アルカナ・シャドウちゃんも楽しみです!
「――――あ、れは?」
――――みらい、リコ、ことはの三人が変身する『魔法つかいプリキュア』の面々。
本当はすぐにでも駆けつけようとしていたものの。
魔法学校中がパニックに陥っていたため、その対処に追われていたのだ。
そして、いざ駆けつけてみれば。
グラウンドから、重苦しい火柱が立ち上っているのが見えたのだ。
「とっても、苦くて・・・・冷たいにおいがするモフ・・・・!」
「ええ・・・・それにとても重たい・・・・!」
「さらにあっつい!!」
「ここからでも、肌が炙られる・・・・!」
モフルンは怯えながら鼻を押さえ、ことはの変身する『キュアフェリーチェ』は険しい顔をする。
一方、みらいが変身する『キュアミラクル』と、リコが変身する『キュアマジカル』は。
その熱気に怯んでいた。
火柱の中心にいるのは、キュアスカイ。
左目から漆黒の炎を吹き出している彼女は、肩で大きく呼吸をしているのが遠目から見えた。
「ここでこの熱気だもの、中心にいるソラさんはどれほどのダメージか・・・・!」
「それじゃあ、冷やさないと!」
如何にプリキュアでも、長時間高温に曝されればただで済まない。
現に熱気の中心にいるスカイの顔色は、みるみる悪くなっていた。
「水をかけるのはダメよ。発生した水蒸気で、大やけどを負いかねない!」
「じゃあ、どうしたら!?」
「落ち着いて、要するに炎が消えればいいんだから!」
実際に、高温の水蒸気を浴びて重度の火傷を負い、死亡したケースはある。
それを危惧したマジカルは、逸る二人を宥めながら、得意げな笑み。
「考えはある、ミラクル手伝って!」
「おっけい!」
ぱちんとウィンクの後、ミラクルと共に杖を構えて。
「キュアップラパパ!土よ、盛り上がって!」
「そっか!キュアップラパパ!土よ!ソラちゃんに覆い被さって!!」
マジカルが隆起させた大量の土砂を、ミラクルが布団の様にスカイにかぶせる。
すると、立ち上っていた黒炎が目に見えて鎮火する。
通常の炎と同じように、酸素を遮断されたからだった。
「よかった、消火できた」
「でも、まだ戻ってない・・・・」
しかし炎こそ消えたものの、スカイは元に戻っていない。
「熱はマシになってる、行きましょう!」
「うん!」
耐えられるくらいになった熱気の中を、駆け出していく。
◆ ◆ ◆
「――――は、は、は、は」
――――熱い。
熱い、熱い、熱い・・・・!
何があったんだ・・・・私はどうなっているんだ・・・・!?
「は、は、は・・・・っぐ・・・・!」
この熱さ、重さ・・・・。
バーストモードじゃない。
何だこれは・・・・!?
いや、今はそれよりも・・・・!
「み、んな・・・・!」
みんなは?
ましろさんは?エルちゃんは?
無事なのか?
「あああ・・・・!」
ダメだ。
まずはこの熱さをどうにかしないと・・・・!
私の中から発生しているのだけは分かる。
なら、制御だって出来るはず・・・・!
「は、ぁ、っぐ・・・・!」
抑えろ、抑えろ、抑えろ。
完全に、確実に。
私の支配下に置け。
――――アハハハハハハハハハッ!!
――――ずっと一緒よ!!わたしのお人形!!
もう、二度と。
――――ころして
――――おねがい、ころして・・・・!
「ああああああああああああッ・・・・!!」
もう二度と・・・・あんなことは!!
『待て待て』
『力任せで使いこなせるほど、甘いものではないぞ』
・・・・エッ?
だ、誰?
誰なのォッ!?
『それは今どうでもよいではないか』
『まずは荒ぶってしまったものを鎮めるのが肝要』
『違うか?』
・・・・正直、分からない。
分からないけど。
他に頼る術はない、か・・・・!
