ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

35 / 172
前回までの評価、閲覧、お気に入り登録。
誠にありがとうございました。

シャララ隊長の剣技に関しては、適当に決めました。
ソラさんが対抗して使った技から、どういう系統かほんのり予想できるようになっています。


偽物、試される

『青の護衛隊』。

各地から集った選りすぐりのヒーロー達で構成された、スカイランド王家直属の部隊だ。

その任務は多岐にわたり、王族や王都の防衛に、治安維持はもちろんのこと。

人的被害を出す危険生物の討伐や、災害派遣。

果てに未開の地への調査もまた、彼らの役目。

そんなスカイランドの花形ともいえるヒーローチーム。

しかし、その分入隊の為の門も狭い。

まさしく選ばれたほんの一握りしか名前を連ねることが許されない、エリート集団なのだ。

 

「――――総員ッ!!傾聴ッッ!!」

 

そんな青の護衛隊。

朝礼の場に連れていかれた私は、整然と並んだ隊員達の前に立たされていた。

改めて見ると誰もかれもものすごいオーラ・・・・これがスカイランド最強の部隊か・・・・。

こんな人達の前に立たされるなんて、ちょっとどころじゃなく緊張する・・・・。

 

「今日から新人が入ることになった、ソラ、自己紹介を」

「はい」

 

何はともあれ、ビビってる場合じゃないので。

促されるがままに、まずは名乗ることにした。

 

「ソラ・ハレワタールです。今日から皆さんの仲間に入ることになりました、よろしくお願いします!」

 

無難なことを言ってから、頭を下げると。

 

「ハレワタール?」

「『なまくら』の?」

「あいつか?半年前に行方不明になったって」

 

そんなヒソヒソ声が聞こえた。

知ってた(白目)

 

「プリンセスを助けるために異世界に行ったというが・・・・」

「いやぁ、どこまでが本当のことやら」

「でも俺、ヨヨ教授の孫だって子を見かけたぞ」

「あのハイパースゴスギレジェンドの?」

 

隊長直々の推薦を蹴ってブッチしたようなもんだもんね。

印象最悪だよね・・・・。

『異世界にいってました』だなんて自分でも疑わしいもんな・・・・。

なんて頷いていると、

 

「こら!私語は慎め!」

 

シャララ隊長と一緒に立ってくれていた、アリリ副隊長がストップをかけてくれた。

確かに、あんまりおしゃべりが過ぎると先に進まないもんね。

・・・・信頼くらい、自分で勝ち取るつもりだったけど。

これはちょっと骨が折れそうだと、のんびり考えていた時だった。

 

「・・・・本当にあの『なまくら』ですか?同じ姓を名乗って、隊長を謀っているのでは?」

 

他と違って、はっきり聞こえる声で異を唱えた子がいた。

二つに結った赤い髪を、上向きにした女の子。

・・・・あの若さで、このオーラか。

言うだけあって、実力は確かみたいだ。

 

「言い過ぎじゃないか?」

「いや、でもベリィベリーの言うことも一理あるぞ」

「ハレワタールなんて、よくある名前だしな」

 

そうなんだよな。

『ハレワタール』って苗字、スカイランドでは結構ありふれてるんだよな。

日本で言うと『田中』とか『山田』みたいなポジション。

 

「お前も控えろ!ベリィベリー!その発言、隊長をも侮辱していると分からんか!」

「しかし、そいつが疑わしいのは事実です!」

 

うーむ・・・・これは。

どうしたもんか・・・・。

あんまりにも疑われ過ぎて、内心泣きそうになっていると。

 

「あの、プニバードの子どもと、ヨヨ教授の孫を名乗る娘もグルに決まっている!」

 

――――さすがに。

イラっときた。

 

「――――は?」

 

口に出してから、自分でもびっくりするくらいの低い声だったと気付いて。

慌てて口をつぐんだけど。

見ると、他の隊員のみなさんもぎょっとした顔をしていた。

そ、そんなに変な声出てました・・・・?

 

「――――では、テストをしてみるのはどうかな?」

「~~ッ・・・・望むところです!」

 

微妙な雰囲気になったところで、シャララ隊長がそう提案してくれて。

ベリィベリーさんが、意気込んだけど。

 

「いや、お前どころか、この場の誰も相手にならんよ」

 

苦笑いしながら、隊長は自分の剣に左手をかけて。

 

「私がやる」

 

・・・・・・マジっすか。

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

一夜明けて、早速街に繰り出していたツバサとましろ。

一通り見まわった後で、ソラの様子はどうだろうかと青の護衛隊の隊舎へ足を運んでいた。

すると、敷居をくぐるなり異様な雰囲気に出迎えられて。

二人はそろって困惑する。

 

「・・・・少し、騒がしいような?」

「本当だ、何かあったのかな?」

 

首を傾げながら、あたりをきょろきょろ見渡してみると。

皆、慌ただしく一方向へ走っているのに気が付いた。

 

「なあ、話は本当か!?」

「ああ、マジらしい」

 

会話に、耳をすませば。

 

「シャララ隊長と、新入りのハレワタールって奴が、模擬戦をやるんだと!」

 

