思わず口を結んでしまった。
・・・・みらいさんとリコさんは。
私達とよく似ている。
マホウ界とスカイランド、ナシマホウ界とソラシド市。
異なる世界で暮らしている私達が、いつか向き合わなければいけない問題。
・・・・もし。
アンダーグ帝国との戦いが終わった時。
私達は、『それから』もずっと一緒にいられるんだろうか。
仮に、みらいさん達の様になったとして。
『いつか、きっと』を、信じ続けられるだろうか。
「あれ、ソラちゃん眠い?」
「はい、実は・・・・ごめんなさい」
「いいよいいよ、結構かかるもんねぇ」
話を振られるのが怖くなって、寝たふりで逃げた。
◆ ◆ ◆
――――大怪我をしている。
それが、彼女への第一印象だった。
見た目には元気そうに見える。
だけども、心というか、魂というか。
そういう『大事な根っこ』の部分が、酷く傷ついているのが。
手に取る様に分かってしまう。
「――――っ」
思わず、『大丈夫?』と話しかけようとした。
その時。
(――――あ)
ふわり、と。
その傍らに、小さな影。
自分よりもずっとずっと幼い子どもは。
しかして、自分よりもずっとずっと大人びた顔で、口元に手を当てて。
『何も言わないでくれ』と、言葉なく伝えて来る。
「ぁ・・・・」
「――――あれ?はーちゃん?」
反応するべきか否か、悩んでいる間に子供はいなくなっていた。
「はーちゃん、どしたモフ?」
「花火でお出迎えするって、張り切っていたじゃない」
我に返る。
客人のお迎えから戻って来た家族に、心配されている。
「・・・・んーん!なんでもない!」
かぶりをふって、笑顔。
「あなた達が校長先生のお客様だよね?私、花海ことは!はーちゃんって呼んで!」
それから客人たちに歩み寄って、杖を一振り。
「キュアップラパパ!花火よ上がって!!」
予定通りの花火を、盛大に上げたのだった。
「はー!マホウ界にようこそー!」
◆ ◆ ◆
カタツムリニアに揺られる事しばし。
『魔法学校前』という駅に降りれば、大きな木に建物が合体したような立派な校舎が見える。
ついて早々、『花海ことは』さんによる盛大な花火に出迎えられた。
最初、少しぽかんとしていたのが気になったけれど・・・・。
何はともあれ、すごぉ・・・・。
魔法ってなんでも出来るんだなぁ・・・・。
「ヨヨちゃん、よう来たのう!」
「コウちゃん、お久しぶり!」
ヨヨさんと、まるで女子高生みたいにキャッキャウフフとはしゃぎ合うのは。
魔法学校の校長先生。
大分年若い美青年に見えるんだけど、本来の姿はもっとおじいちゃんらしい。
なんでも、普段から魔法を制限することで、いざという時に強い光の力を扱えるようにしているんだとか。
なるほど、『縛り』とか『ゲッシュ』みたいなもんか・・・・。
「それで、君が?」
一通り再会を喜び合った校長先生は、次に私の方を見る。
「初めまして、ソラ・ハレワタールです」
「うむ、よろしく。ヨヨちゃんから聞いておるじゃろうが、わしがこの魔法学校の校長じゃ」
「よろしくお願いします」
しっかり握手を交わしてくれた校長先生は、ましろさん達とも自己紹介を交わして。
タタラさんと向き合った。
「この度はお招きいただきありがとう。クシザス王国騎士団専属鍛冶師、タタラ・スレイヴです」
「こちらこそ、お越しいただき感謝する」
こちらも同じく、しっかり握手。
・・・・偉い人って、ぎゅっと握手してくれがちだよね。
そういう戦略って分かってても、こう、ふふってなる。
嬉しくなる・・・・。
「早速だが、例の折れた剣を見せてくれんか?」
気を取り直して。
肩に下げていた袋から、バーストカリバーを取り出す。
「はー、真っ二つ・・・・」
うう・・・・改めて目の当たりにすると、へこむ・・・・。
ごめんなぁ・・・・私の未熟が招いた事だ・・・・。
しょんぼりしていると、一緒に覗き込んでいたことはさんが。
『でも』と、口火を切って。
「この子、まだ死んでない」
「よく分かるね、その通りさ」
タタラさんも頷いて、バーストカリバーの傍に手を置く。
「剣としては頼りない姿になっちまってるけど・・・・アタイにゃはっきり感じるよ、こいつの魂までは、折れちゃいない」
「はー!それじゃあ、早く『治して』あげないと!」
盛り上がるお二人の横で、私もバーストカリバーを見下ろす。
・・・・『この子』が折れたのを目の当たりにした時。
『治せる』と、まだ戦えると感じたのは。
間違いじゃなかったんだと、静かに安堵した。
「でも、どうやって直すの?」
「確かに・・・・ただ金属ってわけじゃなさそうだしねぇ・・・・」
『一体、どうすれば・・・・?』だなんて、首を傾げていた時だった。
「――――覚えのない闇の気配を感じてみれば」
ふと、頭上から声が振って来て。
「面白いことになっているじゃないか、アンタ」
「オッヒャァッ!?」
耳元で、また別の声。
びっっっっっっっくりして奇声をあげながら振り向けば、天上にさかさまにぶら下がっている男性と。
クモっぽい感じの女性。
それから、声こそ発してないけど亀っぽい男性もいるのが分かった。
な、なんや、この・・・・。
いかにも『元悪役です!』みたいな連中は!?
