誠にありがとうございます。
過去一長くなったんじゃなかろうか・・・・。
「「――――はあっ!!」」
二人一緒に飛び上がる。
途中、プリズムが減速してしまったので、手を取って放り投げる形で前に。
「ふっ!」
そこから、プリズムの靴と私の靴を打ち合わせて。
上空へ蹴りだす!
「シィアアアア・・・・!」
もちろんそれでは足りないと分かり切っているので、ダメ押し。
「――――全集中・風の呼吸」
思いっきり空気を取り込んで、
「――――肆ノ型
生み出した旋風を、文字通りプリズムの追い風にする!
『天魔・飛翔閃』だと威力高すぎて、あの子も傷つけちゃうからね。
威力調整できるこっちを採用しました!
「っは!」
上手く風に乗ったプリズムは、一気にUFOへ肉薄。
「やああああああ!」
プリズムショットを溜めて、撃ちだす!
だけどやっぱり、ランボーグも一筋縄じゃ行かない!
「ラァンッ!ボッッ!!」
「うわっ!?」
例の如くひょいと回避すると、お返しとばかりにレーザーを撃ち返してくる。
プリズムは光弾を撃って相殺したけど、高度を保てず落下。
もちろん、それを見逃してもらえるはずもなく。
「ラララララララ!ラアーンッ!!」
「わ、たっ、っこの!」
ランボーグが次々ビームを放って、プリズムを集中攻撃。
足場代わりに撃ちだした光弾すら攻撃して、プリズムの自由を奪っていく。
・・・・まずいな。
「スカイ!」
「・・・・ッ!」
遠くから聞こえた、あげはさんの懇願に答えるべく。
一度着地した後で、飛び出す。
上空の攻防を注視しながら、落下地点を予測して・・・・っここ!
「はっ!」
『雷の呼吸』で足に力を込め、跳躍。
狙い通り、プリズムをキャッチする。
「着地は任せて!掴まってください!」
「っはい!」
そのまま近くのビルに飛び降りた。
勢いを殺せず、何度か跳ねていくつかのビルを経由しながらも、無事停止。
「早くあげはさんのところに・・・・!」
同じことをやるにしても、ここでは高度が足りない。
あげはさんのいるビルへ、戻ろうと踵を返すと。
「いや、ここでやりましょう!」
他でもないプリズムが、その足を止めさせた。
「スカイが思いっきり蹴ってくれれば、ここからでも十分に届きますよね?」
「それでは、貴女も無事で済むかどうか・・・・!」
ただでさえプリキュアで強化されてる私の思いっきりとか、プリズムが耐えられるかどうか。
最悪、足が折れる場合もあり得るのに・・・・!
だけど彼女は、まっすぐに私の目を見て。
「大丈夫!信じてます!」
そんなことを、言ってきた。
・・・・正直、状況は切羽詰まっている。
こうしている間にも、エルちゃんが連れていかれてしまうかもしれない。
そうなった場合、完全に『詰み』だ。
呑気に、あげはさんのところへ戻った場合と、ここで再チャレンジする場合とを考えて。
「・・・・分かりました、やりましょう!」
「はいっ!」
プリズムを降ろして、UFOを見上げた時だった。
「ッあれは!?」
「エルちゃん!?ツバサくん!?」
◆ ◆ ◆
「コラーッ!!赤ちゃんドロボーッ!」
「おまえがいうなー!!」
UFO内部。
人間の姿になったツバサは、カバトンと追いかけっこをしていた。
スカイ達が危惧していた通り、エルが危うくカバトンの主の下へ連れていかれようとしていたところ。
間一髪のところで、ツバサが奪取に成功したのである。
「あいった!誰だ!?こんなところにポイ捨てしたの!?あっ、オレかッ!?」
途中、カバトンが転んで自滅するという幸運にも恵まれ。
なんとか窓から出たツバサ。
「さあ、早く逃げるんだ。エルちゃん!」
エルには、空飛ぶだっこ紐がある。
自分が乗ってしまえば、すぐに捕まるのが目に見えていたから。
ツバサは一人で逃げる様に促した。
「えややー!」
しかし、エルは首を横に振るばかり。
一人残ることになるツバサを案じて、中々逃げてくれない。
「見つけたー!」
そうこうしているうちに、カバトンが追いついてきた。
巨体を、狭い窓枠にめり込ませて。
こちらに迫ってくる。
「・・・・ッ!」
猶予はないと悟ったツバサは。
人間の姿のまま、エルのだっこ紐に捕まった。
だが、案の定速度が出ない。
エルは一生懸命だっこ紐を操作してくれているが。
UFOから逃げ切るにはあまりにも遅々としていた。
巨大な影が、二人の上に落ちる。
このままでは、先ほどの二の舞だ。
エルの身柄と、自身の安全。
ツバサの天秤は、
「――――エルちゃん、逃げて」
小さなプリンセスに、傾いた。
手を離す。
支えが無くなり、夕焼けの中にツバサの身が踊る。
――――あっははははははは!
