誠にありがとうございます。
ご感想と誤字報告も助かります。
この場を借りて、お礼をば。
卵、小麦粉、水、はちみつを混ぜて作った生地を、ホットサンドメーカーへ。
餡子はさすがに時間がかかるので、出来合いのものを使う。
メーカーの指示通りにタイマーをセットして焼いていけば。
段々と香ばしいにおいが立ち込めてきて・・・・。
「かーんせーい!」
「おおー!」
「見た目は本当に一緒なんですね」
アラームが鳴ったので開けてみれば、湯気の中からきつね色のおいしい魚体が。
ああー!幸せなにおい!
外の皮がサックサクなのもヨシ、ふわふわなのもヨシ!
どこから食べるかなんて論争もあるけれど、好きに食べりゃいいじゃんねえ!
ちなみに私は頭からがぶっと行く派!
「さ、ツバサくん。食べてみて!」
「はい!うわぁ、ふわふわだぁ・・・・!」
粗熱を取ってから、ツバサくんに手渡して。
いざ、実食。
「・・・・あの、そんなに見つめられると食べにくいです」
「ああ、ごめんなさい。つい・・・・」
「感想はどうかなって、ドキドキしちゃって」
感想を聞きたくて、ましろさん共々ガン見してしまうという一コマがありつつも。
私とましろさんも、一匹を分け合う形で食べてみる。
うん、おいしい!
でも、対するツバサくんは一瞬だけ残念そうな顔をしていた。
ところで君、背びれから行く派なんやね・・・・。
「・・・・やっぱり、少し違いますか?」
「いえ!その・・・・はい」
問いかけると、申し訳なさそうに頷くツバサくん。
「でも、生地はだいたい同じ味ですし、とってもおいしいです!」
「それはよかった」
「よぉーし、ここからが本番だよ!」
ほっとするのもつかの間。
ましろさんはやる気満々に腕まくりをしながら、手元のメモに今のレシピを書きつけて。
「ツバサくんに違うところを教えてもらっていけば、ヤーキターイの味に近づけると思うんだ!」
普段から料理しているのもあるんだろうけれど。
ツバサくんの為の歓迎会だから、出来るだけ彼が喜ぶことをやりたい。
彼女らしい、優しいチャレンジ精神に。
私も笑顔を押さえられなかった。
「では、いろいろと試してみましょうか?今度は私も手伝います」
「はい!よろしくお願いします、ましろさん!ソラさん!」
ツバサくんによると、生地はこのままでオーケー。
ただ、中身がまだ違うということで。
かぼちゃ、サツマイモ、ピーナッツにチョコレートと。
様々な味を一通り作ってみる。
・・・・みんなでそろって、同じ料理を作るだなんて。
調理実習のようなワクワク感を覚えるな。
あの、学校で給食以外の料理を食べるっていう非日常感。
誰もが一度は覚えがあるはずだ。
途中、小麦粉でくしゃみしちゃって、そろって粉塗れになったりもして。
大変だけど、笑顔の絶えない作業を続けること少しばかり。
用意した材料で、思いついただけの味は作れた。
「さあ、ツバサくん。食べてみて!」
「は、はい!」
さあ、緊張の一瞬でございます。
さすがに丸々全部は無理なので、少しずつ食べていくツバサくん。
「ど、どうかな?ヤーキターイとおんなじ味のものは、あったかな?」
一通り食べ終わったタイミングで、ましろさんが問いかける。
ツバサくんは、やぱり少し残念そうに首を横に振ったけれど。
「でも、どれもおいしかったです!」
その嬉しそうな声と笑顔に、嘘はなかったから。
頑張った甲斐はあったなと、胸をなでおろした。
「よし、まだまだ行くよ!」
「はい!」
気を取り直したましろさん。
まだまだ挑戦の余地ありと考えている様だ。
ツバサくんも楽しそうに頷いていた。
とはいえ、このままでは材料が足りなくなりそうなので。
ひとまず買い出しに出ることになった。
◆ ◆ ◆
「はちみつ、カスタード・・・・果物を入れてみてもいいかも!」
「色んな味のものが出来そうですね」
買い出しへ向かう最中。
土手の上を歩きながら、上機嫌にアイデアを練り続けるましろ。
ソラはそんな彼女を微笑まし気に見守りながら相槌を打ち、ツバサも何度か首肯する。
