ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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偽物、知らぬところでdisられる

「ふふふふーんふん♪ふふふふーんふん♪」

 

鼻歌を歌いながら愛車を運転していたあげは。

今日も今日とて専門学校でカリキュラムをこなした彼女は、ふと思い立って虹ヶ丘家に向かっているところだった。

 

「イライラも♪キラキラに~♪・・・・んっ?」

 

その途中、駆け抜けるましろが見えた。

ただごとではない雰囲気に、ブレーキ。

 

「ましろん!」

 

クラクションを鳴らして、窓を開ける。

標識を確認してから路肩に止めて、ましろの下へ駆けつけた。

 

「ましろん、どうしたの?何かあったの?」

「あげはちゃん・・・・」

 

落ち着いて問いかけると、こちらを見つめるましろの目が。

みるみる涙でいっぱいになって。

 

「っま!まままままままましろん!?」

「あげはちゃん、どうしよう・・・・!」

 

仰天するあげはの前で、しゃくりあげながら。

 

「わたし、すっごくいやなこだああぁ・・・・!!」

 

ましろは、声を上げて泣き出したのだった。

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

飛び出してしまったましろさんを追いかけていく。

ツバサくんのことを黙っていたのが、そこまでショックを与えるなんて・・・・。

なんてことだ、あげはさんにも『見守ってあげて』って言われたばっかりなのに!

だいたい、少し考えれば分かる事じゃないか。

いくら優しくても、いい子でも。

あの子は十代の、心がとても繊細な時期の女の子なんだって。

ああ、くそ。

バカだろ、お前(自分)

なんでそんな大事なことを、頭からすっぽ抜かしていたんだ・・・・!!

 

「ッましろさん!」

 

自己嫌悪してる間に、ましろさんの姿が見えた。

誰かに促されて、車に乗り込んでいる。

すわ、連れ去りかと思ったけれど。

隣にいる誰かがあげはさんだと分かってからは、警戒も薄れた。

 

「――――」

「・・・・ッ」

 

一瞬、あげはさんと目があう。

こちらを責める様に目を細めた彼女は、すぐ何事もなかったかのように車に乗り込んで。

ましろさんを連れて、街の方へハンドルを切っていた。

 

「・・・・・はあっ」

 

文字通り。

頭を、抱えた。

 

(・・・・・泣いてたな)

 

助手席に乗った、ましろさんは。

こちらに気付くことなく、何度も涙をぬぐっていた。

・・・・あんな顔を、させてしまったことが。

ただただ不甲斐なくて、悔しくて。

 

「・・・・はあ」

 

――――追いかけることは、出来る。

だけど、今それをするのは間違っていると確信もしている。

だいたい、追いかけて、追いついて。

それで?

ましろさんになんて声をかけるというんだ?

そもそもあげはさんが近寄らせてくれるかどうか。

・・・・ましろさんが、近寄らせてくれるかどうか。

 

「・・・・ッ」

 

――――言い訳ばかりの自分の、情けなさに。

吐き気を覚えながら、踵を返す。

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

「そっかぁ、そんなことが」

「うん・・・・」

 

市街地、とある公園。

キッチンカーのイートインスペース。

涙も落ち着いたましろは、あげはが奢ってくれた飲み物をちびちびと口にしながら。

事の経緯をとつとつ語った。

 

「・・・・別に、ましろんは嫌な子じゃないと思うな」

「そうかな」

「うん、どっちかっていうと、ソラちゃんが悪いよ」

 

あげははホイップが乗ったフラペチーノを飲みながら、眉間にしわを寄せる。

 

「っていうか、あれだね。ソラちゃん想像以上に鈍いね!」

「うう・・・・そうなの・・・・全然意識してもらえてないの・・・・」

 

あの、卒倒した現場に居合わせたこともあって。

ましろは文通の中で、あげはにソラへの恋心について打ち明けている。

それを踏まえて、あげはがこりゃ参ったとばかりに笑えば。

ましろはがっくり肩を落とした。

 