『よろしい』
『フフフ、娘を思い出す素直さだな』
また気になる情報がぶっこまれた気がするけど。
無視だ無視、スルーがジャスティス!!
『まずは落ち着け、無理に乗りこなそうとするな』
『深く息を吸い、心を静めろ』
「っす・・・・は・・・・す・・・・は・・・・!」
声に従って、時間をかけて呼吸する。
『良いぞ、そのまま続けろ』
しばらく続けていると、高熱が収まってくるのがはっきり分かった。
よし、よし。
このまま・・・・!
「すぅ・・・・はぁ・・・・すぅ・・・・はぁ・・・・」
とにかく抑え込むんだ・・・・!!
『良し、良し、実に良し。後は任せろ』
――――体が軽くなってくる。
熱が引いてくる。
「――――は」
そのうち、気が付くと熱も重みもすっかり消えていて。
呼吸も楽になっていた。
っていうか、なんか全身が砂まみれになってんだけど・・・・。
口の中じゃりじゃりする・・・・。
「スカイ!!」
「ソラ!!」
プリズムと、マジェスティの声がする。
・・・・よかった、二人とも無事。
(――――ぁ)
ほっとすると、意識が一気に遠のいて。
「スカイ、スカイ!・・・・ッソラさん!!」
プリズムに縋りつかれるのを感じながら。
暗闇に落ちて行った。
◆ ◆ ◆
「ソラさん!ソラさん、しっかり!」
「ソラ!」
完全に意識を失い、変身まで解いてしまったソラを。
プリズムとマジェスティが抱き起しながら、必死に名前を呼び続ける。
「みんな、無事!?」
「ッ、ぇ、あ・・・・?」
「私よ、リコ」
そこへ、魔法つかいチームが駆けつけて来た。
始めは誰か分からず、警戒した様子のプリズムだったが。
マジカルが声を潜めて正体を明かしたことで、目に見えて安堵する。
「――――リンクルン!アクアマリン!」
遠くでは、プリズムと同じ桃色の髪を揺らしたプリキュア『キュアフェリーチェ』が。
周囲に冷気をまき散らしている。
高温の水蒸気の懸念がなくなった故の行動だった。
「エルフさんは・・・・?」
なんとか間に合ったことにほっとしながら、ミラクルが周囲を見渡すと。
「――――ぐっ」
スカイの黒炎で吹っ飛ばされたらしい彼が、苦々しく立ち上がるところだった。
「どうしてこんなことをしたの!?エルフさん!!」
「『どうして』、だと・・・・?」
ソラ達を庇う様に身構えて問いかけると、エルフは剣呑に口元を食いしばって。
「貴様らこそ何故そいつを庇い建てするッ!?マザー・ラパーパの奇跡を継いでおきながら、何故ッ!?」
矢をつがえ、水晶を攻撃的に輝かせながら、まるで咆える様に問い返すエルフに。
ミラクルはやや驚いた顔を見せた。
『マザー・ラパーパ』。
人間の感覚では想像も出来ないほど遥か昔、世界を想像した地母神。
ミラクル達に、『魔法使いプリキュア』という『希望』を託してくれた存在でもある。
あまりにも昔の存在の為、人々の記憶からはすっかり消えていたのだが・・・・。
「マザー・ラパーパを知っている・・・・?」
「妖精ほどではないけれど、エルフも長生きなの。伝承が残っていてもおかしくない」
「なるほど・・・・!」
隣に立ったマジカルの補足に、ミラクルは納得で表情を引き締める。
「裏切者めがッ・・・・!!」
一方のエルフは、絞り出す様に怒りを露にして。
「闇と敵対していたならばッ、何故そいつを庇うッ!?その脅威、危険性!!知らぬお前達ではあるまい!!」
「それはそうだけど・・・・!」
「――――ならばッ!!」
反論しようとするミラクルを遮って、エルフは怒号を上げる。
