「まったく、コーナめ・・・・長、如何します」
「・・・・良い、このまま『視る』」
「は・・・・」
「――――キュアップラパパッ!止まりなさいッ!!」
間一髪、鋭い根っこに貫かれるところを。
みらいさんに助けられてしまった。
魔法の光を受けた根っこは、見えない何かに押さえつけられるように止まる。
「モフルン、こっち!」
「モフー!!」
思いっきりのけ反った勢いで尻もちを打つ横で、ことはさんはモフルンさんを保護。
「長い耳に、種子を使った矢じり・・・・!」
一方のリコ先生は、向かいの棟の屋根に陣取った下手人を注意深く観察していた。
手短に特徴を把握した彼女は、同じく杖を抜き放って睨みを利かせる。
「――――『鎮守の大森林』で、静かに暮らしているはずのエルフがッ!!どうしてこんな蛮行に及んだのッ!?」
「っええ!?今エルフって言いました!?」
「今そういう場合じゃないでしょッ!!前見てッ!!」
「ごめーん!」
びっくりしたみらいさんがツッコミを受けているけど、正直私も同じ感想だ。
エルフ、いるんや・・・・。
「――――貴様か」
校舎の上で剣呑に弓を構える襲撃者は、本で読んだことがある通りのビジュアルをしている。
「この世の闇という闇を敷くは、エルフの責務・・・・!」
新たな矢をつがえながら、狙いを私に定めて。
「俺と一族のッ!!誇りに懸けてッ!!貴様はここで仕留めるッ!!」
腹の底から声を張り上げた。
っていうか、私めちゃめちゃ狙われてるじゃん。
なんでぇ・・・・?
アンダーグエナジー抱え込んでるのがそんなに嫌なんか・・・・。
ああ、いや。
嫌なんだろうな・・・・。
思えば、ましろさんやみんながとびっきり寛大なだけであって。
多分彼は、至極普通の反応をしているのかも・・・・。
と、ここで。
「リコ先生!?」
「みらいさん!!」
「な、なんだなんだ!?」
「ね、根っこ!?なんでこんなところに!?」
「ッ来てはダメ!」
物音に気付いた生徒さん達が、集まってきてしまった。
リコ先生の忠告も空しく、エルフが放った矢が次々発芽。
瞬く間に太く凶悪になった根っこが、またやってきて・・・・!
・・・・ッ!
「ッ奴の狙いは私です!!引き付けるので、そのうちに生徒の避難を!!」
「他に手はないか・・・・!ッ分かったわ!!」
迫る根っこを蹴り飛ばしながら進言すれば、リコ先生は苦い顔で頷いてくれる。
「でぇいっ!」
枝の一部に回し蹴りを叩き込んで、振り易い長さに加工。
うーん、我ながらいい感じ!
こんな時になんだけどね!
「ふっ、はっ!たあぁっ!」
「おのれ・・・・!」
なお放たれる矢を斬り捨てて駆け出せば、まんまと引っかかってくれるエルフ。
よし、このまま・・・・なるべく人気のない方へ・・・・!
「っそうだ、はーちゃん!折り鶴を出して!」
「な、なんで!?」
「説明の暇はないの!お願い!」
「ゎ、分かった!キュアップラパパ!折り鶴出てきて!」
「ッキュアップラパパ!導いて!」
同じく屋根に飛び乗っていると、どこからともなく小鳥が飛んでくる。
・・・・いや、これ折り紙だな?
なんでこんなもんが、と首を傾げていると。
「――――それについて行って!!」
リコ先生の声が聞こえる。
「人のいないところへ案内してくれるわ!!」
「はー!なるほどー!」
なるほど、そういうことか!
「ありがとうございます!」
腕を振り上げてお礼を伝えてから、折り鶴が導くままに走り出す。
◆ ◆ ◆
「わたし達も早く行かないと!」
「だね、ソラちゃん一人にさせられないよ!」
――――ひろがるチェンジ!!
ソラが立ち去ってすぐ、ましろ達もミラージュペンを手に追いかける。
「はー!わたし達も!」
「うん、ほっとけない!」
プリキュアに変身する彼女達の背中に、みらい達も続こうとしたが。
「――――リコ!」
「リコ先生!何事ですか!?」
「き、教頭先生!お姉ちゃん!」
教頭と、リコの姉のリズが駆けつけて来た。
踏んでしまった二の足をなんとか誤魔化して、二人に目を向けるみらい達。
ソラ達ひろがるチームと違い。
彼女達はマホウ界サイドにもナシマホウ界サイドにも、プリキュアであることは内緒にしているのである。
「鎮守の大森林にいるはずのエルフが、どういうわけだかお客様を・・・・ソラさんを襲撃してきて・・・・!」
「何ですって・・・・!?」
「滅多に人前に出ないエルフが、どうして・・・・」
ひろがるチームが目撃されなかったことにほっとしながら、リコが現状を説明。
リコが勤務中にも関わらず、リズを『お姉ちゃん』と呼んだことも鑑みて。
よほど切羽詰まった状況なのだと察する二人。
「今、ソラさんが囮になって引き付けてくれています。ましろさん達も、あっちの方で先んじて避難誘導を」
「私達も、そっちに行こうとしてました!」
「では、私達はこちら側ですね」
とにもかくにも、ここが学校である以上生徒達の安全が最優先だ。
手早く役割分担を済ませると、みらい達は物陰に隠れる。
「急ごう!」
「モフ!」
「ええ、大切なお客様に、怪我させるわけにはいかないわ!」
「はー!行くよー!」
それぞれアイテムを構えて、手にした奇跡の言葉を唱える。
「「――――キュアップラパパ!!」」
「ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!!」
「フェリーチェ・ファンファン・フラワーレ!!」
◆ ◆ ◆
「っここか・・・・!」
途中でプリキュアに変身しつつ、魔法の折り鶴に導かれたのは。
グラウンドらしき場所だった。
なるほど、ここなら多少暴れても問題ないな・・・・!