――――プニバード族は、空を飛べないんだよぉ?
――――だったらオレ、目からビーム出しちゃおっかなぁ~?
走馬灯だろうか。
自身の夢を嗤われ続けたあの頃が、蘇ってくる。
(――――結局、空を飛ぶことは出来なかったな)
迫る地面を背中に感じながら、ツバサは静かに目を閉じた。
その時だった。
「――――え」
耳元に、静寂が訪れる。
落下による風の音が止む。
どうしたことかと、目を見開けば。
「えやーい!!」
一体どういう仕組みなのか。
両手を向けたエルが、淡い光を纏って。
ツバサを浮かせているのだった。
「え、エルちゃん!?ダメだ、早く逃げて!」
「えややーい!!」
ツバサを浮かせるためか、エルの逃げ足は完全に止まってしまっている。
逃げる様に促すも、エルはかたくなに首を横に振るばかり。
『チャーンス!掃除機光線発射―!!』
そうこうしている内に、あの緑色の光線が発射されてしまった。
吸い上げられていくエルに、成す術はない。
『ギャーッハッハッハ!馬鹿な奴!そんな脇役ほっといて、さっさと逃げればよかったのねん!!』
ゲラゲラと、カバトンの嘲笑が街中に響き渡った。
「――――ぁ」
同じく。
成す術のないツバサの頬に、雫が落ちて来た。
エルの、涙だ。
助けたいのに、どうすることも出来なくて。
悔しくて、悔しくて。
ぽろぽろと落ちてくる雫。
「・・・・やめろ」
嗤うな。
知らない世界に放り出されて、常日頃から付け狙われる恐怖に晒されて。
それでも、誰かを守ろうとする。
優しいあの子を・・・・!
「エルちゃんを、笑うなあああああああ!!!」
――――ツバサの咆哮に、呼応して。
その胸が、空と同じ輝きを放った。
「――――あれは!?」
「プリキュアの、輝き・・・・!」
一目散に駆けつけていたスカイとプリズムも、思わず足を止める。
「――――もし、僕に最期が訪れたとしても」
夕日に負けぬ光の中で、ツバサは胸に手を当てた。
「その時に思い出すのは、僕の夢を嗤った人たちの顔じゃない」
その仕草は、まるで叙任を受ける騎士の様で。
「プリンセス、僕を守ろうとした、貴女の顔です!!」
上げた顔に、迷いはなく。
「だけど、それは今じゃない」
だって、これからは。
「僕が貴女を守るんだから!!」
そう。
もう、口だけじゃない。
名実ともに、守護者となるために。
少年は今、目覚めようとしていた。
「っこの!好きにさせるものか!!掃除機光線!掃除機光線!掃除機光線ーッ!」
二人いるだけでも厄介なのに、さらにもう一人プリキュアが産まれようといているこの事態。
カバトンに焦るなと言う方が無理だった。
操縦席でボタンを連打し、吸引力を上げてとっととエルを回収しようとするカバトン。
・・・・しかし。
何故、プリキュア達が手をこまねていたのか。
その本当の理由を考えていないがために、気付かなかったのだ。
「――――月牙」
ツバサも、エルも。
船内から出ている今。
『彼女』の懸念事項が全て排除されていることに・・・・!!
「――――天ッッ衝オッッッ!!!!!!」
「ギニャーッ!?」
ドガンッ!と、船体が大きく揺れる。
何事かと、敵味方揃って同じ方向を見やれば。
「油断大敵、ですよ!!」
不敵に笑ったスカイが、自由落下しているところだった。
「エルちゃん!今です!」
「える!ふうううう・・・・!」
体勢を立て直し、プリズムの光弾を足場にしながら降りていくスカイに促されて。
エルは大きく息を吸い込んで。
「ぷいきゅあああああー!」
光を、ツバサへ届けた。
受け取ったツバサは、ミラージュペンを構えて。
凛と、宣言する。
「プリンセス・エル、貴女のナイトが参りますッッ!!」
――――ここに。
小さな姫君の、小さな騎士が。
誕生する。
「――――スカイミラージュッ!」
「トーンコネクトッ!」
「ひろがるチェンジ、ウィング!」
一つ結びに伸びた髪が靡く。
足元にはロングブーツ。
「煌めきホップ!」
頭には、小さなシルクハット風の髪飾り。
両耳には、夕日の光のようなピアス。
「爽やかステップ!」
半袖の燕尾服の様なコスチュームは。
まるで夕焼けで染めたような、鮮やかなだいだい色だ。
「晴れ晴れジャンプ!」
仕上げにグローブをはめて、軽々飛び回った彼は。
高らかに名乗りを上げる。
「――――天高くひろがる勇気!」
「キュアウィング!」
◆ ◆ ◆
――――着地をちょっとミスって、仰向けに倒れたことを忘れるくらいに。
見惚れていた。
茜色の中を自在に飛び、エルちゃんを容易く救出した彼の姿。
嗚呼、その夢を知っている。
故郷に帰るよりも、こちらに留まることを選ぶほどに焦がれた。
一度決めたことは、必ずやり遂げる。
その覚悟で挑み続ける、切実な願いを知っているからこそ。
全身の痛みよりも、胸にこみ上げたものの方が勝って。
「――――素晴らしいです、ツバサくん!」
顔が破顔するのを、押さえられない。
自分事の様に喜ぶのを、止められない!