「もう時間もないし、それでうまく作れればいいんだけど・・・・」
一度、夕方の気配を見せ始めた空を見て、不安げになったが。
「ううん、きっと作れる!」
両手を握って、笑顔を見せたのだった。
そんな彼女へ、ツバサが口を開く。
「ましろさん、ありがとうございます。ソラさんも、僕の為に、こんなに頑張ってくれて」
「いいんだよ、そんな。わたしはただ、ツバサくんにヤーキターイを食べてほしいだけで・・・・!」
照れくさそうにするましろへ、今度はソラが語り掛けた。
「私も思い出します、ここに来たばかりの頃、スカイランドをイメージした『くもぱん』を作ってくれましたよね?」
知らないなりに、遠く故郷から離れてしまったソラを気遣ってくれた料理。
シンプルなあの味が、とても嬉しかったのを覚えていた。
「ましろさんの料理は、食べる人を元気づける不思議な力があるんです」
「はい!」
「そ、そんなことないですよ!」
二人いっぺんに誉め言葉を伝えたからか、真っ赤になって照れくさそうにするましろ。
「・・・・でも、本当にそうだと嬉しいなぁ」
なんとか持ち直した彼女は、料理を作ろうと思ったきっかけをとつとつ語りだした。
――――彼女が幼い頃から、両親は共働きで忙しそうにしていたらしい。
そんな彼らを元気づけたくて、幼いましろはおにぎりを作ってあげようとしたが。
小さな手のひらでは上手く握れず、途方に暮れたそうだ。
しかし、両親はそんな娘の優しさに気付いて、一緒に作ってくれたのだそうだ。
「あの時食べたおにぎりは、とってもおいしくて・・・・ずっと忘れられない味。もしかしたら、わたしのとってのヤーキターイなのかも」
「なるほど、素敵なお話ですね」
「えへへ、はい!」
心温まるエピソードに、ソラが感心する一方で。
何かを思い出したらしいツバサは、足を止めてしまう。
「ツバサくん?」
「どうかしましたか?」
ソラとましろもすぐに気付いて、同じく足を止めた。
そんな二人へ、ツバサは『あの』と切り出して。
「僕、思い出しました」
「思い出した、とは?」
ソラの問いかけに、どこか懐かしむ様な声でツバサは続ける。
「本当は、ヤーキターイを食べたかったんじゃなくて・・・・」
続けようと、して。
『かーばやーきいも~!おーいもー!』
――――無粋なノイズが、遮ってくる。
揃ってそちらを見てみれば、
『甘くてほっかほか!おいしいおいもだよーん!』
ものすごく覚えのある大男が、焼き芋屋台を引いているのが見えた。
一瞬、視線を合わせるソラとましろ。
コンマの無言のやりとりで導き出した答えは。
「教えてツバサくん、何を思い出したの?」
「本当に食べたいものがある、ということでしょうか?」
全力でスルーすることだった。
『ちょいちょい!!ちょーい!!』
「えっと、あれは・・・・」
「無視だよ無視、スルーがジャスティスだよツバサくん」
「ええ、何も遠慮はいりません。さあ、何を食べたいんですか?」
手慣れ過ぎた対応にツバサが困惑する中。
大男、カバトンもまた、納得するはずがなく。
『聞いてんのか!?おいしい焼き芋なのねん!』
「あー、いま取り込み中なんで後にしてもらえますー!?」
「さ、ツバサくん。カバトンなんて気にしなくていいから!」
「え、えっと、はい」
年上二人に促されたのもあって。
ツバサはひとまず、言いたいことを言ってしまおうとした。
その時だった。
「カモン!アンダーグエナジー!!」
「ランボーグ!!」
ほとばしる黒い気配。
焼き芋を基に生み出された、ランボーグが召喚されてしまう。
「あーっ!!もーっ!!このかまってちゃんッ!!」
「お話終わるまで待てないんですかぁッ!?」
こうなっては無視も出来ない。
ソラ達は不承不承とばかりにミラージュペンを握り、振り向いたのだった。
◆ ◆ ◆
「あつあつの焼き芋弾でいもっちまえ!」
カバトンが号令をかけるなり、左腕のキャノンから焼き芋型のミサイルが発射される。
散開して避けた後、突っ込んで一太刀浴びせようとするけど。
中々の弾幕で近寄れない。
連射速度が高いな!?