「それで、そのツバサくんだっけ?ましろんから見て、どうだった?」

「・・・・悪い子じゃないと思う。おばあちゃんもソラさんも信頼してるし、エルちゃんもいつの間にか懐いてるみたいだったし・・・・だけど」

 

ましろの脳裏に、蘇る。

遠慮なく頭を撫でられるツバサと、それを微笑まし気に見ているソラ。

ましろが頭を撫でられる時、ソラは必ず撫でていいかどうかを聞いてくる。

こちらを尊重してくれているのは分かるが、あの仲良しな様を目の当たりにしてしまった今は。

それが、酷いくらいに距離を感じさせてきて。

辛かった。

それに加えて、ソラが悪夢に悩まされていた頃。

眠れぬ彼女に、ツバサはハーブティを淹れて、相談に乗っていたらしいのだ。

同じ時期の朝、ハーブティの残り香に気付くことがあったが。

あれはそういうことだったのかと、愕然とした。

 

「わたし・・・・そんなに頼りないのかな」

 

ぽつり、と。

零れる弱音。

 

「そんなに、信頼されていないのかなッ・・・・!」

 

目には、再び涙が滲んで。

ましろは体を震わせる。

あげははそんなましろをそっと抱き寄せて、ぽんぽんと宥めながら。

ううん、と考えて。

 

「・・・・・信頼とか、それ以前のような話な気もするなぁ」

「う"う"・・・・そうなの?」

 

宥める手を止めないまま、あげはは一つ首肯して続ける。

 

「ましろんのこと、同じプリキュアとして認めてくれてはいるんだろうけど。やっぱり『守らなきゃいけない年下』っていう感覚が抜けてなさそうに感じる」

 

ましろは涙をぬぐいながら、静かに耳を傾けた。

 

「そりゃあ、『年齢とかしるもんか、ガンガン戦いなー!』って言われるよりはずっとずっといいんだけどさ」

「・・・・うん」

「うん、うん・・・・そうだなぁ・・・・」

 

口に出しながら、考えをまとめたあげはは。

やがて、一つ頷いて。

 

「こりゃあ、ましろんも負けずにアピるしかないね!」

「・・・・ええっ!?」

 

ぎょっと慄くましろがあげはを見上げれば。

彼女は得意げににまにましていて。

 

「だって、ソラちゃんのにぶちんぶりが、もう想像をはるかに超えてんだもん!ちょっとやりすぎるくらいじゃないと、自覚してくれないよ!」

「っで、ででででも・・・・!」

 

当事者そっちのけでハイテンションになるあげはを目の当たりにして、段々判断力が戻って来たましろ。

顔を赤らめながらも、今度はましろがあげはを宥めようとするも。

 

「――――迷惑になるかもって思っていたから、こうなっちゃってるんでしょ?」

「・・・・ッ」

 

温かい目に見つめられて、ただ興奮しているのではないと気付く。

 

「せっかくの初恋なんだもん、当たって砕けていくくらいの勢いで、思いっきり楽しまないと!」

 

『ね?』と、笑いかけられて。

ましろは目を閉じて、ゆっくり呼吸する。

視界が真っ暗になれば、思い出す今までのあれやこれ。

こちらを気遣い過ぎて、距離を置いているソラの所業を顧み続けていると。

なるほど、あげはの言う通りな様な気もしてきた。

 

「・・・・うん、そうだね」

 

あげはに見守られる中、静かに目を開けて。

両手を握る。

 

「ありがとうだよ、あげはちゃん。わたし、頑張ってみる!」

「よぉっし!その意気だ!命短し、恋せよ乙女ー!」

「わあっ!あはははっ!」

 

すっかり元気になった幼馴染に、あげはが思いっきりよくハグすれば。

一度勢いに押されたましろは、無邪気な笑い声を上げたのだった。

 

「そうと決まれば、作戦会議だ!どうする!?なにするー!?」

「もー、気が早いよあげはちゃん!」

 