どれほど笑われても、どれほど挫折しても。
それでも、諦めなかった結果が、これだ!!
これを賞賛せずして、なんとするというのだ!?
「スカイ!」
「ちょっと、大丈夫!?」
あげはさんを抱えたプリズムが、こちらに合流してきた。
二人からすれば、クレーターの中でニコニコしてるヤバい奴に見えてるんだろう。
でも、どうか、許してほしい。
「大丈夫、大丈夫です・・・・今は、ただ、嬉しくて・・・・!」
あ、やばい。
涙出て来た。
なんとか拭っている間に、エルちゃんを抱っこしたウィングが降りて来た。
その顔は、どこか呆然としているようで。
「・・・・僕、今飛んだ?」
「っはい!飛びました!」
まだ、現実を受け入れられない様な声で、そういうもんだから。
思わず、駆け寄った。
「貴方は確かに、飛べたんです!」
「・・・・ああ」
その手を握って、ありのままを伝えれば。
段々と、ウィングの目が輝いた。
うん、うん、そうだよ。
君は今、夢を現実にしたんだよ!!
『認めねええええええええええええええええッッッ!!!!!』
・・・・感極まっているところへ。
水を差すシャウトが轟いた。
『空を飛べたからなんだっていうんだ!!TUEEEのはこのオレだああああああ!!』
どうやら、プリキュアがまた増えたのに焦っているらしい。
UFOが、明らかにやばそうな光線のチャージを始めた。
「スカイ」
どうしたもんかと身構えたところへ、ウィングがまっすぐ見てくる。
「任せて下さい」
その強い瞳は、信じられるものだったから。
プリズムと一緒に、頷いた。
「えあい!えるる!」
「・・・・はい、行ってまいります。プリンセス!」
エルちゃんからの激励ももらったウィングは
高く、高く。
雲の合間を、突き抜けて。
「――――ひろがるっ!ウィングアターック!!」
今、一条の光と成った彼は。
UFOを貫いたのだった。
「やったあ!」
「すごいじゃん、あの少年!」
プリズムとあげはさんも一緒になってガッツポーズ。
うーん、これは言うまでもないクリーンヒット。
煙の吹き具合からして、カバトンも逃げたことだろう。
・・・・だけど、中々しぶといみたいだな。
一向に浄化される気配がない。
「スカイ!あとは任せた!」
ウィングもそれを分かっているのだろう。
こちらを振り向いて、そんなことを言ってきたので。
「やりましょう、プリズム」
「はい!」
――――もうここからは言うまでもないだろう。
主を失ってもしぶとく生き残っていたランボーグを、アップドラフト・シャイニングでトドメ。
だいぶ苦戦した今回の事件は、何とか解決したのであった。
・・・・いや、それにしても。
ランボーグを浄化した後の、あのキラキラ。
本当に便利だな。
あちこち壊れてしまった街並みが、こんなにきれいに・・・・。
逆に言うと、ランボーグが絡まない戦いでは破壊痕が残ることになる。
・・・・今後の課題になりそうだな。
「少年すごいぞー!よぉーくやった!!」
「わ、わわわ!あなた誰ですかー!?」
「聖あげは、よろしくー!よーしよしよし!!」
「な、撫でまわさないでください!子供じゃないんだから!」
ひとまず。
もみくちゃにされているウィングを、救出するとしようか。
それはそうと。
「「すみませんでした」」
虹ヶ丘家。
ヨヨさんとあげはさんにも見守ってもらっている中。
ツバサくんと一緒に頭を下げる。
「貴女の信頼を裏切ったこと、誠に反省しております」
「その、ソラさんに関しては僕が頼んだので、お手柔らかに・・・・」
――――今回の、ましろさんが飛び出してしまったこと。
よくよく考えなくても、私が完全に悪いんだけども。
『自分にも責任があるから』と、ツバサくんも並んで謝罪してくれている。
いい子・・・・本当にいい子・・・・!