そんな、信じられない話が飛び込んできて。

 

 

 

 

「「・・・・えっ」」

 

 

「「えええええええええ――――ッ!?」」

 

 

 

 

仰天したましろとツバサが、慌てて訓練場に来てみれば。

すでに件の二人が向かい合っていた。

 

「どっちが勝つと思う?」

「シャララ隊長だろ?」

「けど『なまくら』もなかなかやるって」

「棒切れ一本でギガノマンチュラ倒したってな」

 

隊員達の話声でざわつく中、審判を受け持ったアリリが二人の間に入る。

 

「これより、ソラ・ハレワタールの入隊試験を開始する!両者、準備はよろしいか!?」

「出来ている」

「いつでもどうぞ」

 

確認に、それぞれが応答を返して。

 

「では、両者。抜刀!!」

 

合図に、同時に抜き放たれる刀身。

切っ先が、互いを捉えて。

 

「――――始めぇッ!!」

 

刹那。

シャララの目の前で、ソラがかき消えた。

 

「――――」

 

慌てることなく。

努めて冷静に振り向いたシャララが、添える様に剣を立てれば。

ソラが文字通り飛び掛かって来た。

一つ、二つ、撃ち合って。

ソラは再び距離を取ろうとする。

シャララはそこへあっという間に追いつくと、お返しとばかりに斬撃を見舞った。

続けてまた数合斬撃を交わし合い、今度はシャララが跳躍して距離を取る。

 

「シイィ・・・・ッ!」

 

逃がすかとばかりに目を細めたソラの口元。

聞き覚えのある呼吸音だとましろが気付いた次の瞬間には、着地したばかりのシャララに斬りかかっていた。

 

「嘘だろ・・・・!?」

「隊長と渡り合ってる・・・・!」

 

ギャラリーが固唾を呑んで見守る中、剣戟が鳴り響く。

ソラの一閃を滑らせ、シャララが反撃する。

シャララの一撃を受け止め、ソラがカウンターを繰り出す。

ソラが斬りかかれば、シャララは弾き返した。

シャララが大ぶり一つ。

飛び上がって回避するソラ。

 

「・・・・ッ」

「・・・・ふ」

 

交差する視線。

ソラの真剣な眼差しに、シャララは嬉しそうに目を細めて。

 

「はあああッ!!」

「ふっ・・・・!」

 

叩きつけを、受け止めた。

およそ木から出ると思えない音を立てて、シャララの剣と鍔迫り合うソラの剣。

 

「ぅおああ!!」

 

そこからさらに体重をかければ、シャララが後ろに吹っ飛んだ。

・・・・ギャラリーにはそう見えたが。

ソラは、相手が自分から後ろに飛んだことに気付いて、苦い顔をした。

証拠に、土煙を振り払ったシャララが、己の無傷と健在ぶりを見せつけてくる。

 

「――――晴天流!!」

「――――水の呼吸ッ!!」

 

笑みを浮かべたシャララとは対照的に、ソラは険しい顔をして。

同じタイミングで、構えを取る。

 

「電光石火!!」

「肆ノ型 打ち潮!!」

 

技と技がぶつかり合い、轟音を立てる。

 

「烈風刺突!!」

「漆ノ型 雫波紋突き!!」

 

互いに攻撃を掠め合いながらすれ違って、

 

「蒼々時雨!!」

「参ノ型 流々舞!!」

 

連撃を叩き合った。

 

「・・・・ぇ」

 

攻防の最中、体の向きを変えようとしていたソラの視界。

いると思わなかったツバサとましろの姿が入って、驚愕に目を見開いてしまう。

 

「隙ありだ」

「ッ、しま・・・・」

 

動きが鈍ったその一瞬を、冷静に見つけたシャララは。

ソラの胴体に、蹴りを突き刺して吹っ飛ばす。

 

「ソラさん!!」

 

案じたましろが声を上げ、ソラが身を翻して起き上がる目の前。

シャララはこれ見よがしに剣を立てて構えると。

輝きを、迸らせた。

 

「おい・・・・おいおいおい!」

「それまでやっちゃいますか、隊長!?」

「あの新人、必殺技引き出しやがったぞ!!」

 

どよめきの中、ソラもまた構えを取る。

刀身に指を這わせ、闘気を滾らせれば。

周囲の気温が、ぐっと下がる。

 

「――――シャイニング」

「――――天霜」

 

両者、共に飛び出す姿勢。

ざり、と。

足元の砂を踏みしめて。

 

「――――ストライクッッ!!」

「――――煙月無痕ッッ!!」

 

爆ぜる大気、響く轟音。

 

「わああ!!」

「そ、ソラさーん!!」

 

ましろとツバサは、近くの隊員に守ってもらいながら。

ソラを案じて、訓練場を注視する。

――――カァン、と。

甲高い音を立てて、木刀が跳ねた。

場を覆い隠していた土煙が、やがて時間とともに薄れて行って。

 

「――――お相手、ありがとうございました」

「――――何、気にするな」

 