申し訳ないことに、授業中の様であったけれど。
すでに逃げてくれていたお陰で、教師と生徒さんの背中はだいぶ遠くだ。
「キュアップラパパ!生い茂ろ!!」
「ッ・・・・!」
安心している横で、無数の矢が発芽しながら降り注ぐ。
種はみるみる成長して、あっという間に大量の大木となった。
「
縦横無尽に駆け回りながら、巻き起こる土煙と飛び散る瓦礫を避けまくる。
クソが、向こうも無遠慮に物量で来やがった!!
「ッ流々舞い!!」
エルフの魔力量がどれくらいか、そもそも魔力切れなんてあるのかもわからないので。
最低限の動きで、合間を縫うように掻い潜る。
「おのれ・・・・!」
対するエルフは、目に見えて悔しそうに歯を食いしばると。
懐から何かを取り出す。
日の光を浴びて、キラっとしたのは・・・・ガラス玉・・・・?
「キュアップラパパ!射し照らせ!」
首を傾げた瞬間、ガラス玉が激しく発光。
在ろうことか、無数のレーザーが放たれた。
いやいやいやいやいや!?こいつマジさぁ!!
「見境なしかよッ・・・・!」
「燃え尽きろォッ!!」
今持っている棒切れでは、当然対処出来るわけがない。
素早く校舎の位置を把握して、せめてそっちに攻撃がいかないよう意識して立ち回る。
似たようなルートを通ることになるから、レーザー跡の熱気を浴びる事にもなって・・・・。
あっつぅ・・・・でも、被害を出すわけには・・・・!
と、なんとか対処していると。
「――――プリズムショット!!」
背後に迫っていた大木が撃ち抜かれる。
木くずが散る中振り向けば、仲間達が駆けつけてくれていた。
「スカイ!」
「ごめん、遅くなった!」
それぞれ木の根を対処しながら、こちらと合流してくれるみんなと並んで。
改めてエルフと睨み合う。
「ならば・・・・ッキュアップラパパ!」
対するエルフは、もう一度呪文を唱える。
すると、周囲の木々が生き物のようにうごめき始めて。
「――――大木の巨人よ、闇を討ち果たせッ!!」
――――オオオオオオッ!!
木で出来た、巨人になってしまった。
・・・・いや。
「でっかぁーっ!?」
「油断するな!!このサイズ、身じろぎすら脅威だぞ!!」
エクリプスの警告が響く中、木の巨人が動き出す。
ぐくん、と体の木を軋ませながら、拳が振り上げられて。
叩きつけられる。
――――オアアアッ!!
「ワーッ!?」
「すごい威力だ・・・・!」
素早く散開して、飛び散る瓦礫を回避。
「こんなおっきい相手、どうしたらいいの!?」
「足元を狙え!」
「だね!転ばせて動けなくしちゃおう!」
「なるほど、分かった!」
困惑するマジェスティへ、エクリプスとバタフライがアドバイスしているのを聞きながら、
大木や瓦礫を足掛かりに上へ上へ登って行ったら・・・・。
「気炎万象ォッ!!」
――――アアアアッ!?
切り落としを、叩き込む!!
炎の呼吸の技だからか、心なしかダメージが大きい様な気が・・・・。
木の巨人だからか?
「ッ・・・・!」
気を取り直して、巨人の腕に着地。
すると、周囲から取り囲む形で根っこが伸びて来た。
「ッハア!!」
鞭のようにしなったそれらに、ぶちのめされそうになったので。
咄嗟にぐるりと一回転。
薙ぎ払ったのはいいんだけども。
手元で、バキリと嫌な音。
目をやれば案の定、手にした棒切れが圧し折れてしまっていた。
代わりになりそうなのは・・・・見当たらないな・・・・。
「スカイ!!」
また枝の鞭が出て来たので、バク転で後退。
避けきれないものはマントで弾き飛ばしながら、腕から飛び降りて自由落下。
文字通り飛んできてくれたウィングに、キャッチしてもらって地面に戻る。
「スカイ、武器が・・・・!」
「ええ、情けない話ですが・・・・」
素手での特訓もしていないわけじゃないんだけども。
やっぱり得物がないと、上手く戦えない・・・・!