ウィングも回避に専念するほど、プリズムの連射にだって拮抗しているし。
気を抜けない相手だ。
「――――全集中・水の呼吸ッ!」
まあ、やられてばっかりじゃないけどね!
「壱ノ型 水面斬り!」
「ラアンッ!?」
プリズムとの弾幕勝負に夢中になっている横合いから、一閃。
「――――やああっ!」
さらに、逆光を味方に目くらまししたウィングが、踵落としをクリーンヒットさせて。
ランボーグの体勢を思いっきり崩した。
ナイス踵落とし!
「あっ、やべっ!」
ついでに、カバトンとランボーグを取り囲む形で陣形を組めた。
偶然とはいえ、いい流れだ。
「こうなったら・・・・!!」
まあ、万事うまくいかないのが世の中なんだけども。
戦闘中にもかかわらず、猛然と焼き芋を食べだすカバトン。
あれは・・・・ッまずい!
「ウィング、飛んで!」
「えっ、あっ!」
困惑するウィングだったけど、カバトンが姿勢を変えたことで何かあると察したらしい。
「プリズム、こっち!」
「へっ!?」
プリズムの口元を、私のマントで庇えたか否かのタイミングで。
「おなら!ブウウウー!」
あの、とんでもねぇ屁がぶちかまされたのだった。
あ"あ"ー!!くっさあっ!!
最低だけど目くらましに効果抜群ってのがまた腹立つ!!
「スカイ!プリズム!」
「げっほ!えぇっほ!!」
「く、くさいよー!!」
布一枚じゃ防げない悪臭に、溜まらず後退してしまう。
ウィングは・・・・無事上空へ逃げられたみたいだな。
よかった。
でも臭いは届いてるみたいだな、鼻を押さえてる。
「今だランボーグ!!」
「ッ参ノ型 流流舞いッ!!」
なんて、気を抜いてもいられないか!
弾幕が迫って来たので、こちらも範囲攻撃で応戦。
プリズムの援護ももらいながら、弾幕に対処。
が、少々派手にやりすぎたらしい。
「ランボーグッ!!」
「っあ、しま――――」
いつの間にか濃くなっていた土煙の中から、巨体が飛び出してきた時にはもう遅く。
「ぐあっ!」
「スカイ!」
・・・・横薙ぎをもろに喰らってしまったらしい。
地面をいくばくか転がった後、何とか立て直すと。
弾幕で追いやられるウィングと、今まさに拳を叩き込まれるプリズムが見えて。
「プリズム!」
駆けだすことすら、間に合わないまま。
プリズムは、土手に思いっきり叩きつけられて。
土煙に包まれてしまった。
「にゃーっはっはっは!おらおら、どうしたプリキュアさんよ!数が増えても大したことねぇな!」
『YOEEEEEE!!』と煽ってくるカバトン。
くそ、プリズムは無事なのか!?
いや、無事でいてくれ!
「まずは一人、
「――――してないよ!!」
調子に乗ったカバトンへ、一喝するような返事。
土煙を自ら振り払い、プリズムが飛び出してくる。
よかった、無事だ!
「わたしはまだまだ、戦える!」
「ッええ、その通り」
「舐めていると、痛い目を見るぞ!」
ウィングと一緒に、まだまだやる気十分なプリズムの隣に立つ。
「心配させてごめんなさい、でも、ここからだよ!力を合わせればきっと勝てる!」
「はい!」
三人一緒に前を見るけど、カバトンは面白くなさそうに『ケッ!』と吐き捨てて。
「空も飛べねぇ、すばしっこくもねぇ、庇われてばかりのYOEEEお荷物に、何が出来るっていうんだ!ええっ!?」
「・・・・ッ」
一瞬。
カバトンのいちゃもんに、顔が陰るのが分かって。
「「それは違うッ!!」」
ウィングも同じことを思ってくれたのか。
声が重なった。
「なぁーにが違うのねん!ランボーグ!!」
「ランボーッグ!!」
再び放たれる弾幕。
ウィングと一緒に次々処理しながら、カバトンへ反論していく。
「プリズムには、誰にも負けない優しさがあるんだ!」
「その通り!困っている誰かを見つける広い視野と、ためらわず手を差し出す温かさ!これを『強さ』と呼ばずに、何と言うッッ!!」
私も、ツバサくんも。
エルちゃんだって!!