「え、えっと・・・・」
一方のましろさんは、どことなく困惑している。
・・・・うーん、急すぎたか?
あるいは、人目につくところでこんなことやるのは嫌だったとか?
「・・・・あのっ」
なんて悩んでいると、ましろさんが恐る恐る口を開いた。
「二人とも、頭を上げて下さい。もう、怒っていないので」
まずはそう促されたので、お言葉に甘えて頭を上げる。
目の前には、どこか緊張した様子のましろさん。
一生懸命、言葉を考えているようで。
やがて、口を開いて。
「二人にも事情があったのに、わたしも飛び出して行って心配かけちゃったので・・・・お互い様っていうことで」
そう、はにかんでから。
『でも』と、続ける。
「一個ずつ、いいですか?」
「私と、ツバサくんと、ということですか?」
「はい」
お、何かな何かな?
言ってごらん?
「まず、ツバサくんは・・・・これからは、お友達になってください。同じプリキュアになったんだし、あなたのことをもっと知りたいです」
「・・・・そんなことでよければ、喜んで!」
先にお願いされたツバサくんは、笑顔で答えながらましろさんと握手。
よかった。
今後仲良くなれるかどうか心配してたんだ。
私の所為で険悪な仲になっちゃうとか、罪悪感で死んじゃうからね・・・・。
「それから・・・・ソラ、さん」
次は私の番なんだけども。
何だかツバサくんの時以上に緊張しているというか、顔が強張っているというか。
な、何を要求されるんだ・・・・!?
いや、私に出来ることなら何でもやる所存だけど!
なんて、覚悟を決めていると。
「・・・・今度から、普通に撫でて下さい」
・・・・照れくさいのか、ちょっともじもじしながら。
「ソラさんのこと、信頼してるので・・・・許可とか、取らないでください」
顔を赤らめつつ、そんないじらしいことを言ってきた。
――――あれっ?
「そんなことでいいんですか?」
「はい、こんなことがいいんです」
なんか、こう。
もっと文句とか言われまくると思っていただけに、ちょっと拍子抜けと言うか・・・・。
いや、裁きを受ける側の私に、何かを言う権利はないか。
「ダメ、でしょうか」
「まさか、いいですよ」
了承の旨を伝えると、ましろさんは嬉しそうにはにかんだ。
・・・・これまでの行動から考えると。
もしかしたら、お姉ちゃんを取られた気分だったのかな。
だからあんなに怒らせてしまったのかもしれない。
いや、どっちにしろ私が至らぬせいであるから、気を付けるつもりではあるんだけども・・・・。
「・・・・ッ」
どちらにせよ。
受け入れたことで、ましろさんの顔が明るくなったのは間違いない。
「それでは、これからもよろしくお願いしますね。ましろさん」
「はいっ!」
嗚呼、これからも頑張らないとな。
信頼してくれるこの子を、裏切らないように。
◆ ◆ ◆
「・・・・・ん」
不意に、微睡みの中から。
ましろの意識は浮上した。
目の前に広がる青いパジャマを見て、そういえばソラにもう一つお願いを聞いてもらったと思い出したのだ。
そおっと身を起こして見れば、あどけない顔でソラが寝息を立てている。
『一緒に寝てほしい』。
そんな子供っぽいお願いを、ソラは二つ返事で了承してくれた。
未だ子ども扱いだが、今回の一件で少しは距離が縮まったように思う。
「・・・・ふふっ」
普段とは違う、かわいらしい表情に。
思わず笑みがこぼれてしまう。
(いつもはあんなにかっこいいのになぁ)
寝顔をよく見ようと、前髪を分けて。
・・・・・魔が差した、と言うべきか。
気付くと、その整ったかんばせへ。
ましろは静かに唇を落としていた。
(――――あ)
我に返ってから、顔を朱に染めるましろ。
(い、いいよね。あげはちゃんももっとアピールしなって言ってたし、ツバサくんのこと隠し事されてたし、そもそも唇には当ててないし・・・・!)
必死に言い訳をしながら、ソラを起こしてしまわないように。
極力息を殺して、だけど素早く毛布へ潜る。
「ふ、ふふっ・・・・」
ソラのにおいと、温もりに包まれながら。
再び微睡みに身をゆだねて、零すのだ。
「――――好きだなぁ」
夢の世界に、すっかり旅立ったましろは。
気付くことはなかった。
(????????????????????)
「????????????????????」
今の出来事を呑み込めないソラが、パニックのあまり顔が虚無になっていることに。