日頃のご愛顧、誠にありがとうございます。
嬉しさのあまり書き上げた本編です・・・・!
その後、しばらく専門家の皆さん*1と修復計画を話し合った後。
『ここからは任せて大丈夫』と言われたので。
お言葉に甘えて、先に宿舎に行っていたましろさん達と合流することに。
「――――きれいだ」
リコさんに付き添ってもらっている道中。
ふと見えた光景を見て、思わず零してしまう。
なので、外はとっぷりと日が暮れていた。
学校の敷地が月明かりに照らされて、プラチナでコーティングされたように輝いている。
「ふふ、ナシマホウ界やスカイランドとも違うでしょ?」
「ああ、すみません・・・・つい」
「気にしないで」
束の間ぼんやりと眺めそうになったけれど、リコさんの声で我に返って。
再び歩き出す。
危ない危ない、人と一緒にいるのに・・・・。
「教員寮、でしたか」
「ええ、そこにお客様用の部屋があるの」
「重ね重ね、ありがとうございます」
「いいのよ、ゆっくりしてちょうだい」
用意してもらった今日の宿に向け、歩く事しばし。
それらしい建物が見えて来る。
『二階の奥だったかな』ともう少し歩いてみたら。
「――――あ、しょら!」
「ソラさん!」
ちょうど廊下に、ましろさんとエルちゃんが出てきた所だった。
「おかえりー!」
「はい、ただいま。待っててくれたんですか?」
「えへへ、エルちゃんがお迎えに行くって」
「えっへん!」
「ありがとうございます」
ましろさんの腕の中で、誇らしげに胸を張るエルちゃんが微笑ましくて。
私は、ほっと息を吐いた。
「お、ちょうど来てた」
「ソラちゃんおかえりー!」
「おかえりモフー」
次にひょっこり顔を出したのは、あげはさんと、みんなを案内してくれたみらいさんだ。
モフルンさんも、みらいさんの肩に乗っている。
かわいい(確信)
「ただいま戻りました、あげはさん。ヨヨさんとタタラさんは、もう少しお話していくみたいです」
「りょーかい!」
「みらいさんも、ありがとうございました」
「いいよー!はーちゃんも一緒だったし、おしゃべり出来て楽しかった!」
『ねー?』と、みらいさんが部屋の中へ話しかけると、『はー!』と元気な返事。
ことはさんもいてくれたんだ・・・・。
ありがとうございます・・・・!
「そうだ、忘れる前に・・・・」
無事みんなと合流出来たところで、リコさんがカードを二枚取り出す。
成人済みだからと、私とあげはさんにそれぞれ手渡すと、『キュアップラパパ』と杖を一振り。
何かの文字が刻印された。
ううん・・・・アルファベットに似ているようなそうでないような・・・・。
あと、なんだかマホカに似ている見た目だな・・・・?
「ゲスト用のマホカよ。学園内と、商店街の一部店舗で使えるの」
と思っていたら、本当にマホカだった。
どうやら亜種みたいだな。
リコさんによると、学校内の購買と食堂。
それから、一部の生活必需品を取り扱うお店で使えるということだった。
もちろん、限度額内なら交通機関も使えるらしい。
便利!
「何から何まで、ありがとうございます」
「助かります!」
「どういたしまして。学食もそれで利用できるから、是非使ってね」
そんな貴重なカードを、名刺みたいに丁寧に扱えば。
リコさんは微笑まし気に見て来た。
「ほら、私達もそろそろ寝ましょ」
「だね、もう遅いし」
「お邪魔しましたー!楽しかったよ!」
「こちらこそ、ありがとうございましたー!」
「ましたー!」
気を取り直して。
三人合流したみらいさん達に、手を振った私達も。
眠ってしまうことにした。
・・・・本当はヨヨさんを待ってたかったけど。
去り際に見たあの熱量から見るに、まだまだかかりそうだったしね・・・・。
「ばぁば、まだおっき?」
「はい、なので先に寝ちゃいましょう」
「あーう・・・・」
「うわ」
翌朝。
校長室の様子を見に行くと、全員すやすや眠りについていた。
一応、創作なんかでよくある様な『部屋のあちこちで死屍累々』みたいな状況でないことに安心はしたけども・・・・。
「かたちゅむぃ!」
「そうだねぇ、なんかすっごい光景」
何故かみんな、巻貝の様なものに入ってぐっすりである。
いや、なんだこれ・・・・。
絶対人間の体入らないサイズじゃん・・・・。
「ヤドネムリンね、マホウ界の寝袋なの」
「そうなんですか!?」
「びっくりするよね、私もそうだった」
リコさんとみらいさんの説明に、改めてマホウ界の摩訶不思議さに舌を巻く。
今回来た時もそうだったけれど、マホウ界とナシマホウ界は距離が開いているので。
場合によっては一晩かかることもあるんだそう。
ヤドネムリンは、そんなときの必需品だとか。
ちなみに、寝心地はわりといいらしい。
便利!