「舐めるなよ!!」
苦い顔を隠せないでいると、エルフが巨人に号令。
すると、巨人は自らの上半身を無数の枝に解くと。
それらを巨大なハンマーに編み直した!?
やっばい、校庭諸共つぶす気かよ!?
「――――砕け散れィッ!!」
予想通り、巨大な質量が迫って来た。
・・・・マズイ。
マズイマズイマズイ!!
このままじゃ、みんなが!!
「ウィングッ!!」
「ッはい!!」
焦っている私とは対照的に、バタフライは冷静だった。
ミックスパレットを手にウィングを呼ぶと、即座にタイタニックレインボー・アタックを発動。
負けないくらいでっかい虹色の鳥が、ハンマーを受け止める。
持ちこたえてくれているけど、いつまで持つか・・・・!
「――――スカイッ!!」
中心にいるバタフライ達を案じていると、エクリプスの声。
振り向くと、何かが投擲される。
夢中ではっしと掴んでから見ると・・・・箒?
あ、そっか。
生徒さんの忘れ物か!?
魔法学校だから、箒で飛ぶ授業があるのか!!
すげー、流石魔法の世界!!
って、感動してる場合じゃねぇな!!
「ゴオオオォォォ・・・・!」
呼吸を深める、整える。
バーストモードは使えなくても、『痣』がある。
大丈夫、いける!!
「――――全集中・日の呼吸」
ちょっと申し訳ないけど、虹色の鳥になったウィングを足場に駆け上がって。
「――――
まずは一撃。
「
「
「
そこから掘り進めるように、切り刻んでいく。
「ハァッ!!」
「ッおのれ・・・・!」
そうしてハンマーの反対側に躍り出ると、エルフと対峙した。
「闇を討たねばという責務は理解します、悪を断たねばという信念に共感します。しかし、何のかかわりもない、子ども達を巻き込んでまで、やることですか!?」
「今更命乞いか!?」
「違います!!」
頓珍漢な反応に、思わず声を荒げてしまう。
「掟や法ではない、もっと根本的な部分の話をしているんです!!私が狙いなら、私だけを攻撃すればよろしい!!ここで学ぶ生徒達に、一体なんの罪があるのかと問うている!!」
「ッ黙れ!!闇の手先風情が、道徳を語るでないわッ!!」
「アーッ!!もーっ!!」
話が通じねー!!
「そして戯けめがッ!!まんまと懐に入り込んだな!!」
「・・・・ッ!!」
なんて嘆いている場合じゃねーな!?
周囲から、さっきとは比べ物にならないくらいの枝と根があふれ出して。
津波の様に迫って来た!!
仕留めにかかってきたな・・・・!!
「全集中・水の呼吸ッ!!」
もちろん、黙ってやられるつもりはない。
「拾ノ型 生生流転ッ!!」
下のウィングとバタフライも心配だ。
出し惜しみはしない!!
「はああああああッ!!」
水の龍と共に次々切り捨てながら、一直線にエルフを目指す!!
「っぐ・・・・ならば!」
当然、向こうもただで近づかせるつもりはないらしい。
枝や根っこから、鋭い棘が伸びてくる。
勢いがものすごくて、いくつか掠る。
それ自体は、特に何の問題もないけれど。
「クソッ・・・・!」
ダメだ。
数が多すぎる・・・・!
「今だ!キュアップラパパ!!戒めよッ!!」
「っあ、ぐあ!?」
手元を弾かれて、得物を手放した一瞬。
枝と根に雁字搦めにされてしまう。
しまった、動けない・・・・!
「スカイ!」
「スカイ!今行く!!」
さらに追い打ちをかける様に、プリズムとマジェスティがハンマーの上にやってきて・・・・!
・・・・~~~ッ!!
「ダメだ、来ッ・・・・!」
「――――今だ!」
制止は、空しくエルフに遮られる。
「キュアップラパパ!!巨人よ!!思いっきりのけ反れ!!」
号令の後、足元が大きく揺れた。
声を出せない代わりに、行動で応えた巨人が。
思い切りのけ反り始めて。
「きゃ・・・・!」
「プリズム、つかまって!!」
当然巻き込まれたプリズム達ごと、視界がひっくり返り始める。
・・・・マズい。
今度こそマズい!!
このままじゃ、地面に叩きつけられる!!
私だけならまだしも、プリズム達まで巻き込まれる!!
「ああっ、ぐう・・・・!」
拘束は、抜け出せない。
「・・・・めろ」
得物はない。
「やめろ・・・・!」
助けられない・・・・!
「やめろ!!」
諦めたくない。
諦めたくないのに・・・・!!
何も、出来ない・・・・!!
「やめてくれえええええええ――――ッ!!!!!」
「――――なるほど」
「これは見てられんな」
まほプリの面々が活躍するのは次回になります(白目)