プリズムの、ましろさんの優しさに何度助けられたことか!
何度励まされたことか!
「僕の為にヤーキターイを作ろうとしてくれた!お陰で僕は、大切なことに気付けたんだぁっ!!」
そうだそうだ!!
結局聞けず仕舞いだけどな!!
「だからッ!!」
「訂正しろッ!!」
ウィングと一緒に、大きく溜めて。
「「プリズムは弱くないッ!!」」
ランボーグを思いっきり吹っ飛ばした。
「ランボーグッ!?」
ズドン!!と、今度はランボーグが派手に土煙を上げて。
地面を切り揉みするのだった。
「「プリズムッ!!」」
決めてやれとばかりに視線を向ければ。
呆然と立つプリズムが、目を潤ませているところだった。
私達に名前を呼ばれて、すぐ我に返ったようだけども。
おざなりに目元を拭った彼女は、大きく頷いて。
飛び出した。
「ら、らあん・・・・!」
「は、早く起きるのねん!ランボーグ!!」
ふらつくランボーグへカバトンが慌てて激を飛ばしているけれど。
「プリキュア!ヒィーロォーガァールゥー!!」
もう、遅い!
「プリズムショット!!」
「ラァンッ!?」
プリズムショットがクリーンヒットして、咄嗟に防御に回したらしい左手のキャノンが壊れた。
ナイッショ!!プリズム!!
あれ見た時『コブ〇みたい・・・・』って思って、ちょっと思考の邪魔だったんよね!!
「スカイブルーッ!」
「プリズムホワイトッ!」
もうすっかり元気になったプリズムと、手を繋いで。
「「プリキュアッ!!」」
「「アップドラフト・シャイニングッ!!」」
動けなくなったランボーグへ、容赦ないアップドラフト・シャイニング!!
例の如く『スミキッター・・・・』と言い残して、ランボーグは焼き芋に戻ったのだった。
「ムキーッ!いーもんいーもん!今日はこのへーんで許してやる!!」
地団太を踏んだカバトンは、『カバトントン!』といつもの台詞を吐き捨てて。
黒い煙とともに退散していったのだった。
◆ ◆ ◆
「僕、本当はヤーキターイを食べたかったんじゃなくて、家族みんなで食べた楽しい時間が欲しかったんだって」
結局のところ。
ツバサが言いたかったことというのは、そういうことだった。
ソラ達とみんなでたい焼き、もといヤーキターイを作っているあの時間に。
試行錯誤を重ね、味見をしていく過程に。
家族と一緒に過ごした思い出が重なったということだった。
「さっき、みんなでヤーキターイを試作していた時、『ああ、この感じ。スカイランドで食べた時と同じだな』って・・・・それを思い出せたのは、ましろさんのお陰です!」
「そ、それを言うなら二人だって!」
ツバサにキラキラとした目を向けられて、照れくさそうにするましろは。
赤い顔を誤魔化す様に、ソラとツバサの手を取って、二人と目を合わせる。
「わたし、まだ頑張りたいことも見つからなくて、二人に置いてかれてるような感覚があったんだけど・・・・」
(そんなことを悩んでいたのか・・・・いや、前にも似たようなお悩みを言っていたか)
ソラが内心で驚いている前で、ましろは顔を上げて。
「でも今日、二人がカバトンに言い返してくれた時、ちょっとだけ光が見えた!だから、わたしの方こそ、ありがとうだよ!」
「へへへ、ちょっと照れくさいですね」
「そうですねぇ」
互いに手を握り合いながら、ひとしきり笑って。
ツバサが口を開く。
「・・・・味は違っても、今日みんなで作った料理は、僕らのヤーキターイです!」
「ふふ、じゃあ、たくさん作らないといけませんね。私達の『ヤーキターイ』!」
「えへへ、はい!」
気付けば、日もだいぶ傾いてきた。
三人はきょうだいの様に手を繋いで、スーパーへの道を急ぐのだった。
――――その後行われた歓迎会は。
とても楽しいものになったそうな。