「ほら、バッティー君起きなさい!遅刻するわよ!校長も!起きて下さい!」
気を取り直して、手を打ち合わせたリコさんは。
校長先生とバッティーさんのヤドネムリンを容赦なく引きはがした。
お二人が、二日酔いの様なうめき声を上げたのを皮切りに。
ヨヨさんもむっくり起き上がる。
「ばぁば!おはよー!」
「ふぁ・・・・うふふ、おはよう、エルちゃん」
「おはよう、おばあちゃん。大丈夫?」
「ええ、ちょっと張り切り過ぎちゃった」
どことなくしょぼしょぼした顔ながらも、エルちゃんと微笑ましいやり取り。
あまりご無理をなさらず・・・・。
「んー・・・・」
「タタラさんは・・・・もうちょっと寝かせてあげましょうか」
「はー、ぐっすり」
「むぐむぐ・・・・おかわり・・・・」
一方のタタラさんは、こんなに大騒ぎしていてもスヤスヤ。
幸せそうにむにゃむにゃしている。
こんなお手本みたいな寝言、初めて聞いた・・・・。
「ああ、その前に・・・・」
各々が身支度を整える中、校長先生は何か・・・・おそらく手紙を書きつけると。
『キュアップラパパ』と、杖を一振り。
すると、手紙はひとりでに鳥の形に折りたたまれると。
ぱたぱた羽ばたいて、ことはさんが開けた窓から飛んで行く。
「校長、あれは?」
「昔世話になった方への手紙じゃよ。今回のことで、助力を願ってみた」
「そんな方が・・・・」
「厳格故、引き受けてくれるかは五分五分じゃがな」
飛んで行く手紙の鳥が珍しくて、束の間ぼんやり見つめていると。
「何にせよ。これじゃあ、すぐに作業を始められなさそうだね」
「そうねぇ・・・・せめてお昼くらいまでは、休憩した方がよさそうだわ」
夢の中にいるタタラさんを、ヤドネムリンごと抱えたみらいさんに。
ヨヨさんも大らかに頷いていた。
「――――だったら」
図らずも出来てしまった、お昼までの余暇を。
どうしたものかと考えだした時。
「ちょっと、お願いがあるんだけど」
リコさんが、肩を叩いてきた。
◆ ◆ ◆
「――――こ、れは」
――――届いた手紙を、側近に見せれば。
案の定、怒りに声を絞り出しながらぶるぶる震えて。
「これはッ!!我々への侮辱ではないですかッ!?族長ッ!!」
彼の言葉を皮切りに、他の重役達も大噴火の如く怒声を上げた。
「コーナの言うとおりですぞ!!」
「長ッ!!」
「我らの秘術を学んでおきながらッ!!」
「誓いを反故にしおった!!」
「恩を仇で返すとはこのことじゃッ!!」
「族長!!」
「タイボク様!!」
紛糾する会議を前に、静かに口を開いた。
「――――鎮まれぃ」
叫ばず、しかし全体にはっきり届く声。
それだけで、全員が口を閉ざして、座り直す。
「・・・・あの男は、愚かではない。人の身なれども、目は曇っておらん」
「・・・・では、受け入れるということですか?」
「――――否、見極める」
もさり、と。
茂みの様な眉毛を上げる。
「コーナ、マテバシ、お前達もついてこい。例の『闇を宿した剣士』を『観る』」
「ハッ」
「・・・・」
次代を任せられる若者と、厚い信頼を寄せる重役を指名し。
その場を解散としようとするが。
「・・・・見極めるまでもない」
「コーナ?」
耳が音を拾う程、強く拳を握った若者は。
「――――一族の威信にかけて、滅ぼしてくれるッッ!!」
「ッ待て!!コーナッ!!」
制止を振り切り、飛び出してしまった背中を見送って。
鈍く、憂いの息を吐く。
◆ ◆ ◆
――――さて。
図らずもお昼まで余裕になってしまった私達。
リコさん、いや、『リコ先生』に何を頼まれたかというと。
「――――と、これがスカイランドの概要です」
教室で、たくさんの生徒を前に臨時講師をやっていた。
本来ならヨヨさんが適任なんだろうけども。
オール一歩手前まで頑張ってくれていたご老体に、無理させちゃダメやろ・・・・。
「箒がないのに、不便じゃないんですか?」
「そこは、『遊覧鳥』という人が乗れるくらいの鳥さんがいて、彼らにお願いするんです」
「こちらで言う、カタツムリニアの位置にいる鳥達ですね」
――――へぇー!