わしゃわしゃともみくちゃにされながら、姦しくはしゃぐ二人。

 

「あはははっ・・・・ん?」

 

一通りましろを撫でまわしたあげはは、ふと空を見上げて。

招かれざる存在がいるのに気付いた。

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

――――ましろさんがあげはさんに保護されたのはいいものの。

音沙汰がないのにやっぱり落ち着かなくなって。

さすがに迎えに行こうかと考えていた時のことだった。

 

『プリキュアアアッ!!どこだぁーっ!!とっとと出てきて、勝負するのねん!!』

 

市街地からのハウリング音に、ツバサくんやヨヨさんと一緒に庭に出てみれば。

お手本の様なUFOが市街地で暴れ回っている。

 

「あんな形のものが、空を飛ぶなんて・・・・航空力学的に有り得ません!」

「有り得ないなんてことこそ、有り得ませんよ。実際に飛んじゃってるんですから!」

 

UFOは無差別に市街地を攻撃して回っていて、人々の悲鳴がここからでも微かに聞こえる。

・・・・何より。

ましろさんが気がかりだ!

 

「行ってきます!ヨヨさんとツバサくんは中に!」

「えりゅー!えるるー!」

 

ミラージュペンを構えると、エルちゃんが両手を市街地の方に向けてぱたぱたさせた。

・・・・エルちゃんも、ましろさんを心配しているらしい。

 

「大丈夫ですよ、ましろさんは私に任せて、あなたはツバサくんといてください」

「えるー!」

「あなたのナイトを、困らせないように」

「えうぅ・・・・!」

 

まだ不満げなエルちゃんの頭を撫でてから、改めて市街地を見据えて。

スカイミラージュを手にする。

 

「――――ひろがるチェンジッ!スカイッ!!」

 

変身を終えてすぐ、わき目も降らずに飛び出していく。

――――この時。

後ろを向くだけの余裕があればよかった。

まさか、エルちゃんが。

ましろさんを案じるあまり、こちらへ飛び出してしまったなんて・・・・!

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

「カバトン!」

『来たなぁっ!?』

 

ところ戻って、市街地。

先んじて駆けつけていたプリズムは、UFOランボーグの下に来ていた。

 

『んんー?お前一人なのねん!?』

「ッスカイもすぐに来るよ!油断したいなら、今のうち!」

『フンッ!まあいい、けちょんけちょんにしてやるのねん!!』

 

啖呵を切るや否や、ビームを放ってくるランボーグ。

プリズムは不規則な軌道を掻い潜り、光弾を放って反撃を繰り出す。

 

『この!!やってくれるのねん!!』

 

クリーンヒットに逆上したカバトンは、ビームの数を増やしてきた。

道路を、ビルを、街灯を。

とにかくそこらじゅう滅茶苦茶に打ちまくって、瓦礫も飛ばしてくる。

 

「っふ、はっ!たああっ!!」

 

プリズムはそれらを蹴り飛ばしながら、なおも果敢に攻撃を加えていく。

猛攻の最中、街灯を足場に高く跳びあがって。

 

「プリズムショット!!」

 

ランボーグの顔面に、必殺技を叩き込んだ。

黒煙に包まれるランボーグ。

 

(やった!)

 

再びのクリーンヒットに、思わず拳を握って小さくガッツポーズ。

ソラや祖母に迷惑をかけた分、挽回出来たのではと。

完全に油断したところへ。

 

『舐めるなァッ!!』

「ラァンボーグッ!!」

 

黒煙を振り払って現れたランボーグが、思いっきり体当たりをかます。

 

「っきゃあああああああああ!!」

 

構えすらしていなかったプリズムは、直撃を受けてしまう。

 

『ダメ押しなのねん!』

 

横に薙ぐようなビームが、襲い掛かって来て。

 

「――――プリズム!!」

 

身を固めたプリズムの視界に、青が翻った。




ここのソラましはあげはさんに頭が上がらなくなる。
特にソラさんは、頭が地面にめり込む。
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