「コラッ!バッティー君!また天井からぶらさがって!!」
「スパンダさんも、お客様をからかうんじゃない」
「ああ、これは失礼・・・・何分、コウモリなもので」
「いやぁ、悪気はなかったんだよ?」
リコさんや校長先生が窘めたことから、少なくとも敵ではなさそうだけども・・・・?
「わが校の生徒が失礼した・・・・こちら、バッティー君とスパンダさん、それから後ろのはガメッツ君じゃ」
「三人とも、元々は敵だったんだけども、リコが誘って、今は生徒さんなんだよー」
「へぇー!」
元は敵だったのに、か・・・・すごいな。
「かつては我らが主、『ドクロクシー様』の下、世界を闇に染めんと奔走し、リコ先生達とも何度かぶつかりましたが・・・・」
「もう、そのドクロクシー様共々負けちまったからね、今は今後の身の振り方とか、色々考えなおす為にここで勉強してんのさ」
「左様、新たな鍛錬のヒントも得られて、中々悪くないぞ」
「めっちゃエンジョイしてるじゃん」
あげはさんの呟きに、みんなでうんうん頷く。
・・・・一度は敵対した仲でも、今は先生と生徒として友好的に接しているのか。
こんな結末も、ありなんだな。
「そんなことはいいんだよ」
『それよりも!』と、スパンダさんが改めて私を上から下まで見まわしてから。
「アンタ、アタシ達とは違う闇を宿しているね?」
「・・・・ッ」
・・・・さすがは闇の使い手というべきか。
一発で見抜かれてしまった。
「ええ、そちらの折れた剣と言い、何やら事情がある様子・・・・よければ、お話を聞かせてはもらえませんか?」
「えっと・・・・」
意外と親切な態度に困惑してしまって、思わず仲間達とリコさん達に向けてしまう。
いや、マジでどうしたらいいんだろうか・・・・。
私に宿った闇・・・・メイテイに入れられたであろう、アンダーグエナジーのことだけならともかく。
バーストカリバーのことにまで言及されてしまった。
・・・・本当なら。
言わなきゃいけないのに。
顎と、唇が固まって。
上手くしゃべれない。
「――――こいつは元々、アタイの故郷に伝わっていた魔剣さ」
迷っている間に、口を開いたのはタタラさんだった。
「永い永い間、とある災厄を封印していたんだけどね・・・・いろいろあって、その子に力を貸す為に姿を変えたのがこれってわけだ」
「・・・・へぇ?」
タタラさんの説明に嘘はないけれど、本当のこともぼかしている。
スパンダさんも、それ以上追及する気はないのかあっさり引いてくれた。
・・・・庇ってもらってしまったな。
「では、その身に宿った『闇』も、その時に?」
「ああ、いえ、それはまた別件で・・・・」
気を取り直して、ガメッツさんの質問に答えるべく。
メイテイと常夜丸の話をした。
ガメッツさん、ミノトンみたいな武人気質なのか。
とっても興味深そうに聞いていたな・・・・。
何はともあれ、今度は自分で説明出来て良かった・・・・。
「なんというか、随分と面白・・・・いや、難儀な状態になっているんだねぇ」
「遠慮せず『面白い』と言ってくださっていいんですよ?」
スパンダさんが、だいぶ気遣ってくれたコメントをしてくれたけれども。
ぶっちゃけ変に同情されるくらいなら、笑ってくれた方がまだマシってもんよ・・・・。
「――――あの」
なんて考えていると、バッティーさんが手を上げる。
「その剣の修理、私も関わらせてもらえませんか?」
「・・・・理由を聞いてもいいかな?」
続いて口にした提案に、校長先生が怪訝な顔をした。
当然の反応ではある。
大事な依頼に、まだまだ権限の弱い学生を関わらせるのは躊躇するよね・・・・。
・・・・元敵ということもあってか、ちょっと剣呑な感じがしないでもないけど。
校長先生の、そんな事情も感じ取ったのか。
バッティーさんはこっくり頷いて。
「ドクロクシー様が闇の魔法を修めたのは、世界を救う為だったと聞いております」