隣にツバサ君とベリィベリーさんがいるとはいえ。
ちょっと、いやだいぶ緊張している・・・・!!
「魔法もないんですよね?」
「ああ、こちらでは『スカイジュエル』というエネルギーを秘めた鉱石が、世の中のエネルギーを担っているんだ」
「魔法使いもいないことはないんですが、本当にごく少数なんです。私も、ベリィベリーさんの故郷の、シャーマンにお会いした程度で」
「魔法がないなんて、不思議!」
「私達も、魔法があるのが不思議です」
『お揃いですね』と笑いかけると、コメントした女生徒さんは照れくさそうに口元を抑えた。
「青の護衛隊も、すっごくかっこいい!」
「分かる!隊長のシャララ様、素敵な人だったわ・・・・」
「最強の剣士ってのも、燃えるよな!」
「ジークフリート国王との、種族を越えた友情も最高!」
シャララ隊長も話題も、結構好反応である。
嬉しい(小並感)
「スカイランドでは、みんなが魔法を使えるわけではありません。だからこそ、自分が出来る事を持ち寄って、助け合うことで成り立っているんです」
・・・・ごほん。
いつまでも照れているわけには行かないので、纏めに入る。
「もちろん、それはこちらでも変わらないと思う。箒を作る者、魔法薬を作る者、その材料を集める者・・・・人によって、得意なことは違うだろう?」
「今日、皆さんにお話しして、スカイランドのすばらしさに共感して頂けて、僕達もとっても嬉しいです。だけどマホウ界にだって素敵な所はたっくさんあります」
「要は、『どちらがすごい』ではなく、『どちらも素敵』ということです」
最後に、『ご清聴ありがとうございました』と頭を下げれば。
教室全体から拍手をもらえたのだった。
よかった・・・・。
「ありがとう。急な話だったのに、引き受けれくれて」
「そんな」
『助かったわ』と微笑むリコ先生オススメの、ミカンジュースを一口。
うーん!甘くてうまい!
聞けば、行きの列車でも頂いた『冷凍ミカン』と同じ品種を使っているらしい。
道理で美味いわけだ・・・・。
「こちらこそ拙い語りで、恐縮です。生徒さんの為になれていたらいいのですが」
「十分よ」
「そうそう!私も『ワクワクもんだー!』って夢中になっちゃった!」
「スカイランド、いつか遊びに行くね!」
「モフルンも、行くモフー!」
「ああ、大歓迎だよ」
みらいさんとことはさん、モフルンさんにも好評だったようだ。
よかった・・・・。
今は休み時間。
昼休みまであと授業一つという時間帯。
タタラさんもそろそろ起きているだろうし、本格的にバーストカリバーの修理も始まるはず。
必要な材料があるのならどこにだって取りに行くつもりだし、時間がかかるというならいつまでも待つつもりだ。
私に出来る事なんてほとんどないようなものだから、ご用命があるなら全力で応える所存である。
「意気込みはいいけど、気負い過ぎないように」
と、リコ先生に肩を叩かれた。
・・・・さすが教師、見抜かれていたか。
「わたし達もいますからね!」
「そうです!ソラさんは気負い過ぎです!!」
ましろさんとツバサ君にも突っ込まれたお陰か、ちょっとだけ肩が軽くなった。
いかんいかん・・・・気を張り過ぎていた。
「とにかく、一度ヨヨさん達と合流を――――」
一度、よそ見をした。
その時。
「――――?」
ストッ、と。
足元に感覚。
見下ろすと、矢が一本刺さっているのが見えて。
・・・・いや、なんで?
なんて疑問に思っていると、
「――――キュアップラパパ」
――――全身の神経が逆立つ。
脳みその真ん中が、痛いくらいに警鐘を鳴らす。
「――――穿ち抜けッ!!」
矢じりから溢れる様に伸びた根っこから、守るべきものを守るために。
「ソラさんッ!?」
「そらぁ!!」
思いっきり突き飛ばした。