根元からすっぱり切り落とされた木刀を降ろしながら、ソラが礼を述べれば。

シャララもまた、相手の首元にあてていた剣を収めて頷く。

 

「負けたので不合格ですか?」

「馬鹿を言え、文句なしの合格に決まっているだろう」

 

ソラが手を借りながら立ち上がると、苦笑いするシャララ。

 

「証拠に、ほら」

「・・・・?」

 

促された方向に、顔を向けると。

 

「いよっ!!『なまくら』ー!!」

「すごいぞー!!新入りー!!」

「よろしくなー!!」

 

ワッと大歓声を上げる隊員達。

少なくとも、今朝の懐疑的な印象は払しょくできたようだ。

 

「改めて歓迎するよ、ソラ」

「はい、よろしくお願いします」

 

差し出された手を、照れくさそうに握ったソラ。

戦いとは裏腹に、年頃の少女らしい顔だった。

 

「はあー・・・・」

 

沸き立つギャラリーの中。

ソラもシャララも笑って終わったことにほっとして、ため息をついたましろ。

 

「・・・・ん?」

 

ふと、視界の隅に動くものが見えたので、そちらを見ると。

赤毛の誰かが、走り去っていく背中が見えた。

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

――――青を基調とした制服に、袖を通す。

鏡の前に立てば、見てくれは立派な『青の護衛隊』がいた。

 

「・・・・まずは一歩だよ」

 

『ソラ』の名前を音もなく呟いてから、更衣室を出ていく。

 

「――――ソラさん!」

 

詰め所に入ると、最初に気付いたましろさんが声をかけて来た。

 

「来てくれていたんですか?」

「はい、ちょっと気になったので。まさかあんなことになってるなんて」

「それはすみませんでした」

 

いきなりバトルになっててびっくりしたろう・・・・。

すまんな、心配させて・・・・。

 

「・・・・ふふ」

「ましろさん?」

 

なんて考えていると、ましろさんが微笑みを零した。

 

「いえ、ただ・・・・遠くまで来たなぁって」

「・・・・そうですねぇ」

 

この世界に来てしまって、がむしゃらに鍛えて。

ソラシド市に落ちて、プリキュアになって・・・・。

中々濃い体験してんなぁ・・・・。

 

「ソラさんと偶然出会って、偶然プリキュアになって・・・・偶然だけで、こんなところまで来れるんですねぇ」

「・・・・いいえ」

 

ましろさんは、感慨深くそう言うけれど。

・・・・私は、そう思わなかった。

 

「ソラさん?」

「ヨヨさんも言っていたでしょう?・・・・私達の出会いは偶然であったとしても、そこから進んできた道は、きっと必然です」

 

某魔女さんも言ってたしね。

『この世に偶然はない、あるのは必然だけ』って。

 

「ましろさん、貴女に出会えて、本当によかった」

「・・・・え、へへ」

 

照れくさそうに頬をかくましろさんを、微笑ましく見守っていると。

 

「おーい、そろそろいいかい?」

「あ、はい!」

 

一人の先輩が話しかけて来た。

 

「朝は悪かったな、俺はハヤテ!お前さんの指導を任された、よろしくな!」

「はい、よろしくお願いします!」

「おう!元気で結構!」

 

ハヤテ先輩は早速、一本の剣を手渡してくれる。

引き抜いてみると、同じ光る刀身が見えた。

他の皆さんと同じ剣の様だ。

 

「さっきのでお前さんの得物は真っ二つになったからな。新しいのは職人に発注してるから、それまでの代理だ!」

「ありがとうございます」

 

なるほどなぁ、と思っていると。

ハヤテ先輩はどこか申し訳なさそうな顔をしていた。

 

「『なまくら』から代名詞を取っちまって悪いが・・・・」

「新人の身で、そこまで注文は付けませんよ」

 

なんだ、そんなことだったのか。

そこくらいは妥協しますよ、ペーペーの新人なんだから。

っていうか。

 

「武器に関して、結構融通が利くんですね」

「慣れてる得物があるなら、それを使ってもらうに越したことはないだろ?俺だってほれ、ナイフいっぱいある」

「あ、本当だ」

 

促されて見てみた先輩の腰には、ベルトいっぱいにナイフが備えられていた。

 

「俺はプニバードなんでな。すばしっこく動けるから、偵察なりなんなりも出来るんだ」

「そうなんですね、すごい」

「だろ?」

 

あれも出来たりするんだろうか。

プニバードに戻って回避して、また人間になって攻撃ってあれ。

機会があるなら、見てみたい・・・・!!

 

「実力は大したもんだが、そんなお前さんでも覚えてもらうことはたくさんあるからな。ついてこいよー?」

「はい!」

 

おっと、その前に。

 

「いってらっしゃい、ソラさん!」

「はい、ありがとうございます。ましろさんも、楽しんでくださいね」

「はい!」

 

来てくれたましろさんに一声かけようとしたら、先手を打たれてしまった。

手を振ってくれる彼女に、振り返しながら。

いよいよ、護衛隊の仕事を始める。




ソラさんは大人なのでね。
原作よりも当たりがきつくなりました。
ベリィベリーさんについては、次回。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。