とつとつ、話し出してくれた。
――――かつて、みらいさん達と激突した闇の魔法使い『ドクロクシー』こと、『クシー』さん。
校長先生の友人でもあった彼は、『世界に危機が迫っている』という予言を知ったらしい。
校長先生と共に、滅亡の危機を回避するため。
お二人が頼りにしたのが、『リンクルストーン』。
みらいさん達が変身に使う、不思議な力が籠った宝石だった。
特に、一番強い力を秘めている『エメラルド』を探し回っていたそうだけども。
マホウ界でもナシマホウ界でも、手掛かりを見つけることは叶わなかった。
「ちなみに、わたしが変身に使うリンクルストーンなんだよ!」
「そうだったんだ」
『世界の危機』がいつ来るか分からない中、時間だけがいたずらに過ぎていく状況に焦りを覚えたクシーさんは。
見つかるかもわからないエメラルドに頼ることはやめて、闇の魔法に手を出してしまった。
大親友だった校長先生とも決別してまで、研究に没頭したクシーさんは。
実験事故により、道半ばで命を落とした。
そして七年前、ドクロクシーとしてバッティーさん達を従えて。
みらいさん達の前に立ちはだかった、ということだった。
「今やマホウ界にもナシマホウ界にも、脅威が去って久しい。故に、ドクロクシー様の御心を空想することしか出来ませんでしたが・・・・」
「今回、ソラさんの案件が持ち込まれた、と」
「はい」
こっくり頷いたバッティーさんは、続ける。
「便乗する無礼は承知しております、ですが・・・・ドクロクシー様の御心に触れる機会、逃したくないのです」
「・・・・と、申しておるが、ソラさんは?」
校長先生に問いかけられて、しばし思案する。
・・・・バッティーさん達の顔に、悪意の類は見受けられなかった。
動機も、
至極健全なもの。
・・・・何より。
私に宿った、アンダーグエナジー。
それらを踏まえて、待っていてくれた校長先生を見つめる。
「その、頼めるなら・・・・お願いしたいです」
まずは、結論を伝えた。
「ソラちゃん、いいの?」
「はい」
心配してくれるみらいさんに、頷きを返して続ける。
「皆さんが感じ取った闇・・・・アンダーグエナジーが、暴れ出さないとも限りません」
無意識に、左目に触れていた。
暴走体のメイテイに斬られて、アンダーグエナジーが宿った場所。
ミノトンには、『大人しくしている』というコメントを頂いているけれど。
それもいつまで持つか・・・・。
それはそれとして普通に『治した』って、バーストモードを失うかもしれない。
スキアヘッドが本格的に動き出した今、それだけは避けないといけない。
アンダーグエナジーとは違う、闇の力という不安はあるけれど・・・・。
「『毒を以て毒を制す』とも言いますし、何より、今はキョーボーグという新たな脅威もいます・・・・吉と出ても凶と出ても、賭ける価値はあるかと」
「ふむ・・・・タタラさんは、どう思われるかな?」
「・・・・振るうのは、ソラさん本人さ。覚悟決めたんなら、鍛冶師は応えるだけだよ」
有難いことに、タタラさんも背中を押してくれる。
そんな私達の答えを見た校長先生は、しばし考えた後。
深くため息をついた。
「――――分かった」
まずは、シンプルに返事をしてくれる。
「だが、モノがモノじゃ、監視は付けさせてもらう。それでよいか?」
「問題はありません・・・・ありがとうございます、校長・・・・!」
「ありがとうございます」
条件こそついたけれど、破格も破格といっていいだろう。
何はともあれ、修復の目途が立ったことにほっとしながら。
計画を練る皆さんの横で、私はバーストカリバーに触れる。
「・・・・きっと、元気になれるよ」
気が付くと、おおよそ剣には向けない言葉をつぶやいていて。
思わず、苦笑いを零していた。
はーちゃんなら、絶対『あの子』に気付くだろうなって・・・・。