「ならば討てッ!!闇を断てッ!!」
「――――ッ」
相手の気迫に、ミラクルは一瞬圧されてしまう。
実際に『闇の魔法』と対峙し、その脅威を身を以て知っているが故の反応だった。
もちろん、だからといってこの暴挙を看過できるわけもない。
なんとか彼らを宥めることは出来ないかと、思考を巡らせ始めた時だった。
「――――やめて」
声が、響いた。
全員が振り向いた先にいたのは、プリズム。
片腕を伸ばして、マジェスティに抱えられたソラを庇った彼女は。
泣きそうな表情でエルフを見据えている。
「・・・・もう、いやだ」
荒い呼吸を整えたプリズムは、一語一語をはっきり伝える様に。
言葉を続けた。
「死ぬとか、消えなきゃいけないとか、もううんざり・・・・!!」
脳裏に浮かんでいたのは、今までのこと。
キルミラに洗脳されたこと、人を殺めてしまったこと。
魘されている姿、罪悪感にのたうち回る姿。
そして、弱音すら吐かなくなってしまった、この頃の姿。
「ましろちゃん・・・・」
「ソラさんは何をしたの?あなたは何をされたの?そこまでして倒そうとする理由はなんなの?それは、関係ない人を巻き込んでまでやることなの?」
一歩、踏み出して。
「これ以上攻撃するなら・・・・それ以上近づくなら・・・・!」
両手に、光を溜めたプリズムは。
涙をぼろぼろ零して。
「絶対に許さない・・・・!」
「・・・・ッ」
さすがのエルフも、気迫に圧されてしまったらしい。
静かに、息を呑んでしまっていた。
それでも構えた弓矢が降ろされることはなかったので、誰もかれもが臨戦態勢を解けずにいた。
「――――キュアップラパパ」
千日手のような膠着状態を破ったのは。
低く、静かで。
しかし、はっきり聞こえる声。
「――――戒めよ」
刹那。
「ぬわっ!?」
「わわわッ!?」
「ッ何!?」
根が大蛇の様にうねったと思うと、瞬く間にエルフを拘束してしまった。
ひろがる・魔法使い両チームは、驚愕にしばし固まってしまっていたが。
「――――もう良かろう、コーナ」
現れた新たな人影に、身構えながら視線を向ければ。
低木の様な風体の老人と、ガタイのいい青年。
『コーナ』というらしい襲撃者とはまた違う、二人組のエルフだ。
「タイボク様!?ですが・・・・!!」
『タイボク』と言うらしい老人に、コーナは食って掛かるが。
「――――もう良い、と云うたぞ」
「――――ッ」
怒鳴られたわけではない、大声を上げたわけではない。
それでも確かな覇気に、すっかり口を閉ざしてしまった。
「・・・・あのっ」
「――――タイボク殿ッ!!」
襲撃者と同じエルフだが、話が通じそうな雰囲気に。
ミラクルが意を決して口を開くと。
タイミングがいいのか悪いのか、校長がちょうど駆けつけてくる。
「申し訳ない、ワシの説明が足りんかったのがいけなかったんじゃ・・・・!」
「否、我らこそ話を詳しく聞かぬまま、挙句同胞を御しきれなんだ」
果たして。
予想通り、タイボクは理性的なエルフだった。
泡を食って頭を下げる校長へ、タイボクも同じくらいに深くこうべを垂れる。
「――――さて」
改めて一同を見渡したタイボクは、再三深く頭を下げる。
「我が名はタイボク、エルフの族長を務めておる。この度は、同胞が多大なご迷惑をおかけした」
そして、最後にプリズムと目を遭わせながら。
「恥を承知で、お頼み申す・・・・どうか、我らの話を聞いて頂けないだろうか」
落ち着き払った声で、懇願した。
意外と続いてしまっているまほプリ編、あと2・3話はかかるかなぁ・・・・。